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うちの神様の間違った転移でおおごとに! 女神の使いにされて、僕を頼られても困るのだが……。  作者: とらむらさき


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239話 金ちゃんのおなら作戦

 「ケイト様。『金ちゃんのおなら作戦』の準備が整いました」


 「ありがとうございます。では、作戦開始の指示があるまで待機していて下さい」


 「はっ!」


 ケイトのところへ報告に来た兵士は、敬礼をすると、持ち場へと戻って行った。


 (フッフッフ。僕のおならの見せ所だね)


 金ちゃんは、腕を組んでドヤ顔を見せる。


 「「「えっ?」」」


 僕とケイト、イーリスさんは、まだ作戦内容を教えていないのにドヤ顔をする金ちゃんを見て、戸惑った。


 「えーと、金ちゃんには、まだ作戦内容を教えてないよね?」


 僕は首を傾げる。


 (大丈夫。おならなら、いつでも出せる準備は出来てるよ。で、どう使うの?)


 「「「……」」」


 僕たち三人は、唖然とする。

 全然、分かっていなかった。


 「金ちゃんのおならは使わないよ」


 (えっ!? どうして?)


 金ちゃんは驚くと、僕たちに向かって首を傾げた。


 「金ちゃんのおならから発想したから、ケイトが『金ちゃんのおなら作戦』って、命名しただけだよ」


 (なら、僕のここに溜まったものの行き場は?)


 金ちゃんは眉間に皺を寄せて、お腹をさする。


 「どこか遠くで出してきなさい。ハァー」


 イーリスさんは、こめかみを押さえながら溜息を吐いた。


 (ここで出しちゃダメ?)


 「「「ダメ!」」」

 「「「「「ダメ!!!」」」」」


 僕たち三人が答えると、近くにいた皆も、大きな声で答えた。


 (一人じゃ淋しいし、怖いから、誰かついて来て)


 金ちゃんはモジモジとしながら、こちらを見る。

 皆は顔を逸らして、聞かなかったことにした。


 (ひ、酷い。こうなったら、ここで)


 「「「「「待ったー!!!」」」」」


 金ちゃんを皆が止めに入る。

 そして、僕たちは、誰が金ちゃんについて行くかを揉めだす。

 だが、なかなか決まらないでいると、金ちゃんが片足でパタパタと地面を叩き、苛立ちを見せ始める。


 (ねえ、まだ決まらないの? 早くしてよ)


 偉そうにする金ちゃんに、僕は少しイラっとした。


 「もうちょっと待って! すぐに決めるから」


 僕が返事をした後も、なかなか決まらない。

 すると、金ちゃんは揉めている僕たちの輪の中に頭を潜り込ませてくる。


 (なかなか決まらないので、僕の独断と偏見で決めるね)


 「「「「「えっ!?」」」」」


 彼の言葉に、僕たちは驚き、青ざめる。

 ゆっくりと品定めでもするように、僕たちを一人ずつ見つめていく金ちゃん。

 彼の視線が向けられると、誰もが目を合わさないように顔を逸らす。

 皆が顔を背けるので、誰にするかを決めかねている。

 当然、僕も目を合わさないように顔を逸らしていた。


 (誰にしようかな、ツバキちゃんの言う通り、主はヘタレだ、柿の種)


 なんで、僕の悪口が入ってるんだ……。

 皆を順に指していった金ちゃんの指は、リンさんで止まった。


 ギロリ。


 リンさんは、金ちゃんを睨みつける。


 (コホン。もひとつおまけに、あっぷっぷ)


 気まずそうに歌をつけ足した金ちゃん。

 その指は、イーリスさんで止まった。


 ギロリ。


 イーリスさんも金ちゃんを睨みつける。


 (……コホン。主がおぼれて、あっぷっぷ)


 さらにつけ足した金ちゃん。

 その指がマイさんで止まると、ホッとした表情を浮かべた。


 (マイ様に決まりました)


 「ちょっと、おかしいわよ! 都合良く歌をつけ足して、リンちゃんとイーリスちゃんを故意に避けたわよね?」


 (そんなことはない。ツバキちゃんの言う通りなんだから、クレームはツバキちゃんに言って)


 「歌の長さを調整してたのは、金ちゃんよね?」


 パチパチパチパチ――。


 早くやり過ごしたかった僕たちは拍手をして、マイさんに押し付けることを暗黙の了解で決意したのだった。




 金ちゃんとマイさんが手をつないで、木立の奥に消えていくのを見守ってから、イーリスさんが『金ちゃんのおなら作戦』の説明を始める。


 「今回の作戦は、砲撃部隊によって敵軍へ催涙弾を打ち込み、その隙に前線の部隊とガスマスクを装着した後続の部隊が入れ替わり、催涙弾で混乱している敵への攻撃をします。そして、こちらの攻撃が始まった後は、金ちゃんが敵軍の魔獣たちに「聖地オウルとの中間地点まで撤退」との念話を送ります。その後、魔獣たちが撤退していくのを確認したら、こちらはさらに攻撃を強め、敵軍に対しての優勢を取るのが全容です」


