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うちの神様の間違った転移でおおごとに! 女神の使いにされて、僕を頼られても困るのだが……。  作者: とらむらさき


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87話 エラン領

 ルース山脈を越えている途中で、ルビーさんがこちらを振り向いた。


 「いつもより大人しいが、どうかしたのか?」


 ビクッ。


 「どうもしてません。ハハハ」

 「「「「「普段通りです」」」」」


 僕たちはアスールさんを隠すようにして、返事をする。


 「それに、いつもは、もっとくつろいでいるだろう?」


 「気のせいです! ハハハ」

 「「「「「そんなことはないです」」」」」


 「???」


 僕は愛想笑いを振りまき、皆も必死に誤魔化す。


 「なら、いいが」


 彼女は前に向き直り、僕たちはホッとする。


 サッ。


 ルビーさんが、突然、振り返った。


 ビクッ。サッ。


 僕たちは、愛想笑いを浮かべて、アスールさんを隠すようにかたまった。


 「おい、今、何か隠さなかったか?」


 「気のせいです! ハハハ」

 「「「「「そんなことはないです」」」」」


 「本当か?」


 ルビーさんは首を伸ばし、僕たちの背後を覗き込もうとするので、僕たちは立ち上がって、アスールさんを彼女の視界に入らないように隠す。


 「何故、立ち上がる?」


 「いや、座りっぱなしだったので、たまたま立ち上がっただけです。そうだよね?」


 僕は、シャルたちに向かって同意を求めた。


 「「「「「はい!!!」」」」」


 「危ないから、不必要に立たないほうがいい」


 「「「「「はい、そうします」」」」」


 僕たちに大きな影が落ちる。

 上を見ると、ネーヴェさんがこちらを覗き込んでいた。

 しまった! ネーヴェさんの存在を忘れていた。


 「ア、アスール! あんた、また……」


 「何!?」


 ネーヴェさんの上げた声に、ルビーさんが振り向く。


 「「……」」


 二人は言葉を失い。

 僕たちは顔を逸らす。


 「どうしたのですか?」


 フリーダさんが僕たちの上空に現れると、その横にはイーロさんもいた。


 「……ね、姉さん? な、何してんの!?」

 「ア、アスール。お、お前という奴は……」


 フリーダさんとイーロさんの声が重なり、その表情は分かりづらいが、目を見開いているので、驚いているのだろう。


 ルビーさんとネーヴェさんは、うなだれたように長い首を垂らして飛び続け、フリーダさんとイーロさんは長い首を起こして、天を仰ぐように飛び続ける。


 一方のアスールさんは、コクッ、コクと船を漕いでいた。

 この状況下で寝ている彼女の図太さに、僕たちは苦笑するしかなかった。




 気まずい雰囲気を漂わせながら、カーディア市へと到着した僕たちは、城へと下り立つ。

 すぐに、人の姿へと変わったフリーダさんが、鬼の形相で、こちらへと駆けてくる。


 ゴツン。


 「グホッ。ぐぬぅぅぅー!」


 フリーダさんはアスールさんの手前で飛び上がり、勢いのついたげんこつを彼女の頭に落とした。

 アスールさんは、うめき声をあげ、頭を押さえて転げまわる。

 ジャンピングげんこつなんて、初めて見た。


 その後、アスールさんは、その場で正座をさせられ、ルビーさんの背中に乗っていたことを、フリーダさんとネーヴェさんから叱られていた。

