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うちの神様の間違った転移でおおごとに! 女神の使いにされて、僕を頼られても困るのだが……。  作者: とらむらさき


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214話 マスコミ

 バルベ領に着いた僕たちは、城へは寄らずに、シュミット領からの進軍を防いでいる前線の兵站(へいたん)基地へと向かった。

 基地は後方に設営されているのだが、そのそばに近付くと、上空からは戦場となっている場所から煙が上がっているのが見え、爆発音がかすかに聞こえてくる。

 僕は双眼鏡を取り出し、その方角を覗く。

 飛行している魔獣は見えなかったが、地上では地竜などの魔獣たちが隊列を組んで歩みを進めている。

 そして、兵士たちと連携を取りながら、味方に攻撃を加えていた。

 こちらの兵は、火砲の支援を受けて、なんとか持ちこたえているようだ。

 それにしても、魔獣の数が多い。

 その数はざっと見ただけでも、以前の倍以上はいそうだ。

 隊列を組んでいるせいか、以前のような迫力はなかったが、これはこれで厄介なことになりそうな気がした。


 「うへー、これはまた、多いですね」


 ケイトも双眼鏡を覗き込みながら、変な声を上げた。


 「なんとかなりそう?」


 「そうですね……」


 彼女は双眼鏡を覗き込んだまま、考え込む。


 「まずは、銀ちゃんの敵軍ホイホイで動きを止めてから、新兵器で片っ端から攻撃するしかないですね。ムフ」


 ムフって……。

 彼女はこの状況で、新兵器を試せることが嬉しいのかニヤニヤしていた。


 「敵軍ホイホイって敵兵を一網打尽にするんじゃなかった?」


 「この状況では、そんなことを言ってられませんよ。まあ、魔獣と一緒に罠にはまった兵士は運が悪かったということで」


 運が悪かったって……。

 あっさりと答える彼女に、僕は顔を引きつらせる。


 「ただ……」


 「ただ?」


 「飛行する魔獣が見当たらないのが、解せません。見てみないと対策が練れませんよ」


 「温存しているのかな? それとも、僕たちが来たことに気付いて隠したのかな?」


 「おそらく、温存しているんじゃないですか。まあ、温存というよりは運用に不慣れで、使いどころが分からないんじゃないかと思いますけど」


 「なるほど。ワイバーンとは違うからね」


 「そういうことです。飛行する魔獣に兵士を乗せていた報告は来てませんから、きっと、人を乗せる訓練は出来ていないんですよ。だから、飛ばしたはいいが、この魔獣でどうすればいいんだ? みたいな感じだと思いますよ」


