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うちの神様の間違った転移でおおごとに! 女神の使いにされて、僕を頼られても困るのだが……。  作者: とらむらさき


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172話 逃げた先は、牢屋だった……

 護送用の馬車に乗り込んでしまった金ちゃん、銀ちゃん、シャル、僕の四人は、為す術もなく、走り続ける馬車に身を任せるしかなかった。


 「帝都へ到着する前に、貴重品や取り上げられそうな物を隠しましょう」


 移動する車内で、シャルは、僕があげた狐のストラップや結婚指輪などをまとめだした。

 僕もスマホや守り刀、扇子などをまとめる。

 そして、隠すなら金ちゃんと銀ちゃんの収納魔法しかないと思った僕とシャルは、二人にまとめた荷物を渡した。


 (えっ? くれるの? ありがとう!)


 (ありがとう! 大切にするね!)


 金ちゃんと銀ちゃんがお礼を言ってくる。


 「「ちがーう!」」


 僕とシャルは、嬉しそうに受け取る二人に叫んだ。


 「ファルレイク帝国の連中に取られないように、これを収納魔法でしまって欲しいんだよ!」


 僕が説明すると、シャルは相槌を打った。

 金ちゃんと銀ちゃんは肩を落とすと、面倒くさそうな表情で、受け取った僕たちの荷物を見つめる。

 そして、渋々と僕たちの荷物を収納魔法で、面倒くさそうにしまい始めた。

 金ちゃんは、途中でチラチラとこちらを見る。


 (これは、ずっと預かっておくね!)


 「「ダメー!」」


 何を言いだすかと思えば、それではあげたことと同じじゃないか!

 僕とシャルは、すぐに否定した。

 金ちゃんは、不満そうな表情で僕たちを見つめてから、ガッカリとする。


 (金ちゃん、世の中には借りパクっていうのがあるよ!)


 (おー、なるほど。さすが銀ちゃん!)


 感心する金ちゃんに向かって、銀ちゃんはドヤ顔を見せた。


 「銀ちゃんは、余計な知識を与えるな! そして、借りパクなんてしたら、どうなるか分かっているの?」


 ((どうなるの?))


 二人は首を傾げた。


 「二人をリンさんの直属の部下にして、彼女に再教育してもらうことになるよ」


 僕の言葉に、シャルも相槌を打った。


 ((!!!))


 二人は青ざめた表情を浮かべて、身体を震わせた。

 そして、少し間を置いてから、二人はフルフルと頭を左右に振り、揉み手を始める。


 ((兄貴、シャルの姉御(あねご)! ちゃんと預からせていただきますから、必要な時には声を掛けてくだせぇ))


 どこの舎弟だ! そして、時代がかっているのは何故?

 二人の豹変ぶりに僕とシャルは呆れた。



 ◇◇◇◇◇



 馬車が停車すると、扉の小窓から食事が渡される。

 それは、硬いパンと水だけだった。

 出された食事を受け取った金ちゃんと銀ちゃんは、嫌そうな顔をして僕とシャルに振り向く。


 (これ、食べられるの?)


 金ちゃんは、手に取ったパンを僕とシャルにも渡してから、自分のパンを観察する。


 コン、コン。


 (このパンで、釘が打てそうだよ)


 銀ちゃんは、パンで壁を叩いて、感想を述べた。


 「捕虜に出される食事なんて、そんなものです」


 ((えっ!?))


 シャルの言葉に、二人は両手を挙げて驚く。


 (銀ちゃん、捕虜に出してた食事は美味しかったよね?)


 (ウン。温かいし、栄養のバランスもとれてたよ)


 二人は手に持ったパンをしげしげと見つめる。


 「それは、ユナハ国だからです。我が国では、捕虜であっても、人として扱っているからです。我が国やユナハ連合に参加している国では当たり前のことですが、他の国での捕虜は、奴隷かそれ以下の扱いなんです」


 ((ひ、酷い!))


 二人はシャルの話しを真剣に聞くと、手に持ったパンを、今度は悲し気に見つめた。

 食べ物が関わると、真剣なんだよな。他のことでも、これくらい真剣に考えてくれればいいんだけどな……。


 金ちゃんは、硬いパンを収納魔法でしまう。


 (これは、ケイトへのお土産!)


 (じゃあ、僕はツバキちゃんへのお土産!)


