116話 風和の禁忌書庫
数日が過ぎ、新居への引っ越しも無事に終わると、僕は新居の自室で、残っていた課題をすべて終わらせた。
そして、終わった課題を箱に詰め終えると、机に戻って広々とした部屋を見渡す。
この新居には、シャルたちの私室もあり、金ちゃんと銀ちゃんは二人で一室だが、彼らにも私室が用意されていた。
さらに、客室も多く、今は、エルさんたちやルビーさんたちに使われている。
イーリスさんの話しでは、今後、離れも造り、客人をそちらにも泊める予定だそうだ。
これでは住居というよりもホテルだ。
しかし、僕を尋ねてくる人は、首脳クラスの人がほとんどになるだろうから、仕方がないらしい。
僕はそんなことを思いながら、座敷になっている絨毯の上でゴロゴロとしている金ちゃんと銀ちゃんを眺める。
この二人は、朝起きると、僕の部屋へ来てゴロゴロとしているだけなのだが、本人たちは護衛のつもりらしい。
コンコン。
扉が叩かれ、イーリスさんとシャルが入ってくる。
「フーカさん、課題は終わりましたか?」
「うん、全部終わって、そこの箱に入れてあるから、後は箱ごと送るだけだよ」
シャルに答えると、イーリスさんが箱を開けて確かめ、小さく頷いてから箱を閉めた。
小学生の頃、いつも姉ちゃんに勉強をしたかをチェックされていたことを思い出し、どこか懐かしさを感じる。
「フーカ様、今度からは奥宮を使って送れるので、後で運ばせておきます」
「ありがとう」
イーリスさんは僕の返事を聞くと、ニッコリと笑う。
「あら。金ちゃんと銀ちゃんもパソコンで勉強しているんですね。偉いですね」
「えっ!?」
僕は箱のそばにいたイーリスさんから、金ちゃんと銀ちゃんへ視線を移す。
二人は、座敷にある背の低いテーブルの上の僕のノートパソコンを、いじっていた。
そして、二人はイーリスさんに向かって笑顔を見せると、ガッツポーズをして頑張っていることをアピールする。
さっきまでゴロゴロしていたのに、いつの間に……。あ、あざとい。
「フーカ様、二人も頑張っていることですし、こちらも頑張りましょう」
イーリスさんは、僕の前に書類の束を置いて脇に立った。
課題が終わったばかりなのに、仕事をあてがわれてしまった。
少しは休みたかったが、どの道やることになるので、そのまま仕事を始める。
しばらく仕事に没頭していると、休憩をしに来たのか、レイリアとアスールさんが部屋に入ってきた。
すると、ぞろぞろとケイトやヒーちゃん、ミリヤさんまでもが来る。
その後も、アンさんとオルガさんも来て、あれとあれとという間に、部屋には奥さんたちが全員そろっていた。
暇が出来ると、僕の部屋に集まる習慣がついてしまったようだ。
アンさとオルガさんは、冷蔵庫から取り出した果物をカットしてお皿に盛り付けると、来客用の大きめのテーブルに並べ、お菓子などもかごに入れて並べた。
僕の部屋は、皆の休憩室と化していく。
わざわざ、僕の部屋まで休憩を取りにこなくても……。
「あー。疲れたわ!」
マイさんが肩を揉みながら部屋に入ってきた。
その後ろにはイツキさんもいる。
二人は平然とテーブル席に着くと、カットされた果物を頬張る。
いやいや、これ、絶対におかしいでしょ!
