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うちの神様の間違った転移でおおごとに! 女神の使いにされて、僕を頼られても困るのだが……。  作者: とらむらさき


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231話 拠点建設ではなく、再開発なのでは?

 呪教徒の村での軍事拠点の建設が始まって数日が経った。

 僕が訪れた初日の静かであった村は、毎日が騒がしくなっていた。

 翌日から大勢の工兵を中心とした兵士が乗り込んできたこともあるが、重機やら機材やらが運び込まれたことのほうが原因な気がする。


 ズガガガガ。ガコン、ガコーン。ドドドドド――。


 突貫工事なので仕方がないとはいえ、工事の騒音が絶え間なく聞こえてくる。

 僕は、一時的に間借りしている宿屋の窓から外を眺めていた。

 僕の知らない間に開発されたブルトーザーやショベルカーが、宿屋の前の通りを我が物顔で走り去っていく。

 なんで、異世界を大型重機が闊歩(かっぽ)しているんだ……。

 最近は、こんな光景にも慣れたと思っていたが、さすがにファンタジーな世界に大型重機という組み合わせは、違和感に頭の処理が追いつかない。

 そんなことを思っていると、クレーン車が通り過ぎて行く。

 クレーン車まで……。




 コンコン。


 部屋の扉が叩かれる。


 「どうぞ」


 僕が返事をすると、イーリスさんとケイトが入って来た。


 「フーカ様。ヘルゲ様からの報告が入りました」


 「うん、教えて」


 僕は少しでも騒音を防ぐため、窓を閉めると、イーリスさんに向かって僕は頷いた。

 彼女は椅子に座ると、書類をめくる。


 「私たちが出航するのと同時にハウゼリアの領土へ侵攻した我が軍は、順調に進軍し、近隣の集落から制圧を進めているとのことです」


 「住民もハウゼリア新教徒だと思うけど、住民からの抵抗を受けたりとか、その辺は大丈夫なの?」


 「はい。長きにわたる重税のせいか、貧しい暮らしの者が多く、信仰心は薄らいでいるようで、抵抗はないそうです」


 彼女は書類をめくり、眉間に皺を寄せた。


 「重税を課して、信仰心を弱めるなんて、本末転倒だね」


 「ええ。東大陸のハウゼリア領土は、制圧された時にハウゼリア新教へ改宗させられた者も多いでしょうから、こちらの本土ほど熱心な教徒は少ないとも考えられます」


 「なるほど」


 僕が苦笑すると、彼女も苦笑した。




 「次は私の番です」


 ケイトがニッコリと微笑む。


 「その前に、あれは何?」


 僕は、たまたま通りを走って行くダンプカーを指差した。


 「いやー。重機やトラックの開発が間に合って良かったですよ。あれがなかったら、工兵も今の倍は必要ですし、作業効率もこれほど良くなかったですからね」


 「いやいや。そうじゃなくて、あんなのが完成してるなんて聞いてないけど」


 「フーカ様がうるさいから、報告は上げてましたよ」


 「???」


 澄まして答えるケイトに、僕は首を傾げた。


 「あー、その件ですが、金ちゃんと銀ちゃんが溜め込んでいた報告書の中に、重機やトラックが完成して工兵部隊に配備する旨の報告が入っていました。まだ、全部の報告書を整理できていなかったので……」


 イーリスさんが気まずそうに答えた。


 「あいつら、そんなに溜め込んでたの?」


 「はい……」


 彼女が苦笑すると、ケイトも苦笑する。


 「ということは、今回、持ってきた装甲車両や戦車の報告もされてなさそうですね」


 ケイトはうなだれる。


 「装甲車両と戦車の報告書は、今、整理をしています」


 「そうなんですか……」


 イーリスさんに向かって、ケイトは顔を引きつらせた。


 「金ちゃんと銀ちゃんから渡された報告書は、適当に収納魔法でしまったらしく、項目や順番が滅茶苦茶で、まとめるのが大変なんです」


 「「ハァー」」


 二人は同時に溜息を吐いた。


 「ケイト。金ちゃんと銀ちゃんに預ける時は、紐でくくるなりしてまとめたほうがいいよ」


 「私、各報告書ごとに紐で縛って、まとめたんですけど……」


 ケイトは頬を掻きながら、気まずそうに答えた。


 「ということは、二人が興味本位で紐をほどいて報告書を見て、そのまま、元に戻さすしまい込んだのか……」


 僕はうなだれた。


 「「「ハァー」」」


 そして、三人で溜息を吐いた。




 その後、僕とイーリスさん僕のは、ケイトの案内で工事の視察に向かう。

 まずは港の建設予定地からだった。

 そこでは、木造の桟橋は壊され、新しくコンクリート製の桟橋が海に向かって伸びていた。

 そして、その周りも大々的に工事が行われており、僕が最初に見た景色は微塵もない。


 「ケイト、村の港としては、大掛かり過ぎない?」


 「そんなことはないです。この村は、『呪教徒の村』と呼ばれていたことを払拭(ふっしょく)して、『ハウン市』になるんですから、見栄えは大事です」


 「ハウン市?」


 僕は、ケイトに向かって首を傾げた。


 「まだ、エリンヴィーラ様から聞いていませんでしたか? 呪教徒の村は、ここだけでなく、西と南にもあるので、この村と合わせた三つの村を合併させて、ハウン市とすることにしました」