 ケイトの言葉に、僕は納得した。




 基地へと降り立つと、兵士たちが忙しく動き回っていた。

 僕たちのことよりも、迫りくる敵に対しての対応で大変そうだ。

 アスールさんから降りると、彼女が人の姿になるのを待ってから、本部となっている建物へと向かう。

 複数のテントと簡易的に建てられた複数のプレハブのような木造建築物の前を通り過ぎ、周りよりも大きめの建物の前に到着した。


 「フーカさんが教えてくれた一夜城の経験が、しっかりと定着していますね」


 周りの建物を見ながら、シャルが感心するように口を開く。


 「テントだけじゃなく、建物があったほうが拠点としては何かとバンがいいだろうからね」


 「そうですね。ところで、隣のあの建物は何でしょう? 『報道陣待機所』と書かれていますが」


 彼女の視線の先を、僕も見る。


 「こっちの世界には、新聞とか、報道関係の会社って、まだ出来てなかったよね?」


 僕は、その建物からケイトへと視線を移す。


 「カメラはもうじき出来そうなのですが、写真に使う紙の開発と印刷技術が遅れているので、マスコミの会社ができるのは、それらが普及してからのはずです」


 「でも、あれは?」


 「うーん。報道陣って書いてありますね……」


 僕とケイト、シャルの三人は、不思議そうにその建物を見ていると、木製のマイクと大きな箱を肩から下げている数人の男女が建物から出て来る。

 その中には、エルフや獣人の人たちまでいる。

 そして、僕たちは彼らと目が合った。

 すると、彼らはこちらに向かって走り寄ってくる。


 「フーカ陛下ですね。私はプレスディア国営放送、国際社会部のクリエラと申します。いくつか、ご質問に答えてもらえないでしょうか?」


 エルフの女性が、僕たちにマイクを向けてくる。

 今、プレスディアと言った。

 僕は後ろを振り返り、サンナさんとハンネさんを従えて歩いているエルさんを見る。


 「「「!!!」」」


 彼女たちはこちらに気付くと驚き、そそくさと顔を逸らして隠れるように本部の建物の中に逃げて行った。


 「フーカ陛下、リンスバック新聞社のカールスと申します。私の質問にも答えてもらえないでしょうか?」


 クリエラさんの隣に来た男性がマイクを向けてくる。

 今度はリンスバックだ。


 「アルセ通信社のエリスです。こちらにもお願いします」


 アルセまで出てきた。

 僕は、再び振り返り、イーリスさんとマイさんを探した。

 二人は、僕たちに群がる人たちを見て、何事かと不思議そうに近付いてくる。


 「フーカ様? どうしました?」

 「フーカ君? この人たちは?」


 二人は続けざまに質問をしてきた。

 こっちが知りたいんだけど……。


 「マスコミ……報道の人たちみたい。プレスディア国営放送とリンスバック新聞社とアルセ通信社って言ってるんだけど」


 「「……」」


 二人は呆然として固まった。

 二人も知らされていなかったようだ。


 「おそらく、エル様とリネット様、ネネが関わっていそうですね」


 マイさんの後をついてきたイツキさんが答える。


 報道陣待機所からは、続々と人が出てくる。

 彼らは、ビルヴァイス国営通信、クレイオ国営新聞、ガイハンク報道機関、ドラゴンプレスと名乗っていく。

 なんだか、プロレス技みたいなのが混じっていたが、グリュード竜王国の会社なのは、察しがついた。

 周りを囲まれ、マイクを向けられている僕たちは、対応に困った。


 「陛下、魔獣の大群が押し寄せていますが、どう、対処するおつもりですか?」


 「イーリス様、魔獣に対して何か策はあるんですか? 同郷のよしみで教えてくれませんか?」


 「ケイト様、今回の戦いで、新兵器の使用は考えておられるのですか?」


 困惑する僕たちのことはお構いなしに、次から次へと記者からの質問が浴びせられる。

 こういう時に限って、金ちゃんと銀ちゃんの姿が見当たらない。

 辺りを見回して探すと、二人は本部の建物の扉から、顔を半分出してこちらを覗いている。

 そして、二人と一緒に、ブレンダさんとルビーさん、レオさんなどの姿も見られ、彼女たちは隠れるようにこっちの様子をうかがっていた。

 あなたたちの国の記者もいるんですけど……。


 記者たちの質問に対して、むやみに答えられない僕たちが沈黙を通していると、アンさんが数人の兵士を連れて、こちらへと向かってきた。


 「悪いですが、これから会議がありますので、フーカ様たちを解放して下さい。おって、発表がなされると思いますので、それまでお待ちください」


 アンさんは、記者たちに向かって話すと、僕たちを兵士で囲むようにして、本部の建物まで連れて行ってくれた。

 助かった。だが、なんで、マスコミが出来ているんだ……?




 本部の建物の会議室では、うなだれるケイトを金ちゃんと銀ちゃんが慰めていた。


 「ケ、ケイトはどうしたの?」


 ((先にマスコミを作られて、ショックを受けてる))


 金ちゃんと銀ちゃんが答えた。


 「そうだった。エルさん……いや、他にも心当たりがある人はいると思うけど、あの記者たちは何だったの?」


 僕が皆を見つめながら質問をすると、エルさんを始め、心当たりのある人たちが目を泳がせてから、顔を逸らした。


 「報道機関の設立を、皆に提案したのはエルさんなんじゃないの?」


 エルさんは驚いた表情で僕を見ると、サンナさんとハンネさんと共に首を横に振る。


 「ち、違うわよ。言い出したのはネネちゃんとリネットちゃんよ。私たちはそれに乗っかっただけよ」


 彼女が口を開くと、ブレンダさんとルビーさん、レオさんたちも気まずそうな表情で頷く。


 「別にダメなわけじゃないんだけど、教えておいてくれないと、こっちが混乱するんだけど」


 「私たちは、いつも同じ目に遭ってるわよ」


 「うっ……」


 それを言われると、返す言葉がない。


 「えーと、でも、うちの国には、まだ、報道官とかマスコミに対応する広報のような部署が用意されていないのに、急に記者たちに押し寄せられて質問されても、話してもいい話題なのかとか困るんだよ」


 「……報道官? 広報?」


 エルさんが首を傾げると、他の人たちも首を傾げた。


 「ま、まさか、聞かれたことをベラベラと話してたんじゃ?」


 「えーと、ダメなの?」


 再び首を傾げるエルさん。


 「ダメじゃないけど、話せる範囲を決めておかないと、今回の戦争で新兵器を投入するとか秘密にしておきたいことを記者たちに話して記事にされたら、敵国にもバレるよね」


 そう言えば、ケイトに新兵器のことを聞いていた記者がいたような……。

 僕はジーとエルさんたちを見つめると、彼女たちは目を泳がせる。


 「もう、色々と話しちゃってるんだ……。イーリスさん、記者たちに記事にする予定の内容を聞いて、この戦いが終わるまでに、敵に知られたらいけないものがあったら、作戦に差し支えるため、こちらから記事にしてもいいと言うまで待ってもらって」


