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うちの神様の間違った転移でおおごとに! 女神の使いにされて、僕を頼られても困るのだが……。  作者: とらむらさき


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165話 ビルヴァイス魔王国とユナハ連合の勝利

 クロウサス市内へと入った僕たちは、敵が使っていた教会の抜け道に向かったのだが、そこには、すでにシリウスがいて、兵士からの報告を受けていた。


 「フーカ様、教会内の抜け道と思われる入り口は破壊され、通れなくなっていました。城から突入するしかありません」


 彼は僕に向かって、残念そうな表情で首を横に振った。


 「仕方ないよ。城の入り口まで行こう」


 僕たちは、シリウスたちと城へ向かった。

 城までの距離はほとんどなかったものの、城の門は北側の一ヶ所だけで、僕たちは、その門の前で布陣を敷いていた混成軍と合流する。


 「城門が一ヶ所って、来客や荷物が同時に来たら、混雑して不便そうだね」


 「そうですね。でも、警備は楽になりますよ」


 「確かに」


 「出入口が一ヶ所でも、城内に住む者は、教会にあったような抜け道が四方に張り巡らされていて、不便はないのかもしれませんよ」


 ケイトは、キョロキョロとしながら答えた。


 「うげー。面倒くさくなりそう」


 僕が正直な感想を述べると、皆も嫌そうな顔で頷いた。




 混成軍の本陣に顔を出すと、ヘルゲさんが困った顔で、僕を見つめてくる。


 「フーカ様? 何をしてるのですか? 大人しくしていただくように通達してあったと思いますが?」


 「う、うん。それは分かっていたんだけど、敵が南側から逃げようとしたから、成り行きで……」


 「ハァー」


 彼は溜息をついて、後頭部を押さえながら下を向いてしまった。

 なんか、気まずい……。

 すると、シリウスがヘルゲさんに経緯を話してくれて、そのまま話しは今後のことを話し合う方向へと向かった。


 そして、僕たちはヘルゲさんたちと合同の会議を始め、明朝、敵城へ攻め込むことなった。

 また、他にも抜け道があるかもしれないので、城の周りとクロウサスの周辺にも見張りをたてることとした。




 僕は会議が終わると、皆と一緒に少し街並みを見て回る。

 ここも、ルード港や他の町や村と一緒で、住民が虐げられていた。

 ヘルゲさんの指示で、炊き出しや支援は行われていたが、大きな都市だけあって、間に合っているとは思えなかった。


 「ミリヤさん」


 「はい、分かってます。こちらでも炊き出しと支援の準備をします」


 「うん、お願い」


 彼女は僕にニコッと微笑むと、足早に立ち去って行った。



 ◇◇◇◇◇



 夜が明けると、兵士たちが城への突入のために、入り口の周りで隊列を組んで待機していた。

 そして、腕をブンブンとまわして、やる気満々のアスールさんが、自慢げな顔で登場する。


 「コホン。では、準備はいいか!? ぶち破るぞ!」


 兵士たちは顔を強張らせ、いつでも突入出来る態勢を整える。


 ドカーン。


 南側の門と同じく、城壁の鉄製の門はひしゃげて、奥へと吹き飛んでいった。

 すると、土煙がおさまるのを待たずに兵士たちは突入していく。

 そのすぐ後をシリウスの部隊と特殊部隊が追い駆けるように続いて行く。


 一仕事を終えて、満足そうな顔をしたアスールさんが戻って来た。


 (アスール姉さん、お疲れ様っす!)


 金ちゃんは、アスールさんに濡れたタオルを渡す。


 「おう、悪いな!」


 彼女も満更ではない態度をとる。


 「どこの舎弟だ! それに、さっきまでアスールお姉ちゃんって呼んでただろ?」


 (主、そこは状況と気分に合わせて使い分けるもんだよ!)


