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うちの神様の間違った転移でおおごとに! 女神の使いにされて、僕を頼られても困るのだが……。  作者: とらむらさき


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176話 牢獄生活

 「シャル様。私とアンは、こんなお茶の淹れ方はしません。そもそも、これ、水に茶葉を淹れただけですし、なんで、野菜やら調味料まで入ってるんですか? これを煮込んだら、ほぼ魔女のスープですよ。誰か毒殺するつもりだったんですか?」


 突然現れたオルガさんは、僕たちが驚いているのを無視して、シャルのお茶をディスりまくっていた。

 僕たちは、そんなものを口にしていたのか……。


 「それに、私とアンの直伝って何ですか? シャル様にはお茶の淹れ方は教えていないですし、私たちのを見ていたと言っていましたが、このありさまでは何も見てないですよね?」


 シャルの取り繕った嘘が彼女のメイドとしてのプライドに火をつけたようだ。


 「オ、オルガ……。見栄を張りたくて調子に乗りました。ごめんなさい」


 「ハァー。分かればいいんです」


 シャルがしょぼんと肩を落として素直に謝ると、オルガさんは少し呆れていたようだが、すぐに許した。

 フゥー。シャルの暴走を止めてくれて助かった。いや、そうじゃない。


 「オルガさん、何でここにいるの?」


 僕が尋ねると、金ちゃんと銀ちゃんもコクコクと頷く。


 「誰かさんたちがフーカ様とシャル様を連れて、敵の護送馬車に自ら乗り込むのを見たので、これはやらかしたと思って、私もその馬車に潜んだのです」


 彼女の冷たい視線が金ちゃんと銀ちゃんを捉えると、二人は気まずそうな表情でゆっくりと顔を逸らし、口笛を吹いて誤魔化そうとした。


 「ほーう。そういう態度を取るのですか。では、仕方がありません。二人にはシャル様のお茶を全部飲ませることにしましょう」


 ギクッ!


 ((オルガお姉様、ごめんなさい。どうかそれだけは勘弁して下さい))


 二人は彼女の前で土下座をすると、床に頭をこすりつけて謝った。

 恐るべし、シャルのお茶!




 二人を許したオルガさんは、調理場を確かめるように歩き始める。


 「うーん。水はこの樽だけだったようですね。金ちゃん、銀ちゃん、水の樽を出して下さい」


 ((えっ!?))


 「あなたたちが補給物資からくすねているのは知っています」


 ギクッ!


 二人は青ざめた表情を浮かべると、収納魔法で水の樽を出した。


 「!!!」


 いきなり現れた樽に、マーカリさんが驚く。


 「これでお茶も食事も用意が出来ますね。マーカリ陛下、ここにある食材は自由に使ってもよろしいでしょうか?」


 「は、はい、ご自由にお使い下さい」


 「フーカ様。皆さんと向こうでお待ち下さい」


 「う、うん」


 僕たちは、テキパキと動き出したオルガさんを、少しの間見つめてから移動した。




 ソファーに座って落ち着くと、何故だか、どっと疲れが襲ってきた。

 すると、すぐにオルガさんがお茶を持って現れた。


 「お茶菓子は、金ちゃんと銀ちゃんで適当な物を出して下さい」


 ((えー!))


 ギロッ!


 ((はい、喜んで!))


 二人はクッキーやポテトチップスなど数種類のお菓子を、収納魔法で山ほど出す。


 「バカですか! これから夕食だと言っているでしょ! そんなに出してどうするんですか!? クッキーだけでいいです!」


 ((ひゃい!))


 二人はクッキー以外のお菓子をすぐにしまう。

 マーカリさんは見たことがなかったお菓子が消えると、少し残念そうな表情を浮かべていた。

 そして、オルガさんは調理場に戻って行った。




 僕たちはオルガさんが淹れたお茶を飲む。

 あー。お茶だ。生き返る。

 僕はホッとしながら皆を見ると、シャル以外は満足そうにお茶を飲んでいた。


 「フーカ様。色々と聞きたいのですが、よろしいですか?」


 「はい、答えられることなら、なんでも答えます」


 マーカリさんにとっては、驚くことばかりだったのだろう。


 「あの女性ですが、突然現れた彼女は何者なのですか?」


 ((主の嫁!))


