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うちの神様の間違った転移でおおごとに! 女神の使いにされて、僕を頼られても困るのだが……。  作者: とらむらさき


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148話 ハンヴァイス新魔国

 翌日、僕たちはユナハ市へ帰るため、アルセ駅からユナハ駅へと向かう列車に乗り込み始めていた。

 また、あの地獄を味わうのかと思いつつも、ルビーさんたちに、列車の乗客を運んで欲しいとは頼めず、渋々乗ることとなった。

 そのホームには、馬車で自分の領地へ戻る領主たちとリネットさんが、僕たちを見送りに来ていた。


 「リネットさん、お世話になりました」


 「いえ、当然のことですわ。帰りは不自由しないように、食料と飲み物、毛布なども積み込んでおきましたので、使って下さい」


 「ありがとうございます」


 僕は彼女に深く頭を下げた。


 プルルルル――。


 「リネットさん、本当にありがとうございました」


 発車のベルが鳴り、僕は再びお礼を言うと、列車へと乗り込んだ。


 (リネットちゃん、また来るね!)


 (リネットちゃんも遊びに来てね!)


 金ちゃんと銀ちゃんは、窓から顔を出して、どこか寂しそうな笑顔で彼女に手を振る。


 「ええ、また来て下さい! 歓迎しますわ! 王都に行った時は、市内を案内して下さいね!」


 彼女の返事に、二人はウンウンと大きく頷く。

 列車が動き出すと、三人は大きく手を振り、別れを惜しんでいた。




 これから一日半近くを掛けて、ユナハ市へと戻って行く。

 リネットさんが色々と手配をしてくれたおかげで、車内に混乱はなく、皆も鉄道の旅を楽しんでいた。

 車内販売の商売が出来なくなって、落ち込む二人はいたが、些細なことなので相手にはしない。

 優しくすると、この二人は何をしでかすか分からないから、放っておくのがいいのだ。


 ケイト、ヒーちゃん、イーリスさんの三人のいるところには、鉄道に興味を持ったセレストさんとメリサさん、他にも興味を持った人たちで輪が出来ていた。

 三人は鉄道を引くための路線のことなど、鉄道についての説明で忙しくなってしまったようで、のんびりと外を眺める僕に対して、たまに助けを求める視線を向けてくる。

 僕は知らない、関係ない。

 巻き込まれませんように!

 彼女たちの視線に気付かないふりをして、とぼけ通した。



 ◇◇◇◇◇



 ユナハ駅に戻った僕たちを迎える者は、誰もいなかった。

 開通式の後片付けもされており、営業開始に向けて忙しく準備をする者たちだけが、こちらを見てペコリと頭を下げる。

 そして、足早に立ち去ってしまう。

 何とも言えぬ気持ちで駅から出ると、馬車が僕たちを待っていた。


 「あっ、やっと帰ってきた」


 馬車で待っていたヨン君は、呆れた表情で僕たちの前に来る。


 「フーカ様、列車の運行予定を聞かされていなかったので、開通式をどのタイミングで閉会すればいいのかとか、クリフ様たちは、後始末で大変だったんですよ」


 ヨン君の指摘されると、僕は、すぐにケイトを見る。


 「あれー? 伝えてあったと思ったんですが……」


 彼女は目を泳がせていた。

 あー、これは伝え忘れてたな。


 「ケイト、城に戻ったら、クリフさんたちに謝りなよ」


 「は、はい。そうします」


 彼女はうなだれて返事をした。




 城に戻ると、仕事が山のように溜まっていた。

 各国の方たちの接待は、エンシオさんたちに任せて、僕は早急に目を通す必要のある書類から順に処理をしていく。

 しかし、今回の試乗関連の新たな書類が、次から次へと運ばれてくる。

 ケイトの無計画な試乗会のせいで、とんだとばっちりだ。




 数日を使って、仕事を終わらせた僕は、やっと、解放された。

 僕が仕事で缶詰にされている間、ルビーさんやロルフさんなど各国の人たちは、ユナハ市内の観光を満喫していたようだった。

 そして、僕と会談ができるとなると、各国からの申し込みが殺到し始める。

 皆、暇を持て余していただけかもしれない。

 僕が本当に解放されるのは、まだ先になりそうだ……。




 会談を受け付けると、最初に部屋を訪れたのは、セレストさんとジゼルさん、メリサさんの三人だった。

 彼女たちとは、自国まで鉄道を伸ばしてもらうことと、ファルレイク帝国が動き出した時の協力を願うことを中心とした話しをしていった。


 次に訪れたのは、エルさんとマイさんだった。

 サンナさんとハンネさんがいないけど、どうしたのだろうか? それに、何故、マイさんが一緒なんだ?