 隣に来た銀ちゃんに諭されてしまった。

 何でだろう? とても納得がいかない……。




 一人の兵士が僕たちのところへと来る。


 「アスール様はいらっしゃいますか?」


 「うん、いるけど、どうしたの?」


 「城内への入り口の門が厄介でして、また、アスール様のお力をお借りできないかと、シリウス様からの要請です。よろしくお願いします」


 彼は緊張した面持ちで話し、頭を下げた。


 「そうかー。仕方ないなー。お前、案内しろ!」


 「はっ! こちらに」


 アスールさんは頼れたことが、とても嬉しそうだ。

 ご機嫌な彼女は、鼻歌を口ずさみながら兵士の後をついて行く。

 僕たちは、その後をついて行く。

 調子に乗っている彼女を、一人にするのは不安だからだ。


 門の前に着くと、シリウスと兵士たちが立ち尽くしていた。


 「シリウス! そんなに頑丈な門なの?」


 「あっ、フーカ様。見てもらえれば分かります。頑丈は頑丈なのですが、どちらかというと、開けるのに時間がとられそうなのです」


 彼は眉間に皺を寄せて困った表情を浮かべながら、僕たちを門の前へと案内する。

 

 「「「「「!!!」」」」」


 その門を見て、僕たちは驚いた。

 門の扉にたどり着くまでに、太い鉄格子の柵が二つも下りているのだ。


 「この柵がびくともしないため、どうしようもないのです。他に侵入経路がないか調べましたが、石壁だけで、侵入出来そうな個所はどこにもなく、窓はあるのですが、それは、三階部分から上の階のみで、格子がつけられています」


 僕は上を見上げる。

 確かに窓はあるが、しっかりと格子がはめ込まれている。


 「ねえ、フーちゃん。周りを少し見たけど、この城、造りが城じゃなくて要塞よ」


 姉ちゃんは、城を見つめながら話しかけてきた。


 「えっ!? そうなの?」


 僕も城の壁伝いに確かめてみると、円形の基礎の上に城を建てた造りになっていた。

 

 「どこかの壁を押したら、壁に偽装された扉が開いたりしないかな?」


 「ゲームじゃないんだから、そんな都合のいい仕掛けはないんじゃない」


 「だよね」


 僕と姉ちゃんは少し下がった位置から城を見渡し、腕を組んで攻略法を考える。

 太い鉄格子に近付いたアスールさんも、少しの間、見つめてから悩みだす。

 すると、ルビーさん、ネーヴェさん、イーロさんが彼女のそばに行き、格子を揺すったりして何かを確かめていた。


 「壊せそう?」


 僕は彼女たちに尋ねた。


 「これは、この格子を無理に破壊したら、通路の天井が崩れ落ちてふさがれてしまいます」


 ネーヴェさんが答えると、アスールさんたちも頷いた。


 困った。

 僕たちは呆然と城を眺める。


 「そういえば、フーカが「壁に仕掛けがあるかも?」と言っていたな」


 コンコン、コンコン。


 アスールさんは拳で壁を軽く叩きだして、何か仕掛けがないかを確かめだした。


 コンコン、コンコン。コンコン、コンコン。


 (入ってます!)


 「あっ、これは申し訳ない」


 彼女は叩いた壁に向かって頭を下げる。


 スパーン。


 金ちゃんが、アンさんからハリセンをくらった。


 「皆、真面目に別の入り口を探しているのです。ふざけない!」


 (ごめんなさい)


 「「「「「……」」」」」


 僕たちが呆れた目で金ちゃんを見つめると、モジモジと照れ始める。


 (テヘッ!)


 スパーン。


 再び、アンさんのハリセンが金ちゃんに炸裂した。


 「いい加減にしなさい」


 彼女は彼の頭を押さえて、座った目でささやいた。


 (ぎょ、ぎょ、ぎょめんなさい!)