僕は、自由にくつろいでいる皆を見つめた。
すると、また、人が来た。
「サンナ、この国、視察するところが多すぎるわ」
「ユナハ国なんですから、仕方ありませんよ」
エルさん、サンナさん、ハンネさんが当たり前のように、入って来る。
そして、三人がテーブル席に着くと、アンさんがお茶を淹れて、三人に出す。
ここは僕の私室なんですけど……。
「フーカ様? 手が止まってます。早く終わらせて、私たちも休憩にしましょう」
「う、うん……」
イーリスさんに注意されたが、そもそも、このおかしな環境を注意して欲しい。
すると、話しながら入って来る者がいた。
「視察をして思ったが、フリーダ、お前が任された領地を、この王都と同じ水準まで上げるのは大変だろう。私もフーカ殿にお前を推薦した手前、責任がある。人手が足りなければ、いつでも頼るとよい」
「ありがとうございます。その際はよろしくお願いします」
「うむ」
ルビーさん、フリーダさん、ネーヴェさんまで、何の躊躇もなく入って来て、そのままテーブル席に着く。
ガン。
僕は机に頭を打ちつけた。
「フーカ様? 大丈夫ですか? あと少しですから、終わらせてしまいましょう」
「う、うん……」
イーリスさんは、この状況に、なんの違和感も感じていない。
ぼ、僕の部屋は、皆から休憩室やたまり場として、認識されているのでは……。
金ちゃんがカチカチとマウスをクリックして、銀ちゃんが、カチャ、カチャとゆっくりキーボードを押している。
そして、二人そろって首を傾げたり、上を向いて悩んだりしていた。
ケイトとアンさんは取り皿に果物とお菓子をのせて、二人の手元に置くと、金ちゃんと銀ちゃんはケイトとアンさんにペコリと頭を下げてから、再び画面に集中する。
ケイトは不思議そうに画面を覗き込む。
「食いしん坊の二人が、食べ物をそっちのけで何を見ているんですか?」
二人は、ケイトが画面を見やすいように少しのけぞって、彼女を見つめる。
「これ、フーカ様のパソコンですよね?」
コクコクと二人は頷く。
「こんなフォルダー、ありましたっけ?」
ケイトが首を傾げると、金ちゃんはカチカチとマウスをクリックして、画面を指差す。
「なっ! こんな機能があるんですか!?」
ケイトは驚きながらヒーちゃんを手招きすると、少し体をずらしてヒーちゃんにも画面を覗かせた。
再び、金ちゃんはカチカチとマウスをクリックして、ヒーちゃんにも何をしたのかを見せている。
「こういう機能があることは知っていましたが、普段は、あまり使うこともないのでやり方までは知りませんでした。なるほど、エクスプローラーから入って、表示のリボンの中で選択すると出来るんですね」
彼女はあごに手をやって感心している。
僕は仕事をしながら、何をやっているのかと気になって仕方がなく、書類の文章を読むのに時間が掛かった。
金ちゃんと銀ちゃんがパソコンの操作に詳しいって、おかしくない? いや、今は、そんなことよりも早く終わらせたい。
お願いだから集中させてくれ……。
「それで、金ちゃんと銀ちゃんがコレを見つけたんですけど、開くのに呪文が必要なんです。ヒサメ様は心当たりがありますか?」
ケイト、金ちゃん、銀ちゃんの三人がヒーちゃんを見つめる。
「いえ、さすがに分かりません」
彼女は首を横に振る。
呪文? パソコンで呪文ってなんだ?
とても気になる。
他の皆も、その会話に興味を持ったのか、四人の背後で画面を覗き込んでいた。
本当に、何をしているんだ?
「フーカ様、手が止まってます。私も気になるんで、早く終わらせて下さい!」
「う、うん。ごめんなさい」
イーリスさんに注意され、謝ってしまう。
「それにしても、こんな名前を付けるなんて……」
「「「「「……」」」」」
マイさんの言葉に、皆が無言になる。
「とにかく、呪文を解読しましょう」
シャルの言葉に皆が頷いた。
さっきから、呪文って何のこと……?
「うーん。きっと、溢れ出す汁だわ!」
カチャ、カチャと銀ちゃんがキーボードを押してから、マイさんに向かって首を横に振った。
「マイ様、あからさますぎます。秘密とか花園とかですよ」
再び、カチャ、カチャと銀ちゃんがキーボードを押して、今度はケイトに向かって首を横に振った。
「うーん。いくつか思いついたのですが、青春、奥義、機密、神秘、奇跡とかはどうですか?」
銀ちゃんは、カチャ、カチャとキーボードを押していき、シャルに向かって首を横に振った。
「全部、ダメでしたか……」
銀ちゃんが頷くと、シャルがあごに手をあてて悩みだす。
なんか、変な単語をあげてるけど、いったい、何をしているんだ?
気になって書類の文章が頭に入ってこない……。
その後も、皆から色々な単語があげられるが、銀ちゃんはすべてに首を横に振る。
皆は、腕を組む者やあごに手を当てる者など、様々な格好で悩んだり考え込んでいたりしていた。
ポン。
ヒーちゃんが閃いたかのように手を叩く。
「カゼカズは、どうですか?」
銀ちゃんは、カチャ、カチャとキーボードを押すと、ヒーちゃんに笑顔を向けて首を縦に振った。
「「「「「やったー!!!」」」」」
皆が叫びだして、喜びを分かちあっている。
カゼカズ? なんで、僕のアカウント名が出てくるの?
