表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/19

九話

 翌日も変わらず薬草の採集に出かけることにした。

 一週間以上が経過したけどまだ魔物狩りに行く気にはならない。ドラウィスに昨日言われたことも気になってギルドの掲示板を注意して見たが、確かに魔物狩りのクエスト、しかも急ぎのものもかなりあった。急ぎのものは件の東の街道の魔物の討伐であった。

 本当の所なら参加したい。報酬も他に比べて多いし。

 でも、まだ戦える気がしない。


 魔物といっても色んな種類の魔物が群れを成している様で、その中にはスライムの名前もあった。

 今は最初の頃とは違いやけくそになってない。まともな判断も出来るし、恐らくスライムなら倒せると思う。あの時は避けられる攻撃も目に入らなかったからなあ…

 それでも、じゃあ何体も倒せるのかといったら正直厳しい。というか一体倒した時点でリタイアになるかも知れない。

 もしかしたら俺は何処か臆病になってしまっているのかも知れない。でもまだこの魔物のクエストは受けるべきでは無いと思う。せめて何か成長出来たと感じられたら…


 「スキルか魔法が使えれば良いんだけどなあ」

 草を踏み薬草を摘みながら独り言をいう。別に誰に聞かせるでも無いけど、薬草採集も馴れてくると、独り言をいう余裕は出てんだよな。

 

 俺だって何回も言っているけど魔法は使いたい。実際毎日魔力を感じる訓練や、薬草採集の時に拾った手頃な棒で素振りをしたりはしている。でも劇的な変化は今のところ無い。どちらかというとお金を稼ぐ量をこれから増やせるはずなのでお金は大丈夫になるだろうけど、その分採取クエストをこなすために時間が取られてしまうだろう。そうしたら自主練の時間や図書館に行く時間は削られるだろうな。

 

 「足腰と体力は鍛えられるだろうがな」

 採集の時日本とは違って機械が使えるでも無いし、車があるわけでも無い。良い体力強化にはなるだろう。しかし、直接的な戦闘能力が上がる訳では無いと思う。かなぴい。

 これでは『採集マスター』みたいなスキルとか習得するんじゃ無いか?そうで無くても薬草の摘み方は上手くなったと思う。実際スキルは『???』だけで、うんともすんともって感じだ。『???』が明らかになる前に『採集マスター』とか覚える方が早いかもな。


 「はあ…」

 ため息が出る。俺は薬草摘みに異世界に来たんじゃねえぞ。つうか、自ら来たわけでは無いけど。


 でも、何も成さず終わりたく無い。後悔の無い様に生きなければ。ていうか生きてんのか?

 「やめやめ」

 こんなこと考えても分からないし意味が無い。それどころか暗くなってくる。折角アカネとユイっていう良い奴にも会えたしいずれ恥じない冒険者にならねば。

 そういえば、二人は今何をしているのだろうか。他の地域にでも行ったのか、はたまた王都で冒険者をしているのか。また機会があれば会いたいものである。

 

 いまは薬草集めて鍛冶屋に行かなくちゃな。今日はバックを受け取る約束の日だし。



 ※


 「いらっしゃいって!おいおい大量だなあ」

 「薬草とってまっすぐこっちに来ちゃいました」

 薬草をバックに摘めて手にも持ってまっすぐ鍛冶屋に向かった。クエスト報告の前に道すがらの鍛冶屋に寄ることにしたのである。しかも、直ぐに新品のバックを試せるしな。

 「バックの中にも薬草詰まってるんだけど入りますかね」

 「おうよ!坊主の欲しい大きさ通り作ったんだからはいるはずだぜい」

 おやっさんはそう言うと、カウンターから消えていった。恐らく工房にでもある俺の注文したバックを取りに行ったのであろう。

 「はいよ!気合いの一品だぜ!」

 「おお…」

 これはいい!素材がどうとかよく分からないが、皮で出来たバックは耐久性が有りそうだ。糸の縫い目も綺麗で頑固親父の気概が見える。大きさも今背負っている物より二回り近く大きい。まさに俺が頼んでいた大きさだ。

 

 「色々説明したいことはあるんだが…まずはその薬草入れてみろ」

 「はい!」

 多分素材の説明とか、機能について説明してくれるのだろう。心なしか、おやっさんに少年の心のようなものが見える。自分の作ったものを説明したいという気持ちなのだろうか。本当に鍛冶が好きなんだろう。

 おれはおやっさんからバックを受けとったがバックの口を開けられない。薬草を持っているからな。

 「そうか、はいよ」

 「ありがとうございます」

 おやっさんは気を利かせて、バックの口を開けてくれた。手に持っていた薬草を入れ、元々のバッグからも薬草を取りだし入れてみた。完璧に入りきったし何なら少し余裕まである。背負ってみると、首から太ももまでの長さがあることが分かる。重さはそこそこあるが、大きさを考えれば十分軽い品物である。

 

 「これはいいですね!ありがとうございます!」

 そう俺が言うとおやっさんは誇らしげに頷いた。

 「それでだな、いろいろな機能も搭載しているんだ…」

 「大変だ!」

 おやっさんの声をかき消すようにドアが音をたて大声で男が飛び込んできた。水を差された形になったおやっさんは少し、むう…という表情をしているがそれどころでは無いという調子であった。甲冑を身に纏っている所を見ると衛兵と思われる。

 

 「魔物がここに侵入してきている!じょじょにこっちに向かってきているから避難してくれ!」

 「なっ!」

 どえらい事になった様だ。まさか王都に魔物が来るとは。ドラウィスの言っていたことが現実になってしまっている。早くにげなくては。

 

 「おやっさん!早く逃げましょう!」

 「っ!?」

 


 ドォォォォン!!バキバキ…




 とんでもない音が辺りに響き渡る。まるで近くで爆弾でも爆発したのでは無いかという位の音だった。間違い無く街の建物が壊れた音だった。鼓膜が破れそうだ…

 「坊主!?」

 いったいどうなってるんだ!?早く確かめてみなきゃならねえ!!おやっさんは何か驚いているが、後回しにしよう!









評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