4.パーティ
「もう〜先にそれを言って下さいよ〜!!」
少し落ち着きを取り戻したアンジェさんがそう言った。
「ごめんなさい。言おうと思ってたんだけどアンジェさんがケオさんと言い争ってたから……」
「あんな人相手にしてた時間がもったいなかったです。言い争うよりも早くサンデルさんの方を知りたかったです」
「いやあ。あの状況で言えませんってー。」
「まあしょうがないです。ちょっとケオさんの怒りと混ざっちゃってたのもあるので許します。それでどうして急にギルドを辞めるなんて言ったんですか。……あ、もしかして私がさっき手紙に何か書いてあったとかですか!」
「そうなんです。妹からの手紙だったんです。それで今はアルディール王国にいるって書いてあって。初めて妹の情報を手に入れたので早く行かないとなって思いまして。」
「え、妹さんから手紙が来たんですか!!やっとなんですね。ずっと何も情報も無しに頑張っていましたもんね。私もサンデルさんがギルドに入ってからずっと見つかって欲しいって思ってたんです。手がかりが見つかって本当に良かったです。」
「ありがとうございます。それで直ぐにでも出たいと思ってるのでアンジェさんにだけは言っておこうかなと。このギルドの生活はとても楽しかったです、ありがとうございました。またいつかどこかで逢ったらよろしくお願いしますね。」
そう言ってギルドから出ようとしたらアンジェさんに腕を掴まれた。
「え、1人で行くんですか?絶対危険ですよ!?パーティメンバー募集しなくて良いんですか?」
「いやだってこんなAランクパーティから抜けさせられた俺とパーティを組んでくれる人なんているわけないじゃないですか。しかもこのギルドを一緒にやめてまでして一緒に来てくれる人なんて……」
「そんなサンデルさんちょうど良い人がいますよ!しかもちょうどいまここにいます。シンティさんって言うんですけど、……いまサンデルさんの後ろにいます。」
「ってうわっ!」
後ろにいるの怖すぎだろ……全く気配がしなかったぞ。相当強いのかなこの人。
「サンダルさん!初めまして、よろしくお願いします!アルディール王国に行くんですよね!私もついて行っても良いですか?」
サラッとした綺麗な足。高い身長に小さな顔。サラッとした金色の長い髪が風に吹かれてなびいている。そして彼女はその細身の体型にそぐわないほど大きな大剣を身につけていた。
「うん。この人だったらとても強そうだ。」
「え!じゃあついて行って良いってことですか!?」
心の声が漏れていたっぽい。実際こんなに強そうな人だったらものすごく安心なんだけど、本当に一緒に来てくれるのかな。
「本当に一緒に来てくれるの?このギルドもやめないといけないんだよ?」
「はい!大丈夫です!一緒についていきます!」
そう彼女は即答した。
「じゃあ大丈夫そうですか?私からしてもシンティさんがいれば安心して任せられるのですけど。」
「あ、はい。俺からしてもこんな強そうで可愛らしい方と一緒に行けるならありがたい限りです。」
そう言うとシンティさんが顔を背けてしまった。
なんか俺嫌がること言っちゃったかな。
「おお、よかったです。じゃあ2人とも頑張って行って下さいね!私はいつでもここにいますから何かあったら戻ってきて下さいね!」
アンジェさんは少し悲しいようなでもやり切ったような顔をしながら手を振っていた。
そうして俺たち2人はパーティになった。
「じゃあもう今から旅をスタートしたいんだけど、少し行きたいところあるんだよね。シンティさんも一緒に行く?」
「あ、はい!行きます行きます!」
そう言ったシンティさんの頬は少し赤く染まっていた。
◇◆◇
俺たちはギルドから出た後歩いて武器屋に向かった。
「よおサンデル、いらっしゃい。そちらのお嬢さんは同じパーティの人かい?」
武器屋に入るといつものおっさんが話しかけてきた。
「そうなんです。今さっきパーティを組んだシンティさんです。」
「お、おはようございます。」
「お嬢ちゃん、そんなに固くならなくていいよ!俺の店は高級店でもなんでもないからさ。それで今日はなんのようだい?彼女の武器を見立てるとかだと思ったんだがいい大剣を持ってるし新しい武器はいらないと思うんだが。」
「今日は俺の武器を買いにきたんだよ。なんか俺に合いそうな武器は売ってないか?」
「おいサンダル、前使ってたあの剣はどうしたんだ?おれが研いでたやつあったろ?」
「あー。あれは取られちまった。」
「誰にだよ。」
「ケオだよ。昨日パーティから辞めさせられちゃってさ、俺たちの武器だからって言って取られちまった。」
「あいつ何してんだよ!あれはサンダルだから使えただけで他のやつには使えない代物だったのに!」
机をバンッと叩いて怒りを表わにした。
「まあそんなことで俺の武器が無くなっちゃったから何か見繕ってくれ。」
「くそ、本当にケオのやつめ、今度ウチ来たら怒ってやる。でもよ、あの武器に匹敵するような武器なんてうちじゃあないぞ?それ以上に似たような形の剣だと2つぐらいランクが落ちちゃうけどいいか?」
「まあ、構わないよ。今回の旅は彼女がいるからね。アンジェさんのお墨付きだったし期待してるよ。」
そう言うとまたシンティさんは背を向けてしまった。
そして後ろを向いたまま言った。
「が、頑張ります。」
「ってことだから最低限使えるような武器でいいよ。」
そう言うと武器屋のおじさんは店中を見回して、一本の剣を持ってきた。
「あの剣よりは全然だけどそれでも結構使えるやつを選んだぜ。サンダルには死んでもらいたくないからさ。ああ、後この剣は魔法の効果を少し強めるって効果がついてるから少し魔法の威力が上がるかもしれんな。一応知っといてくれ。」
「ありがとう、おっさん。いつも感謝してるぜ。」
そう言って俺は剣のお金を払って店を出た。
「シンティさん、出来るだけ早く行きたいから馬車使って行こうと思ってるんだけどそれでいい?」
「全然大丈夫ですよ〜」
そうして俺たちは馬車乗り場の方まで歩いていった。