114話 王都ユナハ市への帰還
僕は、滅ぼしたカーディア正統帝国だった国土について、そこを誰に任せるかで考えあぐねていた。
そこで、もともとこの辺りを領地としていたヘルゲさんと隣のシュナ領の領主であるアレックスさんの二人に、次の領主が見つかるまで任せることにした。
すると、経るにとアレックスさんは、すぐに自分たちの領から、人を派遣して統治を進めてくれると約束してくれた。
しばらくの間は、二人に任せることで一段落をつけていた僕は、王都ユナハ市へ戻るための支度を始めた。
すると、エルさんとエルマンさんから呼び出され、二人のもとへと向かう。
二人がいる部屋に着くと、僕をハンネさんが席へと促す。
「フーカ君、こういった状況になったのだから、一度、各国首脳を集めて会談を開いたほうがいいわ」
唐突に、エルさんが真剣な顔で言ってくると、隣にいたヘルマンさんも大きく頷いていた。
「確かに、そうだね。今回の件には、ブレイギル聖王国とハウゼリア新教国が絡んでいたことが見え見えだったし、思っていたよりもおおごとになってしまったからね……」
「フーカ陛下、それだけではありません。ブレイギルが勢力を弱めたことで、その隣国のファルレイク帝国も動き出す可能性が出て来ています」
ヘルマンさんから、また一つ、厄介そうな国の名前が出て来て、僕は嫌そうな顔をする。
「そんな顔をしたって、どうしようもないわよ。私たちがビルヴァイス魔王国と同盟を結んでいる以上、あちらさんは、こちらを敵対国だと思ってるんだから」
エルさんは何故だか嬉しそうに見える。
ファルレイク帝国とプレスディア王朝の間で因縁がありそうだ。
そして、それに巻き込まれる……いや、エルさんが巻き込もうとしている気がする。
「うーん。なら、僕たちが王都に戻ったらすぐに、各国を集めた首脳会談を開けるように手配するよ」
「ええ、それがいいわ。私とヘルマンもフーカ君と一緒に同行することにしたけど、いいわよね?」
「別にいいけど、ヘルマンさんは国を空けて、大丈夫なんですか?」
「大丈夫です。何かあっても他の者が対応できますし、ユナハ国との同盟国の中で、新参者が会談に顔を出さないわけにもいきませんからな」
彼はニッコリと微笑む。
僕は二人に頭を下げてから部屋を出て行くと、その足でイーリスさんのもとへと行き、首脳会談のことを伝え、手配してもらった。
◇◇◇◇◇
準備も整い、王都へ戻る日を迎えた。
ルビーさんたちはドラゴンへと姿を変えて、僕たちが乗り込むのを待っている。
ドラゴンの数が多いから、城の庭では窮屈だと思って、オニック市の外から飛び立つ事にしたら、ユナハ国の国旗を手に持った市民たちが集まってしまった。
なんか、大げさになってしまったけど、大丈夫かな?
