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うちの神様の間違った転移でおおごとに! 女神の使いにされて、僕を頼られても困るのだが……。  作者: とらむらさき


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153話 出航!

 ロルフさんたちが帰国して数日が経った。

 僕たちもフルス領とリンスバック自治領の領境にある港へと向かう。

 速度を重視するため、馬と馬車で移動することとなり、歩兵はいない。


 「ケイト、火砲馬車(かほうばしゃ)は持っていかないの?」


 「造船場のほうでも艦船に乗せることを前提に設計されたものを造っていますので、大丈夫です」


 「そ、そうなんだ」


 また、とんでもないものを造っていなければいいけど。




 僕たちは馬の疲労も計算に入れながら走り続け、二日ほどで目的地の港へ着いた。

 馬車から降りると、肌寒く、積雪も見られる。


 「こっちはユナハ市と比べて寒いんだね」


 「ええ、北からの風が吹きつける地域なので冬の時期は寒いですけど、今日は暖かいほうですよ」


 これで温かいの?

 僕は、この地域に詳しそうなアンさんに向かって、不満そうな表情を向けると、彼女は笑っていた。

 そう言えば、フルス領はアンさんの家が領主だったんだ。

 僕も領地を分ける会議に参加していたことを思いだした。

 急に、何とも言えぬ恥ずかしさが襲ってきて、うつむくしかなかった。




 「じゃあ、さっそく船を見に行きましょう!」


 ケイトは嬉しそうに拳を上げて、歩き出した。


 「えっ?」


 彼女は港とは逆の方向へと進む。


 「ケイト、こっちじゃないの?」


 僕は、白い艦船と茶色の艦船が木造船と一緒に停泊している港を指差した。


 「あー。あれは違いますよ。白くて大きいのが、大型客船の『クイーン・ペス号』で、その隣のちっこい白い船が王族専用客船の『キング・フーカ号』です。そばに停泊している茶色の船は大型貨物船の『はたらき丸』です。ちなみに、働きアリをイメージした名前にしてみました」


 彼女は説明してくれたが、ちっこい船に僕の名前がつけらているのが気になる。


 「見れば分かると思いますけど、あれは軍艦ではないですよ。それに、三隻だけでしょ。軍艦を民間の港には停泊させませんよ。軍艦は建設中の軍港に停泊してるんです。では、行きましょう」