ますます気になる。
顔を上げると、イーリスさんがうずうずしていた。
「フーカ様、早くして下さい!」
彼女と目が合うと、急かされてしまった。
こんなに気の散る状況で急かされても……。
「金ちゃん、早く開いてみて下さい」
彼は、ケイトに向かってコクコクと頷くと、カチカチとマウスをクリックする。
「「「「「おおー!!!」」」」」
皆から歓声が上がった。
「なんか……。色々と分類されてますね。二次元? 三次元? ポリゴン? ヒサメ様、これって、何のことですか?」
「えーと、見たほうが早いと思いますが、簡単に言えば、二次元が絵で三次元が写真、ポリゴンが立体感のある絵です」
「「「「「なるほど」」」」」
ケイトに聞かれたヒーちゃんが答えると、皆は納得していた。
「では、金ちゃん、上から順に見ていきましょう」
彼は、シャルに向かってコクコクと頷くと、カチカチとマウスをクリックする。
「えーと、これは……。何と言ったらいいんでしょう? 凄いですね」
シャルは顔を真っ赤にして、手で押さえるが目だけは画面に釘付けだった。
他にも、彼女と同じ仕草をする者は多かった。
本当に、皆して何を見ているんだ……?
書類の枚数も、あとちょっとだ。もう少しの辛抱だ。
僕はイーリスさんを見るが、隣に彼女はいなかった。
そして、皆と一緒に画面を覗き込んでいた。
「イ、イーリスさん?」
「フーカ様は、あと少しなんですから、最後まで終わらせて下さい!」
彼女は僕に向かって答えると、再び画面に視線を向ける。
ズ、ズルい……。
「こ、これ、凄い縛られ方してますよ。こっちは騎士ですね」
シャルは口にしながらレイリアを見ると、皆もレイリアに視線を集中させる。
「わ、私って、こんな風にされるんでしょうか? あっ、そこにあるのは巫女ですよ。それに、その隣にあるのはエルフですけど、騎士よりもすごいことになってます。ミリヤ様とオルガも頑張って下さい」
レイリアの言葉で皆の視線がミリヤさんとオルガさんに向かう。
「いくらなんでも、ここまでは許容できません」
ミリヤさんは耳まで真っ赤になって、顔を手で覆ってしまい、オルガさんも顔を赤くし、彼女に同意するように頷いていた。
「こっちは、獣耳としっぽが生えてますね」
ケイトが口にすると、金ちゃんと銀ちゃんが頬に手を当てて、フルフルと首を横に振る。
「「「「「……」」」」」
「い、いや、金ちゃんと銀ちゃんは、違うから、大丈夫ですから……」
皆は恥ずかしがる二人に唖然とし、ケイトは困った表情で否定した。
「こっちは、制服みたいのを着てるわよ。これって、メイド服よね。これはこれで凄いことを……ちょっと、痛そうね」
マイさんは、そう言ってアンさんとオルガさんの胸を見ると、皆の視線も二人に向けられた。
「こ、これは無理です」
アンさんが答えると、皆の視線がオルガさん一人に向けられる。
「私も無理です。それに、私だけ、さっきのだけでなく、こんなことまでさせられるんですか?」
彼女は顔を真っ赤にしながら口を押えた。
「えーと、皆さん? これは架空というか、妄想みたいなものなので、実際にはありえないです。真に受けないで下さい」
よく分からないが、ヒーちゃんは、皆の誤解を解いているようだ。
「でも、こっちは写真よね? こっちでも似たようなことをしているものがあるわよ?」
マイさんが画面を指差す。
「……これは、そういう専門の人やスタッフで、危なくないように注意を払って作られてるものだから大丈夫なんです」
ヒーちゃんは顔を真っ赤にしながら、動揺していた。
その後、皆は画面に集中しているのか、大人しく見つめ、カチカチと金ちゃんのクリック音だけが響いていた。
話の内容や皆の様子から、まさかと思うが、変なサイトでも見てるのでは? しかし、ネットは使えないはずだし、僕のノートパソコンはツバキちゃんからもらった状態のままだから、変な画像とかは入っていないのに……。
うーん。気になる。
最後の一枚の書類に目を通して、サインをする。
やっと、終わった!