アスールさんの背中に僕とシャルたちが乗り、金ちゃんと銀ちゃんを引っ張り上げる。
二人はアスールさんの背中に乗った途端、ポニュポニュと興奮してはしゃぎだす。
ドラゴンに乗れて、とても嬉しいようだ。
「コラ! わしの背中で暴れるな!」
アスールさんに怒鳴られると、二人はその場に座ってシュンと大人しくなる。
エルさんたちとヘルマンさんたちは、ネーヴェさんに乗ると、サンナさんが大きく手を振って合図を送っていた。
それを見たルビーさんが飛び立つと、ドラゴンたちは後に続いて飛び立っていく。
ヘルゲさんとアルバン、アレックスさんに見送られ、僕たちを乗せたアスールさんも飛び立つ。
すると、市民たちから大きな歓声が上がった。
「「「「「ユナハ国、万歳!!! フーカ陛下、万歳!!!」」」」」
僕はウルッときて、下を覗き込むと、彼らは手に持った青い旗を振って見送っていた。
彼らからすれば、僕たちは侵略者なのに……。
僕は感動して目頭を熱くさせ、彼らが見えなくなるまで、その余韻に浸った。
今回の航路は、途中にあるアルセ市に寄って、リネットさんと話しをしてから、ユナハ市へ戻る予定だ。
しばらく飛んでいると、アルセ市の城壁が見えてくる。
「……あ、あれって、アルセ市だよね?」
「……た、たぶん?」
僕の戸惑った質問にシャルも戸惑って答える。
城壁の上には砲台が造られ、僕も初めて見る近代的なカノン砲がいくつも鎮座している。
さらに、城壁の中腹には複数のバルコニーが新設され、バルカン砲が備えられていた。
僕はケイトに視線を向ける。
「うーん。リネットさんってば、頑張りすぎちゃったみたいですね!」
「ですねじゃない! 城塞っていうよりも軍事基地みたいじゃないか!? それに、あのカノン砲は何? あんなのが造れるなんて、うちの国はどんだけ工業力を発展させてんだよ!」
「いやー、そんなことよりも空が澄んでいてきれいですよ。フーカ様もあの青空を見て、気持ちを落ち着かせましょう」
「ケイト! そんなことで誤魔……?」
彼女が指差す青空に向かって、アルセ市から何かが打ち上げられた。
そして、パッと花を咲かせるように、何かが開く。
「あれって、落下傘?」
バババババッ、バババババッ。
アルセ市にある双子の城から連続した発砲音が響くと、落下傘が細切れにされて落ちていった。
「アハハハハ。ケイトー。まさか、アルセ市には対空機関砲まであるのかなぁ?」
「ま、まさかー。アハハハハ」
「ピッ、ガー。こちらはアルセ領軍防衛部隊です。只今、対空機関砲による対空射撃の軍事演習中のため、その航路では射線に入ってしまいます。航路の変更を願います。どうぞ」
金ちゃんと銀ちゃんが無線機をとっていた。
ケイトの額から汗が噴き出る。
「ほ、ほら、ドラゴンが攻めてきたら大変ですから!」
「「「こんな物騒な国に攻め込むか!!!」」」
アスールさんだけでなく、こちらへ近付いていたルビーさんとネーヴェさんが、声を揃えてケイトに向かって怒鳴った。
彼女は額の汗を拭きながら、後方の空を素知らぬ顔で眺めだす。
こうなったら、ヒーちゃんから言質を取って追い込んでやる!
あれ? ヒーちゃんがいない。
彼女を探すと、しっぽの付け根のほうで、後方を眺めて素知らぬ顔をしていた。
あんなところにいるということは、ヒーちゃんも共犯だ……。
「おい、フーカ! このまま進んではマズいのではないか?」
「あっ、そうだった! えーと、落下傘は向こうに打ち上げられていたから、えーと、左! アスールさん、左側から迂回するように飛んで!」
「うむ。分かった!」
彼女はルビーさんのそばへ行くと、そのことを伝える。
ルビーさんを先頭にして、ドラゴンたちは航路を左へ大きく移す。
そして、アルセ市を迂回するように回り込み、城を過ぎると大きな空港が見えてきた。
「く、空港まで完成してる……」
滑走路に点滅した線が現れ、着陸を指示している。
「アスールさん、あの点滅しているところに降りて!」
「うむ。分かった!」
アスールさんがルビーさんに伝えると、彼女は点滅している滑走路へ向かって行き、着陸する。
その滑走路へ次々とドラゴンが着陸していく。
すると、馬にひかれたタラップが各ドラゴンへと向かって行き、ドラゴンに横付けされた。
ここまで来ると、驚きを通り越して呆れてくる。
空港へ降り立つと、僕はイーリスさんとアンさんに声を掛けた。
「イーリスさん、アンさん。ケイトとヒーちゃんに少しお灸をすえてあげて」
「「はい! ……えっ!?」」
「ん? どうしたの?」
「えーと、ケイトはいいですが、ヒサメ様には……」
イーリスさんは手を前に出して断ってくる。
アンさんを見る。
