110話 僕への査問会?
「このままではダメですね。会場を作りましょう!」
ケイトは皆に指示を出して、テーブルや机、椅子などの配置を変えさせた。
「うむ。これで良し!」
「良し! じゃない! 何なのこの配置!」
納得したケイトに、僕は反論した。
まるで、裁判所を連想せるような配置で、並べられているのだ。
「これじゃ、裁判や審問を受けるみたいじゃないか!?」
「えっ? その通りですけど」
「……」
あっけらかんと答えるケイトに、僕は言葉を失い、呆然と立ちつくす。
質問攻めにされるとは思っていたが、こんな大げさにされるとは……。
「フーカ様は、その中心にある椅子に座って下さい。それと、えーと……」
「金ちゃんと銀ちゃんです! ケイト、失礼ですよ!」
「ご、ごめんなさい……」
ケイトは金ちゃんと銀ちゃんを見て言葉を詰まらせると、アンさんに注意を受け、謝ってしまう。
「コホン。えーと、金ちゃんと銀ちゃんもフーカ様の隣に座って下さい」
ポニュ、ポニュ、ポニュ――。
僕の隣に二人は来るが、椅子が小さくて座れなかったので、オロオロとする。
「「「「「……」」」」」
二人を知らないケイトたちは、音を立てて歩く二人を見て、唖然としていた。
「ケイト、金ちゃんと銀ちゃんには、この椅子ではダメなんです。二人には専用の椅子を用意してあげないと可哀想ですよ!」
レイリアはそう言うと、アンさんやイーリスさんたちと一緒に木箱を運んでくる。
そして、そこへシーツを掛けてから、いくつかのクッションを置いた。
お金はかかっていないが、贅沢な椅子の出来上がりだ。
「……ちょっと、待って下さい。その椅子だと、そこの二人が、とっても偉そうなんですけど……」
「何か問題でも?」
アンさんがケイトを睨みつける。
「いえ、その椅子で、けっこうです」
あっ、ヒヨった。
ケイト、ヒーちゃん、ルビーさんが僕の正面に座り、左の席にはアスールさん、オルガさん、ネーヴェさん、フリーダさん、ジーナさん、リンさんが座った。
そして、アルタさんたちも、空いている席に座る。
その時、フリーダさんも来ていたことに、初めて気が付いた。
領地を空けて、大丈夫なのだろうか?
右側の席にはシャル、イーリスさん、アンさん、レイリア、マイさん、イツキさん、イライザさんが座る。
ミリヤさんとイーロさんたちは、まだ、仕事中のため、合流していなかった。
この状況を見るに、アスールさんたちが検察側で、イーリスさんたちが弁護側のようだ。
金ちゃんと銀ちゃんのことを聞かれるのに、ミリヤさんとイーロさんがいないのは、きつい気がする。
「えー、これより第三五回査問会を始めます」
ケイトが仕切りだした。
「ん? 第三五回?」
「コホン。それは、なんとなく言ってみたかっただけなので、気にしないで下さい」
「「「「「……」」」」」
その場にいた者が、呆れた視線を彼女へ向ける。
「コホン、コホン。えー、フーカ様、隣にいる得体の知れない者たちは何ですか?」
ガーン!