 「お前たちが答えるな!」


 金ちゃんと銀ちゃんは、サッと横を向く。


 「コホン。僕には九人の妻がいて、その一人です」


 「なるほど。ということは側室の方ですか。えっ!? 側室といえど王族ですよね。そんなご身分の方がここに侵入し、助けに来たのですか?」


 「彼女は、元軍属ですから……アハハ」


 彼は妻の人数ではなく、王族の一員が単独で助けに来たことに驚いていた。


 「……? 彼女はメイド服を着ていませんでしたか?」


 「えーと、複雑な事情がありまして、侍女も兼任しています」


 僕の回答に、彼は困惑していた。


 「マーカリ様。ぶしつけなことをお聞きしますが、フーカさんの妻がダークエルフだということには、驚かないのですか?」


 シャルが口を挟む。


 「えっ? 何故ですか? あんなに美しい女性を妻に迎えられて、不服に思う男性はいないと思いますが」


 「その、亜人種とされる者たちへの偏見をお持ちなのではと思い、尋ねてしまいました。申し訳ありません」


 「あー、そう言うことですか。お恥ずかしいことに、この国ではそういった考えが根強く浸透しているのは事実です。ですが、私は気になりませんし、そういった方たちと敵対するのではなく、親交を深めるほうがお互いのためだと思っています」


 彼の言葉に僕たちは感動してしまう。

 ダリアスが彼から政権を奪わなければ、この国はいい国になっていたのだろうと残念に思う。


 「フーカ様、金ちゃんと銀ちゃんが物を出したり消したりしていることについて聞いてもよろしいですか?」


 ((これのこと?))


 パッ、パッ。


 彼の言葉を聞くや否や、二人は瓶を出したり壺を出したりしては、すぐに消していった。


 「そうです。それです」


 ((てじな!))


 「違うわ!」


 「ブハッ。アハハハハ――」


 僕と二人との掛け合いに、彼は笑いだしてしまった。


 ((ウケた!))


 「ウケなくていい!」


 彼はさらに笑いだす。

 二人は彼の笑う姿を見て、ドヤ顔でご満悦になった。


 「コホン。今のは収納魔法です。僕たちとしては隠しておきたいんですけど、こいつら、使いまくるわ、披露して自慢するわで困っています」


 彼は同意するように頷くと、再び笑いだしてしまった。




 調理場からオルガさんが顔を出す。


 「金ちゃん、銀ちゃん、手伝って下さい!」


 ((はーい! あっ、作りすぎた!?))


 「ちょっと、オルガの時は、何で嬉しそうなんですか!?」


 満面の笑みを浮かべる二人にシャルが叫ぶと、彼らは凄い勢いで調理場へと逃げ去ってしまった。


 「あ、あいつらー」


 彼女は地を出して膨れた。




 しばらくすると、調理場が少し騒がしくなった。


 「コラー! つまみ食いをしない!」


 ((それは無理!))


 「無理じゃない! さっさと運びなさい!」


 マーカリさんは、そのやり取りを聞いて、楽しそうに笑う。


 「銀ちゃん! 運びながらつままない!」


 (バレたか)


 「金ちゃんは、ガチで食わない!」


 (つまんでない)


 「そういう問題じゃない! あんたたち、私を本気で怒らせたいの?」


 ((ヒィー! ぎょめんなさーい!))


 オルガさんも地が出るほど、二人には手を焼いているようだ。

 そんなやり取りに、マーカリさんは苦しそうにお腹を抱えて笑いだしてしまった。

 身内の恥に、僕とシャルは頭を抱えてうなだれる。




 何も持たずに金ちゃんと銀ちゃんが調理場から戻って来た。

 そして、二人はテーブルの前に来ると、パッ、パッ、パッと料理を出して並べていく。 

 気配を消したオルガさんが、二人の後ろに立つ。


 「三品ほど、足りませんよ」


 ギクッ!


