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1.訪れた災害

 部室のドアを開けるとそこは見覚えのある間取りだ。

 『見慣れた』と言えないのはこの建物に入ったことが片手で数えられるぐらいだからである。

 外見は安っぽいプレハブだが、中に入るとそこはどこの社長室かと思えるような立派な執務机とその前方に高級そうなソファが置かれている。実際の社長室に入ったことはないのだからそこを社長室のようだと比喩するのは間違っているのかもしれないが、テレビや映画で見た知識を用いるとそう表現するのが一番適当だろう。

 高校の一部活動がこんな高級そうな備品など所持しているのはおかしいのだが、その点について先日たずねたところどうやらこれらの備品は部員、主に部長の個人所有らしい。

 そんな異質な部室に足を踏み入れる少年の名前は葛葉清秋くずはきよあき紀近高校きのちかこうこうに通う男子高校生の一人である。本来なら男子高校生という称号の前に『ごく一般的な』という枕詞をつければさえない主人公の出来上がりなのだが、その称号は数日前に剥奪されており、ついでに言うと人間であるのかも定かではない。

 原因としてはある事件に巻き込まれた所為であるのだが、そんな番外編を語ってしまうと日が暮れてしまう。文字数にして十万字以上有してしまうのでここでは語ることはできないが、簡単に言うと清秋はその事件の所為で人間でも一般人でもなくなってしまったということだ。

 ではなぜ彼はこの部室に足を踏み入れたのか。

 理由としては簡単で、一言で言うなら呼び出されたから。二言で言うなら『彼を一般人でなくならせた部活の部員に』という言葉が前に付く。

 よってこの部屋に入った時点でその呼び出した人物がいると思っていたのだが、彼を出迎えたのは違った。

「ああ、遅かったやんか。せっかく一時間目からサボって待ってたのに」

 出迎えたのは男の声。しかしそれに疑問を抱く前に清秋の思考は一瞬途切れることになる。

 原因は耳を劈くような爆発音。まるで左耳を思い切り殴られたような衝撃が清秋の頭に響き渡る。それが銃声だと気づくのに数秒かかった。

「な、なんだ!?」

 自らが発した声さえもうまく聞き取れないままに目の前の者に疑問を投げかける。

「ふん。反応に五秒か。やっぱりこの辺の反応は一般人と同レベルやな~」

 日常会話のように気楽に言うその人物は銃口を下げて上着のポケットにその凶器をしまう。懐に入れられた黒い物体が本物でかどうかは清秋には確認できなかった。

「うん。適当に座ってくれていいから。あ、あとこれが入部届けやな」

 そういうと清秋の手から紙切れを奪い取り自分の目の前でぺらぺらとちらつかせながら、革張りのソファにどっかりと腰掛ける。

 そこでやっと清秋は相手の顔を確認する。

 その男は浅黒い肌に長髪を後ろに流している。その髪が金色なのは恐らく染めているのだろう。根元が少し黒いのが確認できる。

 サングラスをかけているため目は確認できないが、鋭い視線が自分と先ほど取り上げた入部届けを交互に見ているのがわかった。

「別にこんなもん必要ないやろ。この部活自体許可されてるか怪しいのに」

 そういうとその男はつまんでいた紙を丸めて、後ろに放り投げる。

 その紙球はきれいな放物線を描き、部屋の隅に置かれたゴミ箱へ吸い込まれるように入った。

 この距離から目で見ずによくもまあ入れられるものだ。

「って感心してる場合じゃない。人の物を勝手に捨てるなよ」

「そうカッカしなや。とりあえず入部するってことが伝わったらいいんやろ? オレが聞いたからいけるって」

 悪びれる様子もなくその男は深々と座り、腕を広げて足を組んでいる。まるでどこかの組の者みたいだ。

 そんな男の態度に少し怯みながらどう対応したものかと考えているうちに、奥の小部屋から助っ人が現れた。

「事務処理上必要な書類なんです。それに言っておきますけど、この部活は学校から許可も得てますしあなたは部員でも何でもありません」

 奥から現れたのは佐々木雀。長い黒髪を後ろで束ねたつり目ぎみの少女だ。一見年上に見えるが清秋と同様にまだ高校一年生である。そして何より特徴的なのがその目。いや、目自体はそんなに変わったことはないのだが、その右目には片眼鏡がかけられている。

