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うちの神様の間違った転移でおおごとに! 女神の使いにされて、僕を頼られても困るのだが……。  作者: とらむらさき


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67話 僕、さらわれちゃいました

 ドタン!


 「痛っ!」 


 これ、絶対に、荷馬車に投げ入れられたな……これは、マズい。

 こんなことがシャルにバレたら、外出禁止にされてしまう。どうしよう。

 「僕、さらわれちゃいました」って、可愛く言っても誤魔化せないだろうな……。


 ガタン。ゴトゴトゴト。


 馬車が動き出してしまった。

 外の音を聞いて、何処に連れて行かれるのかを確認しよう。


 ……。


 土地勘のない僕がそんなことをしても、まったくの無意味だ!

 これは詰んだな……。

 馬車がどっちに曲がったかは、何となく分かる。

 隙をみて逃げ出す時のために、そのくらいは憶えておこう。

 直進、右、直進、右、直進、……、左、直進、……、右、直進、左、……、……。


 ……。

 …………。

 ………………。


 ん? 馬車が停まったようだ。

 うーん、良く寝た! ……寝ちゃダメじゃん!

 本当に詰んでしまった……。

 今、捕まるのは色々な意味でマズい気がする。

 各国の首脳が来ているのに、そこの国の王が捕まったなんて恥ずかしい。

 それに建国数日で捕まるなんて、エルさんに馬鹿にされそう。

 逃げ出したくても、ベストは着ていないから何も持っていない。

 リュックはレイリアに預けているし、裸一貫、交渉の材料も道具も何もありません。本当にどうしよう。

 それにしても、この袋、臭いな。

 それに、ちょっと、湿ってて、ヌルっとする感触が頬に伝わるんだけど……気持ち悪い。




 「おい、中の様子はどうだ?」


 「大丈夫だ」


 二人の男の声がする。


 ギギー。バタン。


 何か、扉が開かれる音がする。

 すると、僕の足が引っ張られ、荷物のように担がれた。

 何処かに運ばれるのだろう。

 今、暴れたら逃げられるかな?

 やめておこう、相手の人数も武器を持ているのかも分からない。

 そもそも、ひ弱な僕に彼らを倒せるわけがない。

 ここは、大人しく寝たふり。


 そのまま、運ばれていると、再び扉の開く音がした。

 そして、ギシギシと音が鳴り、凄く揺れる。

 階段を降りているみたいだ。

 地下にアジトがあるのか? 一時(いっとき)の監禁場所だろうか?

 そういえば、一緒にさらわれた子の声は聞こえないが、大丈夫なのだろうか?

 他人の心配をしている場合じゃないけど、常に思考を働かせてないと、恐怖を紛らわせることが出来ない。

 また扉が開かれる音がすると、大勢の声が聞こえてきた。

 ここはアジトのようだ。

 そして、僕は、何か柔らかい物の上に、降ろされた。


 「おい、何だそれは?」


 二人とは違う男の声がする。


 「へい、ちょうど良さそうな獲物を見つけましたんで、ここに入れてもらう手土産みたいなもんでさぁ」


 僕って手土産なの?

 それに入れてもらうって……入れてもらうのに人をさらうなんて、どんな世界だ!

 ……異世界だった。

 漫画とかでもこういうシチュエーションをよく見たな。

 ……もしかして、盗賊とかのアジト……。

 ヤバい、変なことを想像したら、余計に怖くなった。


 「お前たち、知らねぇーぞ。ここでは、そういうのは御法度なんだよ」


 「な、なんすか、それ!? ボイテルロック領じゃ、これくらいの手土産がないと入れてもらえねぇーのに……」


 僕をさらった男は、驚いているようだ。

 それに、今、ボイテルロック領って言ってたけど、こいつはユナハに流れてきたのか?

 問題は、ボイテルロック領って、あの宰相親子の領地だよな。

 アノンの姿が脳裏に浮かぶ。

 ブルッ。あいつらに引き渡されるのだけは嫌だ!

