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うちの神様の間違った転移でおおごとに! 女神の使いにされて、僕を頼られても困るのだが……。  作者: とらむらさき


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202話 海水浴の必需品

 金ちゃんと銀ちゃんは、ヒーちゃんと一緒に一眼レフカメラからコンパクトカメラまでもがずらりと並ぶカメラ類のコーナーに行くと、その数の多さにオロオロとしていた。

 僕とケイトは、金ちゃんたちの買い物に付き合おうと、カメラコーナーへ来ていたが、他の皆は、辺りの家電を興味津々で見て回っていた。


 「ケイトは、色々な家電を見て回らなくていいの?」


 「周りの家電も気になりますが、こちらにいれば、専門家の詳しい話しが聞けると思って」


 「あー。なるほど」


 金ちゃんと銀ちゃんは、それぞれがコンパクトカメラを手に取り、ヒーちゃんに((これとこれは、どう違うの?))などと質問をしていた。

 彼女は、二人のカメラをじっくり見ると、近くに貼られた広告と照らし合わせながら、少しぎこちなかったが、二人に説明をしている。


 ((???))


 ((うーん? ヒサメお姉ちゃんの言ってる意味が分からん))


 金ちゃんと銀ちゃんは首を傾げ、さらに横に振った。

 必死になって説明をしたヒーちゃんは、ガックシと肩を落とす。


 「ヒーちゃん、店員を呼んだほうがいいよ」


 「そうですね」


 彼女はキョロキョロと辺りを見回すと、通りかかった男性店員に向かって手を挙げた。


 「いらっしゃいませ。何かお探しでしょうか?」


 「狐でも使えるカメラはありますか?」


 「は? き、狐ですか?」


 ヒーちゃんのおかしな質問に、店員が混乱する。

 ヒーちゃんは何を口走ってるんだ!


 「すみません。あの二人にカメラの機能や特徴を説明して欲しいんです」


 フォローに入った僕が指差す方向を見た店員はギョッとしたが、すぐに自分の頬を挟むように叩くと、気合の入った顔になった。


 「かしこまりました」


 彼は僕に軽く頭を下げると、二人のもとへと行き、二人の手に持つカメラの説明を始めた。

 二人が彼に質問をすると、念話に一度は驚いていたが、その後は普通に応対をする。

 プロだ!

 僕は感心して、しばらくの間、その応対を見つめていた。


 金ちゃんと銀ちゃんは、望遠の倍率や手振れ機能、夜間撮影の機能などについて、店員に詳しく聞いていた。

 僕とヒーちゃんは、二人がなんでそんなことまで知っているのかと驚き、唖然としていたが、ケイトは真剣な顔で、店員の説明をメモっていた。

 数種類のコンパクトカメラを手に取っては、試し撮りをしていた金ちゃんと銀ちゃんは、何度も迷うように悩んでいたが、それぞれが納得のいくカメラに出会えたようだ。

 二人はヒーちゃんのそばに来る。


 ((ヒサメお姉ちゃん、これにする!))


 二人がニコッと嬉しそうな笑顔で差し出したカメラは、メーカーも特化した機能も違うカメラだった。

 同じカメラを選ぶと思っていた僕は、意外に思った。

 ヒーちゃんが二人の持つカメラを店員に頼むと、彼はカメラケースとメモリーカードを薦めてくる。

 確かに必要となるので、付属品もまとめて買うことを彼女が店員に告げると、金ちゃんと銀ちゃんは、驚いた表情を見せたから興奮するように喜ぶ。

 欲しかったおもちゃを買ってもらった子供のようで、微笑ましい。




 金ちゃんと銀ちゃんの買い物が終わると、僕たちは別の階へと移動した。

 その階は婦人売り場で、奇麗で華やかな服などをマネキンに着せて展示されていた。

 姉ちゃんが嬉しそうに先導を始めると、僕たちはその後について行く。


 「!!!」


 売り場の奥に行くと、僕は目のやり場に困り、恥ずかしくて視線を逸らした。


 「あれ? フーちゃん、どうしたの? こっちだから、早く来たら?」


 姉ちゃんは、ニンマリと悪そうな笑みを浮かべている。

 クソー。やられた。

 男の僕がこんなところへ来ることはない。

 ゆえに、女性の水着売り場が下着売り場の隣にあるなんて知らなかった。

 姉ちゃんが声を掛けたせいで、周りの女性客がこちらに視線を向け、恥ずかしがる僕をニコニコと見つめている。

 さらし者にされているようで、恥ずかしい。


 (主、主。これ、似合う? 僕の銀色の毛並みには黒がいいと思うんだよね!)


