人生こんなところで終わらせてたまるか!第12話
あたし佐伯美保子は28歳、アラサーまっただ中。某都市銀行の地方支店で働くOLである。身長180センチ、元レスリング部、よく街で男の子に間違われる。
5年越しのお付き合いの末、婚約者の齋藤丈治に別れを告げ、婚活を始めたあたし。
ネットの出会いサイトを誤って出会ってしまったゲイのおっさん権藤さんに紹介してもらった結婚紹介所の社長さんであり、あたしの初恋の人である星夜くんともなんかいいムード。
と思ったら、今度は社内で気になる年上の課長があたしに個人的にお誘いを受けたり、お局さんからお呼び出されたり、なんだかあたしの身辺、騒がしくなってきた。
そして、権藤キューピットのおかげ(?)で、星夜くんに大告白!
どうなるあたしの恋路!?
ドキドキ婚活ストーリー!
ちなみに、その事件というのは、京子の「周り」に起きたもので、本人は至極無事ではあった。
ジムで星夜くんに劇的な告白(というか告白されてしまったというか)のあった翌日、いつも通りに京子の家に迎えに行き、一緒に銀行に向かう。
「今日が終わればやっと週末ねぇ。そう言えば、昨日、どうだった?」
京子は両腕を上げて伸びをしながらあたしにそう聞いた。あたしは、昨日のジムであった一部始終を京子に話した。
「うぁお」
と、京子はアメリカ映画で俳優がやるような大げさなジェスチャーで驚いてみせた。
「あらぁ、そう! 想いが伝わってよかったじゃない。しかも、初恋の君に。丈治と別れてよかったんじゃーん。権藤さん、やるなぁ。次はわたしのキューピッドになってもらおうかしら」
なんて言って、あたしの背中をバシバシ叩いた。いたいいたい。
「いやー、なんていうかさ、恥ずかしいっていうかさ、もう、あたしもわかんない」
28歳にもなって恥じらう乙女は似合わないのは十分承知であるけれど、恥ずかしいものは、恥ずかしいのだ。何て言われても恥ずかしいのだ。
「しかもさー、京子はキューピッドなんて必要ないじゃない。選り取りみどりだし」
「最近そうでもないのよね。わたしも遂に年貢の納め時かも知れないわ。最近どうも当たりが悪くて。しかも、ストーキングのおまけ付きよ。もう勘弁してね」
それは、自業自得と言うべき。しかも選り好みしすぎだっていうの。しかも、あんたこの前は、ストーカーちゃんちゃら可笑しいみたいなこと言ってたくせに。
「美保子いいなぁ。わたしもそんな素敵な恋してみたいわ」
京子、悪いけど、あんたには無理だわ。
「あれ?どうしたのかしら?」
やがて会社に着く頃、店舗裏にパトカーが何台か止まっているのが見えた。
「近くで事故でもあったんじゃない?」
京子は興味なさそうに言った。
が、近づいてみると、どうも警察が来ているのはあたしたちの銀行のようだということが分かった。
「どうしたんですか?」
従業員入り口に張り付いている警察官にあたしはそう聞いた。
「こちらの従業員の方ですか?」
背広の男性があたし達にそう聞いた。刑事っぽい感じ。
「はい」
「では、お聞きしたいことがありますので、まずはお店にお入り下さい」
刑事らしき男性はそう言って、あたし達に道を開けた。
「なにがあったのかな?」
それでも京子は動じた風もなく、あたしの先に店に入って行った。あたしたちが店に入ると最初に出会ったのが纐纈課長だった。
「ああ、お前達か。順番に聞き取りするから、ここに並んでいてくれ」
「課長、何があったんですか?」
「実は昨日の夜、清井主任が誘拐されたらしいんだ」
「清井さんが?誘拐?」
あたしと京子は口を揃えてそう言った。
「目撃者の話だと、複数名の男性に車で連れ去られたらしい。遺留品から、清井主任で間違いないという話なんだ。怨恨の線もあるので、事情を聞きたいと警察が」
確かに清井さんは社内では厳しく、嫌いな人も多いけれど、さすがにそこまでする勇気のある人はいるとは思えない。お客さんに対しては非常に丁寧で対応にミスはなく、むしろ客には好かれるスタッフだったとあたしは思っていた。なので、怨恨というのは考えにくいのではないかと。
ただ、プライベートな面はあたしには一切分からないので、何かの事件に遭ったのかも知れないし。
あたし達の順番になって、会議室に通され、あたし達を含む数名が警察に事情を聞かれた。
最初に事件の概要を説明された。今朝方駅前の往来で、黒塗りの車の中から出てきた覆面の男性らしき複数名がいきなり一人の女性を抱えたかと思うと、そのまま車に押し込んで逃走した。多数の目撃者がその場にいて、すぐに通報がされた。目撃証言と、その場に残された遺留品数点から清井さんであることが断定され、すぐさま勤務先のこの銀行に調べが入ったということであった。
警察の人が順番に清井さんに関することと、今朝からの行動などについて聞き取りをした。あたしは清井さんについてはさっき思った通りのことを話した。怨恨は考えられないと。
「みんな、そう言うんですよね。多数派は、怨恨はありえないと。少数ですが、色々社内では軋轢のあった人達もいると仰る方もいるんですが」
警察の偉い人らしき人が、あたし達にそう言った。
「私は、多数派の人達がくさいと思ってるんですが」
あたしは多数派のようだった。でも、本当なんだから仕方がない。
その後も、色々なことを聞かれ、できるだけ正直に答えたが、最後になって、ふと一つの仮定があたしの頭に浮かんだ。
もしかして…?
「あのー。ちょっといいですか?」
あたしは手を挙げて、その偉い人らしき人に目配せをした。
「はい、どうぞ」
「あの、もしかしたら、なんですけど、それって、人違いってことあり得ませんか?」
「人違い…ですか? 詳しくお聞かせいただけますか?」
「はい、あの…」
あたしは、京子の方をちらっと見てから、警察の人に、あたしの推測を話し始めた。




