92話 動き出す隣国
僕たちは、すぐにでもアンテス領へ出発できるようにと、準備に取りかかっていた。
そして、僕は、準備が整うまでの時間を使って、マイネ領に新設の軍港と空港を建設することを、モーリッツさんに提案していたのだ。
最初のうちは理解しきれなかったのか、渋い顔をしていたモーリッツさんだったが、開発中の飛行機と船のことを説明すると、驚き、食いついてきた。
ヨシッ!
続けて、将来的には、ドラゴンと同等の輸送ができる飛行機やドラゴンが乗っても沈まないくらいの船まで造るつもりだということも話す。
彼の表情を見ると、もう一押しのようだ。
空港においては、飛行機が生産される前でもドラゴンとワイバーンも使えるので、彼らの離着陸や荷物の積み下ろしもスムーズになることを説明し、軍港は将来を見越して、超大型船が係留できるような立派なものを造っておけば、現在の軍艦を多く係留もでき、ハウゼリアへのけん制にもなると説明すると、すぐに快諾してくれた。
僕とモーリッツさんとの話しが終わった頃を見計らって、ルビーさんが近付いてくる。
「ちょっと、いいか?」
「うん、いいよ」
モーリッツさんは席を立とうとするが、彼女は、それを止める。
「ここの駐屯基地に駐留させる者たちだが、六古竜の赤の一族に所属する『赤炎軍』を駐留させることにした。彼らなら戦闘力も高いし、レッドドラゴン固有の火炎のブレスを吐けるから季節的にもちょうどいいと思うのだが、いいだろうか?」
「季節的に?」
僕は、何故、季節が関係しているのか分からなくて、聞き返した。
「そろそろ、作物を収穫する季節だ。シュミット王国もそんな時に、レッドドラゴンへ喧嘩を売って、畑を燃やされるような愚策は起こすまい」
「「なるほど」」
僕とモーリッツさんは、彼女に感心する。
「ルビーさん、ぜひとも『赤炎軍』に駐留して欲しい」
僕はモーリッツさんに相談もせず、決めてしまった。
だが、彼も黙ったまま頷いていたので、問題はなさそうだ。
「わかった。『赤炎軍』を駐留させるよう、手配する」
彼女の言葉に、僕とモーリッツさんは満足げな表情を浮かべた。
出発の準備ができたことを、兵士に告げられる。
僕は席を立つと、庭へと向かう。
その道すがら、モーリッツさんに後のことを頼むと、彼は「お任せ下さい」と返事をした。
僕は、彼に微笑み、そのまま歩みを進める。
庭に着くと、ドラゴンたちとワイバーンたちが、いつでも離陸できる態勢で待っていた。
ルビーさんが赤いドラゴンの姿へと変わる。
僕たちは、そな間に、アスールさんの背中へと乗る。
皆の準備が整ったことを確認したルビーさんが飛び立つと、ドラゴン、ワイバーンの順に飛び立ち、空高く舞い上がる。
そして、マイネ城の上空を旋回してから、ガイハンク国の方角へ向かう。
一頭のブラックドラゴンだけが、別の方向へと進路を変えて離脱していく。
「あれ? アスールさん、あのブラックドラゴンだけ、離れていくけど?」
「ん?」
彼女は僕の言葉を聞いて、離れていくブラックドラゴンを一目見る。
「わしは、知らん」
知らないのなら他の人に聞くしかない。
僕はイーロさんに向かって大きく手を振り、彼を呼び寄せた。
「イーロさん、あのブラックドラゴンだけ、離れていくけど?」
「彼は、グリュード竜王国へ、状況報告とルビー様からの『赤炎軍』への命令を伝えに戻るのです」
「そうだったんだ」
僕は納得し、そのドラゴンを見つめる。
そして、離れていくブラックドラゴンに気付いてもらえるか分からないが、今まで助けてもらったので、大きく手を振り、「ご苦労様! ありがとう!」と叫んだ。
すると、彼の背中では、立ち上がって、大きく手を振って返す人物が二人いた。
僕はギョッとして、すぐに双眼鏡を取り出して、その人物たちを確かめる。
エルさんとマイさんだった。
何となく分かってはいたのだが、心のどこかで、認めたくはない自分もいた。
「イーロさん、申し訳ないんだけど、彼の背中にいる二人を引き取ってきてもらえますか? ごめんなさい」
僕は、まだ、そばを飛んでいたイーロさんに頭を下げる。