 銀ちゃんが黒色のブラジャーを胸にあてながら、見せに来た。


 「アホかー! 銀ちゃんがつけたら、ただの変態だ!」


 パシーン。


 僕は、彼の頭を思いっきり叩いた。


 (痛い……。じゃあ、これはシャル様に)


 彼はシャルの背後に回って、手に持つ黒色のブラジャーを彼女の胸にあてた。


 (……)

 「……」


 彼の持つブラジャーは大きすぎて、彼女の胸では隙間が多くスカスカだった。

 気まずくなる僕と銀ちゃん。


 (えーと、シャル様には、まだ早かったね。色々と……)


 最後に余計なことを言うな!

 彼は恐る恐るシャルから離れると、僕の隣へと退避してくる。

 シャルの様子をうかがうと、彼女の真っ赤になった顔は、赤くなっているだけで静けさを感じさせるほどの平然さを保っていた。

 しかし、よく見ると、彼女の背後には、メラメラと勢いよく燃え上がっている炎が見えている。


 ギロッ!


 鋭い視線で僕と銀ちゃんを睨んだ彼女は、少し口角を上げて冷たい笑みを見せた。


 (ヒィッ、ごめんなさーい!)

 「ヒィッ、ごめんなさーい!」


 僕と銀ちゃんはすぐに謝ると、一目散に逃げだした。


 物陰に隠れた僕と銀ちゃんは、シャルが来てるかをヒョコっと顔を出して確認する。

 追ってきてないようだ。

 二人でホッと息を吐いて安堵する。


 「二人で、そんなところに隠れて何をしてるんですか?」


 ビクッ。


 突然、背後から声を掛けられて、僕と銀ちゃんの身体が跳ねた。

 後ろを振り返ると、ケイトが不思議そうに僕たちを見ていた。


 「あのー、二人とも、そこから顔を出していると、変態みたいですよ」


 彼女の言葉に、僕は周りを見て現状を確かめる。

 僕と銀ちゃんが顔を出していたのは、下着をつけたマネキンの股の間からだった。


 カアー。


 僕は恥ずかしくて、顔が一気に火照るのを感じた。

 周りを歩いている女性客たちが、こちらを見てクスクスと口を押えながら通り過ぎて行く。

 ぐわぁー! は、早くお家に帰りたい……。




 恥ずかしさのショックで、下を向きながらしょんぼりと歩く僕を、ケイトが水着売り場まで連れて来てくれた。

 皆は姉ちゃんたちに相談しながら、水着を選んでいる。

 僕は、皆が水着を買い終えるのを、隅のほうで大人しく待つことにした。


 「肌を出し過ぎなのでは?」


 「こんなに露出をしたら、裸でいるのと変わりませんよ」


 若干、不平が聞こえてくる。

 人前で肌をさらす習慣が無いから、抵抗があるのだろう。


 「これでは、防御力が皆無です」


 レイリアだけは、不平の方向がずれていた。

 水着で、何と戦う気なんだ……。


 僕のところにシズク姉ちゃんが来る。


 「フーちゃん? フーちゃんは水着を買わなくていいの?」


 「あっ、そうだった!」


 僕が思いだすように返事をすると、彼女は困ったような表情を浮かべた。


 「海水浴の必需品なんだから、忘れちゃダメよ」


 「じゃあ、買ってくる」


 「男性用の水着は、向こうのスポーツ用品の売り場があるから、金ちゃんと銀ちゃんのも買ってあげて」


 彼女はそう言って封筒からお金を出すと、僕に渡した。


 「潤守神社宛てで領収書を切ってもらってね」


 「分かった」


 僕は返事をすると、金ちゃんと銀ちゃんを呼んで、スポーツ用品の売り場へと向かった。




 色々なタイプの男性用の水着が並ぶ中から、僕はルーズタイプの水着を選ぶと、金ちゃんと銀ちゃんが履けそうな大きなサイズを探す。

 二人が履けそうな大きなサイズを見つけると、ほとんどがルーズタイプばかりだった。

 スパッツタイプもあったが、これでは二人の尻尾が大変なことになりそうだ。


 「金ちゃんと銀ちゃんも、このルーズタイプでいいよね?」


 僕は横を振り向く。


 「……」


 今までいた二人の姿は、すでにそこには無かった。

 あ、あいつら、さっそく、どこかに行きやがった!