 銀ちゃんが張り合いだした。


 (むむっ!)


 金ちゃんは、僕の手にあるパンをジッと見つめる。


 「このパン、硬すぎて、このままじゃ食べられないから、あげるよ」


 (主、ありがとう!)


 彼は僕から受け取ったパンを、すぐにしまってしまう。


 (これは、マイ様へのお土産!)


 (なっ!)


 銀ちゃんは、シャルの手にあるパンを見つめた。


 「わ、分かりました。私のは銀ちゃんにあげます」


 (やった! シャル様、大好き!)


 彼女からパンを受け取った銀ちゃんも、すぐにしまってしまう。


 (これは、エルへのお土産!)


 (むむっ!)


 金ちゃんは、悔しそうな表情を見せる。

 そして、二人は張り合うように見つめ合った。

 そもそも、そんな硬くてまずそうなパンをもらっても、嫌がらせとしか思えないんだが……。

 僕とシャルは二人を見て、溜息をついた。


 張り合うのに飽きた金ちゃんと銀ちゃんは、僕とシャルに視線を向けてくる。


 ((はい。これ、お礼。食べて!))


 二人は、収納魔法で取り出したサンドイッチと瓶に入ったジュースを僕たちに渡した。

 

 「「ありがとう」」


 僕とシャルは二人にお礼を言い、四人で美味しい食事を楽しんだ。



 ◇◇◇◇◇



 帝都へ着くまでの数日間は、一日一度の食事が渡されたのだが、全て硬いパンと水だけだった。

 その度に、金ちゃんと銀ちゃんが硬いパンを収納魔法でしまい、代りの食事を出してくれた。

 二人のおかげで、変な物を食べずに済み、一日三食を摂ることもできた。

 きちんと食事を摂っていたので体力を削られることはなく、いつでも隙をみて逃げ出す準備はできていたのだが、その機会は訪れずに、帝都へと着いてしまった。




 馬車が帝都の城に停車すると、後方の扉が開いた。


 「おい、早く出てこい!」


 敵兵に怒鳴られ、僕たちは渋々と馬車を降りる。

 すると、すぐに数人の敵兵が、僕たちの身体検査を始めた。


 「チッ、クソッ! こいつら、金目の物どころか何も持ってねぇーぞ!」


 一人の敵兵が悔しそうな表情で愚痴ると、他の敵兵たちもガッカリとした顔を僕たちに向ける。

 シャルの忠告に従って、貴重品などを金ちゃんと銀ちゃんに預けて良かったと安堵した。


 その後、僕たちは城の衛兵へと引き渡され、城内へと連れて行かれた。

 廊下ですれ違う者たちは、端へと避けては、僕たちを凝視するような視線を向けてくる。

 その表情は、恐れているようにも見えた。

 ユナハ国の王である僕が連行されているのだから、仕方がないよね。

 そんなことを思っていると、シャルが僕の耳もとでささやく。


 「金ちゃんと銀ちゃんを警戒しているようですね」


 彼女の言葉で、注目されているのは金ちゃんと銀ちゃんだということに気付かされた僕は、自信過剰だった自分が恥ずかしくなり、顔が熱くなっていくのを感じた。

 それを察した金ちゃんと銀ちゃんは、ニマっとした笑顔を浮かべて両脇から僕を覗き込んでくる。


 「何?」


 ((いやー、別にー。ププッ))


 こういう時に限って勘が鋭い二人に、僕は少しイラッとした。




 僕たちは、大きな扉の前まで連れてこられた。

 そして、扉が開かれると、衛兵に背中を強く押されて中へと入る。

 そこは、彫刻の彫られた太い柱が何本も並んで立つ、豪勢な広間だった。


 奥には玉座があり、そこには、金髪に黒髪が混じった優しそうな面立ちの青年が、足を組んで肩肘をつき、だらしなく座っており、その周りには数人の男たちが立っていた。

 そして、僕たちは彼の前に立たされる。

 優しそうに見えた彼は、近くでまじまじと見ると、思っていたよりも若かったが、鋭い目つきをしていて何処か胡散臭い雰囲気も感じた。

 僕は優しい笑顔で絡んでくる不良たちを思い出し、彼を警戒することにした。


 「ほーう。こいつがユナハ王か。王というのに、冴えない奴だな」


 彼は僕を蔑むように見ると、感想を述べた。


 「「ブフッ」」


 金ちゃんと銀ちゃんが吹き出して、下を向く。

 お前らが笑うな!