 「い、いつのまに……」


 「ただ、規模が大きくなると管理が難しくなるので、この村の一帯を中央区、西の村の一帯を西区、南の村の一帯を南区に別けることになりました」


 「そ、そうなんだ」


 僕はイーリスさんを見る。

 すると、彼女はコクリと頷く。

 なんで、僕だけが知らされていないのだろう……?


 「僕は初耳なんだけど」


 「エリンヴィーラ様がフーカ様に直接お話しするはずなのですが……」


 イーリスさんが首を傾げると、ケイトも首を傾げた。


 「もしかしたら、中央区だけでなく、西区と南区のこともあるので、そちらの村長にインフラ設備や新しくできる施設などの説明をするのに忙しくて、手が回らないのかもしれんせんね」


 ケイトが憶測を言う。


 「確かに、こっちの人には初めての物ばかりだろうから、説明にてこずりそうだね」


 僕もそんな気がして納得した。




 次は、馬車に乗り、通りを戻って、村と樹海の境界線に造られている軍事拠点の建設現場へ向かう。

 村を通って港と拠点を結ぶ通りも工事が始められており、通りが拡張された時の広さに合わせて、住民たちの住居が今よりも下がった位置に建築中だった。


 「ねえ、ケイト。これって、拠点建設ではなく、再開発なのでは?」


 「そ、そんなことはないですよ。軍事拠点を造るんですから、周りにもそれなりの設備が必要なんです」


 ケイトの表情に焦りが見えた気がした。


 「ねえ、ケイト。あれは何を建ててるの?」


 僕は大きな建物を建てようとしている工事現場を指差す。


 「あれは病院です」


 「あっちは?」


 「あっちは学校です」


 病院はともかく、学校って……。

 まあ、住民への見返りもないと、軍事拠点なんて、置いてもらえないか。


 「ん? あそこの学校のそばのひときわ広いところは?」


 「あそこは公園です」


 「公園なのに、何か大掛かりすぎない?」


 「野外ステージに、博物館と美術館も建てますからね」


 「……ケ、ケイト? 村の再開発になってるよね?」


 「ち、違います。拠点建設の一環です」


 彼女の目が泳ぎまくっている。

 頑なに認めない彼女を、僕は不自然に思った。

 しかし、今は黙って見過ごすことにし、車窓から見える再開発としか思えない点在する工事現場を見つめる。

 何か、他にも造っているような……。




 まだ舗装が済んでいない道のため、サスペンションが装備された馬車でも、大きく揺れる個所があった。

 色々と余計なものに手を掛ける前に、道の舗装が最優先な気がする。

 そんなことを思っていると、唸るような機械音や大勢の人の声が聞こえてきて、外が騒がしくなっていく。

 車窓から外を見ると、今まで見てきた中で最も大々的な工事が辺り一面で行われていた。


 「な、なんか、凄い」


 僕はつぶやいた。


 「当然です。ここに軍事拠点を造っているんですから」


 ドヤ顔を見せるケイト。


 「かなり大きな拠点を造るんだね」


 「この現場の向こう側が樹海なんですよ。住民の話しでは、人を襲う獣などもいるらしく、拠点だけでなく防壁も造って、こちら側に来ないような対策もしてますから」


 「なるほど」


 僕が納得すると、馬車が静かに停まった。

 馬車から降りた僕たちは、視察を始める。

 そこでは、重機があちらこちらで穴を掘ったり地面をならしていた。

 空を見上げれば、クレーンで吊るされた重い荷物が浮遊するように移動している。

 まるで、日本で見る工事現場そのままだ。


 工事現場の先には樹海の入り口が見え、そちらでも重機が樹海を切り開く作業をしており、その中央では樹海の中に向かって重機が作業をしながら進んでいた。


 「樹海を壊してるの?」


 「いえ、手前の範囲は樹海と拠点の緩衝地帯として広げているだけです」


 ケイトが指を差しながら答える。


 「あの樹海の中に入って行くブルトーザーとショベルカーは?」


 「あれは樹海を突き抜ける安全な道路を造っています。ここからハウゼリアに進軍する際にも使うため、急ピッチで造っています」


 僕は樹海の中の様子を見ようと、遠くを見るように目を細めた。


 「なんか、道路工事にしては、深く掘りすぎているようだけど」


 「獣が道を横断して事故が起こらないように、線路は道の地下を通すことにしました」


 「なるほど。道路の真下に地下鉄を通すんだ。……ん? ここ、列車が走るの?」


