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第9話

 そんなことを本多正信は考えたのだが、その後、松平元康は武田(上里)和子から渡された資料を基にして、主に2本の内陸部探査、植民地拡大活動の路を、周囲の面々と立案した。

 一つが史実でのカリフォルニア・トレイルであり、もう一つが史実ではサザンパシフィック鉄道が通った路だった。


 カリフォルニア・トレイルの方は、オレゴン・トレイルと一部が同じ路を使っており、それによって探査が減らせるという利益があると思われた。

(和子は自分の手紙の中で、オレゴン・トレイルの探査を武田家が行っていることを、夫の義信の承諾を得た上で、元康に内報していたのだ)


 その一方で、サザンパシフィック鉄道が通った路は、速やかにカリブ海へ到達することができるが、下手をすると既にこの一帯にはスペイン人が徐々に植民地を広げつつあることから、この経路の探査を行った場合、スペインとすぐに紛争を生じるかもしれぬ、と一部の者から懸念の声が出されたが。

「どうせ早いか、遅いかの違いだ。何れはスペインと日本は戦争になるのだ」

 との意見の方が強く、元康もそれに同意したために、こちらの路の探査も行われることになった。


 そして、酒井忠次がサザンパシフィック鉄道が通った路の探査の指揮を執り、石川数正がカリフォルニア・トレイルの路の探査の指揮を執ることになった。

 とはいえ、時期が時期である。

 酒井忠次はまだしも、石川数正の方の探査は、晩秋から行ったので、そう進展することは無く、結果的に松平元康が主導する内陸部の探査は、サザンパシフィック鉄道が通った路が主にこの年はならざるを得ないということになった。


 また、その一方で元康は、カリフォルニア一帯にいる本願寺の僧侶達に、法華宗徒の動きを知らせた。

 この辺り、和子が動いても良かっただろうが、和子はオレゴンにいる身であり、また、本願寺顕如の猶姉とはいえ、本願寺の僧侶に公式に依頼、命令できる立場という訳ではない。

 それに猶姉という半ば曖昧な立場でもあるだけに、北米大陸入植当初からずっと協力体制を築いている元康を介して、本願寺の僧侶達に和子は情報を知らせることにしたのだ。


 元康からの情報を得たカリフォルニア一帯にいる本願寺の僧侶達は色めき立った。

 それこそ松平家と水野家が主導して行った北米大陸の日本植民地開拓段階から、(当時の西三河には本願寺門徒が多数いたという事情もあって)本願寺の僧侶は同行していた。

 そのために本願寺の僧侶は、その頃から北米大陸の原住民に対して布教活動を行ってはいたが、ある意味、片手間仕事と言って良く、そんなに熱心に原住民に対しては布教活動を行ってはおらず、主に日本人に対する布教活動に勤しんでいたと言っても過言では無かった。


 だが、犬猿の仲と言える法華宗の僧侶が北米に赴いて、北米の原住民に対する布教活動を行おうとしているのなら、自分達も北米の原住民に対して、積極的に真宗の教え、本願寺の教えを布教して、改宗させるべきだという声が、北米にいる本願寺の僧侶の間で高まることになったのだ。


 それを後押しするかのように、相前後して日本にいる本願寺顕如からは、法華宗徒の北米移住の情報を得たことから、それに対応できるように、下間氏の面々を中心とする坊官を日本から北米に派遣するという連絡が北米にいる本願寺の僧侶に届いたのだ。


 ことここに至っては、最早、誰も引き返す、冷静になる方向に考えが進むことは無かった。

 北米にいる本願寺の僧侶達は、日本から来る坊官と協力して、北米の原住民に対する布教活動等に勤しもう、それによって法華宗に対抗しよう、という方向になだれ込んでしまった。

 ここに本願寺も植民活動に熱心になった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 浄土真宗の布教は上手くいくと思います。 元々「ただ南無阿弥陀仏と唱えるだけで死後極楽浄土に行ける」という教え さらに神仏混合思想により地元の宗教も否定しません。 具体的には「インディアンの…
2020/12/04 20:20 続々・景気不景気
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