人生こんなところで終わらせてたまるか!第14話
あたし佐伯美保子は28歳、アラサーまっただ中。某都市銀行の地方支店で働くOLで、身長180センチ、元レスリング部、よく街で男の子に間違われる。
5年越しのお付き合いの末、婚約者の齋藤丈治に別れを告げ、婚活を始めたあたし。
出会い系サイトで誤って出会ってしまったゲイのおっさん権藤さんからなんと偶然、あたしの初恋の人である星夜くんに再会し、相思相愛に!
と思ったら、今度は社内で気になる年上の課長から個人的にお誘いを受けたり、お局さんからお呼び出されたり、終いに銀行では誘拐事件発生!
さらに宗教団体から追われて逃げてきた元フィアンセ丈治が現れる始末!
どうなるあたしの恋路!?
ドキドキ婚活ストーリー!
齋藤丈治、そう、あたしの元フィアンセ。以前結婚を約束した人。
その人が、目の前にいた。しかも、ボロボロの服を着て、顔には酷いアザも見える。
「丈治?どうしたの、その格好?」
あたしは驚いて、丈治の近くに寄っていった。すると彼はその場に膝をついて、倒れそうになった。
「大丈夫?」
思わずあたしは彼を抱き留めた。
「美保子…。助けてくれ。俺をかくまってくれ」
丈治はか細い声でそれだけ言うと、あたしにもたれかかった。
「どうしたの?何があったの?」
そう問いただしても、何も答えない。どうしようかと思ったけれど、自宅が目の前なので、とりあえず自宅に連れて行くことにした。
彼を抱えて、アパートまで連れて行く。あたしも女としてはかなり力には自信があるけれど、丈治もかなりの大男。彼を担いで歩くにはかなり苦労をしたが、なんとか部屋まで辿り着いた。部屋に入ると、ソファに座らせた。
「どうする?救急車呼ぶ?」
「いや、そこまでは…大丈夫」
丈治は深い息をした。
「でも、その格好、酷すぎる。なにか着替え持ってくるわね」
何日同じ服を着ていたのだろうかと疑うくらい汚れた服で、顔も手も泥まみれだった。彼がここに出入りしている頃に置いてあった服がまだあったはず、と寝室に駆け込んだ。上下一式をなんとか見繕ってから、お風呂にお湯をはった。
「着替え用意したから、まずはその体洗ってきて。そのままじゃどうしようもないわ」
「悪い、ありがとな」
丈治はそう言って、もったりとした動きで風呂に向かった。勝手知ったるあたしの部屋。使い方は改めて説明しなくてもいいだろう。
「それにしても…」
ふと、時計を見ると、午後6時を過ぎていた。この分だと、星夜くんとの約束は間に合いそうにない。丈治が風呂に入っている間に、星夜くんに電話をかけた。
「もしもし?星夜くん? ごめん、ちょっと遅れそうなんだけど、大丈夫かな?」
「ああ、大丈夫だよ。ケンもいるし、何時まででも待つよ」
「ごめんね、ちょっといろいろあって、遅くなるかも」
「わかった。じゃあ、そっちの用件が終わったら、一応電話して」
「うん、落ち着いたら、電話するね」
そう言って、電話を切った。今朝の事件のこともあるので、何かとバタバタしてるのだろうと思ってくれているんだろう。星夜くん、ごめんね。
それからしばらくして、丈治が風呂から出てきた。さっきの酷い姿からはだいぶん良くなったけれど、顔や腕に酷い切り傷や打撲の後がみてとれた。
「ちょっと、そこに座って」
あたしは救急箱を持ってきて、丈治にソファに座るように言った。
「どうしたの、こんなに傷だらけになって」
丈治は黙ってあたしのやることに従った。あたしは、傷口を消毒して絆創膏を貼っていった。打撲に見えるところには湿布を貼って。しかし、これは普通の傷ではないなとすぐに分かった。喧嘩…でもない…。多分一方的にやられた、リンチのようなものだ。
「誰にやられたの?」
そう聞いても、丈治は何も答えなかった。
「じゃあ、警察に通報するわよ」
あたしはついに脅しをかけた。
「ごめん、それだけは、カンベンしてくれ」
「だって、これ、どう見ても普通じゃないもの。何かあったのかと思うじゃない? 事件なら警察に知らせなきゃ」
「いや、なんでもないんだ。本当になんでも…」
「なんでもなかったら、かくまってとか言わないじゃない?」
「…」
また黙ってしまった。
「分かったわ、じゃあ、警察には通報しない代わりにあたしには話して。話せることだけでいいから」
「…実は…」
丈治はぽつりぽつりと話を始めた。
あたしと別れてから、例の宗教団体に幹部としての待遇で入ったらしい。最初はよかったものの、すぐにその団体の裏側を知ってしまった。実は暴力団と関係する団体と繋がっており、布教の名目で信者を増やしては、その人達の弱みを握って、金を巻き上げていたのだ。
それを知って、反発したところ、数日監禁され、リンチにあったのだという。
「警察にも関係者がいて、通報しても、ダメだって言われた」
「だから、通報を怖がってたのね? でも、そんなことありえないと思うんだけど」
「いや、あいつら、本当に何をするか分からないから」
丈治は本当に彼らを怖れているようだった。




