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うちの神様の間違った転移でおおごとに! 女神の使いにされて、僕を頼られても困るのだが……。  作者: とらむらさき


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96話 奥様委員会

 メイドさんがテントに入ってきて、食事の用意が出来たと呼びに来てくれた。

 協議も終わったので、ヘルマンさんたちを食事に誘って、テントの外へと出ると、テーブルがいくつか繋げられ、その上に料理が並べられていた。

 人数を間違えたのかな?

 ちょっと、席が多い気がする。


 料理が並べられたテーブルのそばに行くと、ヘルマンさんの隣には、奥さんらしき女性が寄り添っていた。


 「紹介がまだでしたな。私の妻のカティです」


 「カティ・フォン・ベーレンドルフと申します。お見知りおきを」


 彼が僕に奥さんを紹介すると、彼女は名前を名乗り、恭しく頭を下げた。

 やっぱり奥さんだった。

 彼女は茶色の髪を束ねてふっくらした人の好さそうなおばさんで、好感の持てそうな感じがする。


 「フーカ・モリ・ユナハです。よろしくお願いします」


 僕も名前を名乗り、軽く頭を下げた。


 カティさんは、僕にニコッと笑顔を向けると、バリケードのある方向に向かって、大きく手を振った。

 すると、ぞろぞろと女性陣がこちらへ向かってくる。

 そして、彼女たち、うちの兵士が困り顔で付き添っていた。

 どの世界でも、おばさんは強いのかもしれない。


 彼女たちがそばまで来ると、付き添っていた兵士が、オドオドとした表情を浮かべて、僕の顔色を窺っていたので、「問題ないよ。持ち場に戻っていいよ」と声を掛けると、ホッとした様子でバリケードのほうへと立ち去って行った。


 「彼女たちは、我が国の代表たちの妻です」


 カティさんが、一〇人の奥さんたちを紹介してくれる。

 僕は、彼女たちに頭を下げた。


 「簡単な物ですが、どうぞ、ご主人たちと料理を楽しんで下さい」


 僕の言葉に、彼女たちは嬉しそうに微笑む。


 一方で、ヘルマンさんを含め旦那さんたちが、そわそわと落ち着きをなくしていた。

 うちの両親も祖父母も女性が強かった。

 こっちの世界でも、そういうところは変わらないのかもしれない。




 カティさんたち奥様軍団は、テーブルには向かわず、マイさんとイツキさんの二人のところへと顔を出し、挨拶をかわす。

 そして、彼女たちは、二人と昔ながらの友人のように、久々の再開を喜んだり、仲良く話し出したりを始めていた。

 敵国同士だったのに、彼女たちは仲が良かったんだ。

 何だか不思議な光景を見ている感じがする。


 僕と一緒に、その光景を見ていたヘルマンさんたちが、縮み上がっているようにも見えるのは、気のせいだろうか?

 とっても嫌な予感がする。


 すると、ヘルマンさんが何かを言いたげに、僕の顔を見つめてくる。


 「えーと、どうしました?」


 「これは、おせっかいかもしれませんが、フーカ陛下は、奥方が九人もいるので気をつけて下さい」


 彼から、小声で忠告じみた言葉を掛けられた。

 どういう意味なのかと、他の代表たちと目お合わせると、彼らは、奥さんたちの目に留まらないように、僕へ頷いてみせる。

 何故だろう? とっても怖いんだけど……。




 マイさん、イツキさん、カティさんの三人を中心とした奥様軍団は、いつの間にか、シャルたち、僕の奥さんの全員を呼び寄せていた。

 奥様軍団とシャルたちが話しを始めてしばらくすると、ルビーさんとネーヴェさんも呼ばれ、他の竜族の女性陣も手招きを受ける。

 その後、アンさんとオルガさんが、何やら招集をかけ出すと、メイドさんたちと特戦群の女性たちが、その輪に加わった。

 すると、レイリアまでもが招集をかけ出し、女性騎士たちも集まってしまう。

 そして、女性陣だけが一ヶ所に集まり、井戸端会議のようなものが始まってしまった。

 何? この光景?