「私も困ります」
彼女にも断られた。
「シャル、ケイトと一緒に暴走しないよう、ヒーちゃんを注意しておいて」
「フーカさんがしたほうがいいのでは?」
シャルも納得がいかないようだった。
「僕だと、ヒーちゃんが反省しすぎて、頑張って開発をしている人たちに教えることを制限しそうだから、悪影響になると思う。まあ、ケイトは、僕だとまったく反省しないだろうけどね」
「……分かりました。私からそれとなく注意しておきます。でも、フーカさん、女性はフーカさんが思っているよりも、したたかだということも覚えておいたほうがいいですよ」
彼女は苦笑しながら答える。
僕には良く分からなかったが、女性陣は僕を見てニッコリと微笑んでいる。
なんか、怖い……。
「それにしても、アルセ市がここまで急激に発展していると、王都がどうなっているか不安になってくるね」
「それなら、あれを見れば予想がつくと思いますよ」
僕にミリヤさんが、ある方向を指差して答えた。
彼女の指差す先には、舗装され、広げられた王都へ続く四車線の街道を馬車と荷馬車が走っていた。
そして、その街道と平行に砂利が敷かれ、二本の線が伸びている。
「せ、線路までできているってことは……」
僕はケイトを見る。
「えーと、残念ながら、魔動機関……フーカ様にも分かるように言えば、魔力で動くエンジンの開発が、一定の魔力量で出力を安定させるところで難儀してまして、もう少しかかると思います」
彼女は苦笑しながら答える。
ところどころで僕があおったのもいけないけど、この国に僕が来て、まだ一年未満だというのに、すでに産業革命へと突入しようとしているのでは?
これって、僕が推進したからと言われるに違いない……。
僕はぐったりとしながら、タラップを降りていく。
タラップのそばには馬車が用意されていて、リネットさんと数人の兵士たちが出迎えていた。
「フーカ様、お久しぶりですわ。アルセの発展ぶりは……」
リネットさんは話しの途中で黙ってしまい、僕の後方を見て驚いていた。
周りの兵士たちも、タラップを見上げたまま驚いている。
金ちゃんと銀ちゃんを目にしたのだろう。
皆がタラップを降りると、アスールさんが人の姿へと変わる。
そして、リネットさんの前に揃うのだが、彼女は金ちゃんと銀ちゃんに釘付けで、僕たちのことを忘れているようだった。
「リネットさん?」
「あっ! 申し訳ありませんわ。えーと……」
「驚くのもしかたないよ。この子たちは、僕の魔法で具現化……、いや、実体化か。その僕の魔力が実体化した金ちゃんと銀ちゃんです。いい子たちなので、仲良くしてあげて下さい」
僕が二人を紹介すると、二人はペコリと頭を下げる。
リネットさんはそんな二人をジッと見つめる。
視線を向け続けられて、二人はモジモジと照れ始めた。
「なん可愛いんですの。金ちゃんと銀ちゃんを誠心誠意、おもてなし致しますわ! さあさあ、馬車に乗って下さい! あっ、皆さんもどうぞ!」
彼女の中で、僕たちは金ちゃんと銀ちゃんのついでになってしまった。
ポニュ、ポニュ、ポニュ、ポニュ――。
金ちゃんと銀ちゃんが歩き出す。
「なんて可愛らしい足音ですの。素敵ですわ!」
リネットさんが二人を褒めると、胸を張って肩で風を着るように歩き出す二人。
こ、こいつら、調子に乗り出したな……。
「まあ、なんてりりしいお姿! それでいて可愛らしいのですから、最強ですわ!」
いくら何でも褒めすぎだ……。
二人のしっぽはブンブンと全開で振られている。
マイさんとケイトは、そのしっぽに叩かれそうになるのを避けながら、金ちゃんと銀ちゃんを気持ち悪そうに見ていた。
そして、馬車に乗ろうとする金ちゃんが入り口で詰まった。
いい加減に学習して欲しい……。
「こ、これは失礼しましたわ」
リネットさんは近くの兵士に何かを命じたようだ。
「皆さん、少しの間、お待ち下さい」
僕たちが待たされていると、ルビーさん、エルさん、ヘルマンさんのグループが合流する。
すると、幌馬車も少し遅れて到着した。
「「「「「……」」」」」
僕たちは唖然として、言葉を失う。
用意された幌馬車は、中に絨毯を敷き詰め、クッションだらけにされていた。
「金ちゃんと銀ちゃんのための特別車両が到着しましたわ。さあさあ、お乗り下さい」
リネットさんは嬉しそうに二人をエスコートする。
「「「この国の王は、誰……?」」」
ルビーさん、エルさん、ヘルマンさんの三人は、その光景を見て声を揃えると、困った表情を浮かべた。
僕たちの乗る馬車の一行が、双子の城のウルシュナ城へと到着する。
城の城壁は壊され、城の敷地だったところには、大きな建物がいくつも建てられていた。