 僕は勝手に行動する二人を探して、スポーツ用品の売り場をうろつく。


 「あっ! いた!」


 何かをジッと見つめていた金ちゃんと銀ちゃんは、僕の声に気付いて、こちらを振り返る。

 しかし、二人の近くには、レイリア、リンさん、イライザさんの姿もあり、彼女たちもこちらを振り返った。


 「えーと、レイリアたちまでこっちに来て、何を見てるの?」


 「フーカ様、この水着がカッコ良くて、これがいいです!」


 レイリアが答えると、他の四人もコクコクと頷いてから、再び商品に視線を戻す。

 五人が、揃って気に入るほどの水着があるのか。

 僕は興味を引かれ、皆が見つめる水着に視線を向けた。


 「……」


 そこに吊るされていたのは、水着ではなく、ウェットスーツだった。

 水着ではないが、水の中で着るものだから、違うとも言い切れない……。


 「えーと、これはウェットスーツといって、水着とは違って……水中や水上のスポーツをする時に着るもので、目的が違ってくるから」


 「「「これがいい!」」」

 ((これがいい!))


 五人はウェットスーツを指差して、わがままを言う。

 まあ、これなら、金ちゃん、銀ちゃん、イライザさんの尻尾も隠せるし、いいのかな?

 僕は迷いつつ、ウェットスーツの値札を手に取った。


 「!!!」


 一着が三万円もしていたことに、僕は驚く。


 「こ、これは無理。ダメとかじゃなくて、高くて買えない」


 五人はガックシと肩を落とす。

 そして、レイリア、リンさん、イライザさんはウェットスーツを何度も振り返りながら女性用の水着売り場に戻って行き、金ちゃんと銀ちゃんはしょんぼりとしながら、僕と一緒にルーズタイプの水着を選びに戻った。

 金ちゃんは黒地に腰のところが赤いラインの入っている物を選び、銀ちゃんも同じく黒地だが、腰のところは青いラインの物を選んだ。


 ((主、色違いのお揃いだね!))


 僕が手に持つ腰のラインが灰色のラインの見て、二人は嬉しそうにする。

 まあ、二人が僕と同じ物ということで満足しているなら良かった。

 会計を済ませて領収書を受け取ると、女性陣のもとへと戻った。




 女性用の水着売り場に着くと、皆は、まだ水着選びに苦戦しているようだ。

 シズク姉ちゃんのそばに行くと、チラッ、チラッと辺りに飾られている水着をさりげなく見る。

 色だけでなく、形もそれぞれ違うものが多くて、選ぶのが大変そうだ。


 「これ、領収書」


 僕は、シズク姉ちゃんにお釣りと領収書を渡した。


 「もう、選び終わったの?」


 「男性用は、タイプが違うくらいで、ほとんどが似たようなものばかりだから」


 「そう言えば、そうね」


 彼女は思い出すように頷いた。


 ((シズク様、主とお揃い!))


 金ちゃんと銀ちゃんは、嬉しそうに買ったばかりの水着が入れられた袋の口を開けて、彼女に見せると、得意げな顔を見せる。


 「あら、良かったわね! でも、誰が誰だか分かりなくなりそうね」


 ((えっ! それはヤダ!))