 「とうとう、始まってしまいましたな」


 ん? とうとう? 始まった? 何のこと?

 僕は何を言われているのか分からなくて、ヘルマンさんの方を振り向くと、彼の顔色が悪くなっていた。

 そして、彼は僕と目を合わせる。


 「陛下……。ご愁傷様です……」


 いやいや、ちょっと待って! 勝手に哀れまれてしまった。


 「ヘルマンさん? まったく、意味が分からないんですけど……」


 「陛下、この世には知らないほうが良いこともあります」


 彼の言葉に、代表の皆さんも黙って頷き、僕を哀れむように見つめる。

 知らないほうが良いって、教えてもらえないと意味が分からないし、それに、何故か皆の視線が、何かを物語っていて怖すぎるよ……。


 「ヘルマンさん、意味も分からずに哀れまれても困るんですけど……」


 「そんなに知りたいのですか? 後悔はしませんか?」


 えー! 何、その恐怖をあおるセリフ……。

 僕の中で、知りたいという思いと知りたくないという思いが葛藤を始める。


 「うーん。えーと……。教えて下さい」


 「分かりました。そこまで覚悟を決めているのなら話しましょう」


 ちょっと待って! 覚悟って、そんなたいそうなものは決めてないんですけど……。


 「カティたちは、シャルティナ王妃たちを、ある組織へ勧誘しているのです」


 あれー? ヘルマンさんが話し始めちゃった……。って、ある組織への勧誘って……今になって聞いちゃいけない気がしてきた……。


 「彼女たちの所属する組織は、古くから存在する『奥様委員会』と呼ばれる秘密結社です」


 奥様委員会? 秘密結社? ……聞いちゃった。

 古くから存在するなら、ヘルゲさんとシリウスも知っているのでは?

 僕は二人を見るが、彼らは初めて聞かされる組織に驚いていた。

 竜族のイーロさんたちなら、長く生きているから知っているはずだ。

 彼らに目を向けると、揃って、『奥様委員会』と呼ばれる存在に驚いていた。

 いくら秘密結社だからって、秘密すぎるでしょう……。


 もう、全てをヘルマンさんに教えてもらうしかない。


 「奥様委員会って、どんな組織なんですか?」


 「「「「「……」」」」」


 ヘルマンさんたちは、僕の質問に、こちらを見つめるだけだった。

 何故、誰も答えてくれない……。


 「そのー、ほとんど分かっていないんです。ただ、昔、各聖王国が中心となって世界を率いていた時代から存在しており、当時の権力者たち、特に聖王と呼ばれた者たちは男性であったため、彼らの妻たちが旦那が好き勝手なことをしないように監視する目的で結成されたそうです。そのため、女性のみが参加できる組織で、国籍も身分も関係なく女性、(おも)に夫に不満のある夫人であれば加入できるという、たちの悪い組織だったということだけが分かっております」


 夫を監視する組織って……。というか、かなり歴史のある組織のようだけど、たちが悪いって、どういことだろう?


 「えーと、何でたちが悪いの?」


 「国籍も身分も関係ないので、世界中に会員がおり、ネットワークが世界規模で構築されているのです。つまり、夫が何を画策しても、妻の理解を得られなければ、その情報が世界中に駄々洩れになってしまうのです。夫は情報が漏れていることも知らずに、画策に奮闘しているという滑稽(こっけい)な状況が出来上がるのです」


 それは、確かにたちが悪い……。


 しかし、奥様委員会が何をしているどんな組織なのかについては、全然、話してくれない。


 「規模がでかくて昔からあるのと、たちが悪そうなことは分かったけど、奥様委員会がどんな組織なのかを、少しも話してもらっていないんだけど?」


 僕の質問に、ヘルマンさんが困った表情を浮かべた。


 「そのー、いくら調べても、どんな組織なのかが分からないのです。それも、たちの悪いところでして……」


 「えーと、少しも分かっていないの?」


 「はい。お恥ずかしいばかりです。分かっているのは、『奥様委員会』という組織名と歴史があることくらいです。過去から現在まで、組織の内情を知っている男性は存在しません」


