1.追放
「サンデルさん。そういう時もありますよ。どんまいです。」
「あいつらサンデルさんの魅力わかってないんすよ! 気にしなくていいんすからね!!」
「サンデル〜〜お前災難だったなあ〜。まああのパーティから抜けれてよかったんじゃない? お金全然もらえてないそうだったし。」
「サンデル先輩やっとパーティ辞めたんですか!! あんなパーティ抜けるべきでしたよ!!」
気分を変えようと一人で酒を飲もうと思ってギルドから出ようとしたその時俺はたくさんの人から引き留められていた。
いつもは誰からも話しかけられずみんな一歩引いた場所から俺を見ていた。少し怯えているような憐れんでいるようなそんな目をずっと見ていた。
俺はギルドでは嫌われてる。誰しもこの状況ではそう思うのが普通だろう。
だから誰からも話しかけられなかった俺が、たくさんの人から話しかけられてるというのは異常なのだ。起こることのないあり得ないことである。
ほんの少し前のことが無かったら。
✳︎
洞窟に現れたゴブリンキングの駆除という依頼をいつも通りこなしていた俺たちパーティがギルドに戻ってきて報酬をもらった時それは起きた。
「サンデル。今日でお前はこのパーティから抜けてもらう。」
俺たちのパーティーリーダーのケオは唐突にそう言った。
「え、な、なんで?」
「お前ぇ。それ本気で言ってるのか?自分でパーティで行動してる時のこと考えればわかるだろ。」
わかるだろって言われても……このパーティは炎の探求者と呼ばれていてAランクの強いパーティだ。みんなよりは強く無い。なんでこのパーティに入ってるかと考えるてもラッキーだったとしか言えない。俺は簡単な依頼を多くしていたが、失敗したことは一度もなかった。そうだったから少しは受付のお姉さんのアンジェさんには好印象だったのかもしれない。ケオがパーティメンバーを募集していた時にアンジェさんが俺のことを推薦してくれた。
俺は戦闘力で活躍は出来ないからどうしたらみんなの役に立てるだろうかと思っていろいろしてきた。
掃除や洗濯のような雑用はもちろん、報酬をまとめたりみんなの分配についても考えた。ケオは少しキレやすい性格だから他の人に当たらないようよう、でも機嫌が悪くならないように頑張って宥めていた。これは誰にも言ってないけど、戦闘中こっそり支援魔法を掛けたりもしていた。俺なりに役に立とうと努力はしてきたんだけど……
「その顔じゃあ分かってないようだな。教えてやるよ。お前がやってたのはただの雑用だけ。誰でもかーんたんにできるもの。まあサンデルは頑張ってたからしっかり役に立ってると思ってたかもしれないけど、分かって無さそうだから教えてやるよ。お前は普通のことしかできない役立たずだってことをな。」
そうだったのか……俺の頑張りは無意味だったってことなのか。努力は全部無駄だったのか。そう思ったら目には涙が溜まっていた。
「俺たちはお前みたいなのがいたせいで出来なかった依頼が山ほどあるからもう行くわ。」
そう言ってギルドから出ていった。と思ったら
「あ、そうだった。お前が使ってる剣俺たちのパーティのものだから返してもらうわ。」
そう言って俺の腰に刺していた赤龍の剣を奪い取られた。
「じゃあ役立たずのサンデルくん頑張って。」
そう言って今度は本当にギルドから出ていった。
✳︎
そんなことがあって俺は気分が良くなかった。こんな時は酒しかないと思い居酒屋に行こうとした時におかしなことが起きたのだった。
色んな人が話しかけてくる。普段じゃああり得ないことだった。誰からも話しかけられない、そして変な目で見られる。それが普通だった俺からしたら異常事態だった。
なんでこんなことが起きているのかと考えても一つしか思いつかない。
でもどうしてだろう。俺はずっと誰からも無視されてて、それなのになんでパーティから抜けただけでこんな風になるんだ?
そう思っていたらカウンターにいたアンジェさんが心を読んでいたかのように教えてくれた。
「サンダルさんには絶対に話しかけるなって言われてたんですよ。ケオさんがサンダルさんがいない時に言っていてたんです。Aランクパーティのパーティリーダーが言うから誰も逆らえなかったんです。」
「そうだったんですね。ケオはなんでそんなことをしたんでしょうか。」
「まあ私が思うにただ嫌がらせだと思います。でもギルドからしたら直接危害を与えてるわけではなく、手出しが出来なくてずっと心配してたんです。」
「そうだったんですね。ありがとうございます。」
そう言うと一人の冒険者がこう言った。
「俺、最初ケオさんが無視しろって言ってたときサンダルさんやばい人なのかなあって思ってたんです。Aパーティのリーダーが言ってる方が正しいってそう思ってたんです。でもいつもギルドで見てたら雑用もお金の管理もしていてサンダルさんってもしかして普通にいい人じゃないのか?って思ってたんです。だからなんで無視しないといけなんだろうって疑問に思ってたんです。
今日のケオさんを見て確信したんです。気づいたんです。あれはケオさんが悪いだけでサンダルさんはいい人だったんだ!って。だからよかったです、あのパーティから抜けることができて。」
そう言われて俺はまた目に涙が溜まっていた。
でも今回は悲しさじゃなくて嬉しさの涙だった。