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うちの神様の間違った転移でおおごとに! 女神の使いにされて、僕を頼られても困るのだが……。  作者: とらむらさき


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182話 新生、ファルレイク王国

 ユナハ連合とファルレイク帝国との戦争が終結したことと、ダリアス派閥の捕縛などで、一時的に、街は少し混乱していた一面も見せていたが、大半の市民たちは日常を取り戻しつつあった。

 そんな話しをマーカリさんから聞かされていた僕は、民衆の順応さというか強さに感心してしまう。


 コン、コン。


 僕とマーカリさんがいる客間の扉が叩かれ、衛兵が入ってきた。


 「ユナハ連合軍の方々が、お見えになられます」


 「ありがとう。すぐに行くよ」


 僕が返事をすると、彼は敬礼をして立ち去って行く。

 僕とマーカリさんは、出迎えるために一回のエントランスへ向かう。




 エントランスには、すでにシャル、オルガさん、ネーヴェさん、金ちゃん、銀ちゃんが来ており、少し遅れてリンさん、イライザさん、ホレスも合流した。

 マーカリさんが政権を取り戻したたことで、宰相となったマールさん、軍部のトップである総大将となったダインさん、近衛騎士団長となった隊長……今は団長も姿を現していた。


 皆がそろったタイミングで衛兵が玄関の大きな扉を開ける。

 すると、姉ちゃんとイーリスさんを先頭にアンさん、ミリヤさん、レイリア、ケイト、アスールさん、ヒーちゃん、エルさん、マイさん、オトハ姉ちゃん、アカネ姉ちゃん、ツバキちゃんがズカズカとこちらに迫ってくる勢いで入ってきた。


 「ヒィー!」

 ((ヒィー!))


 僕、金ちゃん、銀ちゃんの三人は、その迫力に思わず悲鳴を上げ、金ちゃんと銀ちゃんは僕の腕にしがみつく。

 彼女たちの後ろには、シズク姉ちゃん、イオリさん、シリウス、ヘルゲさん、イツキさん、ルビーさん、イーロさん、サンナさん、ハンネさん、ブレンダさん、アーダさんの姿があった。

 そして、セレストさん、ジゼルさん、メリサさんの姿もある。

 シズク姉ちゃんたち後ろの一行は、悲鳴を上げた僕たち三人を見て笑っていた。


 何故か、姉ちゃんたちは僕たち三人を中心にして取り囲むような輪を作る。

 逃げ場がなくなった僕たちは、彼女たちの威圧感に気圧されてしゃがみ込んだ。


 「ねえ、金ちゃん、銀ちゃん。まあ、よくも色々と面倒を起こしてくれたわね」


 姉ちゃんの目は座っていた。

 取り囲む皆の表情を見ると、皆さん、怒ってらっしゃる。

 ん? これは金ちゃんと銀ちゃんに怒っているから、僕には関係ない。

 僕はホッとしたが、問題は解決していない。

 金ちゃんと銀ちゃんが、僕の腕にしがみついたまま離さないからだ。

 このままでは、二人と一緒に僕まで怒られる……。

 僕たちは怯えながら、姉ちゃんたちを見上げ、覚悟を決めるしかなかった。


 誰かが輪の中へ入ってきて、僕たちの前に立った。

 その救世主は、マーカリさんだった。


 「マーカリさん」

 ((マーカリ))


 僕たち三人は、キラキラとした尊敬の眼差しで彼を見つめる。


 「コホン。ここでは目立ちますから、お部屋をご用意します。続きはそちらでお願いします」


 彼は僕たちの眼差しに恥ずかしそうな表情を浮かべながら、予想外の言葉を口にした。


 「えっ?」

 ((えっ?))


 彼に裏切られた僕たちは、彼を見つめたまま呆然とする。


 姉ちゃんたちは、いきなり現れたマーカリさんを誰なのかが分からなくて、困惑を見せていた。


 (カザネお姉ちゃんたち、頭が高いぞ! この方は、恐れ多くもファルレイク帝国の本当の皇帝、偽物の皇帝の双子の兄、マーカリだ! エッヘン)


 急に立ちあがった金ちゃんが、ややこしい紹介をして、自慢げな表情で偉そうにする。


 「「「「「???」」」」」


 姉ちゃんたちは、その紹介に首を傾げると、オルガさんが来て説明をした。

 理解した姉ちゃんたちは、金ちゃんを睨みつける。


 「マーカリさんの経緯と真の皇帝だったことは分かったけど、なんで、あんたが偉そうにしてんのよ?」


 (マーカリの権威に便乗してみました)


