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第十章 引く線

 応急処置の後、空気は変わった。


 外部チームの動きが、荒くなる。


「このままでは、成果が出ません」


 責任者が言う。


「時間も、予算も」


 九条は、静かに答えた。


「成果は、壊れたものからは生まれません」


「ですが——」


「撤退を、求めます」


 はっきりとした言葉。


 その場が、凍る。


「我々には、上からの——」


「私は、現地責任者です」


 九条は、譲らない。


「この遺構は、これ以上触らせない」


 責任者は、あかねを見る。


「あなたも、そう思うのか」


 あかねは、一歩前に出た。


「はい」


 短い答え。


「順番を守れないなら、

 ここにいる意味はありません」


 沈黙。


 風が、石を撫でる。


 責任者は、舌打ちをした。


「……分かりました」


 荷物をまとめる音。


 無線が切られる。


 ライトが、一つずつ消えていく。


 最後に残ったのは、二人だけだった。


 九条は、深く息を吐いた。


「敵を、作りました」


「元からです」


 あかねが、同じ言葉を返す。


 九条は、わずかに笑った。


「頼もしいですね」


「仕事です」


 また、その言葉。


 だが、意味は少し変わっていた。


 線は、引かれた。


 戻れない線。


 だが、それでよかった。


 これで、守れる。

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