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うちの神様の間違った転移でおおごとに! 女神の使いにされて、僕を頼られても困るのだが……。  作者: とらむらさき


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160話 艦隊戦

 ドン、ドン、ドン。


 旗艦『金狐(きんこ)』、高速護衛艦『赤狐(しゃっこ)』、『青狐(せいこ)』の砲塔が火を吹く。


 シュボ、シュゴォォォー。シュボ、シュゴォォォー。


 僕たちの乗る金狐の両舷から噴進弾が敵艦隊に向けて飛び立っていくと、この艦の前方に配置されている護衛艦二隻からも白い煙を上げて発射される。


 ポン、ポン、ポン。ポン、ポン、ポン。


 続けて破裂音が連続で鳴ると、今度は魚雷の白い航跡が両舷から敵艦隊へ向けて伸びていく。  

 それは、前方の二隻からも同様に、敵艦へ向けて伸びていった。


 艦橋の窓には、敵艦隊が航行している辺りから、いくつもの煙が立ち上り始めるのが見える。


 「三隻だけなのに、圧倒的な強さだ」


 「近代兵器の勝利だな」


 僕が言葉にした感想に、ツバキちゃんが答えた。


 「うーん? 私の知る艦隊戦とはかけ離れていて、何だか戦っている気がしませんね」

 

 レイリアは窓の向こうを見つめながら戸惑った表情を見せる。


 「遠距離からの一方的な攻撃だから、中距離や近距離で撃ち合う戦いとは違うんだから仕方ないよ」


 「そうなんですが、爆音が響いているだけで、のんびりした雰囲気なのに戦っていると思うと、不思議な感じです」


 レイリアの言葉に、イーリスさんシャルたちが黙って頷いた。


 (それなら、花火も混ぜて撃ったら面白くなるよ)


 「おお、それは面白そうだな」


 銀ちゃんの発案にツバキちゃんがのっかった。

 それなら、じゃない。何を言い出してるんだ。

 二人の感覚が分からん……。


 「面白そうだな、ではありません。そんなふざけたことを言っていると、正座の時間を延ばしますよ」


 イーリスさんは床に座る僕、金ちゃん、銀ちゃん、レイリアの四人を順に見つめていく。


 ((えー。それを言ったのはツバキちゃんだ!))


 金ちゃんと銀ちゃんが反論すると、僕とレイリアも頷いた。


 「口答えは許しません。もう少し座ってなさい!」


 ガーン!


 彼女の一言に、僕たち四人は肩を落とす。

 そんな僕たちを見て、ツバキちゃんは、隠れるように笑っていた。

 くそー、やられた! 悔しすぎる……。




 「敵艦隊に動きがあります」


 船員の報告に、どこかのほほんとしていた僕たちにも緊張が走った。


 「敵艦隊が反転して、こちらへ向かってきてますね」


 オルガさんが補足して伝える。


 「敵艦隊の数は、どれくらい残っているの?」


 「動ける船は、約三〇隻くらいです」


 僕の質問にスイドさんが答えた。


 「三隻対三〇隻か……。逃げたほうがいいんじゃない?」


 「さっきの攻撃で二〇隻ほどたたけたんですから、この調子でいけますよ」


 僕の後ろ向きな意見に対し、ケイトが前向きな意見を出す。

 皆はケイトを見て頷く。

 彼女の意見を支持したようだ。


 (プッ。却下されてる)


 金ちゃんは、僕を見て口を押えた。

 その横では銀ちゃんも同じ仕草をしている。


 「うるさいよ!」


 こいつらは、人を逆なでることしかしないな……。




 こちらへ向かっていた敵艦隊の軍艦は、ある程度近付くと、急に横を向いてしまった。

 

 「えっ? なんで、進路を変えたの? 側面を見せたらダメでしょ?」


 「大砲が側面にありますから、横を向かないと攻撃が出来ないんです」


 ケイトが説明してくれる。


 「あー。なるほど!」


 僕はポンと手を叩いて納得した。


 敵艦の側面に空いているいくつもの穴から火が吹き、煙が上がる。

 すると、こちらの船の前方で水柱が高く上がった。


 「攻撃されてるよ」


 「大丈夫です。この距離では、あんなフーカ様のような弾が届くわけがありません!」

 