 「あんたって子は……」


 金ちゃんが頭を掻きながら恥ずかしそうに答えると、姉ちゃんは頭を抱えてしまった。

 そして、皆は疲れたようにぐったりとする。




 イーリスさんはマーカリさんの元へと急ぐと、頭を下げた。


 「マーカリ陛下、金ちゃんと銀ちゃんに気を取られていて、気付かなかったことをお詫びします。申し訳ありません」


 「「「「「申し訳ありません」」」」」


 気まずそうな表情をした皆が、イーリスさんの後ろに集まり、彼女に続いて頭を下げた。


 「いえ、謝罪の必要はありません。金ちゃんと銀ちゃんの問題児っぷりは、私も知っていますから、どうか頭をお上げ下さい」


 皆に頭を下げられたマーカリさんは、困った表情を浮かべる。

 イーリスさんたちは、彼の言葉を聞いて、ギョッとした表情で頭を上げた。


 「あの二人が、マーカリ陛下にご迷惑をおかけして、本当に申し訳ありません」


 イーリスさんが一度上げた頭を再び下げると、皆も頭を下げた。


 「いえ、大丈夫ですから、お気になさらないで下さい。私は、金ちゃんと銀ちゃんのおかげでとても楽しかったのですから、どうか私への件では、お二人を責めないで上げて下さい」


 「は、はい。マーカリ陛下が、そうおっしゃるのでしたら、()()()では、責めないことに致します」


 彼女の言葉を聞いてホッとしていたのは、僕の隣にいた金ちゃんと銀ちゃんだった。

 イーリスさんは、その件を強調していたのに、この様子だと、全部を許されたと思ってるな……。



 ◇◇◇◇◇



 マーカリさんの計らいで、僕たちは、皆で話し合うのに十分な広さの部屋へと案内された。

 僕は、改めてマーカリさんを紹介しようと、彼の横に立つ。


 「皆、もう知っていると思うけど、こちらは元ファルレイク帝国皇帝、マーカリ・フォン・ファルレイク殿です。今後、ファルレイクの国家元首はマーカリさんなので、皆とも顔を合わせることが多くなるから、よろしくね」


 「「「「「はい」」」」」」


 「マーカリ・フォン・ファルレイクです。よろしくお願いいたします」


 マーカリさんが頭を下げると、皆も頭を下げて返した。


 (マーカリはいいやつだから、いじめないでよ!)


 (そうだよ。マーカリは、おもてなしのスペシャリストなんだから、いじめちゃダメだからね!)


 金ちゃんと銀ちゃんは、マーカリさんの肩に腕をまわして、馴れ馴れしい態度をとる。


 「「「「「!!!」」」」」


 皆は血の気の引いた顔で、二人を睨みつけた。


 「金ちゃん、銀ちゃん。さっきからマーカリ陛下を呼び捨てにしているだけでなく、その肩にまわした腕は何ですか!? 馴れ馴れしいにもほどがあります!」


 イーリスさんが顔を真っ赤にして怒る。


 「いえ、お二人は私の友人ですからいいのです。それに、私から気兼ねなく接して欲しいと頼んだのですからかまわないのです」


 マーカリさんが二人を庇うと、イーリスさんは苦虫を嚙み潰したような表情で黙ってしまった。


 ((もう、イーリス様も肩を組んで欲しいなら言ってよ。やきもちは良くないよ))


 二人が調子に乗って余計なことを言うと、イーリスさんの額に筋が浮き出てピクピクとしていた。


 パチン。


 彼女が指を鳴らすと、リンさんとイライザさんが金ちゃんと銀ちゃんの襟首を掴んで引きずって行く。


 ((えっ? あっれー?))


 二人はキョトンとした表情で引きずられていく。


 ガシッ。


 そして、通り道にいた僕の腕に、二人は腕を絡めてきた。


 「えっ? おい! 何をしてるんだよ!」


 ((主と一緒じゃないとヤダー!))


 「何を甘えているんだ! 離せ! 僕を巻き込むな!」


 ((それは無理!))