 二人は肩を組みながら、僕をジッと見つめてくる。


 「フーカ君! もっと、給料を上げろ! ヒック」


 「そうだ! 我が国は、こんなに協力してるんだから、協力金を出せ! ヒック」


 「「あげろー! だーせ! ヒック」」


 「酒くさー!」


 この酔っ払いどもを通したのは誰だ!


 「ちょっと、誰か来て!」


 僕が叫ぶと、アンさんとオルガさんが現れた。

 そして、酔っ払って叫んでいる二人を見て、顔を引きつらせる。


 「アンさん、オルガさん。この酔っ払いたちには、引き取ってもらって」


 「「は、はい。すぐに」」


 二人は、エルさんとマイさんの襟首をつかむと、部屋から連れ出してくれた。

 廊下から、サンナさんとハンネさんの謝る声が聞こえてくる。

 そして、イツキさんの謝る声も聞こえてきた。

 あの二人は、なんで、会談の予約まで取って、何がしたかったんだ……。

 各国との会談が始まったばかりだというのに、僕は、早くも疲労感に襲われていた。




 その後は、レオさんやオレールさんが訪れ、国家間の貿易などの話しをする。

 ここでも鉄道の話しが出てきた。

 レオさんのガイハンク国は隣国なので問題はなかったが、オレールさんのクレイオ公国は島国なので、今の技術力では島まで路線を伸ばすことが出来ないと告げると、彼女にガッカリされた。

 しかし、これは仕方がない。

 海底トンネルを造れるまでの技術力を持ったら造ってあげよう。


 昼食と小休止を挟んだ後に訪れたのは、ヘルマンさんだった。

 彼との話しは、シュミット王国とハウゼリアハウゼリア新教国への警戒と監視の話題が主であった。

 彼が部屋を出て行くと、ダミアーノさんが入れ替わりに入ってくる。

 きっと、ツバキちゃんたちのことを問い詰められる。

 僕は、その場から逃げ出したかった。


 「フーカ様、ツバキ様が降臨されたのに、式典を行わないのですか?」 


 「??? なんで?」


 「いえ、ツバキ様を崇拝しているのはウルス教徒だけではありません。この世界にはツバキ様を祀っている者が多くいます。降臨を公表するのではなく、ツバキ様からの啓示というかたちで、ツバキ様を信じている者たちへのお言葉を頂いたら、どうでしょうか?」


 「うーん。それをするなら、シズク姉ちゃん……妹の女神が降臨した時に考えたほうがいいと思います」


 「本当に、降臨なされるのですか?」


 「断言はできないですけど、きっと、ツバキちゃんをとっちめに来ると思います。だから、今、ツバキちゃんの名で啓示を出したら、すぐにシズク姉ちゃんが、コホン。妹の女神が降臨したら、短い間隔で啓示を出すことになってしまいます。そうすると、そんなに早く、啓示が続けて降りるものなのかと不信感をあおることになると思いますよ」


 「確かにフーカ様のおっしゃる通りかもしれません。ここは、シズク様がお早くご降臨されることを願うしかありませんね」


 彼は苦笑を見せつつも、納得はしてくれた。

 ツバキちゃんに、そんな話を持ち掛けたら調子に乗って、僕たちでは抑えられなくなるところだった。

 彼女を御せる人たちが来てからにして欲しいなんて、言うわけにはいかなかったから、ダミアーノさんが素直に納得してくれて良かった。


 あとはロルフさんとルビーさんくらいかなと思っていると、二人は連れ立って、訪ねてきた。

 彼らの後ろには、ブレンダさん、イーロさん、ネーヴェさんの姿もあった。

 そして、イーリスさんとオルガさんも姿を現す。

 ただ、彼女の背に隠れるようにして、金ちゃんと銀ちゃんがいる。

 なんで、金ちゃんと銀ちゃんも入ってくるんだ!