「でも呼び出したのはそっちやろ。他の仕事もあるのにわざわざ呼び出して」

「どうせ学校に来るのだから問題ないでしょう。それに出魅部長からのお願いは断れないのじゃない」

「まあ、あの女のお願いは命令みたいなもんやからな。話に聞く葛葉清秋ってのはこいつ?」

 その金髪男の質問にゴミ箱に手を突っ込みながら雀は言う。

「ええ、彼が葛葉清秋君よ」

 丸められた入部届けをゴミ箱から取り出してそれを元の形に広げる。

 しかしもちろん元通りに戻るはずもなく、くしゃくしゃになった紙を見て彼女は顔をしかめる。

「ところで蘆屋先輩。先にも言いましたがあなたは正式部員じゃないんです。今後はくれぐれもこういった勝手な真似をしないようにお願いします」

 おそらく事務手続きというのを行うのは彼女なのだろう。ぼろぼろになった紙を見ながら機嫌の悪さを全面に押し出した表情をしている。

 しかしそんな彼女に対して蘆屋なる男は

「えー、いいやんそれぐらい。書いてる事読めたらええやろ」

「勝手な真似をしないように」

 片眼鏡に右手を添えて先ほどより気持ちトーンの落ちた声で蘆屋をにらみつける。

 対して蘆屋は少し音量を下げて

「……誰もそんな文句とか言わんって」

「勝手なことは……」

「はい、わかりました」

 言葉を発する度に勢いを増す雀の迫力に耐えられなかったのか蘆屋は先ほどのふてぶてしさはどこへ行ったのか、ソファの上に正座しながら謝罪の言葉を述べる。

 その光景を黙って見ていた清秋は、雀は絶対に起こらせてはいけないのだと学んだ。

「そして葛葉君」

「はい!」

 学んだところで突然名前を呼ばれ、体が飛び上がりそうになる。

 しかも雀の口調は変化せず、怒りのオーラは収まっていない事が伺えた。

「この入部届け、日付が入っていません」

「それは後から……」

 書こうと、と言おうとしたところで前に座る蘆屋からの目線に気づいた。「言い訳はするな」と彼の目はそう告げている。

 つい先ほど会ったところだが、おそらく雀とのつき合いは自分より長い事は容易に予想できる。先輩のアドバイスには従っておくのが賢いだろう。

「す、すみませんでした」

「わかればいいんです。ついでに新しい紙を渡すので書き直してください。こんなしわしわの紙を提出したらまた生徒会から小言をいわれます。ただでさえこの部活は目を付けられているというのに」

 ぶつぶつとつぶやきながら奥にある引き出しから新しい入部届けを取り出す。

 もしかするとただ書き直させたかっただけなのではにだろうかとも思ったが、そんな事を言葉はおろか表情でも出せば滅されそうな空気だったので清秋はその考えを心の隅に追いやって新しい紙を受け取る。