彼は、離れていくドラゴンを凝視しすると、分かりにくい驚いた表情を見せ、すぐに後を追った。
一方で、イツキさんとサンナさんが、ドラゴンの背で手を振る二人を見てから、周りをキョロキョロと見回すと、頭を抱えてうなだれる。
そして、ハッと我に返ると、僕たちにペコペコと謝りだした。
イツキさんとサンナさんが悪いわけではないので、僕たちは対応に困ってしまう。
イーロさんがエルさんとマイさんの二人を乗せて戻って来た。
二人は彼の背からアスールさんの背へ移ると、恥ずかしそうに頭を掻きながらヘラヘラと笑って誤魔化そうとする。
イツキさんとサンナさんは、二人のことを後回しにして、イーロさんにもペコペコと頭を下げていた。
でも、僕は逃さないよ。
「確保ー!!!」
僕がありったけの声で叫ぶと、そそくさと端っこに身を潜めようとしていた二人を、アンさんとハンネさんが取り押さえ、縄で縛りあげる。
そして、アンさんとハンネさんによって捕縛された二人が引きずられて来ると、僕の前に座らされた。
「ねえ、こんな大変な時に、何をしてるの?」
僕が尋ねると、二人は目を泳がせ、顔を逸らす。
「「グリュード竜王国へ観光しに行こうかと……」」
「「「「「……」」」」」
その場にいた者は、言葉を失った。
スパーン。スパーン。
アンさんとハンネさんが、二人の顔面にハリセンを放った。
我慢の限界だったのだろう。
その気持ちはよく分かる。
縛られた状態の二人は、アスールさんの背中でゴロゴロとのたうち回っている。
アスールさんは背中で暴れられ、気になったのか、こちらを振り返るが、様子を伺うと、巻き込まれるのを恐れたのか、前へ向き直り、見なかったことにしていた。
アンさんとハンネさんは、転がっている二人の縄を引っ張り、座り直させる。
「それで、僕たちに何か言うことは?」
「「勝手なことをして、ごめんなさい」」
謝る二人の涙目ですがってくる顔には、鼻を中心に赤くなった長方形の痕がついていた。
「もう、勝手なことはしないでよ」
「「はい」」
僕は許したが、二人は縄を引っ張られ、シャル、ミリヤさん、サンナさん、イツキさんの四人が待ち受けているところへと連れて行かれた。
自業自得だけど、彼女たちの苦難はまだ続きそうだ。
二人のせいで余計な時間を費やしてしまった。
僕たちは急ぎ、アンテス領へ向かう。
カイがボイテルロック領とアンテス領の境界に陣地を造り、警戒しているはずだ。
巻き込まれていなければいいのだが……。
「フーカ様、アンテス領へ急ぎたい気持ちは分かりますが、バルベ領に寄って、ライナルト殿からも情報を得たほうがよいかと」
しばらく飛び続けていると、アンさんが進言してきた。
早くカイに合流しなければならないことで、頭がいっぱいだった僕は、彼女の言葉で、自分が焦っていたことを気付かされた。
「アスールさん、バルベ領へ寄りたいから、向かってくれる?」
「うむ、分かった」
彼女は先頭を飛ぶルビーさんに近付き、伝えた。
すると、編隊は進路をずらしてバルベ領へ向かいだした。
バルベ城の上空まで来ると、城の庭で兵士たちが旗を振り、着陸の合図を送っていた。
僕たちが来ることを予想して、待っていたようだ。
立ち寄って良かった……。
アスールさんだけが着陸し、ルビーさんたちには上空で待っていてもらうことにする。
アスールさんだけが降り立つと、ライナルトさんが駆け寄って来る。
僕、シャル、アンさん、シリウスだけがアスールさんから降り、彼女にはドラゴンのままでいてもらう。
上を見ると、ルビーさんたちとグレイフォックス隊が上空を旋回している。
「陛下、こちらで、ボイテルロック領がハウゼリア連邦に加盟するため、独立をする情報を掴んだので、ご報告しようとしたのですが、私どもが情報を掴んだ時には、同じ情報を掴んだカーディア新帝国がボイテルロック領へ向けて侵攻を始めてしまったため、情報をまとめるのに時間が掛かり、使者を出すのが遅れてしまいました。申し訳ありません」
ライナルトさんは頭を下げようとするので、僕は、それを手で制した。