 ケイトは腕を組んで余裕をみせる。


 「なるほど。ん? ……それ、どういう意味?」


 (ちょろい)


 (ひょろい)


 「ちっこい」


 僕はサッと、隣に座る金ちゃん、銀ちゃん、レイリアを見る。

 三人はサッと僕とは反対の方向を向く。

 こ、こいつらは……。

 僕は三人を放っておいて、言い出しっぺのケイトに視線を戻す。

 ……彼女はすでに、その場からいなくなり、少し離れた位置へと移動していた。

 に、逃げられた……。


 急に船の前方がパアッと明るくなった。


 「えっ? な、何が起きたの?」


 「敵の魔法攻撃です!」


 スイドさんが答えた。

 前方へ視線を戻すと、こちらの艦橋に向かって大きな火の玉が飛んでくる。

 僕は思わず、腕で顔を覆ったが、その火の玉は艦橋には届かず、砲塔のあたりに当たって弾けた。


 「なっ! 直撃をくらったけど、大丈夫なの?」


 「魔石を溶かしこんだ塗装を使っていますから、あの程度の魔法攻撃をくらったところで、へっちゃらです」


 いつの間にか戻って来ていたケイトが自信に満ちた表情で答える。


 「でも、何発もくらってたら、そのうちダメージをくらうんじゃないの?」


 「それはそうですけど、あの程度でしたら、すぐにどうこうといったレベルではないですから、その間に、こちらが敵を殲滅すればいいんです」


 「それはそうかもしれないけど……」


 僕が言い終わらないうちに、前方がさらに明るくなり、今度は火の玉に混じって光の矢までもが見えた。


 「火球魔法だけではダメージを与えられないと、光矢魔法まで混ぜるとは。さすが魔族、攻撃魔法の種類を使い分けるのが上手いですね」


 この艦に魔法が効かない余裕からか、ケイトは敵に感心しているようだった。




 ドン、ドン、ドン。


 シュボ、シュゴォォォー。シュボ、シュゴォォォー。


 ポン、ポン、ポン。ポン、ポン、ポン。


 こちらの攻撃が盛んに行われる。

 敵艦隊からは、火の玉、光の矢、水の玉など様々な魔法攻撃が飛んでくる。

 大砲や矢なども放たれているが、物理攻撃の類は、こちらの艦までは届かないようだった。


 「魔法攻撃が効かないとはいえ、こうも攻撃が飛んでくるとウザいですね……」


 ケイトは面倒くさそうな表情を浮かべる。


 「敵艦の数は減っていってるんでしょ?」


 「ええ。ですが、相手は魔族ですから、多くの乗員が攻撃魔法を使えるんでしょうね。たちが悪いです」


 ケイトが率直な意見を述べると、ブレンダさんが申し訳なさそうな表情を浮かべた。

 

 「ケイト、ブレンダさんも乗ってるんだから」


 「あっ! ブレンダ様、申し訳ありません。魔族がどうのという意味ではないです。本当に申し訳ありません」


 彼女は何度も頭を下げて謝った。


 「いえ、分かっていますから、大丈夫です。私もこの魔法攻撃を煩わしいと思っていましたから、気にしないで下さい」


 ブレンダさんはケイトに微笑んで返す。

 ケイトはホッとした表情を浮かべたかと思うと、すぐに真剣な表情に変わった。

 何かを思いついたのか、急に考え込んでいる。


 「ケイト? どうしたの?」


 「いえ、以前、フーカ様のパソコンで知ったのですけど、戦艦って、空からの攻撃には弱いんですよね?」


 「まあ、空からのというか、航空機からの攻撃には弱いね」


 僕が答えると、彼女はアスールさんに視線を向けた。

 そうか! こっちにはアスールさんとルビーさんたちがいるから、航空攻撃が出来るんだ。

 僕はケイトが何を考えているのかを理解した。

 だが、彼女は何故か、何か悩んでいるというか迷っているような感じだった。




 しばらく沈黙を続けたケイトは、僕をジッと見つめてきた。


 「な、何?」


 「いえ、アスール様たちに空から敵艦への攻撃を頼みたいと思ったんですけど、ドラゴンに変わった途端、その重量でこの艦が沈むんじゃないかと思うと、どうしたものかと……。フーカ様は、どう思います?」