 そして、三人のそばで、イーロさんがこめかみを押さえ、苦悩していたのだった。




 そんな中、僕たちの出迎えに、エルさん、サンナさん、ハンネさんが、お供を連れて現れた。

 彼女たちは、驚いた表情を浮かべて、こちらへ駆けてくる。


 「何で、ドラゴンが増えてるのよ!?」


 エルさんは、僕に駆け寄るなり、文句を言う。


 「こちら、エラン領の領主を引き受けてくれたフリーダさん」


 僕は絡まれたくないので、フリーダさんに振った。

 すると、お説教中のフリーダさんは、慌ててスカートを軽くたくし上げ、エルさんたちに頭を下げる。


 「フリーダ・エランです。いつも姉がお世話になっています。よろしくお願いいたします」


 「プレスディア王朝女王、エルヴィーラ・プレスディアです。こちらこそよろしく」


 「宰相のサンナ・ウトリオです。よろしくお願いいたします」


 「天馬騎士団団長のハンネ・ロクサです。よろしくお願いいたします」


 「私は、グリュード竜王国、六古竜(ろくこりゅう)が黒の一族の当主をしておりますイーロ・エスコラと申します。まさか、プレスディア王朝のエルヴィーラ陛下がおられるとは知らずに、失礼いたしました」


 イーロさんは、エルさんたちに驚き、すぐに名乗りを上げ、深く頭を下げると、フリーダさんもお説教を中断して、「失礼しました」と詫びを入れてから、深く頭を下げた。

 エルさんたちも彼らに応え、頭を軽く下げる。

 あれ? 僕の時は、もっとぞんざいな感じだったような……。


 「いや、そんな場合じゃなかった! フーカ君! これ、どういうことよ!? 何でちょっと出かけただけで、ユナハ国の戦力が大幅に増強されるのよ!?」


 うわー。面倒くさくなりそう……。


 「成り行き?」


 僕は、そっけなく答えた。


 「なっ……」


 エルさんは頬をひくつかせて、言葉を失う。

 彼女の後ろでは、サンナさんとハンネさんが苦笑していた。


 「ここでは、なんですから。後は屋内に移動してからに致しましょう」


 サンナさんが切り出すと、僕たちは城内へと場所を移す。




 城内の会議室へと移動すると、エルさんたちとフリーダさんたちが会話をする時間を作り、お互いのことを知ってもらう。


 アスールさんが僕のそばへ来て、頭を見せてくる。


 「フーカ、まだ、ここが痛いんだ」


 彼女の示したところには、大きなたんこぶが出来ていた。

 い、痛そう……。

 僕は、手に魔力を集中させて、彼女の頭をさすって上げる。

 すると、彼女のたんこぶが見る見る小さくなっていき、消えてしまう。

 彼女はたんこぶのあった場所を触って、痛くないことを確かめると、満足そうな顔をする。


 イーロさんとフリーダさん、それに部下の竜族たちが、こちらを見て驚いている。


 「そんなに簡単に治すとは、さすがです。優秀な者が治癒魔法を掛けても、そんなに早くは治りません」


 フリーダさんは、僕の魔法に感動していた。


 「そうなの?」


 僕はケイトに向かって尋ねた。

 彼女はウンウンと黙って頷き、精霊魔法と神聖魔法を得意とするミリヤさんも同じく頷く。

 そして、僕のことなのに、二人がドヤ顔を見せていた。




 アンさんとオルガさんがお茶を出すと、皆は席に着いいた。

 そして、これまでの経緯を、エルさんたちに話すこととなった。


 僕は、リンスバック城に駆け付けると、クーデターを起こしていたマシューたちとカイの取り巻きたち、そして、ハウゼリア騎士団を、フリーダさんたちが殲滅したことを話した。