「日付は西暦、ふりがなは平仮名で書いてください」

 万が一にでも書き損じれば殺される。

 もちろんそんな事を言っている訳ではないし、彼女自身もそんな事を思っていないだろうが、先ほどの恐怖が残っているのだろう。清秋は声も出さずにうなずいて返した。

「気をつけやキヨやん。佐々木妹は怒らしたら恐いで。姉の方は物理的に恐いけど、妹の方はたちが悪い」

「うふふ、私のどこにたちの悪さがあるのかしら」

 冷たい笑顔で対応する雀だが、蘆屋はヘラヘラと笑って受け流す。どうやら彼はどこまでが彼女の怒りのセーフラインかをしっかりと把握しているらしい。

「そりゃあ『過剰視界オーバーシーイング』の雀って言ったら相手のなんでもお見通し。その人の過去の罪から今着てる下着の色まですべてを視る力を持ってるってな」

「褒めの言葉として流しておきますが、一応訂正しておくと『過剰視界』はそこまで便利な力じゃありません。視る力ではなくて見る力。意識して使えるものじゃありません」

 言いながら彼女は右目の視界を遮るように片眼鏡に手を当てる。それはまるで人に見せたくない傷跡を隠すような仕草だ。

「まあその話しはこれぐらにして。本題に入ろうや」

「ええそうね」

 二人はそろって清秋の方に視線を向ける。本題も何も今日は入部のためにこの部室に来たのだ。それは清秋に入部届けを渡した雀本人が一番わかっていることだろう。

 入部についての説明でもするのだろうかとも考えたが、まさかこの部活でそんな常識的な事をするとは思えない。

 となるとこの場面で一番に話すべき題目は

「なんでオレが来たかってことやな」

 正式部員でない蘆屋大介がわざわざ呼ばれたのかだ。

 まさか歓迎会と言う雰囲気でもない。

「うん、わかるで。こんなへんてこな部活に入部しよと勇気を振り絞ったのに、入って初日にこんなけったいな関西弁がおったらびびるよな、キヨやん」

「いや、そんなことは……。ていうかキヨやんて」

「堅いこと言いなや。さんとか君なんて付けたらよそよそしいやろ? キヨやんもオレのことはだいちゃんって呼んでくれて良いで」

 話しながら蘆屋の視線が雀と合う。その視線を外して

「さん、君付けはよそよそしいやろ?」

「ちょっ、今のは何ですか? ていうかなんで二回もいったんですか?」

 雀は蘆屋の名前に『先輩』を付けるし、清秋には君を付ける。

 蘆屋はそれに対して「もっと近づいてきて仲良くなろう」と促しているのかそれとも

「大事なことなので二回言いました~」

 ただ単にからかっているだけのようだ。

 ぐぬぬ、とうなっている雀を横目に話しを続ける。

「まあ結論だけ言うとキヨやんの教育係として呼ばれてん。ああ、そんな意味分からんみたいな顔せんでもちゃんと説明するで」

 清秋が聞き返す間も与えない。雀も呼び出した責任からか説明役として口を挟もうとするがそれも手で制する。

「オレが全部説明するって佐々木妹」

 と、一息置いて

「ちゅうのも、キヨやんには霊的な素質……、種類はいろいろあるんやけど便宜上魔法って言葉使うわ。その魔法の素質がキヨやんには特別強いねん。隠れてた才能って事やな」

 確かについ先日、この部活の部長である清水出魅によってこれまでの日常ではあり得ないオカルトな体験をさせられ、その中で魔法のようなものも使わされた。

 正確に言うと銃だ。

 魔力の力を使用したその銃は実弾以上の力があることは清秋自身がよく知っている。

「ちなみにこの前壊した銃はオレのんやから。ああ、気にせんでいいで。あれは一番安いヤツやし、オレはそんなに愛着とか持たんから」

 確かにあの時銃は壊れてしまった。

 後で聞いた話だと清秋の魔力に耐えきれなかったという事なので、蘆屋の言う通り自分には多少なりとも力があるのだろう。

「てなわけでその力を戦闘で使えるようにするためにオレが来たってこと」

「でもわざわざ戦闘用に鍛える意味はあるのか?」

 その言葉に対して蘆屋はあきれたようにやれやれとため息をつきながらサングラスのズレを直して

「わかってないなー、キヨやん。才能あるんやから鍛えるに決まってるやん。才能ってのは定められた運命みたいなもんやで。ルークかってフォースの才能があったからジェダイになったやろ?」