 それに、もし、僕が引き渡されたら、ユナハ国自体もマズい!

 シャルのお説教とお仕置きのレベルが跳ね上がってしまう。

 ん? もしかして、こいつらは、僕にかけらた懸賞金狙いの連中か?

 いや、僕は誘拐の現場に居合わせたから捕まったから違う。

 それに、誘拐は御法度みたいだし……なのに、捕まっている僕って……。

 まあ、僕の素性がバレなければ、賞金目当てにボイテルロックへ引き渡されることもないだろう。

 ここは一般市民で通し続けるぞ!




 「おめえらは、流れてきたばかりで知らねぇと思うから言っておくが、ここのギルマスの上には、さらにおっかねぇ人がいるんだよ。その人が今回、国から大役を仰せつかってな、俺らはその人に強力することになっているんだよ。そんな大事な時期にこんなことをしやがって……。ハァー」


 僕をさらった男が、なんか、溜息をつかれてる。

 それよりも、国から大役って、こんなことをする連中を率いている奴が、国の役職に紛れ込んでいるのか、これは絶対に皆に報せないと!


 「そ、そうなんすか……。これを分からないように始末してきましょうか?」


 僕をさらった男が、飛んでもないことを言い出した。


 ガタンッ!


 数人が勢いよく立ち上がる音がする。


 「バカか!!! そんなことをしてみろ! 死体が見つかった途端に、あたいたちが皆殺しにされちまうだろ!」


 「「ヒィッ!」」


 女性の声だ。

 女性に怒鳴られて、僕をさらった男の悲鳴が聞こえる。

 二人組だったようだ。


 「ったく。おい、お前ら! この子たちを丁重に扱うんだよ。後で、あたいが事情を話して、安全なところに解放してくる」


 「「「「「へいっ!!!」」」」」


 大勢の男たちの返事が聞こえた。

 何人いるんだ……?

 女性は、この中では地位が高いようだ。

 それに、解放してくれるって言っていた。

 助かった! さらわれた子も無事みたいで良かった。

 僕は、安堵から息を深く吐いた。


 「ケホ、ケホ。コホン」


 しまった! 寝たふりをして情報を集めてたのに、むせてしまった……。

 この袋が悪いんだ! 汚くて(ほこり)っぽいんだから咳き込みもする。

 僕は、自分に言い訳をして、気持ちを落ち着かせる。


 「ん? 起きてるみたいだな」


 「マズいね。話しを聞かれてたね」


 ここを仕切っているらしき、先ほどの男女の相談する声がした。

 すると、僕は抱き上げられ、椅子に座らせられる。

 この展開はヤバい! 口封じされるかも……。




 頭から被せられていた袋が取られると、薄暗い大きな、少し汚い感じの部屋に、二〇人近くの人がいた。

 その中には女性も混じっている。

 そして、僕の顔を、一人の女性が覗き込んでくる。

 彼女は濃い青色の髪を団子のように束ね、キリッとした怖そうな顔つきをしていた。でも、美人だった。


 僕は彼女と目を合わせると、恐怖で青ざめ、彼女は僕の顔を確かめると、よたつきながら下がり、青ざめていく。

 ……何故?


 「なんてことをしてくれたんだ!!!」


 ドン。ガシャン!


 彼女は怒鳴ると、近くの椅子を蹴り上げた。

 その椅子は、壁にあたり、付近にあった小さな置物までをも散乱させた。

 こ、怖い……。


 「クソッ! よりにもよって……」


 彼女の近くにいた男は愚痴ると、片手を額に当て上を向く。

 その声色から、この二人が、ここを仕切っているらしき男女のようだ。

 ポカーンと呆けている二人の男を除いて、その部屋にいた者たちは、頭を抱えてうなだれる。


 「とにかく、ギルマスに報せろ!」


 「へい!」


 男に命令されて、一人の男が奥の部屋へと向かった。

 奥にギルマスがいるのだろう。


 男女の二人は、椅子に座る僕を、立ち尽くして見つめる。


 「何で、ここにいるんだ!? なんて日だ! 最悪だー!」

 「こんな可愛い顔をして、疫病神だなんて……」


 男は叫びだし、女性は悲しそうになだれた。

 僕、さらわれたのに……。被害者なのに……。

 なんで犯人の一味からディスられてるの?