「それって、僕たちをマイネ領へおびき寄せている隙に、ボイテルロック領をハウゼリア連邦にするつもりだったクレーメンスも、予想していなかったカーディア新帝国が動いちゃったってことだよね?」
「その可能性はありますね」
僕の憶測にシャルが返事をする。
そして、ライナルトさんとアンさんも頷くが、シリウスは別の意見があるようだ。
「宰相をはじめ、ボイテルロック家の本家筋を亡くしたボイテルロック領を、クレーメンスがカーディア新帝国へ売ったということもありうるのでは?」
「クレーメンスとは会ったことがないけど、今までのやり口を考えると、シリウスの意見も否定できないね。それどころか、言われてみれば、そうかもと思えてしまう」
「シリウス殿も陛下も、カーディア新帝国がベーレンドルフ元老院議長が率いる元老院派閥が集まってできた国であることをお忘れでは?」
うん、忘れてた! でも、そんな事は口が裂けても言えない……。
「えーと、そうだね。忘れてはいないけど……。なんちゃら議長は宰相と仲が悪そうだったけど、宰相たちが死んで、新教貴族派閥を率いているのがクレーメンスに変わったら手を組むこともあるんじゃないかなーと」
「ないとは言えませんが、元老院派閥はハウゼリア新教を国を脅かす輩ととらえていましたから、そのあたりが引っかかります」
ライナルトさんは、僕の意見に真面目に返事をしてくれた。
しかし、シャルと、アンさんからは、「忘れていただろ」と言わんばかりの冷たい視線が、僕に浴びせられている。
視線がチクチクと刺さる感じがして、痛い。
「いつまでも、こうしてても仕方がない。ライナルトさん、情報をありがとう。僕たちはアンテス領へ向かうよ」
彼は僕に向かって深く頭を下げる。
アスールさんの背に戻る時に、ブツブツとささやき声が聞こえる。
「誤魔化しましたね」
「逃げただけよ」
アンさんとシャルの会話だった。
酷い……。
ライナルトさんと話したことで、僕たちが置かれている現状は、おおまかに分かった。
アスールさんの背から、ライナルトさんにお礼を込めて頭を下げると、彼も頭を下げ、その後、手を振って見送ってくれた。
アスールさんは飛び立ち、上空で待機しているルビーさんたちと合流すると、アンテス領へと向かう。
アンテス城へ着くまでの間に、ライナルトさんと話した内容を皆とも共有する。
そうこうしているうちに、僕たちはアンテス城へと到着した。
ルビーさんから順に城の庭へと降りていく。
アスールさんの番になり、彼女が降りると、エイルマーさんがタイミングを合わせたように城から出てきた。
エイルマーさんと全員の着陸を確認すると、彼の先導で、僕たちは会議室へと向かう。
彼は僕たちを気遣って、会議室の大きなテーブルに人数分の食事を用意させていた。
僕たちが席に着くのを確認すると、彼は口を開く。
「こんな時ですから、時間が惜しいでしょう。食事を用意させましたので、食べながら話しを進めるとしましょう」
気の利いた提案に僕たちは頷く。
しかし、大丈夫だろうか? うちには食いしん坊が数人いる。
餌を与えると、待てが出来ない彼女たちは、話しも聞かず、食べることだけに集中しそうで不安だ。
僕たちは食事を摂りながらなので、最初は、エイルマーさんが現在の状況を話してくれた。
彼の話してくれた内容は、ほとんどライナルトさんから聞かされたものと変わらなかった。
違っていたところは、カーディア新帝国が侵攻したことで、ボイテルロック領で何か異変が起きていると、真っ先に気付いたのがカイであったことだ。
カイは、速やかに判断を下し、エイルマーさんと近隣の領地へ使者を送り、現状を報せてくれていた。
カイに任せて良かったと思う。
カイの報告では、彼自身がボイテルロック領の異変から、カーディア新帝国の侵攻に気付いた時には、すでに南部が占領されてしまっていたそうだ。
こればかりは仕方がない。
彼を責めるつもりはない。
ただ、彼が責任を感じて、無茶をしないかだけが心配だ。
エイルマーさんが話しを続けると、僕の心配は最悪にも的中してしまった。