 何、その組織、怖すぎるんですけど……。

 ん? あれ? 今、シャルたちは、その組織に入るように勧誘されてるんだよね……。

 何とも言えぬ恐怖心が僕を襲ってくる。


 「ヘルマンさん、何でもいいから他にも知っていることはある?」


 僕の質問に、彼はあごに手を当てて、何かを思い出そうとする。


 「一部の会員の名前でしたら、分かりますが」


 「お願いします」


 ちょっとでも奥様委員会の情報が欲しい僕の必死さに、彼は思い出した名前を順にあげて行ってくれた。


 カティさん、マイさん、イツキさん、カーディア議会国の代表の奥さんたち、これは見れば分かる。

 エルさん、エイヤさん……エルさんが入っているなら、ミリヤさんのお母さんが入っていても仕方がない。

 カエノお婆ちゃん、ルシンダさん……イーリスさんのお母さんも? っていうかカエノお婆ちゃんまで……。

 そして、ブレンダさん……なっ、オルガさんのお母さんもなの……。

 他にもレイリアやアンさん、ケイトのお母さんの名前も出てくる。

 僕は会員となっている人物の名を聞いて、驚愕するしかなかった。

 一方で、ヘルゲさんは、妻の名前が出たことで動揺し、シリウスは母親と婚約者の名前が出たことに動揺していた。


 ヘルマンさんが記憶にある会員の名前を言い終えた時には、その場に居合わせた男性陣は、動揺している者であふれていた。

 護衛のために、そばにいた兵士までもが、オロオロとしている。


 僕は、さからっちゃいけないメンバーで構成されているのでは? と本能的に感じとった。

 ヤバい、たちが悪いどころではない、聞くんじゃなかった……。


 しかし、ここまで知ってしまったら、聞けることは、全て聞いておこう。


 「ヘルマンさん、奥様委員会が、そこまでの組織なら、密偵を放つなりして調べたりした人もいるんじゃないの?」


 「確かにいます。かく言う私も、調査のために密偵を放ちました」


 「それで、どうなったの?」


 「男性の密偵は、しばらくして、精神を病んで帰ってきました。すぐに治療を受けさせ、回復はしたのですが、調査内容は覚えていないのか、口外できないのか、何も話しませんでした。そこで、女性の密偵を送ったのですが、おそらく、取り込まれたのでしょう。何も怪しいところはないと言う報告書があがってきただけでした」


 「そ、そうなんだ……」


 「はい、男性ではダメなので、数度、女性の密偵、特に優秀な女性を送ったのですが、全て取り込まれてしまい、『組織に優秀な人材をありがとう』と手紙が送られてきて、そこには一部の会員の名前が書かれていました。お情けで情報を開示されたのです。そして、そこにカティの名もあったことで、それ以降は、何もしていません。私のしたことは、逆効果だったことを思い知らされました」


 彼の話しを聞き終えた僕は、頭にエルさんとマイさんが浮かんできて離れない。

 ヘルマンさんの密偵の件には、絶対、あの二人が絡んでいる。

 僕には、何故か確信があった。

 そして、たちが悪いどころの話しではないと、僕の中の何かが警鐘を鳴らしていたのだった。




 僕たちが奥様委員会のことで、やきもきしていた間に、女性陣の井戸端会議は終わり、皆がこちらへと戻って来た。


 そして、席に着くと、料理の並べられた席が、途中から現れた奥さんたちの分まで、すでに用意されていたことに気付く。

 何故? どういう事? と僕が不思議に思いながら席を見つめていると、ヘルマンさんが眉間に皺をよせ、声を潜めて、あることを僕に教えてくれる。


 「こういったことが常に起こるから怖いんです」


 こ、これは怖すぎるかも……。


 こうなったら、シャルたちの誰かに聞くしかない。


 「シャル、奥様委員会に勧誘されてたの?」


 「はい、凄い組織ですよ。フーカさんも知っていたんですか?」


 「さっき、聞いたんだけど。それで、入会するの?」


 「はい、すぐにではないですが、私も皆も入会しますよ」


 彼女はニッコリと微笑むが、僕は、その笑顔を恐怖に感じる。


 「そ、そう。それで、どういった組織なの?」


 「凄い組織です」


 「それじゃ、分からないんだけど」


 「うーん。フーカさんの役に立ってくれると思います。それ以上は秘密です」


 彼女は、再び、ニッコリと微笑んだ。

 これ以上は無理か……。ならば、他の人に聞こう。

 ここは頼れるミリヤさんさんかアンさんかな?