 二人は青ざめながら、がめるつもりだった料理を出した。

 彼女は料理の数を確かめると、疲れた表情で小さく息を吐いたのだった。




 オルガさんも席に着き、六人で食事をする。


 「オルガさん、いつ逃げ出すの?」


 「逃げ出しませんよ」


 「「「……」」」

 ((……))


 何気なく聞いた僕の質問に答えた彼女の言葉を聞いて、僕たちの思考は止まった。

 しばらくして、我に返ると、僕たちは難しい顔になる。


 「オルガさん? 何しに来たの?」


 僕が尋ねると、皆もコクコクと頷く。


 「フーカ様たちの身の安全が確保できているうちは、下手に動かず、助けが来るまで牢獄生活を満喫します」


 牢獄生活なんて、満喫したくない。


 「えーと、ここ、牢屋だよ? それに僕たちがここにいることもバレているかもしれないし」


 「それは大丈夫です。フーカ様たちが捕まる恐れがあったので、私が落とし穴を作動させてここへ落としたんですから。あの皇帝たちは、フーカ様たちが消えたことに驚いて困惑していましたよ」


 「「……」」

 ((……))


 マーカリさん以外は驚愕した。

 落とし穴を作動させたのは、オルガさんだった。


 「それに、マーカリ陛下に力を貸すのでしたら、ここにいて、あの皇帝たちを捕らえるほうがいいでしょう」


 「た、確かにそうだけど、僕たちだけでは無理だよ?」


 「だから、助けを待つのです。すでに特戦群と金銀の(ぼく)隊が帝都の中に紛れ込んでいるでしょうから、そのうち連絡を取りに誰かが来ると思います」


 「その時に打ち合わせればいいのか」


 「はい、その通りです。ユナハ連合もここへ向かって侵攻を継続しているでしょうから、そちらとのタイミングも合わせる必要がありますから」


 「なるほど」


 僕が納得すると、皆もフムフムと納得していた。


 ん? 一つ疑問が浮かんだ。


 「オルガさん、なんで、落とし穴を作動することができたの? この城に入ったのって、初めてじゃないの?」


 「そのことですか。一〇〇年前くらいにカザネ様と攻め込んだ時に、この城のことは調べつくしてありますから」


 「「「……」」」

 ((……))


 僕たちは唖然とする。

 そうだった。オルガさんは姉ちゃんの従者兼側近のような存在だった。


 「なら、すぐに牢屋から出してくれても良かったのに」


 「それは、その……。フーカ様たちが疲労で寝てしまうと、金ちゃんと銀ちゃんが探検に出てしまうし、その行き先では、本当のマーカリ陛下が軟禁されているしで、こちらも登場するタイミングがなかなかつかめなくて……。さらに、牢屋に戻ってくればフーカ様がシャル様の寝込みを襲おうと葛藤してましたから。まあ、あのヘタレっぷりにはガッカリしましたけど」


 僕の顔は恥ずかしさで真っ赤になる。

 あの時の余計に聞こえた声の主はオルガさんだったんだ。

 僕は顔を両手で押さえてうずくまった。

 恥ずかしすぎる……。



 ◇◇◇◇◇



 一夜明けて、マーカリさんの部屋で宿泊した僕たちは、ソファーや金ちゃんと銀ちゃんが収納魔法で出した絨毯(じゅうたん)の上で寝たため、身体が痛くなってしまった。


 「連絡員が来るにはまだ数日かかりそうですし、このまま毎日、雑魚寝(ざこね)というわけにはいきませんね」


 オルガさんの意見に、金ちゃんと銀ちゃんが大きく頷いた。


 (マーカリは、もっと贅沢をするべきだ。生活環境の改善を訴えよう!)


 (そうだ、そうだ! 金ちゃんの言う通りだ! こんなところに閉じ込められていたんだから、マーカリには、わがままを要求する権利がある!)