 なんか、釈然としない。


 すると、さっきの男が戻ってきた。


 「ギルマスが事情を説明するので、その御仁(ごじん)をお連れするようにと」


 彼がそう言うと、二人は僕に近付き、ナイフを取り出した。

 僕は身構えたが、二人は、僕の手足を縛っている縄を切ってくれた。


 「ありがとうございます」


 「「いえいえ」」


 返事をした二人は、何故か頭を抱える。

 面白い人たちだ。


 「ギルマスが待っていますので、こちらにどうぞ」


 女性は、疲れた表情でそう言うと、僕を奥の部屋に案内すると、男のほうは、僕の後ろをついてくる。




 短い廊下の奥に扉があった。

 女性は扉を開くと、僕に部屋へ入るようにと促す。

 僕が恐る恐る入ると、スキンヘッドに傷痕のあるいかついおじさんが、大きなソファーに座っていた。

 見るからにして怖い。

 彼は黙ったまま、向かいのソファーに座れと言わんばかりに、手を差し出した。


 「失礼します」


 僕が頭を下げてソファーに座ると、彼は困ったような表情を浮かべ、指で頬を掻きだす。

 困っているのは、僕なんだけどと思っていると、女性がお茶を出してくれた。


 「ありがとうございます」


 「いえ、お口に合うか分かりませんが……」


 彼女はそう言ってから、何故か壁に向かって、ガンッと頭を打ちつけた。

 その様子を見たギルマスは、苦笑する。


 「えー。今回は、うちに入りたがっている者が先走ったことを致しまして、誠に申し訳ありません。俺は……私は、この闇ギルドをまとめているギルドマスターのデリック・ローガンといいます。我々に、陛下をさらうつもりはありませんし、普段も一般人をさらうことはしていません。そのところをご理解下さい」


 彼は両ひざに手をつき、深く頭を下げ謝罪した。


 「えっ? 闇ギルド?」


 「はい、そうですが」


 盗賊ギルドだと思ってた……。

 僕はうなだれる。

 そして、相手が闇ギルドだと、殺されるかもしれないと血の気が引いてくる。


 「ど、どうしましたか?」


 彼は心配そうに僕を見る。


 「僕、闇ギルドから狙われてると思うんだけど、殺されるのかな?」


 何を自分からバカな質問をしたのだろうと後悔した。


 「いえ、それは、帝国や他の地域の闇ギルドのことです。我々はユナハ領の……いえ、ユナハ国の闇ギルドですから、そんなことはしません。せっかく、建国されたことで帝国の闇ギルドらと縁が切れたのに、陛下を殺したら、また、奴らと関わりを持つことになってしまいます。あんな胸糞の悪い奴らと同じ扱いをされるのはごめんです」


 彼は嫌そうな顔をした。

 僕は、この時初めて、闇ギルドが国や地域によって素行が違うのだと知った。

 ユナハ国の闇ギルドは安全のようだ。

 ホッとして、お茶を一口飲む。

 

 「アチッ!」


 僕が舌を出すと、デリックさんが固まった。

 彼の両脇に控えていた男女も固まっている。

 どうしたのだろうか?


 「あのー。フーカ陛下は王印をお持ちで?」


 デリックさんが恐る恐る聞いてくる。

 あっ、舌を出したからバレちゃった。


 「このことは秘密でお願いします」


 僕の言葉にデリックさんは頭を抱え、男女は壁に頭をもたれ、「あのバカどもを殺してやりたい」と僕をさらってきた二人を(ののし)っていた。


 「お、お前たち、このことはここだけの話しだ。口外するなよ」


 「「はい」」


 二人は元気なく返事をする。


 「コホン。フーカ陛下、城には使いを出していますが、おおごとになると、お互いに困るでしょうから、この二人が城までお送りします。安全はお約束します。よろしいですか?」