 僕は二人を睨みつけたが、すぐに深呼吸をして、平常心を保つように意識した。


 「ん? その二匹がユナハ王の使い魔か? そんな間抜けな姿では、使い魔というよりも珍獣だな。ワハハハハ」


 「「「「「ワッハハハハ――」」」」」


 彼が笑いだすと、玉座の周りに立つ貴族たちと衛兵たちも声を高らかに笑いだす。

 金ちゃんと銀ちゃんは、ムッとした表情を見せていたが、二人を始めて見る彼らには、その表情が分からなかったようだ。


 発言をさせず、一方的に話し続ける玉座の青年に、僕はイライラしていた。

 言いたい放題、言いやがって!

 玉座に座っているこの男が皇帝なのは分かるが、捕虜の身とはいえ、僕も一国家の王だというのに、挨拶もしないこの態度はなんなんだ!

 僕はぶちまけたい愚痴をグッと胸の中にしまい込んで置くしかなかった。


 ((こいつ、いや、こいつら、嫌い!))


 周りの者は気付いていないことから、金ちゃんと銀ちゃんは、僕とシャルにだけ念話を飛ばしたようだ。

 僕とシャルが相槌を打つと、二人は嬉しそうな表情を浮かべる。




 玉座の脇に控えていた黒い短髪に穏やかで人当たりの良さそうな雰囲気の中年の男が、皇帝に耳打ちをする。

 すると、彼はその男の話しを聞きながら何度も頷き、ニンマリと悪そうな笑みを浮かべた。

 その表情を見て、嫌な予感しかしてこない……。


 「ユナハ王、俺も手荒な真似はしたくはない。ユナハ連合を解散し、降伏してくれれば悪いようにはしないつもりだ。貴公らをすぐに解放することもできるだろう。どうだろうか?」


 皇帝は、一方的に話しを進めてきた。

 こいつは、何を考えているんだ?

 僕は少し混乱しつつも、彼の言葉を頭の中で整理した。

 こいつの言葉には、つもりだとか、できるだろうって、想定する言葉ばかりで断言する言葉が一つも入っていなかった。

 おそらく、彼に耳打ちをした隣にいる男の悪知恵だな。

 この連中に対して、僕は不信感と苛立ちしか抱けなくなった。


 「こちらに発言させることもなく、挨拶もせず、一方的に話し続け、挙句の果てには、勝手に話しを進めて要求だけをつきつけてくるとは、ファルレイク帝国の皇帝もたかが知れていますね」


 しまった!

 苛立ちから、思わず本音を口にしてしまった。


 ((主! よく言った!))


 金ちゃんと銀ちゃんから褒められ、シャルは微笑んで相槌を打つ。

 すると、皇帝はムッとした表情を浮かべ、その周りにいる者たちは、腰の剣に手を添えながら僕を睨みつけてきた。

 ちょっと怖いが、僕も負けじと睨み返す。


 「フン。生意気だが、まあ、今回は見逃してやろう」


 皇帝が口を開くと、周りの者も剣から手を離した。


 ((あるじー! 怖いから、あんまり刺激しないでよ!))


 金ちゃんと銀ちゃんが、クレームをつけてきた。

 さっきと言っていることが真逆じゃないか!