 彼女の説明に、皆はフムフムと頷く。


 「何か作戦内容での質問はありますか?」


 イーリスさんはゆっくりと皆を見回すと、レイリアが手を挙げている。


 「レイリア。何か気になるところでもありましたか?」


 「この作戦は、いつ開始するのですか?」


 レイリアからケイトへと、イーリスさんは視線を移した。

 すると、ケイトは彼女に向かって大きく頷く。


 「準備は整っていまので、すぐにでも開始できます」


 「???」


 レイリアは首を傾げる。


 「レイリア? 何か疑問でも?」


 「えーと、金ちゃんがいないんですけど」


 「「「「「あっ!!!」」」」」


 皆は木立のほうへ視線を向けた。

 まだ戻ってくる気配はない。


 「では、銀ちゃんが代りに念話を送って下さい」


 銀ちゃんは、イーリスさんに向かって、首を横に振る。


 (きっと、金ちゃん、拗ねちゃうよ)


 「「「「「……」」」」」


 予想できる光景が浮かんだのか、皆は黙ったまま頭を抱えるのだった。




 皆で木立を見つめ、金ちゃんの帰りを待っていると、スッキリした顔をした金ちゃんが、草木をかき分けて現れた。

 すると、皆から視線を浴びていることに気付いた金ちゃんは、その場で立ち止まり、モジモジと恥ずかしがる。


 「さっさと来なさい!」


 (ひゃい!)


 イーリスさんに怒鳴られると、彼は走って向かってくる。

 だが、一緒に行ったマイさんの姿が見えない。


 「金ちゃん、マイさんは?」


 (えっ?)


 僕が尋ねると、彼は驚いて後ろを振り返った。


 (あれ? いない)


 「「「「「……」」」」」


 マイさんを忘れてきた金ちゃんに、僕たちは呆然とする。


 カサッ、カサカサ。


 木立のほうから草木のこすれる音がすると、マイさんがゲッソリとした顔で現れた。

 その顔を見た僕たちは、外でもそんなに臭かったのかと青ざめる。


 「もう、付き添わないわよ。次は他の人にしてね」


 こちらに来たマイさんは元気なく言うと、装甲車のステップに座り込んでしまう。

 金ちゃんに視線を向けると、彼は恥ずかしそうに照れていた。


 (張りきりすぎちゃった。テヘッ)


 「「「「「張りきるなー!!!」」」」」


 僕たちは叫んだ後、襲ってきた疲労感で、うなだれるのだった。




 金ちゃんが戻ってきたことで、作戦が開始されることとなった。

 ケイトが無線機に向かって、「作戦開始」と号令を掛けると、催涙弾が砲撃部隊から一斉に放たれる。

 催涙弾は敵陣に落ちると、白い煙を立ち昇らせ、その煙は見る見るうちに広がり、敵陣を包んでいった。

 敵兵たちは目や口を覆って悶え苦しんでいる。


 ズガガガガ、パパパパパ――。


 その混乱の中を後続のガスマスクを着けた部隊が装甲車と共に銃撃をしながら、前線の部隊と入れ替わった。


 「金ちゃん、今です?」


 (??? 何が?)


 イーリスさんの号令に、金ちゃんはキョトンとした顔で首を傾げると、彼女の顔を見つめる。


 「何がって……。敵の魔獣に撤退命令を出すんです!」


 (えっ? なんで?)


 「あっ! イーリスさん、金ちゃんはいなかったから、作戦内容を知らないんだよ!」


 「あっ!」


 僕が答えると、彼女も気が付いたようだ。


 「金ちゃん。敵の魔獣に「聖地オウルとの中間地点まで撤退」と念話を送って下さい。金ちゃんの役目は、この作戦のかなめですよ」


 (なんですとー!)


 イーリスさんの言葉に、金ちゃんは叫び声をあげると、張りきるように片腕を回してから魔獣たちを見つめ、集中を始めた。

 僕たちはそんな彼を見て、少しホッとする。


 (お前たち、態勢を立て直す。聖地オウルとの中間地点まで撤退だ!)


 金ちゃんが念話を送ったのを聞いた僕たちは、魔獣たちを注視して、作戦が上手くいったのかを見守る。

 最初はオドオドとしていた魔獣たちだったが、悶え苦しみながら下がってくる最前線の兵士たちと催涙弾の煙が近付いてくるのを確認すると、後退を始めた。


 「良し!」


 作戦は成功だ!

