3.手紙の意味
次俺が目を覚ましたのは2日後だった。
2日間丸々寝ていた俺はすっかりお酒が抜けて元気な状態になっていた。
時計を見ると時間は朝8時。丸2日しっかり寝ていたのかちょうどいい時間に起きれたらしい。一杯水を飲んだら食堂で朝食を摂るかと思い寝ぼけたままコップに水を入れる。その時俺は寝起きだったのかはわからないが、足がもつれてしまってカップを落としてしまった。コップに入っていた水がこぼれる。なんと最悪なことにこぼした場所には手紙があったのだ。俺はやばいやばいと思い早く乾かそうと手紙をとった瞬間文字が浮かび上がってきた。
「兄さんならこれを見つけてくれらと思っていました。お願いします、助けて下さい。私はアルディール王国の幻惑の森の奥の村から出ることができないのです。私の希望は兄さんだけです。」
寝ぼけていた俺の頭はまだ理解はできていなかった。だから目を覚ますために頭から水をかぶった。
しっかりと目を覚ました俺はやっと少しずつ理解してきた。
ここに書いてあるのが本当なら昨日みた手紙の内容は本当に伝えたいことじゃなかったことになる。探さないで、って書いてあったのは誰かに強制的に書かされたのかもしれない。ルーチェを探させないようにする布石のために送ってきたのではないか。
この手紙には水魔法の施しを手紙にしていた。これがルーチェがこっそりやっていたことだとしたら。浮き上がってきた文字が本当に伝えたいことだったら。
ルーチェは俺だけが気づいてくれると信じてくれた。俺はそう思っていてくれたと信じたい。
ルーチェが攫われた時から俺の時間は止まってしまっていた。妹がいなくなった世界なんてクソだ。そう思っていた。ずっとルーチェのことを探していたのに何も手がかりが見つからなくて、そんな時にパーティから追放されて。
もう気持ちが参って諦めようとしていた俺がいた。でも俺のことを心配してくれる人がいる。今さっきのみんなが扉の前にいたことも含めてそのことがわかった。そして、妹が俺のことを信じて待っていてくれる。俺のことを期待している。
そう思っただけで俺はもう諦めずに探すことができる。兄として妹を絶対に見つけてやる。何が起こってもルーチェが苦しんでいる限り絶対に探し出す。俺はやっと決心することができた。
そう決心した俺は早く行動に移そうと決めた。まずはここのギルドを一回やめさせてもらってアルディール王国のギルドの入ろう。だからまずはアンジェさんに言わないと……と考えていたら下の方が騒がしいことに気づいた。
何か大変なことが起きたのか!と思って下に降りてみるとそこには怒っていたケオの姿があった。
「だからなんで俺たちのパーティがBランクになってるんだよ!!お前ら不正してるのか。俺のことが嫌いだからとかそんな理由でやってるんだろ。早くAランクに戻せよ!!」
「そう言われましても……Aランクパーティの炎に探求者は失敗を二度されたのでギルドの規定によりBランクに落としました。嫌い嫌いじゃないとかそういうのは関係ありません。」
「たった二回だけだぞ!!そんなミスだけで落とすなんて横暴だ!!おかしいに決まってるだろ!!今ここにいるやつもなんか言ってくれよ!!」
「たった二回ですか?冒険のこと舐めてるんですか?あなたAランクパーティのパーティリーダーですよね。失敗するということがどれだけ危険なことなのかわかってないんですか。わかってないから失敗しているんですよねそうですよね。冒険者が1番大切にしなきゃいけないことはなんだと思いますか。地位?名声?強さ?全部違います。一番大事なのは命です。何かをしても何があっても命がなかったら何かをすることはできません。パーティリーダーはパーティ人ののことを考えて自分達に見合う、成功できる依頼をしなければいけないんです。それが最低限度のリーダーとしての務めでしょう。それがなんですか、たった二回の失敗だって。その失敗で人が死んだらどう責任取るんですか。そういうことも考えながら冒険者は動かないといけないのです。ギルドにはあなたみたいなパーティのレベルに合ってない依頼をして死んでしまう人を減らすためにパーティのランク制度があるのです。だから炎の探求者をBランクに落として危険な依頼に行かないようにさせるのです。分かりましたか?」
「はぁ?何言ってんだよ大声で気持ち悪いな。そんなこと言うんだったらもうこんなギルドやめてやる!!こんなギルド消えちまえばいい!!」
ケオは怒りに任せて叫んで、そのままパーティメンバーを連れてギルドから出ていった。
俺は今の言い争いを見て少し心配になってアンジェさんに話しかけた。
「アンジェさん良かったんですか?ケオたちいなくなっちゃいましたけど……あんなでもケオは強かったとは思うんです。うちのギルドはAランクパーティは少ないじゃないですか。戦力が少し下がっちゃうのかなあなんて。」
「あ〜サンデルさんおはようございます。
そうですね。ケオさんの強さは私も認めていましたしギルドが戦力的に弱くなってしまったのは少しありますね。でもいいんですあんな人ここにいられても困ります。命を安全にしない、ギルドの雰囲気を悪くする。そんな人私のギルドには要りません。」
「あ〜まあそうですよね……」
少し前まで同じパーティだったからか、少し悲しいような可哀想なような気がしてしまう。パーティを辞めさせられた時あんなことを言われたけどそれでもまだ仲間意識があるのかもしれない。そんなふうに考えていた。
「サンデルさん。深く考えすぎないほうがいいですよ。サンデルさんは優しすぎるからケオさんのこと心配しているのかもしれないですけど、普通だったらケオさんがいなくなって精々するもんです。だから気にしなくていいんですよ。」
アンジェさんはまた俺の心を読んでいるかのように心配してくれた。
「分かった。あんまり気にしないように努力するよ。」
「そうしてください!」
そう言って俺は心配させないようにそう言ったのだった。
「あ、そういえば言わないといけないんですけど、ちょっとだけいいですか?」
「全然時間はあるので大丈夫ですよ〜。それでなんですか話って。」
「ちょっと言いづらいんですけど、ここのギルドやめようと思うんです。」
「えぇぇぇぇぇぇえーーーーーー!!!!」
怒っていた時よりも大きな今日一番の声が出たアンジェさんであった。