 彼女は再び歩き出す。

 僕たちは、その後ろをついて行く。


 金ちゃんと銀ちゃんは、港に隣接した活気のある商店が気になるようで、いつまでも振り返りながら、渋々とついて来ている。

 アスールさんとレイリアも「ちょっとくらい寄っても」とブツブツ言いながらついてくる。

 ケイトの早く船を見せたい気持ちとは裏腹に、皆の気持ちは港町で観光したいようだった。




 僕たちは、飛行機の格納庫よりも大きな建物の前へと来た。

 周りには、この建物の他にも大きなものから小さなものまで、いくつかの建物が隣接して建っている。


 「これ、全部、造船所なの?」


 「そうですよ。主に船を造ったり組み立てたりする工場と、船の部品や、その船に乗せる設備や備品を造っている工場に別れています」


 「なるほど」


 ケイトの説明に、これなら効率的だと、僕は感心する。


 その建物の中に入ると、火花を散らして、大きな船が造られている最中だった。

 皆は、その作業風景と巨大な船を見つめて、目を丸くする。


 「これ、鉄の船ですよね? 本当に浮くんですか?」


 レイリアが質問を投げかける。


 「浮力って言うんですけど、水に物を入れると、物が水を押しのけた力と同じ力が物を押し上げて浮くことが出来るんですよ。だから、鉄でできた船でも大丈夫なんです」


 「……なるほど」


 レイリアはケイトの説明に納得するが、理解しているのかは怪しい。


 「あそこにある船は、形が違いますけど、あれも浮くのですか?」


 今度は、シャルが建物の端の方に置かれた筒型の黒い船を指差した。


 「あー。あれも浮きますけど、主に水の中を進む船ですから、基本は沈んでます」


 「あれ、潜水艦だよね。潜水艦も造ってたの?」


 ケイトが答えると、皆は不思議そうな表情を浮かべる。

 そして、僕だけは思わず聞き返してしまった。


 「まあ、海を制するなら、潜水艦は必要ですからね」


 彼女が答えると、何故か姉ちゃんたちが当たり前と言わんばかりに頷いていた。

 こんなのが増えていったら、それこそ過剰戦力に、って言うか、軍事国家に向かって行きそうで怖いよ。

 僕は潜水艦を引きつった表情で見つめ続けた。




 「造船所の見学はこれくらいにして、私たちが乗る船に向かいますよ」


 ケイトは嬉しそうに歩き始めた。僕たちは、その後ろをついて行く。


 (今のうちに、僕たちの名前を彫っておこう)


 (はい、金ちゃん、釘!)


 「「「「「やめんか!!!」」」」」


 金ちゃんと銀ちゃんは皆に怒鳴られると、ガッカリした表情で釘をしまい、僕たちのもとへと戻って来た。

 ケイトは軽く息を吐くと、ホッとした表情を浮かべる。


 「誰か、あの二人のことは監視しておいて下さいね」


 ((はーい!))


 「あんたたちのことだって!」


 ケイトに向かって二人が返事をすると、彼女は怒鳴った。

 すると、二人はサッとアンさんの背後に隠れてしまう。

 ケイトは疲れた表情で二人を見つめると、再び歩き始めた。




 造船所を通り抜けて再び表に出ると、そこには、まだ建造中ではあったが、ドックも備えた大きな港があった。


 「ここが軍港になります。簡単な修理は、あそこのドックでも出来るようにしてあります」


 ケイトが自慢げに説明をする。

 こんな軍港を造って、本当に軍事国家に進まないか、ますます不安になってくる。


 その軍港には、一〇〇メートルくらいの真っ黒な五隻の艦船が停泊していて、どの船も流線的なフォルムをしていた。

 なんで、こうも場違いというか、この世界に似つかわしくない近代的な船を造るかな……。 

 シャルたちは、見たこともない船の形状に驚いているが、僕を含めたと数人は、近代的すぎる船に、ドン引きをした。


 「フーカ様? 何を不満そうな顔をしてるんですか? カッコいいとか言って飛びつくかと思ったのに、ガッカリです」


 ケイトは不満そうな顔で僕を見る。

 こんな異世界ではありえないような船を造られて、ガッカリしたのはこっちなんだけど……。


 イーリスさんは、すでに乗船を始めている兵士たちを見つめていた。


 「ケイト、時間もないですし、私たちも、早く乗船の準備を始めましょう」


 「そうですね」


 ケイトは、僕を不服そうに見つめながら答えた。

 そして、真っ黒な船へと近付くと、僕たちは先頭に停泊している金色の筋が入った船の前へと着いた。

 近くで見ると、黒く塗られた船体には艶がなく、ステルス艦が脳裏に浮かぶ。


 「これって、ステルス艦じゃないよね?」


 「こちらの世界には、レーダーとかいうものは無いですけど、この(つや)の無い黒は、夜の海上にはちょうどいいと思って採用しました。それに、高速攻撃艦とはいえ強襲艦ですから、目立たないに越したことはないですからね」


 「確かにそうかもしれないけど、やりすぎなんじゃない?」


 「そんなことはないですよ。こんな船が現れたら、敵も驚きますし、それに、この色合いはカッコいいじゃないですか!」


 「んー。確かに言われてみればそうかもしれないけど……」


 ケイトの言っていることは分かるが、全てを受け入れる気にはなれなかった。




 僕たちは、その船へと乗船する。

 すると、金ちゃんと銀ちゃんが船内でキョロキョロし始めた。

 中も近代的なつくりだから、二人は興味津々のようだ。


 ((トイレはついてるの?))


 僕の推測は外れた。


 「ついてますよ!」


 二人はケイトの言葉にホッとすると、ツバキちゃんに視線を向ける。


 (ツバキちゃん、良かったね! トイレはあるって!)