その代わり、城の周りには灰色のコンクリートでできた高い塀が城を囲っている。
僕は刑務所を連想してしまったが、そのことには触れず、違う質問をリネットさんにする。
「この大きな建物は?」
「これは、右から役所、病院、警察署、消防署、領軍の施設ですわ。市民が利用したり、駆け込めるように開放してますの。あちらのルース城はそのまま残し、博物館と美術館を隣接させて、観光資源にする予定ですわ。学校は城のそばでは通うのに大変でしょうから、住宅街のほうで候補地を探しているところですの。それに、インフラ、でしたっけ? 道路、上水道、下水道と整備は行き届きましたわ」
彼女はドヤ顔で、街のほうへ向けて腕を広げ、語った。
ここにある建物を聞いただけなのに、アルセ市の都市開発の構想を聞かされてしまった。
僕は彼女が指し示す街の方を見る。道路は舗装され、馬車の往来も以前より激しい。
それに、歩道も設置されていて整備が行き届いていている。
目には見えないが、上下水道まで整備されているのか。
国民が住みやすい国に向かっていることはいいのだけれど、開発ペースが早すぎる……。
リネットさんは、僕たちを城内の客間へと案内すると、料理をふるまってくれた。
金ちゃんと銀ちゃん、アスールさん、レイリアはガツガツと料理に夢中となっているが、僕とイーリスさん、それに、ルビーさん、エルさん、ヘルマンさんは、カーディア正統との戦いと、今、得ている情報をリネットさんに話した。
がっついている四人を除いて、皆もこちらの話しに耳を傾けながら、食事をしている。
リネットさんは、僕たちの話しを聞き終えると、少し考えこんでから口を開く。
「シュミット王国は分かりませんが、ハウゼリアはしたたかですから、すぐには動かないと思いますわ。それよりも、ブレイギル聖王国ですわ。どさくさに紛れて……違いますね。おそらく、カーディア正統帝国を焚きつけて、こちらの注意が削がれている隙にプレスディア王朝の領土を奪うはずだったはずです。しかし、逆に領土を奪われてしまっていますから、何かしらの行動を取りだすと思いますわ。そして、ファルレイク帝国がブレイギル聖王国に加勢するか無視するかによって、戦いの規模が変わると思いますわ」
彼女の意見に、僕たちは黙って頷く。
「ファルレイクが加勢したら、ドレイティス王朝とビルヴァイス魔王国、それに、ハンヴァイス新魔国も動き出すわよ。ハンヴァイス新魔国が動き出したら、西大陸の国々が動き出すだろうから、世界大戦に突入しかねないわね……」
エルさんが頭を抱えると、皆も険しい表情を浮かべる。
「フーカ君が関わると、カーディア帝国の内政問題だったはずが、世界大戦にまでなるのね。凄いわ!」
マイさんの一言で、皆の何とも言えぬ視線が僕へと集中する。
「まだ、そうなるとは限らないし、仮にファルレイク帝国が動いたとしても、今みたいに世界大戦になるかもと予測して、各国が動かないかもしれないでしょ!」
僕が反論すると、皆も確かにと頷き始める。
「ちょっと、いいですか?」
レイリアがチューリップの姿の唐揚げを持ったまま、手を挙げた。
パクッ。
顔のそばに突き出された唐揚げを、銀ちゃんが口に入れる。
「ちょっと、銀ちゃん! 何で私の唐揚げを食べるんですか!?」
『そこにからあげがあつたから』
彼はプラカードを出す。
「あったからって、これは私の唐揚げです! 銀ちゃんのお皿にも、唐揚げがあるじゃないですか!?」
『おやくそく!?』
「お約束って……。そんなことを言うなら、私だって、お約束で銀ちゃんの唐揚げを奪いますよ!」
彼はフルフルと首を横に振りってから、ペコリとレイリアに謝り、自分のお皿にある唐揚げを彼女のお皿にのせた。
「ありがとうございます。さすが、銀ちゃんです!」
二人はお互いに笑顔で向き合うと、友情を確かめている。
「「「「「……」」」」」
僕たちは何を見せられているのだろう……。
「ねえ、レイリア? 何か言いたいことがあるんだよね?」
「あっ、そうでした。えーと、ハウゼリアが唐揚げ……じゃなくて、世界大戦を狙って画策してたとかはないんですか? 何だか今までのことって、やたらとハウゼリアが絡んでて、筋書き通りに動かされてるみたいじゃないですか?」
「「「「「!!!」」」」」
皆は驚愕して、彼女を見つめ続ける。
彼女は質問をしてスッキリしたのか、銀ちゃんからもらった唐揚げを食べようとするが、皆から注目されていることに気付くと、その手が止まる。
「食べちゃダメですか?」
彼女の一言で、皆は嘆くようにうつむいた。
レイリアって、鋭いところに気付けるのに、どうして、こうなんだろう。それに、質問に対しての皆の意見は、気にならないのだろうか?