 僕は二人をジッと見つめるが、彼らはイーリスさんたちの背に隠れているのがバレていないと思っているのか、そのまま彼女たちのそばにしゃがみ込む。


 「なんで、金ちゃんと銀ちゃんがいるの?」


 ギクッ!


 (コホン。主の秘書の金ちゃんです)


 (同じく秘書の銀ちゃんです)


 二人は立ちあがって、ロルフさんとルビーさんに向かって頭を下げた。


 「いつから秘書になったんだ!? それに、自分の名前にちゃんを付けて自己紹介をするな!」


 (主、早く話しを始めましょう)


 金ちゃんはシレっと話しを進めようとする。


 「誰のせいだと思ってるんだ!」


 (では、ツバキちゃんも呼んできます)


 「「「「「!!!」」」」」


 銀ちゃんの言葉に、皆が引きつった表情を見せた。


 「わ、分かった。居ていいから、邪魔はしないでよ!」


 ((はーい!))


 返事だけは調子がいいんだから……。




 ロルフさんたちとルビーさんたちが揃ってくるということは、女神のことだろうな。

 僕は二組が聞いてきそうな話題を予想して、いくつかの回答を巡らせる。


 「実は我が国の女神、ティナ様のことなのだが」


 「そのことですか。見つけたら帰ってい頂くよう、丁重にふるまうように周りの者にも言っておきます」


 ロルフさんの言葉に、僕はやっぱりかと思い、すぐに返事をした。


 「いや、少しいでいいから、羽目を外させて欲しいんだ」


 「???」


 予想と違う考えに、僕の頭の中が混乱する。


 「フーカ殿、我が国のミコト様にも、羽目を外させて欲しい。迷惑をかけるかもしれんが、よろしく頼む」


 ルビーさんまで、追い打ちをかけるようなことを言い出した。


 「そ、それは、どうしてですか?」


 「ティナ様もミコト様も、この世界に存在する神が減ったことで寂しく感じていたと思ういます。ですから、フーカ様には悪いのですが、ツバキ様たちと楽しく過ごせる時間を与えてあげて下さい」


 ブレンダさんが頭を下げると、皆も頭を下げ出した。


 「わ、分かりました。頭を上げて下さい。そのあたりのことは、近いうちにこちらへ来ると思われるシズク姉ちゃんに言っておきます」


 「「「「「ありがとうございます」」」」」


 面倒くさくなりそうなので、まだ来ていないシズク姉ちゃんに投げたというのに、皆からお礼を言われると、罪悪感が襲ってくる。

 うー。シズク姉ちゃん、皆も、ごめんなさい。


 これで終わりかと思っていたら、ロルフさんの表情が曇りだす。

 まだ、何かありそうだ。


 「ロルフさん、他にも何かあるんですか?」


 「ええ、実は、ハンヴァイス新魔国が動き出したようで、ユナハ国に我が国の支援をしていただきたい」


 「ハンヴァイス新魔国って、ファルレイク帝国に押されたままで、反攻に出ることをしないビルヴァイス魔王国の方針に、異を唱えた魔王国の新興貴族たちが結束して興した国だっけ?」


 「だいたい、その通りだ。新興貴族の他にも、いくつかの大貴族たちも加わっている」

 

 彼は困った表情を浮かべると、その隣で、ブレンダさんも同じ表情を浮かべる。


 「あいつらの言い分も分かるのだが、ファルレイク帝国が我が国に侵攻を始めた時期にはユナハ国はなく、ファルレイク帝国と相容れない国は押されており、その国々と連携を取れる状態ではなかった。さらに、ブレイギル聖王国まで誕生していたので、反抗するわけにもいかなかったのだ」


 「なるほど、時代を見て、機を待つことにしたんですね」


 「その通りだ。だが、何もしない王宮に反感を持つ者が増えてしまったのも事実だ」

 

