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うちの神様の間違った転移でおおごとに! 女神の使いにされて、僕を頼られても困るのだが……。  作者: とらむらさき


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169話 ファルレイク帝国への侵攻

 西大陸からファルレイク帝国を追いだした僕たちは、帝国本土へ侵攻するために交易都市バイランスの沖に集結した戦狐(せんこ)艦隊に乗り込むため、市内の港へと向かった。

 そこにある桟橋では、艦隊からの迎えのボートが、僕たちを待っていた。


 そのボートに乗り、沖に出ると、戦狐艦隊が見えてくる。


 「ん? なんか増えてない? っていうかデカいのがいるんだけど?」


 「フッフッフ。よくぞ聞いてくれました!」


 ケイトは嬉しそうな表情を浮かべる。


 「リンスバックで極秘裏に建造されていた大型戦艦の『天狐(てんこ)』が完成したので、合流したんです!」


 ケイトが胸を張って話すと、その横でヒーちゃんも頷いていたので、彼女も知っていたのだろう。

 また、勝手なことを……。

 それにしてもデカい。

 近くにいる銀狐の倍の大きさはある。

 そして、いかにも戦艦と言った姿がカッコいい!


 天狐のそばの二か所で海面が盛り上がる。


 ザパーン。ザパーン。


 波しぶきを立てて、黒い塊が勢いよく顔を出した。 


 「「「「「!!!」」」」」


 ボートに乗っていた僕たちは驚く。

 そして、押し寄せてくる波でボートが激しく揺れると、手すりへとしがみついていた。 

 姿を現したのは二隻の潜水艦だった。

 まったく同じ型だったが、区別のために艦橋のところにあるラインが青色と銀色で別けられていた。

 

 「造船所で見たと思いますが、あの潜水艦も完成したので合流させました。青色のラインが入っているのが『水狐(すいこ)』で、銀色のラインが入っているのが『影狐(えいこ)』です」


 ケイトが自慢げに説明をする。

 潜水艦まで加わっていたら、この世界では最強の艦隊だろう。

 どんどん戦力が過剰になっていっている。

 このままでいいのだろうか?