 すると、エルさんたちは、難しい顔をしたり、驚いた顔をしたりと忙しく表情を変えていた。


 「そんなことがあったの。それで、フーカ君たちは、何しに行ったの?」


 「「「「「ハハハハハ」」」」」


 僕たちは笑って誤魔化す。


 「あっれー? フーカ君は、わざわざ出向いて何もできなかったの?」


 「……」


 「本当に何をしに行ったのかしら?」


 「…………」


 「ただ、ことをおおごとにしてきたようにしか聞こえないわ」


 「………………」


 エルさんは、ここぞとばかりに僕だけをネチネチといじってくる。

 言い返したいが、言い返す言葉が見つからない。

 悔しい……。



 その後もエルさんの僕いじりは続き、彼女の気が済んだ時には、僕の精神はへとへとになっていた。

 シャルは僕を見て、小さく息を吐くと、僕の代わりに、サンナさんから僕たちがいなかった間の状況を聞く。


 僕たちが出た後、ちょこまかと動き回って面倒くさいエルさんが、再び牢屋に入れたことを告げられると、僕たちは苦笑する。

 そして、フリーダさんたちは、目を見開いて驚く。


 「グリュード竜王国でも、採用してみてもいいかもしれない」


 イーロさんがつぶやくと、ルビーさんが青ざめた表情でフルフルと首を横に振る。

 その横では、ネーヴェさんが隠れるように笑っていた。


 「アスールはいきすぎだが、古竜や重鎮も羽目を外す者が多すぎる。古竜や重鎮にも採用すべきだな」


 今度は、さっきまで笑っていたネーヴェさんが、青ざめた表情でフルフルと首を横に振っていた。


 エルさんのこと以外は、大したことは起きておらず、市内の治安も安定したとのことだ。

 そして、サンナさんは領内の各市町村にも使者を出し、この地がユナハ国になったことと法律が変わったことも伝えてくれていた。

 彼女は宰相だけあって、細かいところにまで気を配ってくれていた。

 ありがたいことだ。

 プレスディア王朝の宰相でなければ、うちでスカウトしたい人材だ。

 だが、彼女がいなくなったら、プレスディア王朝が終わってしまいそうで、スカウトは無理だろう……。


 最後に、一番気になっていたアンテス領へ向かった面々のことをサンナさんに聞くと、シリウスたちからは、何の報告も来てはいなかった。

 日数的にも、まだ着いていないのだろう。

 そして、マイさんは、いまだに音沙汰なしだそうだ。

 僕たちも、早く向かったほうが良さそうだ。




 アンさんとレイリアが手を挙げた。

 二人は、リンスバックへ同行した者たちに、休息を与えたほうが良いと提案する。

 すぐにでもシリウスたちに追いつきたいが、無理をさせるわけにもいかないので、二人の提案を受け入れる。

 雇用環境は大切だ。

 ただでさえ、兵士という職業はブラックになりがちなのに、ブラックな環境をなくしたい僕が先陣を切るわけにはいかない。


 その後、サンナさん、イーリスさん、フリーダさんの三人で領地のことが話し合われ、僕たちは口を挟まず、その話しに耳を傾けていた。

 そして、話しが終わった時には、外は真っ暗だった。

 疲労の溜まっていた僕たちは、解散すると、足早に各部屋へと戻っていくのだった。




 コンコン。


 部屋に戻って休んでいると、扉が叩かれた。


 「はい、どうぞ」


 「フー君、ちょっといいですか?」


 「うん、かまわないよ」


 現れたのはヒーちゃんだった。

 彼女の表情は、少し緊張しているようにも見える。

 僕はソファーに座り、彼女に向かいの席を勧めると、彼女は黙ったまま座り、ジッと僕を見つめてきた。


 「マッサージをしてもらいに来ました」


 そして、口を開いた。


 「へっ?」


 「ずっと、バタバタしていて機会が無かったけど、やっと、チャンスが訪れました」