 僕が二人を見ると、彼らは目を逸らした。

 こ、こいつらは……。




 皇帝が姿勢を正して座り直すと、周りの者も姿勢を正した。


 「あー、挨拶だったな。俺は、このファルレイク帝国の皇帝、ダリアス……」


 「コホン、コホン! これは、失礼しました。陛下」


 中年の男が咳ばらいをして、皇帝の言葉をさえぎった。


 「いや、かまわん。コホン。俺がファルレイク帝国の皇帝、マーカリ・フォン・ファルレイクだ」


 彼は胸を張って、皇帝らしく堂々とした態度をとった。

 さっき、ダリアスって言ってなかった? うーん。なんかきな臭い……。


 「私は宰相のデイン・フォン・ダウニングです。まあ、あなた方とは交渉の場を除いて、会うことはないと思いますが」


 マーカリの隣にいた中年の男は、やっぱり宰相だったのか。

 それにしても、言っていることに棘があってムカつく。

 その後、マーカリの周りにいる者たちが、順に名乗りを続けた。

 彼らは皇帝のそばにいるだけあって、誰もが国の高官ばかりだった。


 マーカリは高官たちの名乗りが終わると、満足そうな表情を浮かべた。

 そして、僕をジッと見つめる。


 「これでよかろう。ユナハ王、こちらは貴公の要求に応えたのだ。今度は貴公がこちらの要求に応え、降伏を宣言してもらおう」


 マーカリの言葉に、僕は唖然とした。

 彼の言っていることは、交渉でも何でもなく、発言したことの揚げ足取りでしかなかったからだ。


 「こんなのは、交渉とは言えない! 断る!」


 僕が拒むと、シャル、金ちゃん、銀ちゃんの三人は満足そうな表情で頷く。

 しかし、マーカリたちは、眉をひそめて苛立ちを見せた。


 「フーカ王。あなた方は捕虜、つまりは捕らわれの身なのですぞ。ご自身のお立場が分かっていらっしゃらないようですな」


 ダウニング宰相が口を開くと、マーカリたちは大きく頷いた。


 「宰相閣下の言う通りだ! 我々は、お前たちを交渉材料にして、ユナハ連合に要求を飲ませることもできるのだぞ!」


 高官の一人は、僕を指差して怒鳴った。

 ん? それなら、僕たちを交渉材料として使えばいいのに、何で、こんなにも回りくどいことをしてるんだ?


 「使者を出したけど、イーリスたちから相手にされなかったんでしょうね」


 シャルは、僕たちだけに聞こえる声で言った。

 僕の脳裏に、激怒している姉ちゃんの顔が浮かんでくる。


 ブルブル。


 (イーリス様じゃなくて、怒ったカザネお姉ちゃんたちが原因だと思う)


 (きっと、そうだよ。今頃、凄い勢いで攻め込んでそう)


 金ちゃんと銀ちゃんは身震いをしながら、思ったことを口にした。

 僕とシャルも、考えていることは二人と同じだった。


 僕はマーカリたちを見回した。

 彼らは、険しい表情で言葉を交わしたりしている。

 やはり、使者を突き返されたと想定したほうが良さそうだ。

 スクッとマーカリが立ちあがって、僕たちを指差す。


 「おい、こいつらを牢に入れておけ!」


 彼の命令に衛兵たちが動き出した。


 「いや待て! その二匹の使い魔は、処分してかまわん!」


 ((!!!))

 「「!!!」」


 方針を変えた彼の言葉に、僕たちは驚いた。

 それでは、捕虜にしている意味がないじゃないか!

 彼は僕たちをジッと眺めると、シャルに視線を固定した。


 「ユナハ王は拷問室へ連れて行け! そして、デイン。シャルティナ王妃は、お前たちの好きにするがいい! 若い女は久しぶりだろ。存分に味わえ!」


 「「「「「ハハッ。ありがとうございます!」」」」」


 ダウニング宰相と高官たちは嬉しそうに笑みを浮かべて、シャルをいやらしい目で見つめた。


 ((!!!))

 「「!!!」」


 僕たちは、さらに方針を変えた彼に、再び驚いた。

 金ちゃんと銀ちゃんは処分で、僕は拷問って……。もう、捕虜でも交渉材料でも何でもないじゃないか!

 衛兵たちが、僕たちに近付いてくる。


 僕たちは、一塊になって警戒をする。

 だが、この状況では捕らえられてしまう……。


 (主、シャル様。逃げるよ!)


 (僕たちに任せて!)


 金ちゃんと銀ちゃんは、僕とシャルを抱える。

 そして、何かを銀ちゃんが投げた。


 カラン、カラン。


 細長い缶のようなものが、僕たちとマーカリたちの間に転がる。

 彼らと近付く衛兵たちは、その缶を警戒して下がった。


 ((今だ!))


 僕とシャルを抱えた金ちゃんと銀ちゃんは、扉へと向かって走りだす。

 衛兵たちは僕たちを逃がすまいと追いかけようとした。


 シュー。


 すると、転がっていた缶から白い煙が勢いよく噴出され、辺りを白く覆いつくす。

 衛兵たちは、僕たちを追いかけるのを断念し、再び下がって警戒をした。


 白い煙が充満すると、あちらこちらで咳き込む声が聞こえる。

 催涙ガス? いや、煙幕か?