 「そうですよ」


 ケイトは僕を不思議そうに見つめる。


 「なんで?」


 「ハウン市からの輸送ルートが樹海を突き抜ける道だけでは不便ですし、列車なら大量輸送もできますから」


 いや、そういう意味じゃないんだけど……。


 「拠点から進軍するのに、そこの道路を使うんだよね?」


 「そうですけど」


 「なら、線路は何に使うの?」


 「列車を通すためです」


 「……」


 そういうことを言っているんじゃないんだけど……。


 「えーと、そうじゃなくて。線路を通しても、僕たちは使わないのに造ってるの?」


 「後から造るとなったら大変ですよ。一緒に造ってしまったほうが効率的です」


 確かにそうだけど……。

 イーリスさんが僕の肩をポンポンと優しく叩き、首を横に振った。

 言っても無駄だということか……。


 「う、うん、分かった」


 納得は出来ないけど、スルーすることにした。


 そして、視察を終えると、どこか腑に落ちないと思いながらも、僕は二人と共に、宿へと戻るのだった。



 ◇◇◇◇◇



 ハウン市に滞在して数週間が過ぎた。

 その間に泊まっていた宿も別の場所に移転されると、鉄筋五階建てとなり、ホテルと呼ぶほうがふさわしくなってしまった。

 僕は、その新築となった宿のスイートルームに移っていた。


 窓から外を眺めると、訪れた時の村の面影は微塵もなく、宿の前に合った通りは、拡張と舗装がされ、立派な道路へと変貌し、その道の両脇には、色鮮やかで可愛らしい立派なお店が建ち並び、商店街と化している。

 そして、商店街の裏側には、区画整理のされた住宅街ができ、村の再開発が行われたとしか思えない光景が広がっていた。

 ここ、中央区だけでなく、少し掘れば温泉が出ることが確認された西区と鉱脈があることが確認された南区も、コンセプトにあった再開発が、ケイトによって行われていることだろう。

 拠点建設の一環と言っておきながら、結果は再開発じゃないか……。

 脳裏にとぼけ顔で微笑むケイトが浮かぶと、窓に額をつけて、大きく溜息を吐いた。




 コンコン。


 扉が叩かれ、イーリスさんが入って来た。


 「ヘルゲ様からの報告で、東大陸のハウゼリア新教国の領土は全て制圧したとのことです。そして、この島への侵攻作戦へ向けて準備を整えているとのことです」


 「うん、分かった。ヘルゲさんには、多少時間を費やしてもいいから、十分な準備を整えるように言って」


 「はい、かしこまりました。ハウゼリアはここに拠点を造られたことを、未だ気付いていないようですから、ヘルゲ様たちを急かせることもないですからね」


 「そうだね。っていうか、こんなに盛大な工事をやってるのに、気付かないハウゼリアもどうかと思うけどね」


 「確かに、そうですね……」


 僕とイーリスさんは、顔を見合わせて苦笑した。




 「ところで、最近、金ちゃんと銀ちゃんの姿をあまり見かけないけど、相変わらず遊びまくってるの?」


 僕は世間話のつもりで話し掛けたのだが、イーリスさんが困惑した表情を浮かべた。

 おいおい……。


 「えーと、何かやらかしてるの?」


 彼女は僕のそばに来ると、公園にある完成した野外ステージを指差す。


 「やらかしてはいないんですが、あのステージが完成してから、毎日、きつねのダンスを住民に教えています」


 「そんなことをしてるの?」


 「はい。エリンヴィーラ様が国を興した時に必要になると、シャル様たちを巻き込んで、それは盛大に……」


 「……」


 再び苦笑するイーリスさんを見て、僕も苦笑した。


 「エリンさんのことを出されて、皆、断れないんだ」


 「はい。それに、ケイトとアンも、金ちゃんと銀ちゃんに同調しているので……」


 「……」


 なんで、二人が……?

 ケイト、金ちゃん、銀ちゃんの三人なら、何か悪だくみを考えていてもおかしくないのだが、アンさんも入っているとなると、たまたまアンさんが三人と意見があっただけな気もする。

 僕は、四人の間で何かがなされているのでは? と疑ってみたものの、四人が結託するだけのことが思い浮かばず、考えるのを諦めた。

 しかし、何かモヤモヤとしたものが胸につかえるのは、何故だろう?

お読みいただき、ありがとうございます。


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