205話 食べ物の恨みは恐ろしい
バスは僕たちを乗せて、葉山のほうへと走りだしていく。
皆は物足りなさそうに、通りに並ぶ様々なお店を、窓越しに眺めていた。
覗いてみたいお店もあっただろうに。カナデ姉ちゃんの強引なガイドのせいで、いまいちな感じがしてならない。
そんなことを思っていると、車内にカレーの食欲をそそる香りが漂ってくる。
窓は開けていないのに不思議だ。
グゥゥー。グルルルル。
僕の席の後ろから、豪快なお腹の音が鳴り出す。
((主、いい匂いがする。お腹すいた))
金ちゃんと銀ちゃんは、座席の頭越しにこちらを覗き込むと、悲しそうにする。
ん? そう言えば、昼食が省かれていないか?
僕は腕時計を見ると、針は午後三時を過ぎていた。
ま、まさか、昼食に時間が計算されていないのでは?
「カナデ姉ちゃん、昼食の時間がなかったけど、どうなってるの?」
「えっ? モグモグモグ」
こちらを振り返ったカナデ姉ちゃんは、その手にプラスチック製の大きな深皿とスプーンを持ち、頬張って膨らんでいる頬を動かしていた。
何故、バスガイドだけが食事をしてるんだ?
「ね、ねえ、何を食べてるの?」
「そりゃあ、横須賀に来たんだから、海軍カレーでしょ」
車内に漂うカレーの香りの正体が分かった。
そして、不思議そうに答えるカナデ姉ちゃんに、イラっとしてくる。
「僕たちは何も食べてないのに、なんで、バスガイドのカナデ姉ちゃんだけが食べてるんだよ」
「お腹がすいたからに決まってるでしょ」
再び不思議そうに答えるカナデ姉ちゃんにキレそうになるのを、僕はグッと堪えた。
「僕たちもお腹がすいてるんだけど」
「えっ? なんで買い食いしながら見て回らなかったの? 回ったところにも、お店はあったでしょ?」
「普通、ツアーだったら、お店を予約したりして、昼食の時間を取ると思うんだけど」
「普通って、常識にとらわれちゃダメよ。潤守観光の売りは非日常なんだから、他の観光会社と一緒にされても困るわよ」
「非日常の解釈が違うよ! どんな観光会社だよ!」
「こんな観光会社」
「……」
僕は怒りで頭がはちきれそうになり、身体をフルフルと震わせるだけで、言葉が出てこなくなった。
カナデ姉ちゃんは話しが終わったと思ったのか、前を向いて食べかけのカレーを黙々と食べ始めた。
皆は怒らないのかと周りを見ると、シャルたちはカナデ姉ちゃんの身勝手な言い分を聞いて呆けたようにキョトンとし、神職さんや巫女さんたちは頭を抱えて呆れている。
そうだ、ツバキちゃんは!?
僕が後ろを振り返ると、彼女はアンさんと一緒に、ピコピコハンマーを取り出して構えている金ちゃんとハリセンを取り出して構えている銀ちゃんを、しがみつくようにして止めていた。
金ちゃんと銀ちゃんは、カナデ姉ちゃんを殺る気だったようだ。
ツバキちゃんとアンさんが二人を止めていなかったら、車内に暴動が起きていたかもしれない。
レイリアとアスールさんは?
二人に目を向けると、レイリアはイーリスさんになだめられ、アスールさんはネーヴェさんになだめられていた。
僕は怒りを忘れ、四人が暴れ出さなかったことにホッとした。
しかし、このままでは、今は抑えられている食いしん坊四人組が、いつ、暴れだしてもおかしくない。
そうなったらと思うと、胃がキリキリしてくる。
早く昼食の問題を解決しないと。とは言ってもこのツアーを仕切っているのはカナデ姉ちゃんだ。
僕は、一人だけ美味しそうにカレーを食べているカナデ姉ちゃんの後姿を見つめながら、悩み続ける。
解決策も見つからずに悩み続けていると、バスは駐車場へと入って行く。
ん? もう、ホテルについてしまったのか?