 「ケホッ、ケホッ。な、なんだ、これは!?」


 マーカリが叫んだ。


 「ケホン。は、早く外の衛兵を呼べ! ケホッ。奴らを捕らえよ!」


 ダウニング宰相も咳き込みながら、命令を叫んだ。




 その間も金ちゃんと銀ちゃんは、僕とシャルを抱えて必死に走って逃げていた。


 ガチャン!


 僕たちの目前まで扉が近付いた時に、機械音のような大きな物音が響く。

 すると、金ちゃんの足元の床が開き、そこには真っ暗な闇が広がっていた。

 マズい! これって、落とし穴?

 僕が気付いた時には、ジェットコースターのような、身体がフワッと浮くような感覚が僕たちを襲ってくる。


 ((ぎゃぁぁぁー!!!))

 「「ぎゃぁぁぁー!!!」」


 僕たち四人は、悲鳴を上げて、その闇の中へと吸い込まれていく。

 落下している時間は短いのだろうが、とても長く感じた。

 闇の底には、うっすら灯りが見える。


 ドシン!


 すると、すぐに衝撃が身体を襲ってきた。

 金ちゃんと銀ちゃんが、どこかに着地したようだ。

 頭を上げて二人を見ると、彼らは苦悶の表情を浮かべていた。


 ((ぐぉぉぉー! 足がー!))


 ポイ。ドサッ。


 二人が叫び声を上げると、僕とシャルは地面へと放り投げられてしまった。


 「「いたっ!」」


 「もっと、丁寧に降ろしてよ」


 僕は二人に向かって文句を言ったのだが、彼らは僕を無視して、自分たちの足をさすりながら身もだえていた。

 結構な高さからの着地だったから、足がしびれたようだ。

 い、痛そう……。


 「金ちゃん? 銀ちゃん? 大丈夫?」


 ((あ、主……。足がしびれて、ジンジンする))


 二人を心配して声を掛けると、彼らは涙を溜めて僕を見つめた。


 「金ちゃん、銀ちゃん。ここに座って下さい」


 シャルも二人を心配して、座れそうなところを見つけて指差した。

 そこには、汚く、ボロボロのベッドが置かれていた。

 二人はそのベッドを見つめると、シャルに嫌そうな表情を向ける。


 ((いや、シャル様。それは無理。さすがに座りたくない))


 わがままを言いだす二人に、彼女は顔を引きつらせた。

 こいつら、シャルの親切を躊躇(ちゅうちょ)なく断ってる……。


 金ちゃんは収納魔法で大きなソファー出すと、銀ちゃんと一緒に腰を下ろした。

 そして、足をさすりだし、痛みが治まるでグテーとする。

 こ、こいつらは、こんなに大きなものをしまっていたくせに、僕たちの荷物をしまうのを面倒くさそうにしてたなんて……。


 ポン、ポン。


 (主とシャル様もどうぞ!)


 金ちゃんはソファーの真ん中の席を叩いて僕たちを誘う。


 (早く座って、座って!)


 銀ちゃんも誘ってきた。

 僕とシャルは二人に挟まれるように真ん中へと座る。

 そのまま背もたれに寄りかかると、とても癒される。




 ゆったりとした状態で、ここが何処なのかを把握しようと、僕は目を凝らした。

 薄暗い環境に目が慣れてくると、戸惑うような景色が目に飛び込んでくる。

 周りは石壁に囲まれて窓もなく、空気はジメジメとしていた。

 そして、目の前には金属の格子が並んでいた。

 今いる場所が分かった。

 ここは牢屋だ。


 「またか……。逃げた先が、牢屋って……」


 ん? 逃げたといえるのだろうか?


 (主って、檻の中が好きだよね)


 僕がうなだれながらつぶやくと、金ちゃんが答えた。


 「金ちゃんのせいだろ!」


 (そうやって、人のせいにするのは、主の悪い癖だよ)


 彼が反論すると、銀ちゃんも相槌を打つ。


 「どの口が、そんなことを言うんだよ!」


 (この口!)


 金ちゃんがニカッと白い歯を見せると、銀ちゃんも真似をした。

 こ、こいつらは……。

 シャルは僕たちを見て、クスクスと笑いだしてしまった。

 牢屋に入れられた? というのに、僕たちに緊張感や落胆は全くなかった。

 これでいいのだろうか……。


お読みいただき、ありがとうございます。


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