レイリアの質問を機に、僕たちは意見を出し合うが、可能性は高くても断言できる証拠がなかった。
しかし、レイリアの気付いたことは無視できない。
ハウゼリアの動向には、世界大戦を引き起こそうとしていることも考慮して様子を探ることとなった。
そして、今、捕らえているハウゼリア司教のバスク・コーデンから、そのことも聞き出せるかを試すこととなった。
食事が終わると、僕は用意された部屋へと通される。
その部屋は金ちゃんと銀ちゃんのことも考慮されてか、キングサイズのベッドが二つも並べられた広い部屋だった。
どう見ても僕ではなく、金ちゃんと銀ちゃんに用意された部屋だ……。
僕は窓へ向かい、日の落ちた街並みを眺める。
道路沿いに街灯が設置されており、夜でも馬車と人の往来が見られた。
少し前までは、暗くなれば、極端に人の往来が減っていたのが嘘のようだ。
窓から離れると、アンさんとオルガさんが、金ちゃんと銀ちゃんの服を脱がせてたたんでいる。
彼らは二人にペコリと頭を下げると、バッドの上をゴロゴロと転がって遊びだす。
その光景を二人は優しい表情で微笑んで見つめながら、仕事をこなすのだった。
◇◇◇◇◇
翌朝、僕たちは空港に集まっていた。
リネットさんは、金ちゃんと銀ちゃんに抱き着いて、別れを涙ぐみながら惜しんでいる。
その横では、夜中までご両親に掴まっていたイーリスさんがゲッソリとした顔で三人を見つめていた。
何があったのかは、何となく聞かないほうが良いと、僕の感が告げていた。
出発の準備が整うと、僕たちはアスールさんに乗る。
ルビーさんから順に滑走路へと入って行き、飛び立っていく。
アスールさんの順番がくると、無線機から「風速に問題なし、周辺に異常なし、離陸を許可する。王都までの天候は晴れ。お気を付けて」と管制からの指示が入る。
すると、アスールさんが飛び立つ。
リネットさんはこちらへ向かって、白いハンカチを手に持ち、大きく振っていた。
それを見た金ちゃんと銀ちゃんは、プラカードを大きく振り返して答えている。
その二つのプラカードを、僕がつなげて読むと、『今度はお忍びできます!』と書かれていた。
お前らは、何さまだ!
そして、僕たちは王都へと向かうのだった。
王都へ向かう街道は整備が終わっており、街灯も設置されていた。
そして、途中に点在する市町村も活気にあふれているようだった。
馬車の往来は、以前に見た時よりも格段に増え、それは、王都に近付くにつれて多くなっていく。
少しいなかった間に、王都がどれだけの発展をとげてしまっているのか、とても不安になってくる。
王都が見えてくると、その不安は現実へとなっていく。
城壁に設置されたカノン砲やバルカン砲はもちろんのこと、城の左側にはビルや何かの施設っぽい大きな建物が立ち並び、そのさらに左には、住宅街が出来ている。
そして、城の右側には軍事施設と空港が出来ており、空港には格納庫のような建物も並んでいた。
僕たちはユナハ市の上空に入り、空港へと向かう。
城の裏側には、大きな神殿が建てられていた。
ん? んんん?
