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 お題 NURO回線

作者: 佐藤 佑 


 「回線はNUROだってさ」


 彼女はそういいながら剣を振るう。

 

 リポップするモンスターの効果音を聞きながら、経験値のファンファーレがなる。


 この世界から出られなくなって十年以上が経った。

 

 ありきたりなバーチャルリアリティを宣伝文句に始まったこのファンタジー世界は、ありきたりにログアウト不能になっている。


 それでも、僕たちは懸命に生きた。


 高レベルのモンスターからは逃げ、安息の場所を求めて、ここにたどり着いた者たちが次第に集まっていきそうして小さな集落から徐々に町になっていった。


 束の間の平穏が過ぎていき、それに幸せを感じていた。


 ――それなのに、どうして


 「おい聞いたか、またラグでだれか死んだらしいぞ」


 町の男がそういうのが聞こえる。


 原因は回線だ。


 NURO光は最近になってから、ゴールデンタイムで非常に回線が悪くなっている。


 このサーバーも過去には最先端だったNURO光を導入していた。


 「だからってこんなのってねぇだろう……」


 パケットロスで誰かが死ぬ。


 ファンタジーの世界で、現実の問題で、どうしてこんな事が、こんな残酷な事が起きてしまうのだ。


 「まぁ、硬いこと気にしないでいいじゃん! 嘆いたって現状は何も変わらないんだよ!」


 彼女は、そう言って笑う。


 僕はその笑顔にいつも救われている。


 生まれて初めて、この世界に来て初めて好きになった人だ。


 「でも、だからってこれはあんまりだろう」


 僕は涙を流す。


 それすらもラグくなっている。


 ――ああ、きっと誰も信じてくれないだろう。


 彼女が既にモンスターに殺されているなんて。


 パケットがロスしているから、死亡判定がないなんて。


 ゴールデンタイム以外は、彼女は動かない。


 動いてくれない。


 彼女は既に居なくて


 でも、今だけは話せている。


 NURO光を恨んでいる。


 NURO光に救いを求めている。


 だから、どうか


 回線がずっとこのままでありますように


 途切れた彼女とそのままつないでくれますように

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