金ちゃんと銀ちゃんが両手を挙げて天井を見上げる。
バン。
「ケイト! 金ちゃんと銀ちゃんがショックを受けたじゃないですか! 言葉を選びなさい!」
シャルがテーブルを叩いて立ち上がる。
「え、えーと、ご、ごめんなさい」
ケイトはたじろいで謝ってしまう。
「コホン。えー、なんだか、とてもやりづらいですが、まあ、いいでしょう。それで、フーカ様、その……金ちゃんと銀ちゃんは何ですか?」
やっと、本題に入れたようだ。
「えーと、なんていえばいいのかな? 金ちゃんと銀ちゃんは、金ちゃんと銀ちゃんです」
僕の隣で二人がコクコクと頷く。
「ちがーう! その二人の素性を知りたいんです!」
いきなり叫ぶケイトに、僕、金ちゃん、銀ちゃんの三人は、ビクッとして、のけぞるように驚いた。
「なんだか、三兄弟みたいですね」
レイリアがポツリと口に出すと、皆がクスクスと笑いだす。
恥ずかしい。
なのに、金ちゃんと銀ちゃんは、パァーっと明るい表情を浮かべてから、両手を頬にあてる。
そして、フルフルと頭を動かして照れ始めた。
二人は嬉しいようだ。しかし、僕としては複雑だ……。
「コホン。フーカ様、説明して下さい」
ケイトは、真剣な表情で僕を見つめてくる。
「説明したくても、ややこしいからヤダ!」
「ヤダって……。フーカ様? 分かってますか? これから先、二人と行動を共にするなら、ここにいるメンバーが説明できないと、他国の方々と顔を合わせる時にどうするんですか?」
ケイトの言っていることは正論だった。
隣にいる金ちゃんと銀ちゃんまでもが、僕を見てコクコクと頷いている。
こ、こいつらは、他人事のように……。
「えーと、僕の魔力が暴走して、『幻獣創成魔法』が勝手に発動したら、現れた。それで、ミリヤさんからは、この二人は想定外で良く分からないから、ケイトに聞くように言われたんだけど、ケイト、説明して?」
「そんな大雑把な情報で、説明が出来るかー!」
彼女は顔を真っ赤にして、怒りだした。
「仕方ないわね。私が説明するわ!」
マイさんが立ちあがる。
とても嫌な予感しかしない……。
「そう、あれはさかのぼること、二年前……」
「二年前には、フーカ様もいないんですけど」
すぐに、ケイトがマイさんへツッコみを入れる。
「冗談よ。言ってみたかっただけよ! えーと、何処まで話したっけ?」
「まだ、何も話してません」
ケイトはテーブルを指でコツコツと叩き、苛立ちをみせる。
「えーと、レイリアがケイトの不良品のベストを着たら死んじゃって、それで、フーカ君がレイリアのために、エトムントへ八つ当たりをしに向かって行ったのだけど、その途中でフーカ君がおならをしたら、そのおならが具現化して、その子たちが生まれたのよ」
「「「「「……」」」」」
マイさんが満足そうに席へ座ると、ケイトたちは呆然とした表情を見せてから、頭を抱えてうなだれた。
話しの流れは合っているけど、内容は滅茶苦茶なのだから、当たり前だ。
「分かっていると思うけど、内容はマイさんが脚色してるかね」
僕の言葉にケイトたちは、苦笑しながら黙って頷く。
「ハァー。マイ様に発言させたばかりに、かえって話しがおかしくなってしまったので、私が説明しましょう」
イーリスさんが自ら買って出てくれたことで、皆は、ホッとした表情を見せる。
ケイトたちは、イーリスさんの話しを聞きながら、驚いては金ちゃんと銀ちゃんを見つめ、再び話しに耳を傾けることを繰り返す。
その都度、金ちゃんと銀ちゃんは、モジモジと照れてみせるので、途中からケイトだけが少し苛立っているようだった。
イーリスさんがおおまかな説明を終えると、ケイトはテーブルに肘をついてから、口元に組んだ手を当てると、僕たちをジッと見つめる。
「事情はわかりました。私の推測も混じりますが、金ちゃんと銀ちゃんは『幻獣創成魔法』で生まれたことは確かなようです。ただ、フーカ様には女神の方々の加護も宿っているので、その力と反応して、幻獣ではなく、金ちゃんと銀ちゃんという特殊な存在が現れたのでしょう。なので、二人は幻獣よりも神獣に近いのだと思います」
「「「「「おー」」」」」
彼女に二人が神獣と判断されると、歓声が上がった。
そして、二匹がモジモジと恥ずかしがる。