「イーリスさん、全部、終わったよ!」
「そ、そうですか……」
彼女は、僕を冷ややかな目で見てくる。
そして、皆も同じような目で見てくる。
なんで? 仕事を終えたのに、どうして、そんな目で見られるの?
「あのー、えーと、皆さん、その冷ややかな目は?」
「コホン。フーカさん、『風和の禁忌書庫』って知ってますか?」
「なにそれ? 聞いたことはないけど、なんで、僕の名前がつけられてるの?」
シャルに尋ねられたが、僕は聞いたことがない。
そして、言葉の響きから、なんだか嫌な予感がする……いや、嫌な予感しかしない。
「あらあら、奥さん、聞きました? あの子、すっとぼける気ですよ!」
「まあ、もうバレているのに……。男の子は、こういうことになると往生際が悪いくて、困りますわね!」
身に覚えがなく悩んでいると、マイさんが小芝居を始め、エルさんも合わせていた。
「その小芝居、イラっとするんだけど……」
「まあ、奥さん、聞きました? フーカ君ったら反抗期ですよ。もう、あの年頃の男の子は、溢れ出す汁を抑えられなくて、すぐにイライラしだすのだから、困ったものです」
「本当に、その通りですわ。男の子は恥ずかしいと、すぐに怒って誤魔化そうとしますものね」
二人は小芝居を続ける。
「本当に、そんなもののことは知らないんだって!」
僕が答えると、二人は再び小芝居を始めようとする。
ガシッ。
マイさんをイツキさんが、エルさんをアンさんとハンネさんが、二人の肩をしっかりと掴んで放さない。
「ちょっと、イツキ姉様? 少し悪ふざけをしただけ……イタタタタ! か、肩の骨が折れちゃいます。イタタタタ! ごめんなさい」
エルさんの目の前でマイさんが撃沈する。
「ま、待って、私はマイに合わせただけだから……。ちょっと、なんで、私だけ、二人なの? それに、私は女王よ! 国際問題にな……イタタタタ! アンちゃん、ハンネ、ごめんなさい。両肩が砕ける! イタタタタ!」
「エル様、女王様待遇です!」
ハンネさんがニッコリと微笑む。
「そ、そんな待遇、要らないわ! イタタタタ!」
エルさんも撃沈した。
「ハァー。これで話しが進められますね」
イーリスさんは疲れた表情で、端に連れて行かれる白目をむいた二人を見つめる。
「では、早速! フーカ様、こちらへ来て下さい!」
ケイトに呼ばれ、僕は恐る恐る彼女たちが待つノートパソコンのそばへと行く。
パンパン。
「ここへ座って下さい!」
ケイトは座布団と叩いて、僕をノートパソコンの画面から少し離れた所に座らせた。
「フーカさん、これは何ですか?」
シャルが画面を指差すと、『風和の禁忌書庫』というタイトルのフォルダーがあった。
僕はフルフルと首を横に振る。
金ちゃんは、カチカチとマウスをクリックしてフォルダーの中身を開いて行く。
その画像には見覚えがあり、僕は焦った。
しかし、日本での僕の部屋にあるパソコンに入っているはずの画像が、このノートパソコンにも入っていたなんて、僕も知らない。
そもそも、フォルダーのタイトルが違う。
「フー君、隠しファイルにしてありました。あえて隠していたとしか思えないです」
ヒーちゃんが残念そうに見つめてくる。
「誤解だって! 確かに、その画像と動画は知っているし、日本にある僕のデスクトップパソコンに入っていたけど、こっちに持ってきたノートパソコンには入れてないよ! それに、タイトルは『風和の禁忌書庫』じゃなくて『設定データ集』だったんだから!」
「ということは、この中身はフー君が集めたもので間違いないんですね!?」
「あっ! ……は、はい。その通りです……」
墓穴を掘った僕に、ヒーちゃんは溜息を吐いて嘆く。
そして、皆からは、白い目が向けられる。
「フーカさん、私たちに……その……ここにある画像のようなことをするつもりだったんですか?」
「断じて違う! それは、その……架空や妄想というか、ゲーム……えーと、物語を絵本みたいにした物のシーンを抜き取ったものだから……。えーと、説明が難しいんだけど、未成年がそういう画像を手に入れるには大変な苦労があるから、男友達と見せあったり、交換したりとかしてたから……」
僕はシャルに言い訳をしてみたものの、何と言っていいのか分からなくなり、途中で諦めて下を向くと、皆が一斉に溜息を吐いた。
室内が沈黙に包まれ、居心地が悪い。
なんで、僕がこんな目にあってるんだ?