 僕は、二人へと視線を送った。


 「「秘密です」」


 まだ何も言っていないのに、目を合わせただけで二人から断られてしまった。

 そうだ! レイリアなら隠し事が苦手そうだから、ボロを出してくれるだろう。

 僕は彼女へと視線を送る。


 「フーカ様、私を見ても無駄ですよ。私だって廃人と化したフーカ様は見たくないんですから」


 「!!!」


 想定外のボロを出してくれた。

 だが、そんなことは聞きたくなかった。

 廃人って、驚愕と恐怖で頭が混乱してくる。

 ここは少しでも情報を聞き出さないと、僕の身が危ないのでは……。


 誰か話してくれそうな人はいないかとキョロキョロすると、女性陣は目を逸らしたり顔をそむけてしまう。

 ケイトだけがこちらを向いている。

 彼女に聞こうと思ったが、怪しい笑みを浮かべているのが無性に気にかかる。

 罠にはめられそうで怖い。

 うっ、この状況は人間不信になりそう……。


 アスールさんなら……早くも料理に集中していた。

 リスのように頬張った顔をこちらに向け、両手にはサンドウィッチを持っている。

 そして、僕と目が合うと首を傾げた。


 アスールさんは除外するとして、残るはオルガさんとヒーちゃんだけだ。

 オルガさんに目を向けると、顔を赤らめて顔を押さえてしまった。

 そして、クネクネとしなを作り出す。

 彼女は何を考えているのだろう?

 いろんな意味で怖いので、彼女に聞くのはやめよう。


 残るはヒーちゃんだけだ。

 彼女に向かって、できるだけ捨てられた子犬をイメージして視線を送った。


 ピクッ。


 僕の視線に気付いたヒーちゃんが、困り顔になる。

 それでも視線を送る。


 ピクッ。ピクピク。


 彼女は僕を意識しないように頑張っている。

 僕も負けてはいられない。

 顔の前に両手をもって来て、お願いするようにウルウルとした目で彼女を見つめる。


 ピクッ。ピクピク。キョロキョロ。ソワソワ。


 彼女は動揺を隠せなくなった。


 「フー君! 卑怯です!」


 勝った!


 「ヒーちゃん、話せる範囲……僕に危害が及ばない範囲でいいから教えてよ」


 「……」


 彼女は呆れた表情を浮かべて沈黙してしまった。


 「ヒーちゃん?」


 「分かりました。でも、何となく想像ができるくらいのことしか話せません」


 「うん。それでいいよ」


 「例えるなら……。フー君の学校は共学ですよね?」


 僕はコクっと黙って頷く。


 「校内に男子生徒だけのグループと女子生徒だけのグループがあったと思います。フー君も男子生徒のグループで、女子には聞かれたりされたら困ることを話したりしてませんでしたか?」


 「うーん。半分くらいは……? いや、男友達同士で慣れてくると、八割ほどは女子に聞かれたら困るような話題だった気がする」


 「奥様委員会は、それと同じです。よく、夫が会社に行っている間に、主婦たちでファミレスとかに集まって、夫に知られたくない話題とかを話したりしている光景を見ませんでしたか? 大雑把に言うと、女子会みたいなものです」


 「そうなの……。僕たちって、クラスの女子の誰のおっぱいが一番成長したかとか、前の席の女子のブラが透けて見えてて、何色だったとか、ほとんどが、そう言ったことしか話してなかったけど、同じなの?」


