『狂乱の恩寵』
グロ注意ですね……
「『戦火の恩寵』」
全身がゴウゴウと燃えて、体が血液が焼ける痛みが全身に走る。
周りの観客は、突然の発火に戸惑いながら見続けるもありえない光景を目撃した。
何せ、剣が音を立てて蒸発していたのだから。
「何だよ……これ」
観客の全員が呆気に取られていると次の瞬間、異変を感知したドラゴンがシュテルの体を吹き飛ばした。
壁に目で追えない速度で叩きつけられた体はグチャグチャになって、頭がへしゃげて脳髄が飛び出し、衝撃で内臓が壁に張り付く光景だった。
まさしく地獄絵図のような光景だったとのちに語られることになる。
誰もが彼の死を感じた。
その時だった……ピチャ、とひしゃげて死んでるはずの、動かない体の千切れた右腕が血を垂らしながら不快な音を立ててはって来ていた。
自身の体(肉塊)の付近にまで行くと動きを止め、原型を保っている右肩に千切れた所をピッタリ重ねた。風で揺らぐ程の小さい炎が腕と肩を繋ぎ止めたのだ。その後、グチャグチャになったはずの体がさらに音を荒げて燃え始めたのは。
その炎はあまりにも荒々しく、凛々しくそして……美しかった。終わりを呼び込む戦の火花がもう一度死んだ体に恩を与える。
肉片が燃え盛る炎にめがけて集まって行く。十秒程度で元通りになり火の勢いはさらに高まって、ただそこにいるだけで大地が蒸発した……まるで悲鳴のように。
「剣が……ねぇな」
手に握られていたのは、剣だった物だ。それは手のひらで、水のように転がっていた。
「……溶けたのか、しょうがない」
若たんした表情をした時、自分の左手の薬指が赤く光だし
「封印解除、《皇帝》……こいよ『恋炎剣』」
何故か青い刀身を振り回しその時自身の身長と同じくらいの大剣を軽々と振るう。その時周りの空気が焼き切れる音がした
「何ですか……あの炎は?」
ハリスは、驚きを……この手の震えを隠せなかった。何故なら、剣と全身が豪快に燃えている男が目の前で動いているのだから。
ーー私のトラウマの元凶がそこにいたから。
「……」
シュテルは黙ってドラゴンと睨んでいると、それに業をにやしたのか突進して来たのだ。
激突するその時……倒れたのだ。
ドラゴンが灰となって、倒れていたのだ。勝負は一瞬、ただ燃えただけ、少しぶつかっただけである。
静まり返った会場で、誰も声を上げなかった。
「次」
観客席に座っているハリスを睨んでいる、シュテル以外は……
その後、シュテルは収容されていた魔物全てを虐殺。
全部で数百にも及ぶ魔物の死体は、最初の数十体は剣が通った後のようなものがあって、ナニカを避けるように肉がありえない千切れ方をしていた。
その後の数百体は、損傷が酷く。死体のほとんどが脳を焼き切られて、内臓だけを焼かれたりして死んでいた。
通常の精神ではありえない虐殺の方法により、シュテルは流刑。
巷では、『戦火の恩寵』を『狂乱の恩寵』と呼ばれるようになった。