その神殿の奥に大きな鳥居があり、さらにその奥に大きな神社がある。
そして、神殿と神社をつなぐ参道? みたいな道の両脇にはハウスメーカーの建売っぽい屋敷が建っていた。
文化がごちゃまぜで、ファンタジー感が、なくなってきている気がする……。
ヒーちゃんが僕のそばへと来る。
「フー君、ユナハ市を見ていると万博会場を思い出します……」
「……」
僕は返す言葉が見つからず、黙ったまま彼女を見つめた。
そして、お互いに顔を合わせたまま、何とも言えぬ疲労感に襲われ、二人してうなだれてしまう。
そうこうしているうちに、アスールさんが滑走路へ着陸する。
僕たちは、タラップを降りて用意された馬車に乗るが、金ちゃんと銀ちゃんは車内には入れないので、屋根の荷台に乗ってもらう。
そして、城へと向かう。
屋根にいる金ちゃんと銀ちゃんが目立っているのか、すれ違う人たちが僕たちの馬車を二度見していく。
また、見世物になっている……。
馬車が到着し、城の中へと入っていくと、エンシオさん、クリフさん、ヨン君が出迎えてくれた。
そして、目を見開いて固まる。
また、金ちゃんと銀ちゃんか……。
「なんか、竜族の人口が増えてる。それに、レイリアお姉ちゃんが動いてる……」
最初に口を開いたのはヨン君だった。
金ちゃんと銀ちゃんよりも、そっちが気になるの……。
ん? んんん?
「えーと、イーロさんやフリーダさんのことは報せがいってるよね? それに、レイリアの戦死も誤報の報せを送ったはずだけど?」
「うーん。確か、フリーダ様を領主に任命したことは聞いてるけど、竜族とは知らされていないし、レイリアお姉ちゃんは、ゾンビになってミリヤお姉ちゃんに浄化されたって、マイ様から報告が来てたけど」
ヨン君の言葉を聞いて、皆がマイさんに視線を向けるが、今まで彼女がいた場所には誰もいなかった。
皆で辺りを見回しても何処にもいない。
に、逃げられた……。
「ヨン君は、この二人、金ちゃんと銀ちゃんを見ても驚かないの?」
僕は二人を指差して、ぶっちゃけてみた。
「うーん。見た感じが、あっ、これ、絶対に兄ちゃんが関わってるって容姿だから、驚くだけ損っていうか無駄だと思ったら、そんなに驚かなかったかな」
「……」
僕は言葉を失い、シャルたちが笑いだす。
「それに、二人と似ている像が神殿にも置かれていたからかも」
「ん? 神殿にもある?」
ヨン君が聞き捨てならいことを言い出した。
僕は、エンシオさんとクリフさんに視線を向ける。
二人は苦笑しながら顔を逸らすだけで、何も答えようとはしなかった。
なんだかすごい嫌な予感がする。
笑っていたシャルたちですら、顔を引きつらせて、「何が起こるの?」といった不安な表情を浮かべていた。
「コホン。ここではなんですから、会議室のほうで話しましょう。その後は、ヨン君に新しく出来た施設を案内させます」
クリフさんは、そう言って歩き出し、僕たちは彼についていく。
「ヨン君が大人びてない?」
「そうですね。話し方も落ち着いてますし、以前のように言葉遣いを気にして、おかしくなったりしてませんし、ただ、もう少し丁寧な口調のほうがいいですね」
僕とシャルが話す。
「あの子は、やんちゃなところはありましたが、頭のいい子でしたから、ここで大人ばかりと接して、経験したり吸収することが多くなった分、あの子にいい影響を与えたんだと思います」
すると、オルガさんが顔を出して、話しかけてきた。
僕とシャルは彼女の意見に頷き、ヨン君のことを本当の弟のように思っている彼女の弟思いなお姉さんの姿に、ほっこりさせられた。
お読みいただきありがとうございます。
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よろしくお願いします。
誤字脱字、おかしな文面がありましたらよろしくお願いいたします。