 彼女は顔を真っ赤にしている。


 「えーと、何故、唐突に? 何かあるの?」


 「最近、食べ過ぎ……何でもないです。先延ばしになっていたと気付いただけです」


 彼女は、お腹のあたりを気にするようにさすりだす。

 僕は、なんとなく分かってしまったが、太ったの? なんて、さすがに聞けない。


 「う、うん、分かった。じゃあ、えーと、用意するからベッドに行ってて」


 荷物の中からローションを引っ張り出し、ベッドへ向かうと、ヒーちゃんはアンさんがタオルで作った下着を着て、横たわっていた。

 ふと、彼女が日本では、同学年の女子高生だということを思い出すと、シャルたちの時よりも緊張してくる。


 彼女の白く奇麗な背中に触れると、ビクッとされ、鼓動が激しくなっていく。

 ファルマティスに来ていなかったら、一緒に海水浴とかに行って、こんな感じでオイルを塗ってあげたりしていたのかなと、妄想してしまう。

 肩や足もマッサージを終え、緩めの下着の隙間から手を差し入れ、お尻をマッサージする。


 「はうっ」


 彼女から声が漏れる。

 さすがに海水浴では、ここまではしないよな。

 直に触れられて、嬉しいような罪悪感を感じるような複雑な気分だ。


 お尻のマッサージが終わると、彼女は仰向けになった。

 僕は、胸のしたからお腹にかけてマッサージをする。


 ポヨン。


 若干、お腹が出ていた。

 僕は意識を集中して、少しポッコリしだしているところ中心にマッサージをする。

 しばらくすると、ポッコリしていたところが無くなり、くびれもハッキリしてきた。

 良かったー。

 もし、効果が無かったら殺されかねないと思っていただけにホッとする。


 最後は、胸のマッサージだけだ。

 僕は、下着の隙間から指を差し入れる。


 「あん」


 彼女は小さく呻き声を漏らして、ビクッとする。

 このままガバッと襲いたくなる本能をグッと抑え、彼女の胸を揉みしだくようにマッサージを続ける。

 僕の頭が朦朧(もうろう)としてくるギリギリのところで、マッサージを終えることが出来た。


 彼女は起き上がると、お腹をさすり、満足そうな顔をしていた。

 やっぱり、あのポッコリを気にしていたんだ。


 「あっ! 記録を取らなかったけど、いいの?」


 「いいんです! 余計なことを言うのは、フー君の悪い癖です!」


 怒られてしまった。

 自分のデータを残さないところは、女性らしい腹黒さだと思う。


 満足そうな顔をした彼女が部屋を去ると、僕も休むことにする。

 ベッドで目をつむると、ヒーちゃんは寝落ちしなかったと、今までとは違うパターンだったことに気付く、そして、彼女の身体が脳裏に浮かんでくると、悶々とした状態が続くのだった。



 ◇◇◇◇◇



 翌日、フリーダさんを正式にエラン領領主として任命した。

 フリーダさんには、このままカーディア市で、領主の仕事に専念してもらう。

 彼女の部下であるディアンタさん、アスールさんの部下であるカルメラさん、チャロさんにもカーディア市へ残ってもらい、フリーダさんの手助けをしてもらうこととなった。

 しかし、領主も手助けをするメンバーも、選んだ人材は、グリュード竜王国の出身者だけとなってしまった。


 「イーリスさん、少しここに残って、フリーダさんたちのサポートをしてもらえないかな? 皆、グリュード竜王国の出身だから、勝手が違うと思うんだ」


 「そうですね。本当なら、私もアンテス領へついて行きたかったんですが、仕方ないですね」


 彼女は了承してくれたが、少し不満そうだった。


 イーリスさんをアンテス領へ向かうメンバーから外し、シリウスたちと合流する話しを進めていると、ミリヤさんが手を挙げ、スラムの人たちの受け入れについて、どうするかを質問された。