 「はい、ありがとうございます」


 僕は彼の配慮と優しさににお礼を述べて頭を下げた。

 そんな僕に、彼は、困り顔をして頬を掻く。

 これなら、ちょっと言い訳を考えて、道に迷ったところを親切な人に送ってもらったことにすれば、シャルたちに叱られることはないだろう。

 自然と口角が上がってきたしまう。

 いけない、いけない。

 僕は、手で口角を押さえて、平然な表情を保つ。




 さっきまでいた部屋のほうが、少し騒がしい。


 パシュ。パシュ。


 乾いた破裂音が聞こえた後に、うめき声も聞こえてきた。

 何だ?

 僕はデリックさんを見ると、彼は険しい顔をして、首を横に振ると、口元に人差し指を立てた。

 そして、両脇にいる男女に目配せをすると、二人はナイフを構え、扉の両脇で息をひそめる。

 デリックさんは静かに動き、僕を抱えると部屋の奥に行き、木箱に隠れるようにとゼスチャーをする。

 僕が頷くと、彼は僕を隠すように前に立ち、静かに剣を抜き、構えた。

 室内に異様な緊張が走る。

 闇ギルドを誰かが襲撃しているようだ。


 パシュ。パシュ。


 また、乾いた破裂音が聞こえ、うめき声も聞こえてくる。

 何故か、僕にはこの乾いた破裂音に聞き覚えがあり、必死に記憶を呼び覚まそうとした。


 パシュ。パシュ。


 再び、音がする。

 その時に僕は思い出した。

 サイレンサーをつけた拳銃の音だ。

 思い出した途端に冷や汗が垂れてくる。

 マズい、これはマズい。

 あの部隊が救出に来たということは、シャルにバレてる可能性がある。

 あっ! デリックさんは城に使いを出したと……結局バレる……泣きたい。


 このままだと、この三人が誤解で殺されてしまうかもしれない。

 僕がデリックさんの腰をつつくと、彼はこちらを振り向く。


 「あの二人をここまで下がらせて」


 僕は小声で話す。

 彼は頷くと、二人に手で合図を送った。

 二人が下がってきたところで、僕は三人の前に立つ。

 彼らは仰天し、口をパクパクさせている。

 僕は、三人を安心させるために、笑顔を向けてから扉を見据えた。


 扉のノブがゆっくりと回る。

 三人が僕を護ろうと前に出ようとするので、両手を広げて止める。


 バンッ!