外の景色を見るが、ホテルの駐車場という雰囲気ではない。
ここはどこだろう?
「はい、皆さん。ここで遅くなった昼食をとりますよ」
バスが停車すると、シズク姉ちゃんは立ちあがり、マイクを使って皆に報せた。
後ろを振り返ると、ツバキちゃんとアンさんが疲れたように、金ちゃんと銀ちゃんにしがみついたままだった。
ま、まだ、二人との攻防は続いていたんだ……。
一方で、カナデ姉ちゃんは、ここに立ち寄るのが予想外だったのか、ポカンと呆けた顔でシズク姉ちゃんを見つめていた。
バスの前の扉が開き、ゾロゾロと皆が降りだしていくと、カナデ姉ちゃんは、ハッとした表情になり、運転手さんを覗き込んだ。
「佐々木さん、これはどういうことですか? ここに立ち寄る予定はなかったはずですけど?」
「我が社の筆頭株主からのご依頼ですから」
「えっ? 筆頭株主?」
カナデ姉ちゃんは、運転手の佐々木さんからの返事に、頭の上にクエスチョンマークを並べる。
「カナデちゃん。潤守観光は守家、継守家の親族会社ではあっても、株式会社ですよ。そして、潤守観光の筆頭株主は私になっています」
シズク姉ちゃんは、彼女にニコッと微笑むが、その目は笑っていなかった。
「えっ? そうなの?」
カナデ姉ちゃんは、冷や汗を流しながら青ざめていく。
((筆頭株主? 何それ?))
二人の話しを盗み聞きしていたら、金ちゃんと銀ちゃんが尋ねてきた。
「えーと、議決権のある株式を一番多く持っている株主……って言っても分からないよね?」
金ちゃんと銀ちゃんは、僕の顔を見つめてコクコクと頷く。
「簡単に言うと、潤守観光の中で一番偉い人」
((おぉー、シズク様、凄い))
二人は尊敬の眼差しでシズク姉ちゃんに視線を向けた。
「フーちゃん? 間違ってはなくもないけど、簡単にといっても、もう少し言いようがあったんじゃないの?」
ツッコんできた姉ちゃんを振り返ると、ヒーちゃん、ツバキちゃん、オトハ姉ちゃん、アカネ姉ちゃんまでもが彼女のそばにいて、何とも言えぬような顔で僕を見ていた。
僕だってテレビ番組とかの説明で知っているくらいで、学校でちゃんと教わったわけでもないんだから、そんな顔をしなくても……。
青ざめた状態のカナデ姉ちゃんは、シズク姉ちゃんを恐れるように見つめていた。
そんな彼女に視線を向けたシズク姉ちゃんは、厳しい表情をする。
「カナデちゃん、クビです」
その言葉を聞いたカナデ姉ちゃんは、生気が抜けたように真っ白となった。
ツンツン、ツンツン。
動かなくなったカナデ姉ちゃの頬を、金ちゃんと銀ちゃんが小枝で突きだすが、微動だにしない。
((主、死んでる?))
「いや、生きてるよ。クビになったショックで固まっただけだよ。……たぶん」
(主、ちょっといい?)
金ちゃんは僕の手を引っ張る。
モニュウ。
そして、カナデ姉ちゃんの右胸に押し当てた。
「やん」
ゴツン、ゴツン、ゴツン、ゴツン。
彼女の吐息と共に、金ちゃんの頭に姉ちゃんたちのげんこつが連続で炸裂した。
(グギャァァァー!!!)
「あんたは何をやってんのよ!」
姉ちゃんが怒鳴ると、涙目の金ちゃんは頭を押さえて彼女を見る。
(心臓が動いてるか確かめようと)
「なんで、フーちゃんの手を使うのよ! それに心臓は左胸よ!」
(あっ! 間違えちゃった。テヘッ)
照れる金ちゃんに、姉ちゃんたちは頭を抱えてうつむいてしまった。
(主、どうだった? 感想を一言)
銀ちゃんは、僕にマイクを向けてくる。
「柔らかくて弾力があった」
ゴツン、ゴツン、ゴツン、ゴツン。
僕と銀ちゃんの頭に、姉ちゃんたちのげんこつが連続で炸裂した。
(グギャァァァー!!!)