ノートパソコンはツバキちゃんからもらったまま、ファルマティスへと転移されてしまったので、僕にデータを移す時間はなかった。
それなのに、フォルダーの中身は、僕が収集してきた画像と動画で間違いはない。
となると、姉ちゃんが僕のパソコンにあるフォルダーをコピーして、ツバキちゃんに渡したとしか考えられない。
きっと、そのフォルダーをツバキちゃんが移植したんだ。
こんな物まで移植するな! ……ちょっと待て?
このノートパソコンに移植されているということは、姉ちゃんとツバキちゃんが、このフォルダーの存在を知っていることになる。
僕は頭を抱えてしまう。
あれ? フォルダーには、パスワードを掛けていたはずだ。
そういえば、さっき、呪文と言っていたのはパスワードのことか、そして、『カゼカズ』で開いていた。
しかし、僕が設定したパスワードは自分の誕生日だ。
……ツバキちゃんのことだから、パスワードを暴いたけど、そのパスワードを忘れて設定しなおしたな。
ん? それって、僕が開けなくなるから、意味がないじゃないか!
僕は再び頭を抱えた。
皆は、黙ったまま苦悶している僕を、不思議そうに見つめていた。
「フーカ様? さっきから一人で、何を苦悶してるんですか?」
「えっ、いや、このノートパソコンって、ツバキちゃんにもらって、すぐにこっちへ来たから、そのフォルダーのタイトルを変えて入れた犯人が、きっと、ツバキちゃんしか考えられないって分かったから。それに、僕が設定したパスワードは自分の誕生日だったのに、パスワードを変えたら僕も見れないのに、何を考えてるんだろうと思って」
ケイトは、僕をジッと見つめる。
「それって、フーカ様がフォルダーを開けないで苦しんでいるのを楽しむためでは?」
彼女の予想は正しいと思う。
「ん? でも、隠しファイルにしてタイトルまで変えたら、僕は、そのフォルダーが何のフォルダーか気付けないと思うけど……」
「「「「「……」」」」」
僕の言葉に、ケイトだけでなく皆も唖然としていた。
ツバキちゃんは、どこか抜けているのかもしれないと、皆は思ったようだ。
そんな中、アスールさんだけが、しょんぼりと落ち込んでいる姿を目にする。
「アスールさん? どうしたの?」
「竜族の画像だけが無かった……グスン」
「「「「「……」」」」」
彼女の返事に、僕と皆は唖然とする。
そして、皆は僕を睨む。
なんか、理不尽な気がする……。
「えーと、アスールさん。そのー、竜族の画像が無いのは、希少で手に入れるのが難しかったんだよ。だから、落ち込まないでよ」
「そ、そうなのか! なるほど、竜族は希少なのか! 竜族は、そういう対象で見られないのかと心配したぞ! そうかそうか、希少なのか!」
アスールさんはパアーっと明るい表情になり、嬉しそうにしている。
しかし、ルビーさんたち竜族の女性は、複雑そうな表情を浮かべていた。
「ところで、どうして僕の部屋に集まってるの?」
僕は話しをそらすために、話題を変える質問をした。
「この部屋にいれば、何か面白いことが起こりそうじゃないですか!」
ケイトが答えると、皆も頷く。
「ここに来たって、面白いことは起きないよ!」
「えっ? 今、面白いことが起きたばかりですよ!」
「うっ……」
僕がケイトに返す言葉がなく、うなだれると、皆から笑いが起こる。
そして、金ちゃんと銀ちゃんが僕の背中をポンポンと優しく叩いて慰めてくる。
「「プッ!」」
顔を上げると、二人に吹き出され、顔を背けられた。
こ、こいつらは……。
なんだか、とても疲れた僕は、机に戻って椅子の背もたれに寄りかかる。
そして、奥宮も完成してるのだから、後でツバキちゃんに文句を言ってやると決意したのだった。
お読みいただきありがとうございます。
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また、下にある☆☆☆☆☆を押して、
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よろしくお願いします。
誤字脱字、おかしな文面がありましたらよろしくお願いいたします。




