表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/34

人生こんなところで終わらせてたまるか!第1話

 それは突然のことだった。

「別れよう」

 あたしは彼の言葉を聞き違えたのかと勘違いした。

「え?今何言ったの?」

 彼は、一度あたしから眼を逸らしてから、また目線を戻して、

「俺たち、別れよう。いや、別れてくれ、そう言ったんだ」

「え?じょ、冗談でしょ?だって、あれ…私たち、来年には結婚するんでしょ?式場も予約したし、両親への挨拶もすませて、 結婚指輪だって買ったわよね?」

 あたしは、なんの冗談かと思った。夢でも見てる?あたしたちはここまで順調にきており、間もなくゴールインする予定だったのだ。あたしは、自分の頬をつねって、夢じゃないのを確認した。それから、左手を出して指輪があるかも確認した。

「あ、それも、返してもらうよ」

 そう言って、彼はあたしの左手から指輪をもぎとった。

「ちょ、ちょっと、冗談もほどほどにしてよね!」

 さすがにあたしも怒った。

「冗談じゃないよ。本当。俺は本気だ」

「ちょっと、いい加減にしてよ!じゃあ、本気だって言うなら、その理由を言って!なに、他に女ができたの?」

 あたしは、テーブルをバンと叩いて、大声を張り上げた。ファミレスの客が全員こちらを向いた。あたしは周りの視線を感じながらも、彼を睨み付けた。

「いや、そんなことはない」

 そう言いながらも、彼はあたしから目をまた逸らした。

「違うっていうなら、こっち向いて、あたしの目を見て言って」

「違うって…。

 その…貯金しなきゃならないんだ…」

「は?」

 その回答は予想外のものだった。

「貯金しなきゃならないんだ。だから、結婚資金も出せない。だから、別れるんだ」

「ちょ、貯金って、何の話よ?」

「お、お告げがあったんだ」

「お告げ?」

「そう、神からのお告げ。3年後には教会を建てなければならないんだ」

「あんた、何言ってるの?」

 彼の話はこうだ。最近知り合った、男性からある宗教団体を紹介され、それにハマった訳だ。そこで、お布施のために貯金をして、来年にはまとめて支払わなければならないというのだ。

「あ、っそ。わかった。じゃあ、別れてあげる」

 あたしは、再度テーブルを叩いて、請求書を彼に投げつけた。

「ただね、これはもらうわよ」

 そう言って、もぎとられた指輪を取り返し。

「慰謝料代わりね」

 そんな男、こっちからお断りだわ。

 そうして、あたしはファミレスを出た。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