 その例えはいささか古いような気がする。年齢を考えると蘆屋も自分も生まれる前の映画だろう。

 そんな事を考えながらなんとか蘆屋の無理矢理感がある例えを理解しようとしする。

「芦屋先輩、勝手な解釈を説明に入れないでください。本当は……」

「この部活の仕事をしてもらうためや」

 雀の言葉を遮る。

 言葉を止められた雀はしばらく口をパクパクと空回りさせた後、ムスッとした顔をして目の前のカップを口に運んだ。

 蘆屋はぶつぶつと文句を言う雀を完全無視し

「そのためには魔力をある程度コントロールしてもらわなあかん。ダイジョブや、そんな難しないって」

「ちょっと質問なんだけど」

 どんどん話しを進めていく蘆屋に対して清秋は右手をあげる。

 なんや? と説明の中断に機嫌を損ねることもなく、むしろどんどん質問してこいともとれる返答

「実際この部活の仕事って何なんだ? この前はただ巻き込まれただけで仕事っていうについてはわからないんだが」

 というか別に社会から求められたり報酬をもらったりしているのではないのだから仕事とはいえないのではないだろうか。

 ただのクラブなのだから活動と表現する方が適切に思える。

 清秋のそんな心中の指摘などもちろん聞こえるはずもなく、

「言葉では説明できへん」

 ただ一言で返した。

 まさかこれだけではなく、説明できないなりに補足してくれるだろうと少し間を空けたが蘆屋が口を開く様子はない。

 質問は終わりか。とでも言うように彼が言葉を止めているようにも感じる。

「で?」

「え?」

「え? じゃねえよ。説明できないならそれなりに努力しろよ。例えをだすとか、過去の活動内容とか」

 先輩に対してついキレてしまったが、怒りを受けた相手は全く気にする様子もなく、むしろ笑いながら

「だってオレ、この部活の部員ちゃうし」

 じゃあなんでここにいるねん。

 という適切なつっこみをできる者をはこの場にいなかった。

「とりあえずお前は自分の魔力をコントロールする修行をするんや。おーけー?」

「うん、わかった。……なんて言えるわけないだろ。そんな説明になってないような説明で」

 思わず身を乗り出す清秋に対して、蘆屋は両手をあげながら

「わかったわかった、ドウドウ。んじゃ違う方向から説明しよかキヨやん。お前が魔力を制御でせなあかん理由」

 足を組み直し、

「まずはお前の魔力量や。これ見てみ」

 そう言って蘆屋が学ランの懐から取り出したのは一丁の銃。

 本体は金属で精巧に作られているがもちろん本物ではない。打ち出す弾は実弾ではなく普通の空気銃と同じ樹脂製の弾だ。普通に引き金を引く分には鼠一匹殺せないだろう。

 しかし持つものが特殊な存在、魔力を持った者になると話は変わってくる。

 グリップから魔力が流れ込むと引き金を引いた際に弾が魔力を纏って発射。普段の数十倍の威力で的を打ち抜く事ができる。警察が知れば銃刀法違反ものだろう。もちろん警察が魔力と言うものを信じればの話しだが。

 今蘆屋が手にしているのはそういう物だ。

 しかしその銃は一部おかしな点がある。

 銃身。

 正確に言えば銃身の先、発射口とでも言えばいいのだろうか。その弾が銃外に射出される部分が大きく口をあけているのだ。まるで花開く用に内側から破裂している。

「キヨやんは覚えてないんかもしれんな。でもコレはお前がやったんやで。あ、ここで記憶が無い事に関しての質問はナシな。後で佐々木妹か出魅にでも聞いて」

 清秋が口を開く前に質問を止める。

「この銃がこんだけ派手に壊れてるのは理由がある。お前もわかるやろ。そうや、魔力が強すぎるから銃が耐えきられへんかった。もちろん銃身はちょっとやそっとで壊れんようにコーティングしてるんやで」