 「そういことか。確かに、ドラゴン一頭でもきつそうな感じがするね」


 僕とケイトは、アスールさんを見つめながら、しばらくの間、悩み続けた。


 ふと、ルビーさんとネーヴェさんが人の姿で羽だけを生やして、城の外を飛んでいたことを思い出す。

 そして、アスールさんが人の姿でブレスを吐いていたことも続けて思い出した。


 「ケイト、大丈夫だよ。アスールさんたち竜族は、人の姿で羽だけ生やして空を飛んでたし、人の姿のままブレスも吐いてたから、ドラゴンに変化しないで、敵艦隊の上空からブレス攻撃をしてもらえばいいんだよ!」


 「なるほど。その手がありましたね」


 彼女はポンと手を叩いて、スッキリした表情を浮かべた。


 「フーカ様も、たまには役に立ちますね!」


 「おい!」


 パチパチパチパチ――。


 余計な一言を口にしたケイトに僕がツッコミをいれると、金ちゃんと銀ちゃんから拍手が送られた。


 ((主! 見事な返しです。勉強になりました!))


 そういうことじゃないんだけど……。

 僕は二人を見つめて溜息を吐いた。




 ケイトにアスールさんだけが呼ばれる。

 僕とケイトで話した結果、まずはアスールさんだけに頼んで、試してみてから、ルビーさんたちにも頼むことにしたのだ。


 「アスール様、敵の魔法攻撃がウザいので、アスール様のブレスでどうにかしてもらえませんか? ただ、ドラゴンに変わってしまうと、この艦が沈んでしまうかもしれないので、人の姿のままでお願いします」


 「うむ。分かった! わしに任せておけ!」


 ケイトがお願いすると、アスールさんは胸を叩いて承知してくれた。




 敵艦隊からの攻撃がおさまった隙に、アスールさんは艦橋から出て行った。

 そして、艦橋の下の階の外壁に設置されたタラップに現れる。


 「あれはアスール様ですね。彼女は何をするつもりですか?」


 艦橋の窓際にいたアンさんがアスールさんに気付いた。

 すると、皆が窓際へと向かう。

 お仕置き中の僕、金ちゃん、銀ちゃん、レイリアも窓際へ向かおうとすると、イーリスさんがこちらを睨んでいる。


 「「大人しく座っています……」」

 ((……ます))


 僕たち四人はしょんぼりと座ったまま、窓際にいる皆の後姿を羨ましそうに見つめる。


 ケイトは窓越しにアスールさんを覗き込むと、首を傾げだした。

 何かあったのだろうか?  

 彼女はこちらを振り返り、不思議そうな表情で、再び首を傾げた。

 本当に何があったの? とっても気になるんだけど……。

 彼女は僕のそばに来てしゃがみ込むと、顔を近付けてきた。

 彼女の顔が近くにあって、いい匂いが漂ってくるとドキドキしてくる。


 「アスール様は、羽も生やさずに腕を組んだまま仁王立ちしていて、敵艦隊に向かう気配がないんですけど? 何かやらかしませんよね?」


 彼女の言葉を聞いて、僕の彼女に対するトキメキは萎えてしまった。

 それどころか、不安と嫌な予感でドキドキしてくる。


 「アスールさん、何か勘違いとかしてないよね。ケイトと僕の意図を分かってくれてるよね?」


 「……」


 彼女は返事をすることなく、青ざめた表情を浮かべただけだった。

 その表情は、より一層不安になってくるからやめて……。




 窓際にいる皆がざわつき始めた。


 「アスール様が危ない!」


 シャルが叫ぶと、艦橋の外に大きな火の玉がこちらへ向かって来ているのを、僕の位置からでも確認できた。

 皆も窓越しに、アスールさんへ危険を報せようと叫びだす。

 火の玉がすぐそばまで近付いた時、艦橋の下から火の玉に向かって青白い光線のようなものが放たれた。

 きっと、アスールさんのブレスだ。

 彼女のブレスを浴びた火の玉は、炎ごと氷に包まれてカチンコチンに固まり、大きな氷の塊となった。


 ドーン。


 その塊は、そのまま真下へと落下し、大きな音をたてた。

 その瞬間、船にも衝撃が走り、僕たちは軽く宙に浮く。


 ドスン。


 皆は軽く宙を舞ったせいで、その場にしゃがみ込んでしまった。


 「「ぐうぉぉぉぉー!!!」」

 ((ぬうぉぉぉぉー!!!))