 扉が蹴破られるように勢いよく開くと、黒い戦闘服に身を包んだ五人組が、銃を構えて飛び込んできた。

 彼らは僕を認識すると、銃を下げるが構えは解かない。


 「我々は、王直下特戦群である。陛下を解放しなければ殲滅(せんめつ)する」


 先頭にいた女性が叫ぶ。

 その声に聞き覚えがある。

 そして、彼女は、グロックッポイを手にしていた。

 たぶん、リン中尉だ。

 デリックさんたちは、その異様な部隊に困惑し、恐怖している。


 「えーと、何しに来たの?」


 「へっ?」


 僕が尋ねると、彼女は困惑した。


 「これから、この人たちが、城まで送ってくれることになっているんだけど」


 彼女は、僕の言葉に悩みだす。


 「失礼ですが、陛下が拉致されたので救出任務を受けたのですが……」


 「どうして、僕が拉致されたことになっているの?」


 「それは、上空からグレイフォックスの隊員が現場を見ていました。彼らが上空から尾行し、アジトをつきとめたので、我々が救出任務の命を受けました」


 うっ、道に迷ったという言い訳が……。

 僕は平然な表情を、必死に保ちながらも、内心では焦りまくっていた。


 「き、来てくれて、ありがとう。でも、ちょっと複雑な誤解があるんだ。とりあえず、銃をしまってくれるかな」


 「「「「「はっ!」」」」」


 五人は銃をしまう。

 僕はデリックさんたちにも武器をしまうように頼むと、すぐにしまってくれた。


 「えーと、リン中尉だよね?」


 「はっ。名前を覚えて頂き光栄です」


 彼女は黒いマスクを下ろして敬礼をする。

 美人のダークエルフだった。

 僕は彼女に近付き、今までの経緯を説明した。

 彼女は僕の話しを聞いて納得する。

 そして、少し雲った表情をすると、僕たちに、ついて来て欲しいと頼む。




 彼女の後について大部屋へ行くと、二〇人近くいたギルドメンバーは、グテーとした状態で後ろ手に縛られ、転がされていた。

 そして、そのメンバーを三人の特戦群隊員が見張り、他の二人の隊員が薬莢を回収していた。

 この短時間で、ここの闇ギルドは、たった一〇人に制圧されてしまったのだ。

 半数の人数に、ギルドが全滅させられ、制圧されている光景に、デリックさんたちは、真っ青な顔で冷や汗を掻いていた。


 「訓練用の樹脂弾を使ったので、死者は出していません。弾丸の衝撃で動けないだけです。命令だったので、すみません」


 リン中尉は、申し訳なさそうにする。


 「デリックさん、ごめんね。制圧されちゃったけど、皆、無事だから……」


 僕も彼らに謝るが気まずい。




 今度は外が騒がしい。

 また、何か起きるのか? 連続は勘弁して欲しい……。


 「ちょっとー! デリック! どういうことよ! フーカ君を拉致るなんて、私は聞いてないわよ!」


 大声を発しながら、階段を駆け下りて来たのは、マイさんだった。

 何で、マイさんが?