カイはカーディア新帝国に後れを取るまいと、使者を送ると同時にボイテルロック領の主都ファストへ向けて侵攻を始めてしまったそうだ。
僕は、責任感から勝手な行動をとるカイが心配で堪らなくなる。
「陛下、大丈夫ですかな?」
彼を心配する表情が顔に出てしまっていたのだろう。
エイルマーさんが気遣ってくれる。
「ごめん。大丈夫だよ」
「これは気休めですが、カイ殿がボイテルロック領の主都ファストへ向けて侵攻したことを知ったヘルゲ殿が、バルベ領から転進して主ファストへ向かってますわい、あの者が出向く以上、きっと、大丈夫ですわい」
ヘルゲさんが向かっていることを聞いて、僕は少しホッとできた。
今は出来るだけ早くカイとヘルゲさんに合流することを優先させたい。
僕は皆に、彼らと合流するための準備を急いでもらう。
「わしのほうでも領軍を向かわせとりますが、報告では、まだボイテルロック領との境界辺りだそうで、申し訳ない」
「いや、エイルマーさんが謝ることじゃないよ。気を遣わせてすみません」
彼は恐れ多いといったように、首を横に振る。
僕が心配ばかりしていると、皆に気を遣わせてしまう。
どっしりと構えるように心がけよう。
準備が整えば、こっちにはドラゴンもいるんだから、カイの加勢にはすぐに向かえる。
焦る必要はないんだ。
僕は自分に言い聞かせた。
僕たちが準備に動き回っていると、エイルマーさんがアルセ領とシュナ領から使者が来たことを告げにきた。
このタイミングということは、ボイテルロック領とカーディア新帝国のことだろう。
僕たちは会議室に集まり、アルセ領とシュナ領から届いたそれぞれの手紙に、僕が目を通す。
その内容に驚愕した僕は、読み終えた手紙をシャルへと渡す。
彼女も、その手紙を読み終えると驚愕し、少し青ざめていた。
そして、その手紙は皆の手を順に回っていく。
読み終えた者たちは驚愕し、悔しそうな表情を浮かべる。
それぞれの手紙の内容は、カーディア正統帝国が動き出したことを報告するものだった。
特にシュナ領からの手紙には、カーディア正統帝国への警戒のため、ボイテルロック領へ向けて加勢をまわせないことが書かれ、謝罪の言葉も付け加えられていた。
それだけ、カーディア正統帝国の動きに、シュナ領がひっ迫された状態ともとれる。
カーディア正統帝国は、カーディア新帝国が動いたから触発されて動いたのか、さらに、こちらが追い込まれる状態へと移りつつある。
早くボイテルロック領の件を解決しないと、カーディア正統帝国とカーディア新帝国の両国を相手にすることとなり、僕たちは身動きが取れなくなってしまう。
コンコン。
扉が叩かれ、兵士が手紙を持ってくる。
彼は室内の雰囲気に緊張しつつも、僕に手紙を渡すと、敬礼をして部屋を去っていく。
さらに渡された手紙に、僕は中を見るのが怖くなる。
だが、今度の手紙は、プレスディア王朝からのものだった。
僕は、その手紙を開けることなく、そのままエルさんに渡す。
彼女は、本国からの手紙なのに、今の状況から悪い報せだと察し、嫌そうな顔で受け取った。
エルさんが封を開き、読み終えるのを僕たちは待つ。
読み進めていくうちに、彼女はフルフルと震えだし、その表情は険しく怖い表情へと変わっていく。
彼女は読み終えると、強く握りしめられたその手紙を、サンナさんの胸へ押し付けるように渡した。
「フッフッフー。舐めたことをしてくれるわね。ここ数年でできた新参者の国が身の程も知らずにいい度胸だわ。返り討ちにしてくれるわ!」
変な笑い方をしたと思ったら、声を荒げだすエルさんに、僕たちは何が起きたのかが分からず、唖然とするしかなかった。
その横では、手紙に目を通していたサンナさんの表情も険しくなり、少し苛立った感じでハンネさんにその手紙を渡す。
「エル様、こんな屈辱はありません。返り討ちではなく、滅ぼしましょう」
サンナさんが物騒なことを言い出した。
彼女からそんな言葉を聞かされるなんて、とっても怖いんですけど……。
いったい、何が書かれているんだ?