「グヌォォォォー!!!」
僕たちは頭を押さえて悲鳴を上げる。
「何、感想なんて言い出してんのよ!」
それは、銀ちゃんが振ってきたからなのに……。
顔を上げると、姉ちゃんたちは、僕を蔑む目で見つめていた。
「ご、ごめんさい」
僕は思わず謝ってしまった。
その後、バスを降りた僕たちは、大きな建物の中にある食堂へと向かった。
カナデ姉ちゃんはシズク姉ちゃんのそばを離れず、一生懸命、クビの撤回をお願いしている。
((人間、ああなったらおしまいだね))
「うるさい! 狐に言われたくないわよ!」
金ちゃんと銀ちゃんがつぶやくと、カナデ姉ちゃんが二人に向かって怒鳴った。
((ツバキちゃんに謝れ!))
「お前たちのことだ!」
パシーン、パシーン。
二人の後ろにいたツバキちゃんは、彼らの頭を引っぱたいた。
((痛い……))
二人は頭を押さえて、ツバキちゃんを振り返る。
「ほら、早く席に着いて飯を食え! カナデのおごりだから、思う存分食え!」
彼女は振り返りながら立ち止まる二人の背中を軽く押すと、彼らは目を輝かせた。
そして、カナデ姉ちゃんに駆け寄る。
((ゴチになります))
そう言って、シャルたちが先に座っている席へと向かって行った。
「えっ? なんで、私のおごり?」
カナデ姉ちゃんは、ポカーンとしてしまう。
「当たり前だろ! こんなどうしようもないツアーを計画して、ただで済むと思っていたのか?」
ツバキちゃんは、珍しく厳しい表情を見せていた。
「椿様、ただで済むも何も、私、クビになったんですけど……」
カナデ姉ちゃんは泣きそうになっていた。
「ハァー。分かりました。今回だけはクビを撤回してあげます。ただし、この旅行での食事の時の追加注文は、カナデの給料から引きます。それでいいですね」
シズク姉ちゃんが折れた。
「それでいいです。シズク様、ありがとうございます」
カナデ姉ちゃんは、何度も頭を下げる。
僕はあることに気付いた。
シズク姉ちゃんは、この旅行での食事の時の追加注文はカナデ姉ちゃんの給料から引くと言っていた。ということは、金ちゃんたちの無限の胃袋を知らないカナデ姉ちゃんは、この旅行が終わった頃には、また真っ白になっていそうだ……。
その兆しは、すでに見え始めていた。
金ちゃん、銀ちゃん、レイリア、アスールさんは、カナデ姉ちゃんが食べていた海軍カレーがメニューにあるのを見つけると、すぐに注文をする。
そして、運ばれてきたカレーを見て物足りそうな顔をした。
「あのー、このカレーをもう一つお願いします。できれば、できるだけ多めにして欲しいんですけど」
レイリアはカレーを運んできたウエイトレスさんに追加を注文する。
「えーと、もう一つ大盛でですね」
ウエイトレスさんが聞き返すと、金ちゃん、銀ちゃん、アスールさんの三人も手を挙げる。
「えーと、海軍カレーの大盛が四人前ですね」
(できれば、バケツで)
「はい、バケツでですね……。バ、バケツですか?」
ウエイトレスさんが困惑してしまっている。
「すみません。できるだけ大きな器でってことです。本当にわがままを言ってすみません。この子たち大食い選手並みに食べるので……」
オトハ姉ちゃんがフォローを入れると、「最近、メガ盛りとか流行っていますものね」とウエイトレスさんは納得してくれた。
そして、あっという間に目の前のカレーを食べ終えてしまった金ちゃんたちが追加のカレーを待っていると、ボウルのような器に入れられたカレーが数人のウエイトレスさんたちによって、運ばれてきた。
金ちゃんたちは、それを見て嬉しそうに目を輝かせる。
四人の前に大盛を越えたカレーが置かれる。
「「いただきます」」
((いただきます))
四人は一斉に食べ始めた。
ゴクゴクゴク。
金ちゃんは、ボウルを傾けてカレーを飲み始める。
「ちょ、ちょっと、何なの? この食欲はおかしいでしょ!」
四人の食欲を知らなかったカナデ姉ちゃんだけが青ざめる。
「いつもこんなもんだよ」
僕が軽く答えると、彼女は違うと言いたげに、首を大きく横に振っていた。
ゴクゴクゴク。
銀ちゃんも金ちゃんの真似を始めた。
「コラー! カレーを飲むな!」
カナデ姉ちゃんが叫ぶと、二人は首を傾げる。
(有名な人は言っていました)
「「「「「???」」」」」
金ちゃんの言葉に、皆が首を傾げる。
(カレーは飲み物だと!)