 金ちゃんと銀ちゃんは、『マーカリにじゆうを』『せいかつのかいぜんをもとむ』と書かれたプラカードを掲げて、二人だけで抗議デモを始めた。

 こいつら、面白がってるな。

 

 「分かりました! 外にいる衛兵に要求してきます!」


 マーカリさんは意気込んで調理場のさらに奥へと向かって行った。


 (あっ、行っちゃった。銀ちゃん、どうしよう。マーカリが勢いに任せて行っちゃったよ)


 (何を要求するのか分かってるのかな?)


 他人事のように話す二人に、僕たちは頭を抱えた。




 しばらくして、マーカリさんが戻ってきた。


 「やりました! 人数分のベッドを今日中に入れてくれるそうです」


 彼は少し興奮した感じで嬉しそうに話す。


 ((マーカリ、でかした。よくやったぞ!))


 二人に褒められると、彼は照れくさそうに微笑む。

 果たして、そんな要求で良かったのだろうか……。




 昼頃になると、調理場の奥から数人の男たちの声が聞こえだす。

 声の方向を見ていると、兵士たちが大きなベッドを四つも運んできた。

 彼らはマーカリさんベッドのそばに立たせるように置くと、困惑していた。


 「マーカリ様、この部屋では狭すぎて、全てのベッドを置くスペースがありません。どういたしましょうか?」


 「「「「あっ……」」」」

 ((あっ……))


 僕たちも困惑した。


 「ん? マ、マーカリ様? その者たちは?」


 兵士の一人が僕たちに気付いて尋ねてくる。


 「この方たちは私の友人であり、味方をしてくれる方たちなんです。ここで見たことは、どうか忘れて下さい」


 「かしこまりました。マーカリ様のことをよろしくお願いいたします」


 その兵士は、僕たちに頭を下げる。


 「僕たちもマーカリさんの助けるために、ここへ少しの間、滞在することにしましたからお任せ下さい」


 僕が答えると、彼は嬉しそうな表情を浮かべた。


 「ありがとうございます」


 彼はそう言うと、他の兵士たちのほうを見る。


 「お前たち。ここで見たことは忘れろ! いいな!」


 「「「「「はっ!」」」」」


 兵士たちがベッドを支えながら返事をする。


 「隊長、それよりも、このベッドは何処に置くんですか?」


 一人の兵士が、尋ねてくる。

 そうだった。ベッドを並べるスペースがこの部屋には無かった。


 「ここの隣の牢は使っていなかったな?」


 「はい、この地下牢はマーカリ様を収容しているので、他の者に知られることを恐れて使われていません」


 「では、壁を崩して部屋を広げよう。女性の方もおられるのだから、広い部屋のほうがいいだろう」


 隊長と兵士たちで話し合いが行われ、急遽、拡張工事が行われることとなった。

 金ちゃんは自慢のピコピコハンマーを取り出して、やる気をみせる。

 結果、僕たちも手伝う羽目になってしまった。

 そうして、突貫工事が行われ、日が暮れ出したころには、拡張されて広くなった部屋が完成した。


 (うーん。こうなると、会議のためのテーブルと椅子も欲しいよね)


 「分かりました。明日、運び入れましょう」


 金ちゃんの要望を聞いた隊長は、当然のように了承してしまった。

 目を大きく開くと、大喜びでガッツポーズをとる金ちゃん。

 うわー。これで味を占めてしまった。

 きっと、色々と要望を出しまくるつもりだ……。


 そして、彼らが去って行くと、僕たちは夕食の準備へと取りかかった。



 ◇◇◇◇◇



 ガコン、ドン。ガシャン。


 朝から騒がしくされ、うるさくて起きてしまうと、金ちゃんと銀ちゃんが何かを運んで、忙しく動き回っていた。


 「ん? 何をしてるの?」


 ((リノベーション!))