「で、その強すぎる魔力を放ったのが俺って事か」

「大正解。あの怪物部長が『こんな膨大な魔力は使ったことがない』って言うほどのもんやで」

「でも記憶が無い時の事を言われてもどうも納得できないな。実感がわかないっていうか」

「そうやと思うわ。でもキヨやん、意識ある時も普通にこの銃使ったんやろ。佐々木妹が言うに、ちゃんと魔力流れてたみたいやし」

 言って雀を顎で指すと、雀は無言でこくりとうなずいた。

 説明役をとられた事がまだ不満なのだろうか。

「この銃は多少は魔力を吸収しやすくしてるけど使用者が意識的に流さんとちゃんと威力は出されへん。虫一匹殺すのがやっとやろな」

「でも俺は意識的に魔力なんか」

「やろうな。いくら魔力量が多かったとしても意識的に本人が流そうと思わな流れへん。オレも不思議やったわ。今までお前は一回も魔術とかそれに類するもんは使ったことなかったんやろ」

 清秋が肯定として首を縦に振るのを見ずに蘆屋は続ける。

「だからオレ、いや、出魅が考えた理由はお前と銃の相性がよかったってことや」

「相性がよかったって……。でも無意識に魔力を流す事なんてできないんだろ?」

 その言葉に対して蘆屋は眉間に人差し指を当てながら、

「あー、何て言ったらいいんかな。確かにさっきは無意識に魔力は流せんって言ったけど、それは一般的な話。相性が良いって言うと話は違う」

「つまり相性が良い媒体を使うと無意識に魔力が出されるってことか?」

「いや、ちょっと違うな。無意識やけど意識的に魔力が流れるんや」

 蘆屋の矛盾する言葉に清秋は混乱するが、蘆屋も今の説明で彼が理解したとは思っていないのでさらに補足する。

「たとえばお前は歩く時に意識して歩いてるか?」

「そりゃあ歩くときは『歩こう』と思って歩いてるんだから意識してる事になるだろ」

「ちゃうちゃう。意識して歩くってのは体重を前にどれぐらい移動して前に踏み出す足の角度、力を出すか、後方の足はどれぐらいの力でけり出すかとか全部考えることや。そんなことわざわざ考えて歩いてるやつなんておらんやろ」

 確かにそんなことをしていたら生活するのにいくつ頭があっても足りない。

「つまり『歩く』っていう意識はあるけどその動作に関する足の動きや体重移動は無意識にするってことか」

 その通りやと清秋を褒め、

「魔法とか魔術は普通意識してするもんや。どれぐらいの魔力量を使ってどの方向にどういう力を加えるてのを設定せなあかん。そんなプログラミングができらな魔術なんて使われへん。意識してプログラミングをしてから事象を起こすのと、意識して魔術を放つのやったら後者の方が一段階少ない分圧倒的に有利」

 というわけで、と手に持っていた銃を懐にしまい、

「長所を伸ばしていこうってことでオレが指導役に選ばれたんや」

「指導役って。でもわざわざあんたを呼ばなくても雀や部長だって魔術に対しての知識はあるんだろ?」

 その言葉を聞いて理解力のない子供に何度も説明するように大げさなため息をついて

「それぐらい今の説明でわかるやろ。キヨやんには銃をつかった魔法が合ってる。んでその長所を生かしていくって事は」

「銃に関してはあんた、すごい奴なのか」

 蘆屋はコクリとうなずき

「そうや、佐々木妹、説明したって」

「どうして私が言わないといけないんですか」

 即答。

 ほとんど説明しておいて最後に自分に振るなとばかりに不機嫌を前回にした口調だ。

「アホ、自分で説明したら締まらんやろ。ほら、自分でイケメンとかいってもサムいだけなんと同じや」

 雀はその言葉にあきれたような顔をし、仕方なくといった感じで、しかししっかりと咳払いをしてから

「世界中のすべての火器銃器、飛び道具を使いこなすとも言われているほどの人間兵器。さらに陰陽道との組み合わせによって彼の射程距離は無限で死角なし。戦場に投入すれば敵味方関係なく被害を被り、残るのはハリケーンでも通り過ぎたかのような荒れ地のみになる。そんな彼に付けられた通り名は

自然災害(アンラッキー)や」

 結局自分で言うのかよ、という清秋の言葉より早く、雀の見事に回転の加わった右フックが蘆屋大介の頬に直撃した。




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