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うちの神様の間違った転移でおおごとに! 女神の使いにされて、僕を頼られても困るのだが……。  作者: とらむらさき


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159話 ウェーイ作戦

 艦橋からは、高速護衛艦の『赤狐(しゃっこ)』と『青狐(せいこ)』が並走して、この艦を護るように前方を進んでいるのが見える。

 僕たちは、ハンヴァイス新魔国の艦隊の後方を見つからないように、つかず離れずの距離を取って追尾していた。

 皆とも相談し、ヒット・アンド・アウェイを仕掛けるウェーイ作戦は、発動状態のまま、夜陰に乗じて行うことで意見がまとまっている。

 明るいうちは、敵艦隊に隙あらば仕掛けるが、無理をすることはしない方針だ。

 そして、敵艦隊を注視しながら、陽が沈むのを大人しく待っている状態となっていた。




 艦橋では、エルさんが変なフラグをたてたせいで、フラグの恐ろしさを知っている面々が警戒を強めている。

 その警戒心が伝染したからなのか、艦全体にも、どこか緊張が走っていた。


 「フラグを警戒するのは分かるけど、まだ、昼過ぎだよ。今から緊張を続けていたら、作戦を仕掛ける頃には、船員たちも疲労しきってしまうと思うけど」


 「確かにそうなのですが、あそこでウロチョロしている子たちが目に留まると、その、どうしても……」


 僕に向かって困った表情を見せるイーリスさんが指差す方向には、金ちゃん、銀ちゃん、アスールさん、レイリアの四人がいた。

 彼らは、船員たちが操作する機器を興味津々で覗き込んで、たまに質問したりしていた。


 「気になるのは分かるけど、この艦の機器には専門の船員がついているんだし、大丈夫だと思うよ。それに、金ちゃんたちも興味を持っているだけで、邪魔をしないように注意しているみたいだよ」


 「うーん。そうですよね。ですが、あの子たちを見ると、何故か胸騒ぎがしてしまって……」


 「まあ、今までが今までだからね……」


 イーリスさんの心配になる気持ちが分かるだけに、中途半端な返事しか出てこない。

 僕たちは、悩ましい視線で四人を見つめていた。




 「フーカ様、スイド副官と各武器の点検を終えました。各艦も点検を終えたそうです。いざという時は、すぐに攻撃へ入れるように、敵艦隊を常に攻撃射程に入れてますから、エル様がフラグをたてましたけど、これだけやっておけば大丈夫だと思いますよ」


 僕とイーリスさんのところに、ケイトが報告をしてきた。


 「ありがとう。ただ、常に攻撃ができる態勢にしてて大丈夫? エルさんは、誰かが艦砲のボタンを押してとか言っていたと思うけど」


 「それは大丈夫です。ああやって、しでかしそうな者のそばには、信頼できる者がついていますから」


 彼女は自信を持って指差す。

 その先には、金ちゃんたちにアンさんとオルガさんが、エルさんたちにイツキさんとサンナさんたちが、ツバキちゃんにシズク姉ちゃんとヒーちゃんが、そばについて、その行動を見張っていた。