 「難しいですね」


 「ああ。しかし、これからは違う。だからこそ、何度も使者を送り説得を試みていたのだが、すでに思考が凝り固まってしまった連中は、話しを聞こうともせず、それどころか、我が国を獲って、ファルレイク帝国に対抗しようと考えたようだ」


 「ビルヴァイス魔王国に攻め込んだら、両国ともに隙が出来てファルレイク帝国に攻め込む機会を与えることになるから、本末転倒なのでは?」


 「それが、分かっていないようだ……」


 彼は大きく息を吐き、下を向く。


 「うーん。とにかく、ユナハ連合の議題にあげて協力国を募ってみます。ですが、問題があります。東大陸のここでは、西ルートはファルレイク帝国が邪魔で行けないし、東ルートは海の距離が長いから、それなりの大型船が必要になるし……」


 僕はあごに手を当てて悩む。


 「兵士や兵糧などの運搬は、我らも協力しよう」


 ルビーさんが協力することを告げてくれた。


 「ありがたいんだけど、ちょっと地図を見て」


 僕はそう言って、イーリスさんを見る。

 彼女が頷くと、金ちゃんがシュッと収納魔法で地図を出し、テーブルに広げた。

 こういう時は便利だ。


 「空を使うとしたら、ウルス聖教国の東にあるここにユナハ連合の戦力を集結させてから運ばないとならないんだよ。それに、この距離を何度も往復することになる。これでは、すぐに気付かれてしまうよ」


 僕は地図を指差して説明をする。


 「「なるほど」」


 ロルフさんとルビーさんは、地図を見つめながら難しい顔で納得した。


 「大型船が何隻もあれば、各港から出航して、ビルヴァイス魔王国の港に集結させられるんだけど、うちの海軍がどれくらい増強されたかによるんだよね」


 僕は、再びイーリスさんを見る。


 「ハウゼリア新教国が島国であるので、造船は急ピッチで行われていますが、軍艦の大きさや数は、ケイトたちに聞かないと分かりません」


 彼女は申し訳なさそうに答える。


 「この問題は宿題として、ハンヴァイス新魔国の動きに関しては、ユナハ連合の各国には周知させることにするよ」


 「ありがとう。よろしく頼む」


 ロルフさんが頭を下げると、ブレンダさんも頭を下げた。




 最後の組のロルフさんとルビーさんとの会談が終わり、僕たちが席を立つと、廊下のほうが騒がしいことに気付いた。


 「何かあったのかな?」


 「さあ? 聞いてきます」


 オルガさんは扉を開けて、廊下の様子を見る。

 そして、誰かと話し出していた。

 話し終えた彼女は、こちらを向くと、眉をしかめて引きつった笑みを浮かべている。

 そんな彼女の後ろには、戸惑った表情の神殿の巫女さんが、恐る恐るこちらをうかがっていた。


 「ま、まさか、また、ツバキちゃんが何かしたの?」


 「いえ、いや、ツバキ様も半分くらいは関わってはいるんですが、何というか、そのー、もっと、ややこしくなりそうな……」


 彼女の煮え切らない言葉に、巫女さんはコクコクと頷いている。


 「何が原因かは分からないけど、ツバキちゃんが半分関わっているなら、ろくでもないことだよね? まあ、いいや。案内して」


 僕に二人が頷くと、足早に先導していく。

 ハンヴァイス新魔国のことも出てきて、何か対策を考えないといけないのに、なんで、このタイミングかな。

 彼女たちの後ろで溜息をつきながら歩いていると、僕の後ろからはロルフさんたちもついて来ていた。

 巻き込まれても知らないよと思いつつも、助言をすることはしなかった。




 オルガさんと巫女さんが進む方向は、奥宮のほうだった。

 ん? そう言えば、ツバキちゃんが関わっているのは半分って言っていたような?

 何だか、とてつもなく胸騒ぎがしてくる。

 僕は横目でイーリスさんをうかがう。

 何かを感づいたのか、彼女もどことなく不安げで落ち着かない様子だ。

 そして、金ちゃんと銀ちゃんがワクワクしている。

 うん。これは、おおごとになる予兆だ。……行きたくない。バックレたい。

お読みいただきありがとうございます。


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