 一方で、僕たちお仕置き中の四人は正座をしていたため、着地の際にすねを床へ強く打ちつけ、その痛みで両足を抑えながら転がり、言葉にならない叫び声をあげて、もだえ苦しむ。

 い、痛い……。そして、何が起きたんだ?




 ケイトはよろめきながら、外の様子を見に窓際へと向かう。

 すでに窓際で外の様子を知った皆は、青ざめた表情でこちらを振り向いている。

 その表情を見る限り、嫌な予感しかしない。


 「ぎゃぁぁぁー!」


 窓際にたどり着いたケイトが悲鳴を上げて固まった。

 皆は彼女に憐れむような視線を向けてから、退散するようにこちらへと戻って来る。


 「いったい、何があったの?」


 僕が尋ねると、イーリスさんは困った表情を浮かべる。


 「アスール様が凍らせた火球が……砲塔に直撃し……砲塔が大破しました。あれは港で修理しないと使えないと思います」


 イーリスさんは歯切れ悪く話した。

 砲塔が大破って……。

 ケイトの心中を察した僕も他人事は思えずに固まった。




 青ざめた表情でアスールさんが艦橋へ戻って来ると、皆は冷たい視線で彼女を迎える。

  

 「な、なんだ、その目は!? わしだって、まさか、こんなことになるとは思わなかったから、困ってるんだ!」


 彼女にケイトが飛びつく。


 「何をしてるんですか!? アスール様のブレスで敵艦隊を倒して欲しいと頼んだはずですよ!」


 「えっ? わしは、敵のウザい魔法攻撃をブレスでどうにかしろと言われたから、したまでだ。まさか、こんな結果になるとは思わなかったが……」


 アスールさんは気まずそうな表情を浮かべた。


 「「……」」


 僕とケイトは彼女の言葉を聞いて、説明が不十分だったことに気付き、絶句した。




 砲塔は使えなくても攻撃力と防御力では、敵艦よりも大きく優っていた金狐は、噴進弾と魚雷、そして、両舷に備えれらえた数門のバルカン砲を駆使して、敵艦隊との艦隊戦に挑む。

 無傷の二隻の護衛艦と共に敵艦隊へと突撃していった僕たちの艦隊は、圧倒的な強さで敵艦を沈めていく。

 敵の船は軍艦といっても木造船だ。

 それに武器の装備が違いすぎる。

 数時間が経ち、陽が沈むころには、五〇隻もあった敵艦隊は小型の軍艦三隻を残すのみとなっていた。


 ブレンダさんが敵艦に対して降伏勧告を出す。

 残った三隻に、「敗北を認め、武装を海へ放棄し、海に投げ出されている船員の救助活動に専念するならば、これ以上の攻撃はしない」と伝えると、三隻の艦長は素直に条件をのみ、従ってくれた。

 僕は艦長たちの返事を知って、敵とはいえ、戦えない人たちを見殺しにすることをしないで済んでホッとした。




 圧倒的な勝利を収めた僕たちは、救助活動をする敵艦の三隻を残して、その海域を後にする。

 そして、後方へ退避していた攻撃艦『銀狐』と輸送艦『黄狐』と合流し、このままハンヴァイス新魔国の軍港があるルード港へと向かうことにした。


 こちらの被害は、旗艦『金狐』の砲塔だけであった。

 ダグラスさんは、航海の記録を記していたが、初の被害が自滅とは書けずに困り果て、イーリスさんへ相談をしていた。

 そして、二人で頭を抱えたまま、帳面とにらめっこを続ける。


 お仕置きから解放された僕たち四人は、椅子に足を伸ばして座り、両足をさすってマッサージに励んでいた。

 一方で、ケイトとスイドさんは、砲身が折れ曲がり、半分つぶれたようにへこんだ砲塔を、窓際から悲しそうな表情で見つめていた。

 それをやらかしたアスールさんは、ルビーさんとネーヴェさんからお説教を受けている最中だ。


 敵艦隊を倒したが、結果が結果なだけに、どこか反省会のような雰囲気を漂わせながら戦狐艦隊は暗くなった海原を進んでいくのだった。

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