 彼は目に涙を溜めて謝る。


 「「「「「ハァー」」」」」


 僕たちは、そんな彼に溜息をついた。


 「えーい! わしが真面目に探しているというのに、なんで、お前たちは楽しそうに遊んでいるんだ! 納得がいかん!」


 ドーン。


 アスールさんは怒って壁を強く叩いてしまった。


 ガラガラガラ。


 土煙があがって、辺りが茶色くなる。


 「「「「「ケホッ、ケホッ。コホン、コホン」」」」」


 僕たちはむせかえってしまう。


 土煙がおさまると、アスールさんは青ざめた顔をしていた。


 「アスール! あなたは、いつも、いつも……。アスール? それは?」


 ネーヴェさんは、彼女の胸ぐらを掴んで揺すりながら叫んでいたが、急に立ち尽くしてしまった。


 「す、すまん。力加減を間違えて、穴をあけてしまった……」


 彼女は申し訳なさそうな表情を浮かべて落ち込んだ。

 城の壁には大きな穴が開き、その奥には廊下と思われる通路が見えていた。


 「アスール様! お手柄です! ありがとうございます!」


 シリウスが大きな声で、彼女にお礼を言った。


 「「「「「アスール様! ありがとうございます!」」」」」


 すると、兵士たちも、彼に続いてお礼を言うと、彼女の前で一礼をしてから、その穴へと飛び込んでいく。

 アスールさんだけは、やらかしたと思い込んでいたらしく、事情が呑み込めずにポカーンとしていた。


 (主! 僕たちも行こう!)


 銀ちゃんは、穴の中へ飛び込み、先陣を切る。


 「銀ちゃん! 一人で行動しては危ないです!」


 (そうだよ、銀ちゃん!)


 レイリアと金ちゃんも彼を追いかけて、飛び込んでいく。


 「コ、コラ! 何を勝手に!」


 アンさんは叫んだが、三人に、その声は届かなかった。

 金ちゃんたちの後姿が暗闇に消えていく。


 「ハァー。フーカ様、三人を追いますか?」


 彼女は溜息をついてから、僕に尋ねてきた。


 「あの三人は、色々な意味で心配だから、追いかけよう!」


 僕の返事を聞くと、彼女は穴の周辺を確かめながら、慎重に中へと入って行く。

 僕たちも彼女に続く。


 「アスールさん、行くよ! 手柄を立てたんだから、大丈夫だよ!」


 僕は穴の横で立ち尽くす彼女の手を取り、連れて行く。


 「あ、うん。そうなのか。よし、行こう」


 彼女は戸惑った感じで返事をすると、僕の手を握り返してきた。

 そして、僕たちは三人を追いかけて、穴の中を進んで行く。




 穴から入った城の中は薄暗く、通路には松明の灯りだけが辺りを照らしていた。

 先頭を剣を抜いたハンネさんと銃を構えたリンさんが歩き、その背後を特戦群の一部が続く。

 僕たちは、その後ろに続き、後方には、イライザさんと残りの特戦群が、護りながらついてくる。

 僕の隣には、デスサイズを肩に抱えながらアンさんが歩いていた。

 この暗闇だと、そのシルエットが大きな鎌を構えた死神にしか見えない。


 先へ進むにつれて、通路は右に曲がったり左に曲がったりと、方向感覚を失わせる造りになっていた。

 薄暗くひんやりとし、壁に囲まれていると、ダンジョンってこんな感じなのかなと思ってしまう。

 慎重に進んで行くと、壁に一定の間隔を開けた小窓のような穴がいくつも見受けられるようになった。


 「壁に穴が開きだしたね」


 「これは、灯りをとるために燭台(しょくだい)を置いておくんですよ」


 ケイトが背後から教えてくれるのだが、何故か、僕の背中にしがみついていた。

 シャルとヒーちゃんは、僕が右手でアスールさんと手をつないでいるからか、左腕側にしがみついている。

 さらに、ミリヤさんやアーダさん、姉ちゃんたちまでもが僕を中心に囲み、団子状態となっていた。

 あ、歩きづらい……。

 怖がらずに悠々と歩いているのは、ルビーさんたち、エルさんとサンナさん、マイさんとイツキさんくらいだった。

 いたずらを仕掛けてきそうな人たちが、悠々と歩いていることに不安を感じる。




 ふと、横にあった燭台(しょくだい)を置く穴の奥がチカチカと光った気がした。

 僕は恐る恐る穴の奥を覗き込む。


 パカ。


 穴の奥が開き、ヒョコっと顔が現れた。


 (あっ! 主! 元気!)


 「ギャァァァー!」


 (ギャァァァー!)