 僕は少し不安になった。


 戦狐艦隊の周りには、木造船の船団がいた。

 あれがこの世界の標準的な船なんだよな。

 僕は何とも言えない気分を味わいながら、船団を眺めていた。

 すると、その船団と輸送艦の『黄狐(おうこ)』が港へと向かい始めた。


 「あれ? これから兵士たちを乗せるの?」


 「はい、この数の船が入るには、さすがに港が狭いので、順に着港させてから乗船せています」


 「確かに、これだけの船が一度に入ったら渋滞するね」


 イーリスさんの返答に僕は納得した。




 そして、ボートは銀狐ではなく天狐へと向かうと、天狐の側面が開き、乗艦用の桟橋が出来た。

 僕たちは、そこから艦へと乗り込んだ。

 艦内の廊下をケイトの案内で進んで行く。

 軍艦だけあって、仕切りと扉の多さが目立つ。

 その突き当りには、エレベーターが完備されており、僕たちはそれに乗って、艦橋まで一気に昇った。


 エレベーターの扉が開くと、ダグラスさんとスイドさん、そして、始めてみる船員たちがこちらへ向かって敬礼をした。


 「フーカ陛下、皆様方も、戦狐艦隊旗艦、天狐へようこそ!」


 「「「「「天狐へようこそ!!!」」」」」


 ダグラスさんが一歩前に出て、僕たちを歓迎してくれると、船員たも歓迎の言葉を復唱した。


 「また、お世話になります。よろしくお願いします」


 「はい、お任せください」


 ダグラスさんと挨拶をかわすと、僕たちは壁沿いに並ぶベンチシートへと案内される。 

 要人が同行することを考慮されているらしく、大きめで座り心地の良いシートだった。 

 金ちゃんと銀ちゃん用なのか、さらに大きな席も二席用意されていた。

 二人はシートに座るとポフポフと飛び跳ね、ご満悦だった。




 各船の準備が整うと、ファルレイク帝国本土を目指して、戦狐艦隊を先頭にしたユナハ連合軍の船団は出航する。


 ビルヴァイス魔王国とは海を隔ててはいるが、しばらく進むとファルレイク帝国が見えてくるほど近かった。

 しかし、見えてはいるのに、なかなか着かない。

 そんなことを思っていると、こちらから離れていく船団があった。


 「あちらの船団はレイントンの北に位置する港町クランドから上陸を開始します。一方、我々は壊滅させた軍港のある港湾都市レイントンから上陸します」


 僕が離れていく船団を不思議そうに見ていたことで、説明をしてくれた。


 「上陸地を二か所に別けたんだ」


 「はい、その通りです。敵がレイントンに集中しても困りますので、敵を分散させるためにもクランドとレイントンの二か所から侵攻を開始することにしました。それに、国の重要人物とされる方々も同行されている私たちは、すでに制圧を終えて、安全が確保されたレイントン港へ向かうのが最善と考えました」


 「なるほど、そう言うことか」


 補足するイーリスさんに、僕は相槌を打った。



 ◇◇◇◇◇



 翌朝には、港湾都市レイントンへと到着した。

 天狐の船内は部屋も広く、出された料理もおいしく快適だっただけに、すぐに到着してしまったことが名残惜しい。


 到着した各船は桟橋に荷物と兵士を続々と降ろしていく。

 僕たちは天狐からボートで桟橋へと送られた。

 その桟橋には、僕たちの馬車が用意されており、それに乗り込むと、すでに設営されていた本陣へと向かった。




 桟橋のある軍港跡地は、破壊された建物が多く、そのそばでは瓦礫(がれき)が山積みとなり、酷い有様であった。

 しかし、市内へと馬車が入って行くと、街への被害はほとんどなく、日常の生活が行われている。

 住民たちは、こちらを気にしている様ではあったが、少し前まで戦闘が行われていたと思わせる様な感じではなかった。

 そんな市街を進んでいると、こちらの馬車に向かって、多くの人たちが笑顔で手を振ってくることに驚く。


 「これ、どういうこと?」


 「この地の制圧後の報告では、ファルレイク帝国は重税を課したり、贅沢や娯楽を禁止したりと国民にも圧政を布いていたことが分かりました。圧政から解放されて喜んでいるのでしょう」


 そう言ったイーリスさんは、ニコッと微笑む。


 「僕たちに制圧されて、住みやすくなったってこと?」


 「まあ、制圧されたことで自由を手に入れたのですから、簡潔に言えばそういうことになります」


 制圧されて自由を手に入れたって、何だか僕のほうが少し複雑な気持ちになってしまった。




 馬車は本陣に到着した。

 立派なお屋敷なので、ここの貴族から接収したか間借りしているのだろう。

 屋敷の中へ入ると、玄関の広いロビーが会議室とされており、すでにヘルゲさんたち軍の上層部がテーブルを囲んで、会議を始めていた。


 彼らは、僕たちが入ると全員が起立し、こちらに向かって敬礼をして迎えてくれた。

 僕が手をかざすと、皆は腰を下ろしてこちらを見つめる。


 「まだ、始まったばかりなので、フーカ様方もご参加ください」


 ヘルゲさんに言われ、僕たちは近くの席に腰を掛けた。


 会議が再開される。


 「すでに東から侵攻を始めていたドレイティス王朝が率いるユナハ連合軍が、猛進をしているとのことです。こちらも足並みをそろえて、早く侵攻を進めるべきでしょう」


 高官の一人が進言する。

 すると、その話しを聞いたエルさんがドヤ顔を見せる。


 「いやいや、ドレイティス王朝が率いるって言ってたでしょ! セレストさんの手腕だと思うけど」


 「うちの国だって参加してるんだから、いいじゃない!」


 エルさんは僕がツッコむと、こちらに向かってムッとした表情を見せる。

 その後ろでは、立った状態のサンナさんとハンネさんが、彼女を困った表情で見おろしていた。

 彼女たちも苦労が絶えないなと同情してしまう。


 脱線した会議が修正されると、すぐに兵士が飛び込んできた。


 「港町クランドに上陸した別動隊からの報告です」


 「うむ、話せ」


 ヘルゲさんが許可をすると、彼は軽く頷いた。


 「港町クランドには敵軍の姿はなく、難なく上陸。そのため、準備が順調に運び、命令が下れば、いつでも侵攻を開始できるとのことです」


 彼は言い終えると、敬礼してから立ち去って行った。

 ヘルゲさんたち上層部は、その報告を受け、満足さ応な表情を浮かべて頷く。


 そして、明朝、こちらのレイントンにいる本隊とクランドの別動隊が同時に侵攻を開始することが決まり、さらに細かな調整が話し合われた後、会議は解散となった。



 ◇◇◇◇◇



 まだ、陽も明けきらぬうちから外が騒がしくなり、目が覚める。

 半分眠った状態の目をこすりながら、窓を開けて外を見ると、すでに兵士たちが侵攻を開始するために忙しく動き回っている様子がうかがえた。

 あれ? 寝坊したかな?

