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第10話

 そういったことが、カリフォルニアでは起こる一方で、オレゴンの方ではオレゴン・トレイルの探査活動が順調に進んでいた。

 これは皇軍の新たな各種資料の提供が、武田(上里)和子から父の上里松一を介してあったことや、これまでの各種の皇軍による技術提供や技術習得があったのが一因だった。

 例えば。


「現在地は、どの辺りになる」

「皇軍情報によれば、スネーク河沿いのジャクソン市という市のようです。もっとも」

 夜営地で寛ぎつつ、兄の真田信綱の問いに、真田昌輝は含み笑いをしながら言葉を継いだ。

「市と皇軍の世界では名付けられているようですが、ほぼ人の気配はありませんな」

「確かにな。スネーク河沿いに進んでいて、自分達が渡されている地図とそう間違っていない場所なのは、天測からそうは間違いないとは思うのだがな。この時代には人が住んでいなかったようだな」

 真田信綱も弟の言葉に苦笑いした。


 内陸部の探査活動を行うに際して、言うまでもなく地図を作ることは重要である。

 そして、地図を作りながら、それこそ正確な現在地を定めて行かねばならない。

 地形図を作り、道標になるものを確認し、場合によっては道標を作りつつ、現在地を定めていって探査活動を進めていくことになるが。

 その際に、真田信綱が頼りにしたのが、皇軍がもたらした天測による現在地確認だった。

 

 皇軍来訪から10年余りが過ぎた現在、天測航法は日本において、かなりの程度に普及しており、例えば、海軍兵学校ではそれを習得することが卒業試験の必修科目の一つになっている程だ。

 そして、ある程度、熟達した日本人の船乗りなら、天測航法は当然の知識になっている。

 更に言えば、天測航法を習得することによって、数キロの誤差で現在地を把握することができる。


 勿論、天測が余りできなくても探査活動を行うことはできなくはないが、そうは言っても、見ず知らずの土地に踏み込んでいくのだ。

 そして、地形図を作り、道標を確認して進んでいき、出発地に引き返すことになるのだが。

 その過程で道に迷ってしまったら。

 その場合は、速やかに現在地を確認して、遭難しないように努めざるを得ない。

 そうした時に精確な天測が出来れば、比較的だが容易に遭難状態を脱却することができる。


 こうして、様々な皇軍知識、技術の支援があったことから、1558年に真田信綱を主な指揮官として行われた武田家の内陸部の探査活動は、かなりの成果を挙げることに成功した。

 また、この探査活動において、皇軍がこの世界にもたらした地図が、少なくとも北米においてはかなりの程度で信用できそうだ、ということも分かった。

 こうしたことから、オレゴン・トレイルの調査は順調に進み、その半ば波及効果になるが、その探査活動を知らされた松平家を主とするカリフォルニア・トレイル等の探査も、少なからず時期的には遅れたものになるが順調に行われたのだ。


 そのために小規模(とはいえ、2000人近い規模にはなったが)での先遣隊を派遣しての半ば見切り発車的なミシシッピ川流域を目指しての法華宗不受不施派の植民地開拓活動が、1559年春に試みられることになった。

 とはいえ、日本での農民生活の経験はあるとはいえ、北米大陸での農民生活は初めてだらけの農業を行うことにならざるを得ない。

 そのために現地に到着した後、農地の開拓等が完了し、順調に牧畜農耕生活が送れるようになるまでの間については、暫く狩猟採集民族的な生活を送ることさえも想定せざるを得なかった。


 そして、こういった農地の開拓等をして、新たな植民地の拠点となる根拠地を築いた後、更に人を呼び寄せて、更に農地の開拓等をして植民地の拡大を図ろうとしていた。

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