 その問題もあった。

 僕たちが意見を出し合った結果、仮設で造った難民キャンプを、そのまま街にすることで意見がまとまる。


 「街の名前はどうしますか? カーディア市にするには、城壁の外になりますけど」


 ミリヤさんが困った表情を浮かべると、僕たちも悩みだす。


 「ちょうど南に位置する隣町になるので、南カーディア町にしたらどうですか?」


 ヒーちゃんの意見が採用され、エラン領の地図に新しく南カーディア町が記された。


 今度は、ケイトが手を挙げた。

 彼女は、カーディア城の研究施設を、潰さずに再利用したいと提案する。

 確かに、設備も整っているここの施設を再利用しないのはもったいない。

 皆からも賛成の意見が出ているし、彼女の提案を了承することにした。


 「では、王立研究開発局カーディア支部として稼働させますね!」


 ケイトは、とても嬉しそうに命名までする。


 「いつの間にか、仕事が増えていっているのですが……」


 「確かに……」


 フリーダさんがつぶやき、それにイーリスさんが答えると、二人は顔を見合わせてうなだれたのだった。



 ◇◇◇◇◇



 結局、色々な問題を解決したり、準備をしているうちに、数日間をカーディア市で過ごすことになってしまった。

 早くアンテス領へ向かいたかったが、こっちも大切なことなので、ないがしろにはできない。

 それが、とても歯がゆい。




 僕たちが、カーディア市で足踏みをしている間に、先にアンテス領へ向かっていたシリウスたちから使者が送られて来た。

 使者から渡された手紙に目を通すと、シリウスたちが到着した時には、マイさんによってアンテス領が制圧された後だったと書かれていた。

 僕は唖然とし、その手紙をシャルに渡す。


 「こ、これは……」


 手紙を読んだ彼女はそう言って、イーリスさんに手紙を渡す。

 手紙が皆の手に渡り、僕のところへと戻って来た時には、皆はうなだれていた。


 「また、フーカ君は何もせずに終わったわね」


 とても嬉しそうなエルさんが、一人で笑いだす。

 その横では、サンナさんとハンネさんがペコペコと頭を下げていた。

 悔しい。っていうか、エルさんは、いつまでユナハ国にいるのだろう……。




 コンコン。


 僕たちのいる会議室の扉が叩かれた。

 入ってきた兵士は、マイさんからの使者が来たことを報告し、手紙を僕に渡すと退室していく。


 凄く嫌な予感を感じながら、手紙に目を通す。


 『暇だから、さっさと来い!』


 カチン!

 僕は、マイさんからの手紙をグシャグシャに丸めて、床へ投げつけた。

 僕の様子に、シャルが戸惑いながら丸めた手紙を拾うと、広げて中を見る。


 バン。


 彼女は手紙を握りしめたまま、テーブルを強く叩いた。

 そして、フルフルと身体を震わせて、下を向いたままでいる。

 イーリスさんが恐る恐るシャルの手から手紙を引き抜き、中を見ると、皆も彼女の背後に回り、手紙を覗き込む。


 「「「「「……」」」」」


 誰も言葉を発することなく、その場でうなだれる。


 「マイ様を討伐しましょう!」


 アンさんがとんでもないことを叫びだす。


 「そうね。それが世のため人のため、私たちのためです」


 シャルが賛成してしまった……。

 その様子に、エルさんたちとフリーダさんたちが、驚いてあたふたしている。


 「さすがに役職を持つ者を討伐というのは……。それに、アンテス領を制圧した功労者になりますし……」


 「「「「「……」」」」」


 ミリヤさんの冷静な判断に、誰も言葉を返せない。


 「しかし、この手の人は、調子にのせると増長しますよ。うちにもいますから分かります。しっかりと手綱を握って制御しないと……まあ、手綱を握ってもやらかしますけど……」


 サンナさんがそう言うと、皆の視線がエルさんに集中する。


 「てへっ!」


 皆の視線を浴びて、エルさんは恥ずかしそうにもじもじしながら、舌を出してテヘペロをする。


 スパーン。


 ハンネさんが彼女の頭をハリセンで叩く。


 「調子に乗らないで下さい。次は顔面にお見舞いしますよ」


 「ご、ごめんなさい」


 ハンネさんに睨まれ、エルさんはしょんぼりする。

 僕たちは、そのやり取りを見て、苦笑しながら溜息を吐いた。

 マイさんには、エルさんのような常にそばで監視する強い存在がいないから、問題なんだよね……。


 「あっ! 私の母を叔母様の副官にしたらどうですか? リンスバックは、父と祖母、それにネネがいますから、母がいなくても大丈夫です」


 今まで存在を忘れていたカイが、発言をする。


 「カイ! でかした! それでいこう!」


 パチパチパチ――。


 皆からの賞賛の拍手が、カイへと贈られる。


 「では、すぐにイツキ様への要請を手配します!」


 イーリスさんは、足早に会議室を出て行った。


 僕たちは、最大の難関を乗り越えたことで、安堵する。

 そして、アンさんとオルガさんは、スッキリしたような表情で、お茶を入れてくれると、僕はそのお茶を飲みながら、アンテス領にイツキさんも連れて行くことを決意する。

 自然と頬が緩んでしまうが、それはシャルたち皆も同じようだった。

 待っててね。マイさん! 

 飛び切りの贈り物……贈り者をするから。クックック。

お読みいただきありがとうございます。


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