 二人は腕をより一層絡めてくる。


 「ちょ、ちょっと待って! 何でー!?」


 僕も二人と一緒に引きずられていくのだった。




 僕たちは、室内の広く空けられたスペースに正座をさせられる。

 そして、壁を背にした僕たちをイーリスさん、アンさん、ミリヤさん、レイリア、ケイト、アスールさん、ヒーちゃん、エルさん、マイさん、姉ちゃん、オトハ姉ちゃん、アカネ姉ちゃん、ツバキちゃんが取り囲んで見おろしていた。


 「金ちゃん、銀ちゃん。なんで、護送用の馬車なんかに乗り込んだのですか?」


 イーリスさんが質問を始めた。

 二人は真ん中にいる僕を振り向く。


 ((主の指示です))


 「断じて違う! 嘘をつくな!」


 僕が否定すると、二人はそっぽを向いた。


 スパーン、スパーン、スパーン。


 アンさんは、僕たち三人の頭をハリセンで叩いて行く。


 「あの馬車に乗らなければ、おおごとにはならなかったんですよ。私たちがどれほど心配したと思っているのですか?」


 ((これくらい?))


 イーリスさんに向かって、二人は親指と人差し指を広げてみせる。

 ムッとした表情を見せる彼女たち。

 バカなことを言うな!

 僕は心の中で叫んだ。


 スパーン、スパーン、スパーン。


 アンさんは、再び僕たち三人の頭をハリセンで叩いていく。

 何で僕まで……。


 シャル、オルガさん、ネーヴェさんがイーリスさんに呼ばれる。

 三人は彼女から今までの経緯を問われ、全てを話すと、僕たち三人は何度もハリセンで叩かれた。

 そして、リンさん、イライザさん、ホレスがイーリスさんに呼ばれる。

 三人も彼女から今までの経緯を問われ、全てを話すと、僕たち三人は、再び何度もハリセンで叩かれた。

 何で僕が金ちゃん銀ちゃんと同じ側なんだ……。


 イーリスさんの質問に、シャル、オルガさん、ネーヴェさん、リンさん、イライザさん、ホレスの六人が答える度に、僕たち三人がハリセンで叩かれるという繰り返しが続いた。

 耐えきれなくなった銀ちゃんは、アカネ姉ちゃんを子犬のような目で見つめる。


 (師匠! 助けてよー! 僕、アカネ師匠に教わったピッキングで役に立ったんだよ!)


 皆の視線が彼女に向けられた。


 「えーと、何のことかしら?」


 「アカネ、そこに座りなさい」


 誤魔化そうとするアカネ姉ちゃんだったが、オトハ姉ちゃんの冷めた声に身体をビクッとさせると、銀ちゃんの隣で正座をするのだった。


 (はい、はーい!)


 金ちゃんが何かを思いついたのか、手を挙げて主張する。


 「金ちゃん? 何か言いたいことがあるの?」


 イーリスさんが問いかけると、彼はウンウンと頷くと、姉ちゃんを指差した。


 (カザネお姉ちゃんに砲弾を持たされていたせいで、砲弾を出したら、皆から問い詰められました)


 「あ、あんた! 何をチクってるのよ! それは万が一のために持っておきなさいってことで、めったやたらに出せってことじゃないわよ!」


 姉ちゃんは言い訳をするが、皆の視線は冷たかった。


 「カザネちゃん、この子たちにそんな危ない物を持たせてたの?」


 「えーと、まあ……。持たせました」


 「そこに座りなさい」


 姉ちゃんもオトハ姉ちゃんには逆らえず、金ちゃんの隣で正座をするのだった。


 ((アカネお姉ちゃんもカザネお姉ちゃんもダメだよ!))


 「「お前たちが言うな!」」


 姉ちゃんとアカネ姉ちゃんは、調子に乗る金ちゃんと銀ちゃんを睨みつけながら叫んだ。


 「金ちゃんと銀ちゃんは調子に乗りすぎのようですね」


 パチン。


 イーリスさんが指を鳴らす。


 スパーン、スパーン、スパーン、スパーン、スパーン。


 僕たち五人の頭を、アンさんがハリセンで叩いて行く。


 「「なんで私まで……」」

 「なんで僕まで……」

 ((なんで僕たちまで……))