銀ちゃんが続きを話すと、皆は顔を引きつらせ、カナデ姉ちゃんだけが、ガタンとテーブルに突っ伏してしまった。
◇◇◇◇◇
遅めの昼食を終えた僕たちは、今日、泊るホテルへとバスで向かっていた。
カナデ姉ちゃんは、昼食代の領収書を眺めながら何度も溜息をついている。
昼食代でこの様子だと、夕飯の時の追加注文では、気を失うんじゃないだろうか?
食べ物の恨みって恐ろしい。特にあの四人が関わると……。
そんなことを思っていると、いつの間にか外は薄暗くなっていた。
渋滞にも捕まって、少し時間はかかったが、無事にホテルへとたどり着いた。
((夕飯の時間に、無事に着けて良かった))
僕の後ろでは、金ちゃんと銀ちゃんが別の意味で、無事に着けたことを喜んでいた。
「あ、あんたたち……まだ食べるの?」
((これからが本気だからね!))
カナデ姉ちゃんが驚いた表情で尋ねると、二人は得意げな顔を浮かべて親指を立てた。
彼女はそんな二人を見て、肩を落としてうなだれる。
格式のありそうな立派なホテルなのに、金ちゃんと銀ちゃんは見向きもしない。
それどころか、シャル、イーリスさん、ケイトが、こんなホテルがあればユナハ国の観光にもいいんじゃないかと、ホテルの外観を見ながら相談しているところを、((ご飯の時間ですよ!))と言って、館内に押していく始末だ。
僕たちは、今夜泊るいくつかの大部屋に別れて入ると、浴衣に着替えて、すぐに宴会場へと向かう。
僕が泊る部屋には、金ちゃんと銀ちゃんだけでなく、シャルたちも一緒だったことで、僕は部屋割りを考え直したほうがいいと提案したのだが、食事が優先の金ちゃんと銀ちゃんが((早く、早く!))と僕を宴会場へと押していくので、何の話し合いもできなかった。
宴会場に着くと、すでに数人の巫女さんたちが席に着いて、皆が来るのを待っていた。
僕たちも空いている席へと座っていく。
金ちゃん、銀ちゃん、レイリア、アスールさんは、四人で固まって座り、これから戦闘でも始めるのではないかという意気込みで、食べる気満々だった。
(追加の料理はカナデお姉ちゃんのおごりだから、僕たちを飯抜きにしようとした恨みを晴らすためにも、とことん食べるぞー!)
「「オォォォー!」」
(オォォォー!)
金ちゃんの掛け声に、レイリア、アスールさん、銀ちゃんが勇ましく叫ぶ。
(カナデお姉ちゃんが破産するまで、食うぞー!)
「「オォォォー!」」
(オォォォー!)