 僕は少し焦りを感じながら、護衛と称して、いつも僕と同じ部屋に泊まる金ちゃん、銀ちゃん、レイリアの三人が寝ているほうを見る。

 三人は熟睡しており、起きる気配はない。

 寝坊はしていないようだ。


 そんなことを思っていると、扉が叩かれ、アンさんとオルガさんが入ってくる。


 「「フーカ様、おはようございます」」


 「おはよう」


 僕が挨拶を返すと、二人は僕の身支度に取りかかる。

 その間に、金ちゃん、銀ちゃん、レイリアの三人は上半身だけを起こし、まだ眠そうな目をこすっていた。


 ((おはよう))

 「おはようございます」


 三人は目をつむったまま挨拶をする。

 この三人は、最近、(たる)んでいるのでは?

 そんなことを思いつつ呆れた表情で三人を見つめる。

 僕の身支度を済ませたアンさんとオルガさんは、すぐに金ちゃんと銀ちゃんの身支度の準備に取り掛かった。

 特に、この二人は弛んでいる。


 僕が見つめているのに、レイリアが恥ずかしげもなく服を脱ぎ始めた。


 「!!!」


 彼女の胸を包む水色でスケスケの下着が丸見えだ。


 「レ、レイリア! 見えてるよ! ちゃんと隠して着替えなよ!」


 僕は嬉しいと思いながらも、見てはいけないという葛藤と恥ずかしさに耐えきれず、注意をした。


 (そうだよ! 主に変な物を見せないでよ! そんなので、主の気を引こうなんてズルいよ!)


 金ちゃんはアンさんに着替えを手伝ってもらいながら、何故か嫉妬心を燃やしてくる。 

 その横では、オルガさんにズボンを履かせてもらっている銀ちゃんが、少しムッとした表情で相槌を打った。

 二人して、こんな時だけ嫉妬心を燃やすな!

 僕は心の中で叫んだ。


 「へ、変な物って! これは変な物ではありません!」


 彼女は顔を真っ赤にして、腕で胸を隠しながら反論した。


 (じゃあ、主に聞いてみよう。主! レイリアお姉ちゃんの胸と僕たちのモフモフの毛並みだと、どっちが好き?)


 銀ちゃんが、答えにくい論点のズレた質問をしてくる。

 なんで、レイリアの胸が変な物かどうかの話しが、彼女の胸と二人のモフモフな毛並みのどっちが好きかの選択肢に変わってしまうんだ!


 「……」


 どっちも好きな僕は、決められずに言葉を詰まらせる。

 僕は困り果て、アンさんとオルガさんに助けを求めようと、二人へ視線を向けた。

 すると、二人は自分たちの胸を強調するように、胸を両腕で挟むように持ち上げて、こちらを見つめる。


 「「私のもありますよ!」」


 二人まで参戦してきた。


 「そんなの、答えられるか!」


 恥ずかしさで顔を真っ赤にしながら僕が叫ぶと、五人は笑いだした。

 くそー。からかわれてる……。




 支度が終わり、外へ出ると、すでに数台の馬車が並んで待機していた。

 シャルたち皆は、それぞれの馬車へ乗り込み、僕たちが来るのを待っていたようだ。

 僕はシャルの乗っている馬車へと乗り込む。


 「フーカさん? 顔が真っ赤ですけど、何かあったんですか?」


 「それは聞かないで」


 首を傾げて尋ねるシャルに僕が答えると、アンさん、オルガさん、レイリア、金ちゃん、銀ちゃんの五人が同じ馬車に乗り込み、再び笑いだした。

 すると、車内にいたイーリスさんやミリヤさんたちも不思議そうに首を傾げる。


 「そこ! 説明しようとしない!」


 僕は、どさくさに紛れてケイトへ耳打ちをしようとしていたレイリアを阻止した。


 (主に、僕たちのモフモフの素敵な毛並みと、アン様の胸とレイリアお姉ちゃんの胸とオルガお姉ちゃんの胸だと、どれが一番好きかって聞いたら、悩みまくっていたんだよ!)