 「「「「「ギャァァァー!!!」」」」」


 僕が悲鳴を上げると、皆にも連鎖した。

 深呼吸をして心を落ち着かせてから、再び穴の奥を覗き込む。

 そこには恐怖で固まり、目に涙を溜めた銀ちゃんの顔が、下からの光に照らされて浮かび上がっていた。


 「銀ちゃん、何してんだよ! 怖すぎるよ!」


 (主が叫ぶから、ビビったじゃないか!)


 「二人とも言い争っている場合じゃありません。銀ちゃんんも、どうやってそこに行ったんですか? レイリアと金ちゃんも一緒なのですか?」


 イーリスさんが立て続けに質問をする。


 (呼んだ?)


 ビクッ!


 金ちゃんが通路の(くぼ)んだ壁の隙間からヒョコっと顔をだすと、皆の身体が少し飛び跳ねた。

 心臓に悪い……。


 「ここに隠し通路があったんです」


 レイリアも窪みから顔を出す。


 「それに、この隠し通路からは、そちらの通路を見れるし、階段があって、上の階に伸びていますから、王族の部屋と繋がっていそうです。とにかく見て下さい」


 そう言って、彼女は僕たちを手招きする。


 窪んだ壁の側面の壁は少しずれており、金ちゃんたちでもすり抜けられる十分な隙間があった。

 そして、隙間を抜けると、今、通ってきた通路に沿って伸びていた。

 さらに、脇にはレイリアが言っていた階段が螺旋(らせん)を描いて、上の階へと続いていた。 


 「シリウスたちは気付かずに、先へ行ったのかな?」


 「そのようですね」


 アンさんが答えた。


 「僕たちは、この階段を使って上に行ったほうが良さそうだね」


 「そうですね。リン、先頭を任せてもいいですか?」


 「はっ! お任せ下さい」


 リンさんは、アンさんに返事をすると、そばにいた特戦群の隊員に目くばせをして、階段をゆっくりと上がっていった。




 螺旋階段は思っていたよりも長い。


 「「「「「ゼェー、ゼェー。ハァー、ハァー」」」」」


 僕を筆頭にシャル、ケイト、エルさん、マイさん、アーダさん、ツバキちゃんは、頂上の広まった場所へ到着すると、息を切らしてへたり込んだ。


 「き、きつい。足もパンパンだよ」


 僕が愚痴ると、息を切らしていた者だけが大きく頷く。

 他の皆は情けないとでも言いたげな表情でこちらを見ている。

 そんな目で見られても、こればかりは、どうにもできない。


 リンさんたちは、行き止まりにある引き戸のそばでしゃがみ、聞き耳を立てている。

 

 「何か聞こえるの?」


 「はい。どうやらレイリア様の感が当たったようです。奥から コーザス王の声と兵士たちの声がしています」


 僕たちは、ぞろぞろとリンさんの周りへ集まり、引き戸に耳をつけた。


 「絶対に、その扉を突破されるな!」


 「「「「「はっ!」」」」」


 「陛下、ここは兵士たちに任せて、我々は奥の隠し扉から移動しますぞ」


 「うむ。分かった」


 コーザスとその側近らしき者の声が聞こえる。


 「ん? あいつら奥の扉って言っていたけど、この引き戸のことじゃないの?」

 

 「「「「「!!!」」」」」


 皆は焦りだし、無理に動き出そうとする。


 ギシギシ。バタン。


 僕たちの重みに負けて、引き戸が音をたてて倒れてしまった。

 すると、誇りが舞って、辺りは白くなる。

 少し経つと、埃はおさまり、視界が回復した。


 「「「「「あっ!」」」」」


 僕たちは、目の前にいるコーザスたちと目が合い、お互いに声を上げた。


 「き、貴様はユナハ王! 何故ここにいる!?」


 「成り行きだ!」


 僕は堂々とコーザスに答える。


 「「「「「……」」」」」


 すると、彼の周りにいた貴族らしき高そうな服を着た連中が唖然とした。


 「フーカ様、堂々と言うセリフではありません」


 アンさんに指摘されてしまう。


 「貴様は、どこまでふざけているのだ!」


 コーザスが顔を赤くして怒りだした。

 貴族たちは彼の前に出て、こちらへ向かって腰の剣を抜く。

 彼らと同時に、レイリアとハンネさんが僕の前に出て剣を抜き、アンさんもデスサイズを片手でクルクルと回しながら前へと出て行った。

 そして、リンさんたち特戦群は、銃を構えて敵を照準に捉える。


 ガシッ!