 二人は僕を見て、嫌そうな顔をする。


 「おい!」


 僕が叫ぶと、シズク姉ちゃんはクスクスと笑いだしてしまった。




 皆は何度も試着室を出入りして、時間を掛けて気に入った水着を見つけていく。

 アンさん、イーリスさん、ケイト、レイリア、シャル、アスールさん、ネーヴェさん、ヒーちゃんは選び終わったようで、他の人たちの手伝いをしていた。

 ミリヤさん、オルガさん、リンさんは、耳を隠すための帽子と合わせたコディネートをするために苦戦していた。

 特にイライザさんは、耳と尻尾を隠さないといけないので、耳を隠す帽子だけでなく、尻尾を隠せるようなパレオも選ばないといけないため、シャルたちが忙しく売り場と試着室を往復している。


 「大変そうだね」


 僕は、イライザさんのパレオを選んでいたヒーちゃんに話しかけた。


 「はい。イライザさんもですがリンさんも身体を鍛えていますから、似合う帽子やパレオがなかなか見つからなくて……」


 「そうなんだ。ところで、ヒーちゃんはどんな水着にしたの?」


 「秘密です!」


 彼女は有無を言わせない勢いで答えた。

 僕は、シャルたちに目を向ける。


 「「「「「秘密です!!!」」」」」


 まだ、何も言っていないのに、ヒーちゃんと同じ答えが一斉に返ってきた。

 僕は、これ以上、何も聞けなくなってしまった。


 姉ちゃんが試着室のカーテンから顔だけを出して、キョロキョロとしている。

 そして、僕と目が合うと手を振る。


 「フーちゃん! そこにある水着を持ってきて」


 姉ちゃんが指差した先にはエメラルドグリーンのビキニが吊るされていた。

 シャルたちが選び終わったことで、シズク姉ちゃん、オトハ姉ちゃん、マイさん、イツキさんが交代するように試着を始めたので、店員さんも、水着選びを手伝うのに人手が足りていないらしい。

 まあ、姉ちゃんの場合は姉弟だし、僕が手伝ってもおかしくないか。

 僕が言われた水着を手に取ると、金ちゃんが別の水着を姉ちゃんに届けた。


 「金ちゃん、ありがとう」


 彼女は金ちゃんにお礼を言うと、カーテンの中に姿を消した。

 この水着じゃなくて良かったのだろうか?

 僕は手に持ったエメラルドグリーンのビキニを見つめて、首を傾げた。


 「金のアホー! こんなものを着れるか!」


 試着室から姉ちゃんの怒鳴り声が聞こえ、視線を向けると、怒った姉ちゃんが顔と手に持った貝殻の水着をカーテンから出していた。


 (えー、カッコいいのにー)


 「どこがだ! 恥ずかしいわ!」


 (もーう、わがままだな)


 金ちゃんは、別の水着を選んで姉ちゃんへと持っていき、渡した。

 色は青だったが、ちゃんとしたビキニのようだ。


 「まったく、最初からまともな……」


 試着室でぼやく姉ちゃんの声が止まった。


 「コラー! こんなの着れるか!」


 再び怒鳴り声をあげて顔を出す姉ちゃんの手には、大事なところ以外は紐のように細い網目のビキニが持たれていた。


 (えー、魔皇帝なんだから、それくらいカッコよくないと、インパクトがないよ)


 「これのどこがカッコいいのよ! エロ過ぎるわよ。それにインパクトを求めるな!」


 (カザネお姉ちゃん、妥協は良くないよ)


 「妥協じゃない。普通のでいいのよ!」


 姉ちゃんは金ちゃんを睨みつけてから、僕に視線を向ける。


 「フーちゃん、それ! その手に持っているのを持ってきて」


 僕が姉ちゃんにエメラルドグリーンのビキニを渡すと、金ちゃんはつまらなさそうな顔で、がっかりしていた。




 その後、水着を選び終えた姉ちゃんに、金ちゃんがお仕置きをくらった以外は、何事もなく無事に水着を買うことができた。

 さらに上の階にもよると、花火や浮き輪なども買う。

 そして、靴売り場へ向かうと、これも海水浴の必需品であるサンダルを買った。

 金ちゃんと銀ちゃんの足のサイズは無かったのだが、店の人がイベントでマスコットが履いていたサンダルを思い出し、見つけ出してくれたおかげで、二人の足に合うサンダルも買うことができた。

 買い忘れがないことをシズク姉ちゃんたちと確認した後、僕たちは駐車場へ向かい、帰路へと着くのだった。

お読みいただき、ありがとうございます。


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