 「「「いや、お前たちのせいだろ!」」」


 一緒になって愚痴る金ちゃんと銀ちゃんに、僕、姉ちゃん、アカネ姉ちゃんは二人を睨みながら叫んだ。




 僕たちを傍観しているシズク姉ちゃん、イオリさん、シリウス、ヘルゲさん、イツキさん、ルビーさん、イーロさん、サンナさん、ハンネさん、ブレンダさん、アーダさん、セレストさん、ジゼルさん、メリサさんは、ソファーや椅子に腰を下ろしてクスクスと笑いながら僕たちの様子を楽しんでいる。

 そして、マーカリさんは、彼女たちのお茶の手配をしたり接待に追われていた。


 すべてが終わると、傍観していた人たち以外は、疲れ切った表情でソファーや椅子に座り、頭を抱えていた。

 ただ、エルさん、マイさん、ツバキちゃんの三人だけは十分に楽しんだかのように、満足そうな表情を浮かべてお茶をすするのだった。



 ◇◇◇◇◇



 後日、イーリスさんとブレンダさんの提案で、この場に居合わせた各国首脳及び代表とマーカリさんたちとの間で会談を行い、色々な案件を決めてしまおうという流れとなった。

 城の会議室に集まった僕たちは、ミリヤさんの司会進行で会談が始まる。

 そして、ミリヤさんからマーカリさんが指名されると、彼はスクッと立ち上がった。


 「各国の皆様、ファルレイク帝国は帝国主義をやめ、ファルレイク王国と名称を変更いたします。今後は国を一から造り直し、各国とも協調することで国民を大切にする平和な国を目指していきます。生まれたばかりの国ということもあり、各国の皆様のお力をお借りすることもあると思います。その時は、皆様の一員として迎えていただければと思っております。どうぞよろしくお願いいたします」


 彼は宣言し、皆に頭を下げる。


 パチパチパチパチ――。


 その場にいた皆からは、拍手が巻き起こり、ファルレイク王国との国交開設や支援を名乗り出る声があがった。

 その言葉を聞いたマーカリさんは、目をウルッとさせていた。




 その後、マーカリさんからファルレイク王国もユナハ連合に参加することが表明されると、ビルヴァイス魔王国、ドレイティス王朝、プレスディア王朝、ブレイギル及びタジラス連合国の隣国を中心とした国との今後の付き合い方が話し合われる。


 「まずは、ファルレイク王国との国境線の見直しと今回の戦争での賠償からね」


 ((うっわー! さすがエル。えげつない!))


 エルさんが口を開くと、金ちゃんと銀ちゃんが嫌そうな表情で口を挟んだ。


 「うるさいわね! こういうことはハッキリさせておかないと、後々、様々なところで面倒なことになるのよ!」


 彼女は正論を口にしながら、二人を睨みつける。


 (マーカリの国が小さくなるのは仕方ないけど、賠償はあんまりだ!)


 (そうだ! 金ちゃんの言う通りだ! 僕たちだって地下牢のリノベーション工事の代金をもらってないんだから!)


 「「「「「……」」」」」


 金ちゃんがいいことを言ったと思ったら、銀ちゃんの一言で台無しだ。

 僕たちは、銀ちゃんを呆れた表情で見つめる。


 「それは、あんたたちが面白がって、勝手にやったことでしょう」


 エルさんが反論をした。


 ((エルと一緒にするな! 職人魂に火が点いただけだ!))


 「あんたたちは、いつから職人になったのよ!?」


 その後も三人のくだらない言い合いが続き、話しが全然進まない。


 見かねたミリヤさんが、国境線の見直しから話し合うことを提案し、僕たちは三人を無視して、彼女に賛同した。

 元ファルレイク帝国の東側の領土を分配するにあたり、ドレイティス王朝、ブレイギル及びタジラス連合国、プレスディア王朝の三カ国の入り組んだ国境も見直し、改善される。


 「えっ、うちの国だったところをブレイラス連合国に渡しちゃうの?」


 ((うわっ、がめつい! 鬼、悪魔、エルは人でなし! ))


 エルさんは不服を口にすると、金ちゃんと銀ちゃんがヤジを入れる。


 「おだまり! って、最後は私の悪口じゃない!」


 三人は、じゃれ合うように揉めだした。


 「「今のうちに進めましょう」」


 セレストさんとサンナさんが口を揃えると、皆は三人を無視して国境線を決めていく。

 そして、三人が話し合いに戻ってきた時には、ファルレイク王国、ビルヴァイス魔王国、ドレイティス王朝、ブレイギル及びタジラス連合国、プレスディア王朝の五カ国の国境線が決定していたのだった。