 そんな中、僕の両肩を押さえる者がいる。

 金ちゃんと銀ちゃんだ。

 二人は僕を盾にして背後へと隠れていた。


 「お、お前たちは護衛だろ! なんで、僕を盾にしてるんだよ!」


 ((成り行きだ!))


 「何を言ってるんだ! 確信犯じゃないか! それに真似をするな!」


 二人は横を向いてとぼける。

 こいつらは、なんで、いつもこうなんだ!

 僕は心の中で叫ぶだけに留めておく。

 今は敵と対峙している。

 二人のことは後回しにして、コーザスたちへ視線を戻した。




 コーザスたちと僕たちは、距離が近すぎたため、お互いに動けない状態へとおちいっていた。


 すると、奥の扉を護っていた敵兵たちに動きがあった。

 彼らは扉を護りきれず、シリウスたちに突破されたのだった。

 こちらになだれ込んできたシリウスたちは、僕たちを見て困惑する。


 「フ、フーカ様? 何でここにいるのですか!?」


 「金ちゃんたちが隠し通路を見つけて、そこを通ってきたら、ここに着いちゃった!」


 「着いちゃったではありません!」


 彼は、疲れたように額を押さえてうつむいてしまった。


 「ご、ごめんなさい」


 僕は、思わず謝ってしまう。


 その間に、シリウスの部隊がコーザスたちを取り囲んでいた。

 これは、詰んだな! 

 僕の予想は正しく、彼らは剣を捨てて両手を挙げると、降伏の姿勢を見せた。


 「何故、降伏をする!」


 一人だけ剣を握ったまま、叫ぶ男がいた。

 魔人族特有の巻かれた角の他に、額にも小さな角を生やしたその男は、困惑していた。


 「ゲールセン・ラ・オルバイン! あなたがコーザスや新興貴族、活気盛んな若い貴族たちを(あお)って反乱を起こさせ、国を二分化させたことは、皆の知るところとなっています。潔く投降なさい!」


 ブレンダさんは前に出て、剣を握ったままのその男に叫んだ。


 「ぬっ、ブレンダ・ラ・アルテアンか! 貴様は、いつも、わしの邪魔ばかりしおって、目障りなダークエルフが!」


 彼は彼女を憎しみのこもった目で睨みつけた。

 だが、もう、どうにも出来ないことに気付くと、すぐに剣を捨て、肩を落とすようにうなだれてしまう。

 そして、捕縛された。


 これで、敵の主立つ者たちを一網打尽とすることが出来た。

 僕たちの勝利だ!


 ハンヴァイス新魔国は、幕を閉じた。

 今後は、ビルヴァイス魔王国の領土に戻り、統一されることだろう。



 ◇◇◇◇◇



 コーザスたちは、ブレンダさんに引き渡され、ハンヴァイス新魔国で処罰が決まることとなった。


 僕たちは、ビルヴァイス魔王国、ユナハ連合軍がハンヴァイス新魔国に勝利したことを祝って、少し豪勢な祝賀会を開く。

 もちろん、市民への炊き出しにも、少しばかりだが豪華な料理を加えた。  

 すると、王都クロウサス全体で勝利を祝い始め、少し活気が戻ったように思えた。




 僕たちが久しぶりののんびりとした食事と、祝賀会を楽しんでいると、血相を変えた兵士が駆け込んできた。

 とても嫌な予感がする……。


 「ど、どうしたの?」


 「ファルレイク帝国に動きがあったと、報告が入りました」


 彼が言い終えると、皆は嫌そうな顔をして、うなだれてしまう。

 そして、僕たちは渋々と席を立ち、本陣へと向かうのだった。

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