 僕は混乱した。

 横にいたリン中尉を見ると、彼女も混乱している。


 「……」


 僕と対面したマイさんは、無言のまま(きびす)を返す。


 「マイさんを確保!」


 「「「「「はっ!」」」」」


 僕の掛け声に、特戦群は彼女を一瞬で捕らえ、僕の前に連れてくる。


 「マイさん、何でここにいるの? その前に、何で、闇ギルドのギルマスを知っているの? 説明してくれるよね?」


 「えーと、私直属の組織みたいなものかしら? アンちゃんが、騎士だった時の部下をメイドにして、情報を集めてるのと一緒よ」


 彼女は素直に話してくれたけど、何か余計なことも聞かされた気がする。

 僕が隊員に放すように指示をすると、彼女は解放された。

 マイさんは手をさすって、文句言っているが無視する。


 「もしかして、ギルマスの上にいるおっかない人って……」


 僕はデリックさんたち三人に視線を送ると、彼らはコクコクと頷く。

 ユナハ国の闇ギルドは、マイさんに牛耳られていた。

 おかげで、ユナハでは、闇ギルドがカーディアのようなことをしていなかったのだが、影のボスがマイさんだからだろうか、何故か釈然としない。




 僕は、マイさん、リン中尉、デリックさんたち三人と共に、僕をさらった二人を連れて、奥の部屋で話すこととなった。

 マイさんとリン中尉は、指名手配のせいで、僕がさらわれたのだと思っていた。

 おそらく、一緒に出掛けたアンさんたちも、同じ理由を想定していると思う。

 でも、実際は、僕をさらった二人は、ギルドへ入るための手土産としてさらっていた。

 指名手配の件と、ここのギルドのルールを知らなかった二人が、先走った行動をしたことが偶然に重なって、おおごとになったようだ。


 僕をさらった二人に、何で僕をさらったのかを聞いてみる。

 二人は、女をさらっているのを見られたので、どうするか悩んだところ、いい女だったので、僕も高く売れると思ってさらったそうだ。

 僕は少しイラっとしたが、マイさんは、その話しを聞いて笑いだす。

 リン中尉とデリックさんたちまで顔を逸らして隠すように笑っていた。

 恥ずかしさと悔しさが僕を襲う。


 僕は、いつまでも笑われているのが嫌で、話しを闇ギルドのことに逸らした。

 デリックさんから話しを聞くと、ユナハの闇ギルドは、半端者や悪党を統率してはいるが、ユナハに対しての悪事はしていなかった。

 また、他の領地の闇ギルドがユナハで好き勝手をしないための抑止力ともなっていた。

 僕は、闇ギルドを潰した方が良いと考えていたが、話しを聞いて、存続もありだと思う。

 国内の半端者や悪党を取り締まるよりも、彼らを使って、他国の半端者や悪党を牽制できるのはありがたい。

 問題は、デリックさんのような後継者がいないと暴走しそうだということだ。

 これは宿題になりそうだ。


 デリックさんからは、さらに詳しい話しを聞かされた。

 ギルドの引き受ける仕事は、他の領地の貴族や商人にさらわれたり、奴隷としてさらわれた領民たちの誘拐や、ユナハに喧嘩を売った小物貴族や商人の暗殺などだそうだ。

 何だか、物騒な話しになっていったが、領民を守るために動いていたことは事実だ。

 内容が物騒なので、困惑気味に聞いていると、他領の貴族に買われていった者を、その家族が取り戻すために、依頼されることが一番多いらしい。

 さらに詳しく聞くと、貴族などがその立場を利用して、無理矢理や二束三文で売らされる契約がほとんどらしく、そんな話しを聞かされては、闇ギルドの仕事を辞めさせるわけにもいかない。

 難しい問題だ。

 僕の中では、しばらくは現状維持と判断した。




 今回の騒動は、そう言った事情を知らなかった二人が、先走って巻き起こした事件だった。

 僕はデリックさんに、これからは知らない者が先走らないように、新人教育を徹底するように頼むと、彼は、謝罪しながら了承してくれた。


 僕をさらった二人は、事情を知ると恐怖で顔を青くし、僕に土下座をして謝罪してきた。

 彼らには、デリックさんにボイテルロック領の状況や情報を話すことと、他国から流れて来る連中が同じことをしないように目を光らせることを約束させ、さらに、僕のことは他言無用という約束をさせて、今回のことはおとがめなしとした。


 彼らは僕に感謝し、この恩は必ず返すと言い出し、僕に何かがあった時には、必ず駆けつけると誓いだす。

 何かがあったら困るのだけどと思いつつも、彼らの気持ちを素直に受け取ることにした。




 僕は、マイさんとリン中尉率いる特戦群を連れて、闇ギルトのアジトから外に出ると、すでに夕方になっていた。

 すると、目の前に、特戦群専用の鉄板に覆われた装甲車のような馬車が現れる。

 僕とマイさん、見送りに出てきたデリックさん率いる闇ギルドのメンバーは、その馬車の異様さにポカーンと口を開けて固まった。

 リン中尉は、ちょっと、自慢げな表情を浮かべていた。

 それにしても、こんな物まで作っていたとは……。


 僕とマイさんはその馬車に乗り込むと、城へ向かって走り出す。

 後ろを振り返ると、デリックさんたちが頭を下げ、見えなくなるまで見送ってくれていた。


 城に着き、ロータリーになっている門の前で、僕とマイさんが降りると、シャルとイーリスさんが仁王立ちで待っていた。

 その後ろには、先に城へ戻っていたアンさんたちが同じく仁王立ちしている。

 僕とマイさんは、恐怖で顔を引きつらせた。

 シャルはニコッと笑うと、何も語らず、指をパチンと鳴らす。

 レイリアとケイトが僕を、アンさんとイーリスさんがマイさんをガシッと捕らえる。


 「えっ? 何で私も? 私は関係ないわ!」


 マイさんは声を張り上げるが、誰も何も語らず、無視するように彼女を引きずって行く。


 僕とマイさんは、お説教を受けるために、恐怖の別室へ連れて行かれると、その部屋には、シャルたちだけでなく、イツキさんもいた。

 僕とマイさんは恐怖で震え上がる。

 そして、別室の扉がゆっくりと閉じられる。


 「「た、助けてー!!!」」


 僕とマイさんの悲鳴だけが、室内で反響するのだった……。

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