 「「「「「……」」」」」


 女性陣が一斉に僕を見て、途方に暮れていた。


 「フ、フー君……。ほとんどって……。いつも、そんなくだらない話ししかしていないんですか?」


 僕は目を泳がせてから、コクリと頷く。

 思わず素直に話してしまったけど、女性に、こういった態度をとられるから、男子だけで話していると思うんだけどね……。


 「男って、バカですね」


 ケイトがぼそりとつぶやくと、女性陣の全員が頷いた。

 僕は自分だけがさらされているのに耐えられず、ヘルマンさんたちやヘルマンさんたちに視線を向ける。

 彼らは困った表情で、僕から顔を背けた。

 酷い……。


 「バカなのは、フーカ君とそのお友達だけみたいね」


 マイさんがニンマリとする。

 嫌な予感しかしない。


 「まあ、フーカ君の年頃では仕方ないわ。なんていったって、溢れ出す汁を抑制できないお年頃ですもの」


 「マイさん、言い方!」


 この人は、思春期の青少年の前で、なんてことを言い出すんだ。

 シャルたちは、僕に蔑むような目を向け、マイさんは勝ち誇ったように爆笑している。

 悔しい。


 「仕方がないから、私がほんのりと教えてあげるわ」


 マイさんは、ドヤ顔で言ってくるが、ほんのりがどれくらいなのか、さっぱり分からん。


 「奥様委員会とは」


 「とは?」


 「権力や財力を持った男どもが、酒や女、贅沢をむさぼって調子に乗っているところをどん底に落とすための世界規模の秘密結社よ! まあ、権力や財力を持てないのに、どうしようもない旦那を懲らしめることのほうが多い気もするけど、そんな感じの組織よ!」


 マイさんから教えられた奥様委員会は、男にとって、とんでもない組織だとは思うけど、どうも引っかかるような納得がいかないところがある。


 「うーん。女のところはともかく、権力や財力を持って好き勝手をやっているのって、マイさんとエルさんしか浮かばないんだけど、女性は許されるの?」


 「なっ! 何を言ってるの!? エルはそうかも知らないけど、私は違うわよ!」


 彼女は周りの女性に目を向けるが、皆は目をそらす。


 「「「「「……」」」」」


 誰も言葉を発することはなく、沈黙が続くと、マイさんは焦りだしたのか、落ち着きなくソワソワとしだした。

 そして、ポンと手を叩いて、僕を睨んでくる。

 いやいや、そんな思いついたように僕を睨まれても……。


 「フーカ君は分かっていないわね。奥様委員会は様々な方面に影響力を持っているのよ。もし、奥様委員会が動けば、フーカ君なんて、フッよ」


 彼女は、小指の先に息を吹きかけた。

 ちょっと待て! 何で僕が脅されてるの……?


 「えーと、何で、僕がフッてされなきゃならないの?」


 「最近、王様になって、調子に乗ってるから?」


 「何で疑問形? それに調子になんか乗ってない!」


 「そうですよ! フーカ様は王様になったからって、調子になんか乗ってません! 最初からこんな感じですよ!」


 ケイト? それ、なんか違う……。


 「それもそうね。じゃあ、フーカ君のフッは無しで」


 マイさんは納得したが、根本的に何か違う。

 そして、精神的にとても疲れてくる。

 そもそも、途中から話しが大きくズレてしまっている気がする。


 カティさんが僕に向かって、ニコッと微笑む。


 「フーカ陛下、気を揉まなくても大丈夫ですよ。奥様委員会はフーカ陛下の手助けはしますが、邪魔をすることはないと……」


 彼女は言葉を詰まらせて、マイさんを見る。


 「邪魔をすることは、たぶん、ないと信じたいと思います」


 断言じゃなくて、希望? 願望? そこは、しっかりと断言してもらわないと、とても不安なんですけど……。


 そして、中途半端に話しをまとめたカティさんが料理に手を出すと、僕の払拭されてない不安をよそに、女性陣は食事を始めだしてしまった。

 彼女たちが食事を始めるのを確かめてから、男性陣も食事も始める。


 ニコニコと会話をしながら食事を楽しむ女性陣と、黙々と緊張気味で食事をする男性陣が食事をしているという変な光景が生まれていた。


 一方的に話しを終わらせられた僕のことは、完全にスルーされているのでは?

 この扱いは、僕もヘルマンさんたちの仲間入りをしてしまったのでは……。

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