 僕はガッツポーズをとった。


 魔獣たちが後退を始めたことで、敵軍全体も後退を始める。

 だが、聖地オウルとの中間地点まで到着すると、足を止めて待機をする魔獣たちによって、街道が詰まり始めた。


 「イーリスさん。前線を押し進めて!」


 「はい!」


 イーリスさんは、ケイトから無線機のマイクを渡されると、前線の部隊に命令を出す。


 「イーリスさん。魔獣たちが待機している聖地オウルとの中間地点を中心に、広範囲で砲撃もしたほうがいいです」


 ヒーちゃんは、僕の言葉を捕捉するようなアドバイスを、彼女に与える。


 「はい、ヒサメ様」


 持っていたマイクに向かって、イーリスさんは砲撃部隊にも命令を出した。


 ドーン、ドーン、ドーン――。


 砲撃部隊が切れ間の無い連続砲撃を始めると、中間地点を中心とした広範囲で煙が上がりだす。

 その攻撃と連動するように、上空ではグリュード竜王国軍が敵の飛竜部隊とプテラノドンたちを追い込んでいた。

 イーロさんが地上の作戦に合わせて、機転を利かした用兵を行ったようだ。




 敵軍に大々的な損害を与え、『金ちゃんのおなら作戦』は大成功に終わった。

 敵軍は中間地点よりもさらに後方に下がり、布陣を敷きなおしている。

 こちらの前線の部隊は、中間地点まで進み、そこで敵軍と睨み合うような態勢を整えた。

 僕たちは敵陣跡に布陣を敷くと、ケイトとヒーちゃんを中心とした調査隊が編制され、敵が残していった武器や装備品などの調査が始められていた。


 敵との交戦が止んでいる間に、兵士たちには交代で休息を取らせる。

 もちろん、僕たちも休息をとる。

 イーロさんたちも、一部の部隊を残して、地上に降り立つと休息に入った。

 イーロさんとシリウスが肩を並べてこちらへ歩いてくると、オルガさんが二人のお茶を用意し、手渡す。

 二人は装甲車の脇に並べられた椅子に腰を下ろすと、そのお茶を飲み、ホッとした表情を見せた。

 二人の表情を見るに、『金ちゃんのおなら作戦』が成功しなかったら、かなりヤバい状況になっていたのかもしれない。

 二人の穏やかにな顔を見て、僕も成功に終わって良かったと安堵した。




 イーロさんとシリウスをねぎらっていた僕のところに、ケイトとヒーちゃんに同行していた金ちゃんと銀ちゃんが駆け寄ってくる。


 「「「!!!」」」


 二人が頭の上にハウゼリア新教国の聖騎士の金色にか輝く兜をくくり付けていることに、僕とシリウス、イーロさんの三人は驚いた。


 「金ちゃん、銀ちゃん。その頭の上のは?」


 ((戦利品。カッコいいでしょ))


 「いや、頭の上に頭を乗せているみたいで微妙」


 ((!!!))


 僕が素直に答えると、二人は驚く。


 (ヒサメお姉ちゃんとケイトはカッコいいって……)


 (騙された……)


 金ちゃんと銀ちゃんは、その場で崩れ落ちた。

 きっと、二人の相手をするのが面倒くさくなったヒーちゃんとケイトが、適当に返事をして、あしらったんだな。


 僕は、崩れ落ちている二人を哀れむように見つめた。


 (クソッ、こんな兜……)


 金ちゃんは、頭の上の兜を地面に叩きつけようとした手を、途中で止めた。


 (これは、質入れだ!)


 (そうだね)


 銀ちゃんが相槌を打つと、二人はその兜を収納魔法でしまう。

 質入れって……。

 今度は呆れるように、僕は二人を見つめた。


 気を取り直したのか、二人はスクッと立ち上がると、僕のそばに来て、金ちゃんが収納魔法で何かを出した。


 「!!!」


 彼の手に持たれていたのは一五〇センチくらいの長さの銃身と一部を除いて木製で造られた銃だった。


 (敵が種子島を落としていってたから、見せに来たんだった)


 金ちゃんは得意げな顔をする。

 種子島? ああ、火縄銃のことを言いたいのか。っていうか、なんで、そんなマニアックな言い方を知っているんだ……。

 僕は眉間に皺を寄せ、金ちゃんを見つめてから、その銃を注意深く観察した。


 「これ、火縄じゃなくて、火打石がついてるから、マスケット銃だよ」


 (えっ? 違うの?)


 何故か、ガッカリする金ちゃん。


 (日本に持っていけば、骨董品として高く売れると思ったのに……)


 そして、本音を漏らしながら肩を落とす銀ちゃん。

 こ、こいつらは……。

 僕はマスケット銃でも価値はあるのではと思ったが、二人が日本に持ち込むと銃刀法などの面倒なことになりそうだったので、黙っていることにした。


 いつの間にか、僕の隣に来たイーロさんとシリウスが、その銃を覗き込んでいた。


 「何か銃らしき武器を使っている者がいたのは気になっていました。こんな武器を持っていたとは」


 シリウスが口を開く。


 「上空からも確認していましたが、こちらの銃よりも威力や精度は低いようでした」


 すると、イーロさんが補足するように答えた。


 「それでも銃だから、ヘルゲさんたちにも敵が銃を持っていることを報せておくよ」


 僕の返事に二人は頷く。

 そして、僕はイーリスさんを呼んで、銃のことをこちらに向かっている部隊にも報せるように頼むのだった。

お読みいただき、ありがとうございます。


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