 「分かりました」


 イーリスさんが部屋を飛び出すと、エルさんたちは申し訳なさそうに沈んだ表情を浮かべる。


 「今みたいなことになるから、話す内容によっては段階を踏まえたりしないといけないんだよ。そのために専門の部署を作っておいて、そこを経由させることで、調整するんだよ。隠し事はダメだけど、何でも話してたら国民を混乱させてしまうこともあるんだから、慎重にこたえないと」


 「でも、フーカ君……。こんなことを私が言うのもなんだけど、発端は私の姪っ子とリネットちゃんなのよね。それって、こちらが原因のような気が……」


 マイさんが困り顔で話すと、そばにいたイツキさんが頭を抱えてしまった。


 「それは、分かってるよ。だから、皆を責める気はないし、ただ、気を付けないといけないことを言いたかったんだよ。ヒーちゃん、悪いけど、後でケイトと一緒にマスコミ対応のこととかを皆に教えてあげて」


 「はい」


 ヒーちゃんは返事をしたが、ケイトはコクリと頷いただけだった。

 まだ、先を越されたことを引きずってるのかな……。




 シリウスから前線の現状の報告をしてもらうと、会議が始められた。

 ハウゼリア連邦に攻め込まれてはいるが、敵軍ホイホイの設置予定場所には到達しておらず、敵軍が到達する前に設置できそうということで、話しが進められる。

 そして、金ちゃんか銀ちゃんに魔獣へ念話を送る試みは、言い出した金ちゃんが担当することになり、僕も付き添いという名の、おもり役でついて行くことが決まった。


 カーディア議会国のほうはどうなっているのだろう?

 僕はシリウスに尋ねようと彼に目を向けると、邪魔をするようにケイトが立ちあがる。


 「えー、カーディア議会国の状況ですが、あちらは派遣した我が海軍の船団が艦砲射撃による支援と、兵器や物資、増援やを送ったことで、敵を押し戻しているようです」


 僕の知りたいことをケイトが話し出した。


 「報告では、あちらにも魔獣はいるものの少数。こちらで報告されている飛行する魔獣や新種の魔獣も、現段階では見受けられていないとのことです」


 続けて話す彼女の言葉を、僕は真剣に聞く。

 カーディア議会国には、こちらほどの戦力を割く必要はないと判断されたのかもしれない。

 その分、こちらに戦力が回されているかもしれないと思うと、気が重くなった。


 (ねえねえ、こっちには艦砲射撃の支援はできないの?)


 金ちゃんが僕も聞こうかと思っていたことを質問してくれた。


 「距離が遠すぎます。なので、船団には誘導噴進弾を積んであるんですが、試験も終えていないのに、こんな距離を飛ばすので、調整に時間が掛かってます」


 それって、ミサイルだよね? ぶっつけ本番で、そんなものを飛ばして大丈夫なのか?

 僕は顔を引きつらせて、ケイトを見た。


 「フーカ様、何ですか、その顔は? ツバキ様とカザネ様も開発に協力してくれたんですから、大丈夫ですよ!」


 あの二人が絡んでいるなら、大丈夫……なのか?

 いまいち、信用できなかった。




 その後も色々と話しあった僕たちは、会議を終えると、それぞれが動き出す。

 銀ちゃんとケイトは、敵軍ホイホイ設置のために工兵と護衛の部隊、特戦群の一部を連れて、すぐにでも出発できる準備を始める。

 二人には、オルガさんとアスールさん、レオさんも同行することなった。

 一方で、僕は金ちゃんとアカネ姉ちゃんと共に、魔獣に念話が効くかを試すために出発の準備を始める。

 僕たちには、ヒーちゃんとアンさんがついてくることになったのだが、何故だか、エルさんやルビーさんたちもついてくることになってしまった。

 こちらの危険度が低いとはいえ、どこか、エルさんたちから物見遊山な感じがして、物凄く不安だ……。


 基地に残るシャルやイーリスさんたちは、ここで情報収集とハウゼリア連邦を押し返す準備を行いつつ、僕たちに何かあった時には、速やかに救援を送れるように待機する。

 僕たちの成果次第では、シャルの号令のもと、すぐに反撃作戦が開始される。


 そして、基地に残る皆に見送られながら、僕と金ちゃんの部隊は、銀ちゃんたちの部隊と共に出発した。

 銀ちゃんたちは敵分ホイホイの設置位置付近に到着すると、作業のために隊列を離れていった。

 僕たちは魔獣を見渡せる位置まで向かう必要があるため、最前線へ向けて、さらに歩みを進めるのだった。

お読みいただき、ありがとうございます。


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