 ファルレイク王国の領土が減ってしまうことは仕方ないと分かっていても、罪悪感を感じていた僕は、こんなことになったことをマーカリさんに謝った。


 「フーカ様、気にしないで下さい。これでも父がこの国を引き継いだ時に比べれば広すぎますから」


 マーカリさんがニッコリと微笑むと、僕の罪悪感は薄れた。




 戦後の賠償問題に話しが移ると、金ちゃんが手を挙げる。

 ミリヤさんは嫌そうな顔で彼を指名した。

 金ちゃんが立ちあがると、銀ちゃんが皆の手元に何かを配っていく。


 「金ちゃん? これは何ですか?」


 イーリスさんは、銀ちゃんから渡された硬いパンを金ちゃんに向ける。


 (賄賂(わいろ)です!)


 「「「「「……」」」」」


 堂々と賄賂と断言する金ちゃんに、皆は唖然とした。

 お土産にするって言ってなかったか……?


 「堂々と賄賂を渡すな!」


 エルさんが吠えた。


 (この硬いパンは、ファルレイク王国の特産品です)


 「違います」


 金ちゃんはエルさんを無視して話しを進めたが、マーカリさんからすぐに否定されると、彼をチラッと見る。


 (えーと、こ、こんなものが特産品のファルレイク王国から、賠償を求めるのは可哀そうだ!)


 金ちゃんは目を泳がせながら、マーカリさんも無視した。


 「「「「「……」」」」」


 グダグダになりそうな予感を抱きつつも、皆は、黙ったまま金ちゃんをジッと見つめる。


 (そ、そんなに見つめられると恥ずかしい)


 「「「「「ハァー」」」」」


 金ちゃんがモジモジと照れ始めると、皆は溜息を吐いてうつむいてしまった。


 (この硬いパンは、釘も打てるよ)


 銀ちゃんがフォローに入ったが、何のフォローにもなっていない。

 彼は壁に向かって取り出した釘を固いパンで打ちつける。


 ズボッ。


 (……。…………ダメでした)


 壁ではなく硬いパンに突き刺さった釘を皆に見せる銀ちゃん。


 「「「「「……」」」」」


 皆は呆れて言葉が出てこない。

 彼は、その釘の刺さったパンをそそくさとエルさんの手元に置く。


 「何? これ?」


 (サービス)


 「こんな釘の刺さったパンなんか、いらないわよ!」


 エルさんが吠えた。

 やっぱり、グダグダになった……。

 ただ、金ちゃんと銀ちゃんのおかげで、皆は賠償の問題はどうでもよくなってしまったようだ。

 もともと、エルさん以外は新生されたファルレイク王国に賠償を求めるのは酷だと思っていたようで、外交や条約によって自国を有利に運ぶことで賠償の問題を解決しようと考えていたそうだ。




 会談は続けられ、ユナハ連合全体としての案件が解決すると、この場にいた各国首脳及び代表がファルレイク王国を一国家として認める書類を作成し、ファルレイク王国が正式に一国家として承認された。

 あとは、この場にいない各国にも話しかけ、ファルレイク王国を認めてもらい、国交を樹立していくだけだ。


 一国家として認められたことで、マーカリさんを包囲するようにエルさんやセレストさん、ブレンダさんの隣国の者だけでなく、イーリスさんやルビーさんたちまでもが彼に詰め寄り、交易などの話しを始めるのだった。


 ((マーカリ、モテモテ!))


 金ちゃんと銀ちゃんが、ニンマリとしたいやらしい笑みを浮かべて冷やかす。

 そして、二人はジーっとイーリスさんを見つめる。


 ((あるじー! 大変だよ。イーリス様が浮気してる!))


 二人は僕のもとへ来て告げ口をする。

 彼らの背後には、鬼の形相のイーリスさんが気配を消して立っていた。

 僕は嬉しそうに告げ口をする金ちゃんと銀ちゃんから視線を逸らす。

 僕の不自然な様子を察した二人は、ゆっくりと背後を振り返った。


 ((ギャァァァー!))


 イーリスさんの怒った顔を見た二人は、悲鳴を上げる。


 パチン。


 彼女が指を鳴らすと、リンさんとイライザさんが二人を連れて行く。

 そして、二人がお仕置き付きのお説教に入ると、皆は再び外交を進めるのだった。

お読みいただき、ありがとうございます。


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