やっぱり、食べ物の恨みは恐ろしい。
ツアーに参加した全員が集まると、ツバキちゃんが立ちあがり、皆にねぎらいの言葉を掛ける。
そして、「カンパーイ!」と音頭を取って、コップを掲げると、「「「「「カンパーイ!!!」」」」」と皆もコップを掲げた。
夕食という名の宴会が始まった。
もちろん、未成年の僕、シャル、ヒーちゃん、レイリアは、お酒はダメなので、ジュースと料理を楽しむことにした。
金ちゃんと銀ちゃんはと言うと、ツバキちゃんから「金と銀は酒癖が悪い……ブルッ。とにかく、そいつらは酔うと絡んできて、やりたい放題、暴れたい放題になるから、絶対に飲ませるな!」ときつく言い渡され、二人のもとにはジュースだけが置かれた。
((僕たち、いける口なのに……))
「どこがいける口だ! お前たちのは舐める口だ!」
ブルッ。
「思い出しただけで身震いが……」
二人がお酒を飲む人たちを羨ましそうに見つめながら愚痴ると、ツバキちゃんが苛立ちながら叫ぶ。
だが、途中で酔っ払った二人に顔面を舐められまくったことを思い出したのか、寒そうに腕を組むと、嫌そうな表情で二人を睨んだ。
あれは惨かったからな……。
宴会の席には、カナデ姉ちゃんと運転手さんも参加していた。
楽しんでいる運転手さんとは違い、カナデ姉ちゃんは食事やお酒が追加される度に、ビクッとして、部屋を出入りする仲居さんを目で追い、楽しめてはいなさそうだ。むしろ、精神的な拷問されているように見えた。
(この葉山牛のステーキ、お代わり!)
金ちゃんは手を挙げて、仲居さんに注文をする。
(僕も!)
「私も!」
「わしも!」
銀ちゃん、レイリア、アスールさんも手を挙げて、続く。
「部位を変えられますが、いかがしますか?」
仲居さんは、金ちゃんにメニューを見せて説明をすると、彼は眉間に皺を寄せて悩みだした。
すると、カナデ姉ちゃんが仲居さんと金ちゃんの背後から、メニューを覗き込んでいた。
「金ちゃーん。一頭はダメだからね」
ポン。
金ちゃんは軽く手を叩くと、嬉しそうな表情を浮かべる。
(その手があった! カナデお姉ちゃん、ありがとう!)
カナデ姉ちゃんは、彼女とは思えない優しく穏やかな声色で、金ちゃんに忠告をしたのだが、逆に気付かせてしまった。
ズサー。
「金様! ど、どうか、それだけはご勘弁をー!」
畳に額をこすりつけて土下座するカナデ姉ちゃんに、仲居さんや皆は驚く。いや、皆は、どちらかと言うと、引いているようだ。
金ちゃんも、さすがに顔を引きつらせて引いていた。
金ちゃんのこんな顔を見ることになるとは。
ある意味、凄いツアーだ。
(えーと、冗談だよ)
「金様、ありがとうございます。ありがとうございます」
困った表情を浮かべる金ちゃんにすがりついて、何度も頭を下げるカナデ姉ちゃん。
人って、ここまでプライドを捨てられるんだ……。
(じゃあ、このシャトーブリアンってやつで)
「かしこまりました」
(僕も!)
「私も!」
「わしも!」
金ちゃんに銀ちゃんたちが続く。
「はい、シャトーブリアンのステーキが四人前ですね。かしこまりました」
ドサッ。
仲居さんが去って行くと、カナデ姉ちゃんは畳に額を打ちつけるように崩れた。
これは、しばらく動けそうにないな……。ご愁傷様。
カナデ姉ちゃんをよそに、宴会はさらに盛り上がっていく。
マイさんも、ここぞとばかりに飲みまくり、コップなど使わずに一升瓶ごと飲んでいる。
追加の食事代だけでなく、お酒でも、かなりの金額になりそうだ。
シクシクと泣きながら、おしんこを摘まみにおちょこでチビチビとお酒を飲むカナデ姉ちゃんの後姿を見ていると、さすがにいたたまれない。
「シズク姉ちゃん、さすがにこれは……、カナデ姉ちゃんが可哀そうだよ」
「分かってます。全額なんて払わせませんよ。あの子は姉さんと性格が似てるから、こうでもしないと、反省しませんから。このことは内緒ですよ」
「うん、わかった」
ニッコリと微笑むシズク姉ちゃんに、僕も微笑み返した。
それにしても、金ちゃんたちの食いっぷりと、ツバキちゃんやマイさんたちの飲みっぷりには、凄すぎて言葉が出て来ない。
何となく、飲んでいる人たちは、明日が大変そうな予感はするけど……。
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