 「ん? ケイトには誰がついているの?」


 「……フ、フーカ様? 私に喧嘩を売ってるんですか?」


 「私がついていますから大丈夫です」


 ケイトの背後からミリヤさんが顔を出す。


 「私もあの人たちと同じ扱いなんですね……」


 彼女は肩を落としてしまった。


 「ケイト、そんなに気を落とさなくても……。フーカさんにだって、私とイーリスがついているんですから」


 シャルが僕の背後から顔を出す。


 「えっ!? 僕も対象だったの……」


 僕も肩を落とすと、ケイトは少しホッとした表情を見せる。

 そこはホッとするところではないと思う。



 ◇◇◇◇◇



 おやつの時間になると、アーダさんとネーヴェさんがワゴンを押して艦橋に現れる。

 彼女たちの押すワゴンには、サンドイッチやクッキーなどが載せられ、カップとポットも用意されていた。

 クレイオ公国の女王であるアーダさんが侍女のようなことをしていることに皆が驚き、アンさんとオルガさんが彼女のもとへと駆け寄る。


 「アーダ様、ネーヴェ様。お二人がすることではありません。このようなことは、他の者にやらせて下さい」


 アンさんは困った表情を浮かべる。


 「皆さん、お忙しいようでしたので、私も自分の出来ることをしたまでです」


 アーダさんの言葉に皆が感動する。


 「お考えとその行動力はご立派ですが、このようなことは、怠けることしか頭にないエル様とマイ様にやらせればいいんです」


 オルガさんが毒舌を吐いた。


 「「「その通りです!」」」


 サンナさん、ハンネさん、イツキさんがすぐに深く頷いて返事をする。

 すると、エルさんとマイさんは口をパクパクとさせ、唖然としていた。

 二人の評価は、すでに底辺へとたどり着いているようだ……。




 金ちゃん、銀ちゃん、レイリア、アスールさんの四人はソワソワとしながら、ワゴンのそばまで行くと、アーダさんをチラチラと見つめる。

 四人は、配っているのがアーダさんだと、いつものようながっついた行動がとれずに、ぎこちなく見える。


 「どうぞ!」


 お皿にサンドイッチとクッキーを取り分けたアーダさんが、金ちゃんへと渡す。


 (アーダ様、ありがとう!)


 彼は尾っぽをブンブンと振って喜んだ。

 その後ろには、銀ちゃん、レイリア、アスールさんがお行儀よく一列に並んでいた。

 

 「この光景を見ると、今度から、アーダ様に配膳を頼んだほうがいいのでは? と思ってしまいますね」


 イーリスさんは苦笑しながらつぶやいた。

 僕と隣にいたシャルは彼女のつぶやきに頷く。




 サンドイッチとクッキーを載せたお皿を手に持った金ちゃんと銀ちゃんは、船員のところへと戻って、機器を操作する彼を再び覗き込む。

 目の前でモグモグ、ポリポリと食べながら覗き込んでくる二人に、彼は少しやりづらそうに機器を操作していた。


 「イーリスさん、金ちゃんと銀ちゃんが、機器を操作している彼の仕事を邪魔しているように見えるけど……。」


 「そうですね。アンとオルガがアーダ様の配膳の手伝いへ回ってしまったので、私が注意してきます。シャル様、フーカ様をお願いします」


 「ええ、任せて!」


 あれー? 僕は何もしないのに、全然信用されていない……。


 イーリスさんは、金ちゃんと銀ちゃんのところへと向かう。


 ポリポリ。


 「き、金様。そのー、言いにくいのですけど、機器にクッキーの食べかすが落ちてきているのですが……」


 サッ、サッ。


 船員は機器の上に落ちた食べかすを手で軽く掃く。


 (あっ、ごめんなさい)


 金ちゃんは謝ると、彼を手伝うように手を伸ばし、食べかすを掃いた。


 サッ、サッ。サッ、サッ。ポチ!


 「あっ!」

 (あっ!)


 二人が同時に声をあげる。


 ドーン!


 艦橋に爆音が響いた。


 「「「「「!!!」」」」」


 皆は何事かと驚き、爆音の鳴った方向へ視線を向けた。

 そこには、艦橋の前に設置されていた砲塔があり、その砲身の先からは白い煙が上がっていた。

 すると、無線機がけたたましく呼び出し音が鳴り響き、担当の船員がとる。


 「今の砲撃の意図を教えられたし!」


 「我が艦には、攻撃の命令は下っていないのだが、どういうことか?」


 無線機は、二隻の護衛艦からの質問を艦橋に響かせる。


 「「「「「……」」」」」


 僕たちは青ざめた顔で、金ちゃんを見つめる。

 彼は頭を抱えながら、右へ左へと走り回って動転していた。

 そのそばでは、金ちゃんがボタンを押すところを目の当たりにしたイーリスさんが、機器が並ぶ台座に寄りかかりながら額を押さえてうなだれている。

 エルさんのフラグが回収されてしまった。

 それも、金ちゃんが砲撃のボタンを押してしまうなんて……。

 エルさんのフラグ、恐るべし!




 (ごめんなさい、ごめんなさい! どうしよう? どうしよう?)


 責任を感じた金ちゃんは、叫びながら右へ左へと走り回り続けている。

 このままでは、また余計なことをやらかすかもしれない。


 「銀ちゃん! 金ちゃんを止めて!」


 (合点承知の助!)


 銀ちゃんは、金ちゃんの行く手に先回りをする。


 (金ちゃん、落ち着いて! 走り回ってたら危ないよ!)


 ドン。


 銀ちゃんが金ちゃんを受け止めた。

 少し勢いが強かったのか銀ちゃんは尾っぽをピンと張って、近くの操作台を支えにした。


 ポチ!