 二人はニカッと歯を見せて、親指を立てた。

 僕はベッドから出ると、部屋の扉が無くなっていた。

 その扉は何処にいったのかと探すと、廊下だった通路の先に移動されていた。

 そして、数人の兵士たちが扉の周りの壁に白い漆喰(しっくい)らしき物を塗り込んでいる。


 「こんなことをしたら、バレるだろ!」


 (大丈夫だよ。そこの兵士さんに聞いたら、僕たちが街に逃げ込んだと思って、そっちを探しているんだって! バカだね)


 金ちゃんは嬉しそうに話すが、僕は工事のことを言っているんだが……。


 「ん? 僕たちの素性を話したの?」


 (ダメだった? でも、皆、僕たちのことを知ってたよ。きっと、昨日は僕たちに気を遣って、知らないふり? うーん、気付かないふりをしてくれていたみたい)


 確かに、この面子を見て気付かないほうがおかしい。

 銀ちゃんの話しに、僕も納得した。


 「だけど、こんなに部屋をいじって大丈夫なの?」


 (これから、ここがマーカリの拠点になるんだから、部屋を広げないと皆が集まれないよ)


 「それもそうか。……金ちゃん? 今、なんて?」


 (牢獄生活を満喫するためには、広い部屋で贅沢に暮らさないとね!)


 「そんなこと、言ってなかっただろ!」


 (あっれー?)


 「あっれー? じゃない!」


 僕をからかって楽しそうにする彼を睨んだ。


 (あ、主、冗談だよ。えーと、何だっけ?)


 「おい!」


 (分かってます、分かってます。えーと、ここをマーカリが政権を奪還するための拠点にするの)


 「さっきより、詳細になってるけど……」


 僕は、すぐにマーカリさんのところへ向かった。




 マーカリさんのベッドがあったところには、大きなテーブルが置かれ、いくつもの椅子も置かれていた。


 「か、会議室になってる……」


 一日で変貌を遂げる部屋に驚いた僕は、思わず、つぶやいてしまう。


 「あっ、フーカさん、おはようござ……」


 シャルは挨拶をするが、部屋を見て言葉を詰まらせてしまった。


 「こ、これはいったい?」


 「金ちゃんと銀ちゃんがマーカリさんを巻き込んで、頑張ったらしい」


 「あー。マーカリ様を巻き込んで、やらかしてくれたのですね」


 僕が黙って頷くと、彼女は額を押さえて下を向いてしまった。


 僕はシャルと一緒にマーカリさんを探していると、部屋の掃除をしているオルガさんを見つけた。


 「オルガさん、マーカリさんが何処にいるか知らない?」


 「マーカリ様でしたら、昨日の隊長殿と内密な話しがあると、場所を移しています。その話しの後に、フーカ様には相談にのって欲しいとのことです」


 「そうなんだ。ありがとう。ん? オルガさん、マーカリさんのことを様付けに変えたんだ」


 「はい、マーカリ様が私もフーカ様の、その、奥方なのですからと、ポッ! 私とは対等の立場でいたいとのことでしたので、敬称を変えました」


 彼女は顔を真っ赤にする。


 「そ、そう。それで、その「ポッ!」って……」


 「嬉し恥ずかしの時には、「ポッ!」と付けるといいとカザネ様に教わったのですが、使い方を間違えましたか?」


 彼女は首を傾げる。


 「いや、使い方は間違ってはいないと思うんだけど……。それは、文章などでの表現方法だから、実際に口にする人はいないと思う……」


 ガーン!


 彼女はショックを受けてうなだれてしまった。

 姉ちゃん、中途半端に余計な知識を教えておかないでよ……。

 僕は心の中で嘆いた。


 僕とシャルは、マーカリさんが用事を終えて尋ねてくるのを、少し離れた位置に移動されたソファーに座って待つことにした。


 マーカリさんを探すために部屋を回ってみて思ったが、どこもかしこも、兵士たちがむき出しの石壁に漆喰を塗ったり、間取りを変えたりして、ここは地下牢なのだろうかと疑うほど、奇麗な様相へと作り変えられている最中だった。

 これって、城の地下牢での牢獄生活ではなく、客間に宿泊するのと変わらないのでは?

 そんなことを思いながら、僕は目の前で作業をする兵士たちを眺めていた。

お読みいただき、ありがとうございます。


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