 「やかましい! トイレの女神の話題になりそうなことを振るな!」


 金ちゃんは、シズク姉ちゃんの背後へと隠れた。

 誰の背後に隠れればいいのか学習したようだ。

 一方で、列車にトイレをつけ忘れたケイト、ヒーちゃんは、自分たちの失敗を思い出して苦い表情を浮かべていた。




 その後は、僕たちが宿泊する部屋や食堂など、船内を見学しながら艦橋へとたどり着いた。

 そこには、白い海軍の帽子を目深にかぶり、白い海軍の制服に身を包んだ高官と思われる二人の男性が敬礼をし、僕たちを待っていた。

 他の船員たちは、持ち場の席から、こちらに向かって敬礼をしている。


 「陛下、私は、この新設の第一強襲艦隊を指揮するダグラス・フォン・シーゲイツです。我が艦隊は陛下方を歓迎いたします」


 茶色の髪に白髪の混じった髪の優しそうな面立ちのダグラスさんは、微笑みながら、僕たちに挨拶をする。

 この人が艦隊司令官なんだ。


 「陛下、旗艦『金狐(きんこ)』へようこそ。私は、ダグラス海軍大将の副官で、この艦の艦長を務めるスイド・クランヒルです。この艦隊が世界最強であることをお見せしますので、ご期待ください」


 スイドさんは、黒上の短髪で、少し冷たそうな面立ちをしているが、見た目とは違って優しそうだ。


 「えーと、フーカ・モリ・ユナハです。この度は無理を言ってすみません。よろしくお願いします」


 「「はっ!」」


 二人は敬礼をする。

 続いて、シャルたち皆からも言葉を掛けられた二人は、挨拶を済ませていった。


 僕たちのメンバーを聞かされていなかったのか、二人はルビーさんやエルさん、アーダさんが乗船していることに驚く。

 さらに、ツバキちゃんや姉ちゃんたち女神軍団も乗船していることまで知らされると、固まった状態で、そのまま灰になりそうだった。




 艦隊司令官のダグラスさんと艦長のスイドさんが、我を取り戻すのを少し待った。


 「スイドさん、この艦のことを『金狐(きんこ)』って言ってたけど、もしかして、金ちゃんと銀ちゃんの名前が由来だったりしますか?」


 僕は列車のことを思い出し、恐る恐る聞いてみた。

 金ちゃんと銀ちゃんが、質問の回答を聞き逃すまいと、耳をピン立てる。


 「お二人の名が由来ではありません」


 ガーン!


 二人は崩れ落ちた。

 僕は二人を横目に、彼の話しに耳を傾けた。


 「我が国はウルス聖教の女神、ウル……ツバキ様とシズク様を信仰しており、お二方が狐のお姿も持つことから、狐を神に使える神聖な生き物としています。それに、狐は賢いハンターでもあるので、言を担ぐことも含め、強襲艦隊に所属する艦の名に狐を入れることはふさわしいと、狐の名を入れることとなりました」


 「なるほど。この艦隊の船には、全部、狐の名が入っているんですね」


 「はい、その通りです」


 金ちゃんと銀ちゃんが急に元気を取り戻した。


 (狐は凄いんだ! 僕たちをあがめろ! さあ、貢物を出すんだ!)


 銀ちゃんはツバキちゃんに手を差し出す。


 パン。


 彼女はその手を払いのけた。


 「バカか! 話しを聞いていなかったのか? 狐は神に使える神聖な生き物だと言っていただろう! 女神である私のほうが位も立場も上だ!」


 ((えっ!?))


 「お、おい……。なんで、本気で驚いているんだ……」


 彼女は二人の驚く様子を見て、疲れたようにうなだれてしまった。

 そして、周りからは、声を押し殺すようにクスクスと笑い声が漏れてくる。

 すると、金ちゃんと銀ちゃんは、ウケたことが嬉しいのか、ガッツポーズを決めて喜びだした。

 ツバキちゃんは二人のバカっぷりに、今度は額を押さえて上を向いてしまった。

 勝敗? としては、金ちゃんと銀ちゃんの勝ちのようだ。




 「スイドさん、この艦隊の編成とかを教えて下さい」


 僕は困った表情でいるスイドさんに声をかけた。


 「はい。我が第一強襲艦隊は艦隊は『戦狐(せんこ)艦隊』と呼ばれ、その編成は、今いる高速攻撃艦『金狐(きんこ)』を旗艦とし、同型艦『銀狐(ぎんこ)』、高速護衛艦『赤狐(しゃっこ)』、同型艦『青狐(せいこ)』、高速輸送艦『黄狐(おうこ)』の計五隻からなります。それぞれの艦には、艦名にちなんだ色が船体に入れてあるので、すぐに分かると思います」