 「ぎ、銀様! そのボタンは……」


 その台にいた船員が叫ぶ。


 シュボ。シュゴォォォー!


 轟音を立てて、艦橋の脇を何かが飛んでいき、白い煙だけが残されていた。


 「……右舷の噴進弾の発射ボタンです」


 船員は言いづらそうに続けた。


 (ぎゃぁー! 金ちゃん、どうしよう?)


 銀ちゃんの顔が青ざめる。


 ((ごめんなさい、ごめんなさい! どうしよう? どうしよう?))


 動転して走り回る者が二人に増えてしまった。


 「二人とも落ち着いて! 今は状況を整理するのが先だよ!」


 ((あるじー! どうしよう?))


 二人がこちらに救いを求めて向かってくる。


 「バカ! そんな勢いでこっちに来るな!」


 ドン。


 二人に体当たりをされた僕は、後方へと転びそうになる。


 ガシッ。


 手ごろな取っ手を掴んだ僕は転ばないように踏ん張った。


 ガチ、ガチ、ガチ。


 取っ手がいくつかの段階に別れて動き出した。

 すると、船のエンジン音が大きくなり、フワッと身体が少し宙に浮く。

 そして、今度は押し付ける様な重力が身体にのしかかった。


 「フ、フーカ陛下! それは、この艦のスロットルレバーです」


 ゲッ! 僕までやらかしてしまった。

 艦橋の外を見ると、前方を並走する護衛艦の間を、旗艦であるこの船がすり抜けて、先陣を切っている。


 「ごめんなさい、ごめんなさい! どうしよう? どうしよう?」

 ((ごめんなさい、ごめんなさい! どうしよう? どうしよう?))


 動転して艦橋内を走りまわる者が、僕も含めて三人となった。


 レイリアが走り回る僕たちの前に立ちはだかる。


 「三人とも、何をしているんですか! いつものことなんですから、動転しない! 私なんか、機器にお茶をこぼしてしまったら、煙が出てきたけど、こんなに落ち着いているんですよ! 私を見習って下さい!」


 「ぎゃぁぁぁー!」


 彼女がドヤ顔を見せる背後で、ケイトが悲鳴を上げた。


 「レイリア! あんたは、もっと動転しろ!」


 煙が出ている操作台に駆け付けたケイトが叫んだ。


 「そんなの叩けば直りますよ!」


 「直るかー!」


 レイリアはケロッとしているが、ケイトは怒り心頭だった。


 「もう、仕方ないですね」


 レイリアが煙の出ている操作台に近付く。


 「ちょ、ちょっと、何をする気なの!?」


 「大丈夫です。任せて下さい」


 彼女はケイトを押しのけると、ポケットからハンカチを取り出し、操作台の危機を拭きだした。


 「それは煙で湯気じゃないわよ! お茶が蒸発しているんじゃないんだから、ハンカチで拭いても直らないわよ!」


 「えっ!?」


 ポチ、ポチ、ポチ。


 レイリアはハンカチで拭く際に、何かのボタンも押してしまったようだ。


 ポン、ポン、ポン。


 左舷から破裂音がすると、白い航跡が敵艦隊へ向かって行くのが見えた。


 「左舷の魚雷が発射されました」


 船員が報告を告げる。


 すると、レイリアは青ざめた表情で僕たちを見つめる。


 「フーカ様、金ちゃん、銀ちゃん。一緒に動転しましょう!」


 「……」

 ((……))


 僕たちは言葉を失った。




 スパーン。スパーン。スパーン。スパーン。


 僕たち、やらかした四人の頭がハリセンで叩かれた。


 「いったい、何をしているんですか?」


 顔を真っ赤にしたイーリスさんが手にハリセンを持ち、僕たちをすごむように僕たちを見据えてくる。


 「「ごめんなさい!」」

 ((ごめんなさい!))


 僕たちはその場に正座をして、彼女に謝る。


 「状況が落ち着くまで、そのままでいなさい!」


 「「はい!」」

 ((はい!))