一方、手紙を読んでいるハンネさんも険しい表情になる。
そして、彼女の口角が若干上がり、悪人っぽく見えて怖い。
「同じ新参者でも、ユナハ国ならいざ知らず、フーカ様がいるわけでもない国がふざけたことを……我が国にを見くびっているとしか思えません! エル様! 徹底的にやりましょう!」
ハンネさんが吠えた。
うちの国と僕の名前が出されて、とても腑に落ちないんですけど……。
そして、ハンネさんにそんな目で見られていたと思うと、とてもショックなんですけど……。
ハンネさんは、僕の心中も知らずに、手紙を渡してくる。
読んでいいのか分からずエルさんを見ると、彼女は黙って頷いているので、目を通してみる。
書かれていた内容は、『カーディア正統帝国が我が国、プレスディア王朝へ向けて軍を差し向けている事を確認。ユナハ国に対して本隊と思える軍勢を配備し、我が国には少数の軍勢を差し向け、侵攻させる模様。このままでは交戦となる恐れあり』と書かれていた。
三人が起こるのも無理がない。
これ、僕でも舐められてると思う……。
僕は苦笑し、皆にも見せていいのか、エルさんに目配せをすると、彼女は少しイラッとした表情で頷く。
隣にいるシャルへ手紙を渡すと、彼女も三人の様子から手紙の内容が知りたかったのだろう。
すぐに目を通し始めた。
そして、驚いた表情を見せるが、すぐに何とも言えぬ表情へ変化していく。
その手紙は、隣にいるミリヤさんへと渡される。
手紙を読んだミリヤさんも、シャルと同じ表情を見せた。
その後、皆の手を回っていった手紙は、僕のもとへ戻ってくる。
すると、皆の顔は、三人への同情が浮かんでいる表情へと変わっていた。
これで、ユナハ国に対して敵意を持つ隣国が、すべて動きだしてしまった。
僕たちは、プレスディア王朝からの報せで、微妙な空気になった会議室で、そのまま各々の意見を出し合うのだが、当然ながら、意見は割れてしまう。
僕たちユナハ国組としては、今はボイテルロック領に侵攻してきたカーディア新帝国の対処にあたりたい。
一方、エルさんたちプレスディア王朝組はカーディア正統帝国への対処にあたりたい。
意見が別れると、自然とどちらにも属さないルビーさんたちに視線が集中する。
彼女たちにとっては、巻き込まれ事故のようなものだ。
どういった意見を述べるべきか悩み、困惑している。
このままでは、話しがまとまらない。
そもそも、エルさんたちは、僕たちと行動を合わせなくてもいいのでは? と思ったが、口に出すと、エルさんがごねて話しが面倒くさくなりそうなので黙っておく。
そこで、僕たちはボイテルロック領へ、エルさんたちはプレスディア王朝へと、仕方なく二手に別れて向かうことで話しをまとめた。
どちらの意見につくかで悩んでいたルビーさんたちもホッとした様子だ。
しかし、エルさんたちを、このまま見送るわけにもいかず、イーロさんに頼み、彼の部下を一人、彼女たちに同行させてもらえるように話しをつけた。
これですぐに戻れるだろうし、戦力としても組み込めるだろう。
「フーカ君、もう一声! もう少し色をつけてよ!」
その様子を見ていたエルさんから、変な掛け声がかかった。
そして、サンナさんとハンネさんが顔を真っ赤にして恥ずかしそうにうつむいてしまう。
「じゃあ、マイさんを付けるよ」
「ごめんなさい。今のままで我慢します」
彼女はあっさりと引いてしまった。
マイさんは、「ちょっと! 私の扱いが酷すぎるわよ!」と文句を言って、膨れてしまう。
エルさんたちには、プレスディア王朝へ向かう途中でエラン領へ寄ってもらい、イーリスさんとフリーダさんの二人に宛てた手紙を渡してもらうように頼みんだ。
サンナさんとハンネさんは快く引き受けてくれたが、エルさんだけが内容を気にする。
「ねえねえ、何を書いたのー? 頼むのなら教えてもいいと思うんだけどなー」
「二人に渡せばわかるから」
「内容を知らないと、途中で落としてしまう自信があるわ!」
「そんな自信があってたまるか!」
まとわりついてきて、ウザッ!
僕は彼女のしつこさに根をあげて、教えることにする。
「エルさんたちに協力するため、フリーダさんについているカルメラさんをつけてあげて欲しいことと、ゲーテ領とアルセ領には、プレスディア王朝に協力してあげて欲しいことを伝えるようにと書いたんだよ! これでいい!?」
「いやー、もー。私って愛されてるわ!」
「断じて違う!」
勝手な妄想をして喜ぶエルさんを、僕は全力で否定した。
彼女の脇では、サンナさんとハンネさんが喜んでお礼を述べてくる。
こっちは素直に嬉しい。
会議は終わった。
僕たちは、ボイテルロック領へ向かう者とプレスディア王朝へ向かう者に別れて、それぞれの準備を始めるのだった。
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