 「へえー、そうなんだ。ありがとうございます」


 僕がお礼を言うと、彼は敬礼を返した。




 艦橋にある無線に、この艦隊の各艦から兵士の乗船と物資の搬入を終えた報せが入ってくる。

 すると、スイドさんは、艦隊司令であるダグラスさんに視線を向け、彼が頷くと、姿勢を正して、艦橋の中央にある艦長席の横に立った。


 「出航用意!」


 「出航用意! 錨揚げ、係留索を放て!」


 スイドさんからの号令を船員が補足して、マイクに向かって話す。

 艦橋から見える甲板では、船員たちが駆け出し、出航のために慌ただしくなる。

 そして、出航の準備を終えた報告が無線機から伝わる。


 「魔動機関、始動! 出力六〇パーセントで維持!」


 「魔動機関、始動! 出力六〇パーセントで維持!」


 スイドさんが次の号令を出すと、船員が再びマイクで復唱する。

 少し間を開けて、エンジンを静かに吹かすような音が聞こえだすと、船が震えだした。


 「魔動機関、出力六〇パーセントで安定!」


 船員からの報告が上がる。

 そして、艦橋の前列の席に座る船員たちからも、「出航準備良し!」との報告が上がっていく。

 スイドさんは、彼らに頷いて返すと、ダグラスさんを見る。

 ダグラスさんは、一呼吸を置いてから頷いた。


 「微速前進、出航!」


 「微速前進、出航!」


 その頷きを確認したスイドさんが出航の号令を出すと、船員がマイクで復唱しながら手元のレバーをゆっくり前へ押し込んだ。

 すると、船の振動が大きくなり、ゆっくりと動き出していることが分かった。


 ボォォォー。


 その瞬間、汽笛が鳴らされると、ボォォォー、ボォォォーと連続した汽笛が、返事をするように、他の艦船から鳴らされた。

 艦隊が出航したのだ。




 金ちゃんと銀ちゃんは艦橋の窓へと駆け出して、動き出した外の眺めを見つめる。

 すると、他の者たちもつられるように窓のそばへと集まっていった。


 僕のそばに残っているのは、女神軍団とヒーちゃん、そして、ケイトだけだった。

 ケイトは、ゆっくりと進みだす船の動きに満足そうな表情を浮かべて、ウンウンと頷く。

 若干、ホッとしたような表情がうかがえたのは気のせいだろうか?


 船は徐々に速度を上げていき、前方では波しぶきが立ち始めた。


 「陛下、皆様も、この時期の海は、波が荒いですから、港から出ると揺れが大きくなります。危ないので、近くの空いている席に座って下さい」


 スイドさんの言葉に、僕たちは席に着く。


 「!!!」


 金ちゃんと銀ちゃんが乗ることを想定していたかのように、固定された大きな椅子も備えられていた。


 「スイドさん、あの席って?」


 「金様と銀様のために、急遽、用意されました」


 「うちの子たちのために、お手数をおかけして申し訳ありません」


 「陛下、そう言うのは勘弁して下さい」


 僕が丁寧に謝ると、彼は困ったように手を振った。


 (うむ、ごくろう!)


 (わがままを言えば、ソファーにして欲しかった)


 「お前たちは、黙ってろ!」


 調子に乗る金ちゃんと銀ちゃんに、思わず叫んでしまった。

 すると、艦橋に笑いが響く。

 船員たちにも笑われて、恥ずかしい。

 しかし、二人は僕に向かって親指を立て、ウケたことを喜んでいた。

 本当に、こいつらは……。

お読みいただきありがとうございます。


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