 素直に返事をすると、彼女は立ち去り、ケイトやスイドさんに声を掛け、状況の整理に入った。

 さすがイーリスさん! 頼もしい。


 イーリスさんの指示で、ケイト、ヒーちゃん、ツバキちゃんは、煙の出ていた機器をバラシだし、修理を始めた。

 その一方では、スイドさんとダグラスさんが共に各艦との連絡を取り合い、艦隊の立て直しを行っていた。




 「敵艦隊の状況はどうなっている? 先ほどの攻撃で敵に与えた被害はどの程度だ?」


 ダグラスさんは、隣に立つ船員に尋ねた。


 「観測員からの報告では、こちらの攻撃は全弾命中、その五隻のうち二隻が撃沈、三隻が大破、沈むのも時間の問題とのことです。また、そばを航行していた三隻が攻撃に巻き込まれ中破、航行するのがやっとのようです」


 「うむ。分かった。当初の予定とは異なるが、相手がこちらの攻撃力に混乱しているうちに総攻撃を掛ける。全艦に伝え!」


 「はっ!」


 船員が無線機の担当のもとへと行った。


 僕、金ちゃん、銀ちゃん、レイリアのやらかした四人は、イーリスさんに言われたことを守り、ジッと床に座ったまま、大人しくその様子を見学している。

 すると、艦隊の速度が変わり、敵艦隊との距離を詰めていく。

 そして、機械音が艦内に響くと、艦橋の前にある砲塔が動き出し、敵艦隊の方角に照準を定めると止まった。

 これから攻撃が始まるようだ。

 ちょっと、ドキドキしてくる。




 「なあ、ウェーイ作戦はどうなったんだ? 作戦行動中のまま、何もすることなくグダグダになってないか?」


 機器の修理を終えたツバキちゃんが、聞いてはいけないことを言い出した。


 「まあ、あんなにドンパチと撃ちまくったんですから、この状況では無理ですね」


 ケイトがこちらを振り向きながら答える。


 「潜伏魔法を掛けていても、あれだけ騒げば、敵にこちらの存在に気付いたはずですからね。ある意味、この状況の方が作戦名にふさわしい気もしますが……」


 ミリヤさんもこちらを振り向きながら答える。

 僕たちの肩身は、どんどん狭くなっていく……。


 「ねえ、もしかして、いつもこんな調子なの?」


 「「「「「ええ、まあ……」」」」」


 姉ちゃんの質問に、古株のメンバーは歯切れの悪い返事をした。


 「よく、今まで勝ってこられたわね。っていうか、毎回、こんな調子で誰も死ななかったことが奇跡よ!」


 姉ちゃんは、皆を見て感心する。


 ((ここに死んだ人がいます!))


 金ちゃんと銀ちゃんは手を挙げて発言してから、レイリアを指差した。


 「私は、死んでいません! 寝ていただけです!」


 レイリアは反論するが、回答としては少しおかしな気がする。

 すると、姉ちゃんたちは彼女を引きつった表情で見つめた。


 「まさか、蘇生魔法を使ったのか? 優秀な魔術師か巫女がいたということか?」


 アカネ姉ちゃんは驚いた表情でケイトとミリヤさんを見つめるが、二人は大きく首を横に振る。


 ((違う、違う、レイリアはゾンビだから!))


 「違います! そもそも私は死んでいません! 寝ていただけです。勝手に殺さないで下さい!」


 レイリアは金ちゃんと銀ちゃんに向かって、プクーと頬を膨らませた。

 か、可愛い!


 ケイトとミリヤさんがアカネ姉ちゃんたちに、レイリアが間違って戦死したことにされた時のことを説明すると、彼女たちは苦笑いを浮かべながらレイリアを見つめだした。 


 「疑いが晴れたようで良かったです」


 レイリアがホッとした表情を浮かべると、彼女たちは、少し呆れた表情を浮かべる。

 僕も同じ表情で彼女を見つめた。

 根本的な何かがずれている気がする……。




 ドン、ドン、ドン。


 砲塔が火を吹き、白い煙を上げると、二隻の護衛艦の砲塔も火を吹いた。

 僕たちがくだらない話しをしている間に攻撃が開始されたのだ。


 (あー! 僕が攻撃の号令を掛けたかったのに……)


 金ちゃんが肩を落とすと、その横では銀ちゃんも肩を落としていた。


 「二人は、反省が足りないようですね」


 ギクッ!


 二人が見上げると、そこには引きつった笑顔を見せるイーリスさんが立っていた。


 「四人とも、もう少し、そこに座って反省してなさい!」


 ガーン!


 彼女の言葉に僕とレイリアはショックを受けた。

 僕たちは関係ないのに……。

お読みいただきありがとうございます。


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