 (その結果、主は、朝からスケベで優柔不断だってこと!)


 しっかりと説明を始めた金ちゃんと銀ちゃんを止めようとしたものの、彼らは念話なので、阻止できなかった。

 車内にいる皆は、僕を見ながらいたずらっぽく笑い始める。

 姉ちゃんたちとは別の馬車で良かったが、それでも恥ずかしいことには変わりはなかった。


 馬車が動き出す。

 こんな緊張感のない状態でファルレイク帝国への侵攻が開始された。

 今の状況がとても不謹慎に感じられ、僕はやるせない気持ちになる。

 だが、車内では僕が誰を選ぶつもりだったのかを追求する話題でもちきりになり、皆が詰め寄ってくる。

 本当に、これから侵攻をする気があるのだろうか……?




 交易都市バイランスを出た馬車は、数時間が過ぎた頃になって停車した。

 先頭が待ち構えていたファルレイク帝国軍の防衛線とぶつかり、戦闘に入ったからだ。 

 僕たちの馬車のそばに火砲馬車が展開される。


 ドーン、ドーン――。


 すぐに轟音が響き、火砲馬車の砲身が火を吹くと、僕たちの馬車も軽く揺れた。


 「火砲馬車との距離がこんなに近いと、馬車の中にいてもよく響くね」


 「こればかりは仕方ないですからね。しかし、火砲馬車の攻撃力のおかげで、味方の兵士たちの犠牲が少なくて済むと思えば、大したことではないでしょ」


 「そうだね」


 ケイトは僕を諭すように答えると、腕で胸を軽く持ち上げてニッコリと微笑んだ。

 なっ! し、しつこい!

 忘れていた話題を彼女が蘇らせたことで、皆の表情はいたずらっぽい笑顔へと変わった。

 勘弁してくれ……。




 火砲馬車の大砲の音が鳴りやむと、しばらくして馬車が動き出す。

 敵軍の防衛線を崩して、侵攻が再開されたようだ。

 数時間おきに停車しては、火砲馬車からの攻撃が行われるというローテーションを何度か繰り返すと、辺りは暗くなっていた。


 馬車から降りて夕食を摂ると、再び馬車に戻り休息をとる。


 「いくつかの村と小さな町は制圧したけど、これから先、大きな都市とかが出てくると制圧に時間が掛かりそうだね」


 「私たちが進行すると、そこの住民たちが協力してくれるそうなので、そうでもないと思いますよ」


 ケイトは少し困った表情で答える。


 「イーリスさんから少し聞いていたけど、ファルレイク帝国って、そんなに酷い圧政を布いているの?」


 「まあ、数年前から急に軍事国家として目覚めた……というか、再起した国ですから、一度緩んだ治世を戻すために、締め付けを厳しくしたんじゃないですか?」


 「そうなの?」


 ケイトは自信がなさそうだったので、僕はイーリスさんに向かって首を傾げてみせた。

 

 「ええ、ケイトの言う通りだと思います。カザネ様に滅ぼされかけた後は平和主義の友好的な国となったのですが、先代皇帝の時代になると軍国主義へと変化していき、とても攻撃的な国家となりましたが、現皇帝が帝位につくと、また穏やかで友好的な国へとなりました。ですが、数年前から再び軍国主義へと変わってしまい、周辺国も戸惑っていました」


 「そうなんだ。数年前に帝国内で何かがあって、今の皇帝の人格が変わったのかな?」

 

 「入ってくる情報では、そうとしか思えないほどの変貌ぶりです。もしかしたら、皇帝の周囲にいる者の誰かが皇帝を傀儡としている可能性もあります」


 イーリスさんは苦笑する。

 今回のファルレイク帝国との戦いは、ハンヴァイス新魔国との戦いの時のようにはいかなさそうだ。


 その後、車内は静かになっていき、皆の寝息だけが聞こえていた。

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