「よって、金ちゃんと銀ちゃんの素性の件に関しては、これ以上つきとめることは無理だと判断します。えー、本来ならば、ここで終わりなのですが、今回はもう一つ案件があります」
皆は、唾を飲み込み、ケイトへ視線を向ける。
「レイリア! あなたも前へ出て来て下さい」
彼女は、ケイトのそばへ行く。
「こ、こっちじゃない! フーカ様のところへ行け!」
僕たちは、レイリアの天然ボケで、必死に笑いを堪えるはめとなった。
レイリアがこちらへ来ると、金ちゃんが少しずれてあげる。すると、彼女は金ちゃんの頭をなでてから、その隙間へちょこんと座った。
「コホン。レイリア、あなたが持っていったベストの件で、私に何か言うことはないですか?」
「えーと……。あっ! ケイトのくれたベストは不良品でした!」
「ちがーう! アレは試作段階で、まだ、調整が必要だったんです! それを、レイリアが勝手に持って行ったんでしょう!?」
フルフルと身体を震わせたケイトの顔が、真っ赤になっていく。
試作品を持ち出されて、不良品と言われれば、そりゃあ、怒るよね。
「でも、置手紙はしましたよ」
レイリアは油に火を注いでしまった。
「手紙を残したからって、持っていっていいわけがないでしょう! 職員が手紙に気付いて報せに来た時は、すでに飛び立っているし、皆で引き留めていたのに、フーカ様は手を振り返すし、さらに、『レイリア、戦死』の報が入った時は、試作のベストが原因だったらどうしようと、血の気が引いたんですよ!」
ケイトは怒りながらも、少し涙目になっている気がする。
「ご、ごめんなさい……」
レイリアは、ケイトが自分のことを心配していたからこそ、怒っているのだと気付いたらしく、謝ると、シュンとしてしまう。
レイリアも反省をしていることだし、これで終わりだな。
今度は、僕が気になっていたことを聞くことにした。
「ところで、あのベストって、なんで仮死状態なんて機能がついてたの?」
ケイトは、嬉しそうにドヤ顔を見せる。
「よくぞ聞いてくれました! あのベストは一定以上の攻撃を受けて装着者が重傷と判断された場合に、仮死状態とすることで、生命の維持をするのですが、まだ、開発中なので、装着者を仮死状態にするタイミングがはかれていなかったんです。さらに、敵から死亡していると見せかけるため、血糊の出方なども考えられた、かなり手のこんだベストになっています。とはいっても、開発中なんですけどね……」
僕たちにとっては、はた迷惑なベストだったが、理由を聞くと重傷者を助ける目的だし、こっちの世界って、重傷者にとどめを刺していく傾向があるから、文句を言えない……。
クイクイ。
僕の服が引っ張られる。
振り向くと、金ちゃんが自分の身体をさすった後に、僕のベストを指差してから引っ張る。
「あっ、アスールさんが着ていたようなベストを欲しいんだっけ?」
彼はコクコクと頷く。
クイクイ。
今度は反対側から服を引っ張られる。
振り向くと、銀ちゃんが僕の顔を覗き込んできた。
「分かってるって、銀ちゃんも欲しいんでしょ」
彼の顔がパァーっと明るくなって、コクコクと頷く。
うっ、この可愛さは反則だ。
「ケイト、お願いがあるんだけど」
「お願い? それは何ですか?」
彼女はワクワクした表情で僕を見つめる。
「えーと、金ちゃんと銀ちゃんに専用の何かカッコいい服を用意してあげて。アスールさんがドラゴンの時に着ていたベストを気に入っちゃったみたいで、二人から欲しいってせがまれてたんだよ」
ケイトは拝むように上を向き、何かに浸りだしてから、金ちゃんと銀ちゃんを嬉しそうな表情で見つめる。
「私の作品を気に入ってくれたお二人の頼みですから、喜んでお引き受けします。期待していて下さい。お二人の満足するものを作ってみせます! ヒサメ様も手伝って下さい。私たちで頑張りましょう!」
「はい、何だかワクワクします」
二人は、ガシッと手を握り合った。
なんか、不安だ……。
ポニュ、ポニュ、ポニュ、ブンブンブン。
金ちゃんと銀ちゃんが椅子から立ち上がり、飛び跳ねながら腕を振りまくって嬉しさを表現するかのようにはしゃぎまくる。
「「「「「きゃー! 可愛いー!!!」」」」」
女性陣から歓声があがると、二人は、はしゃいでいた動きを止めて、モジモジと恥ずかしそうな動きに切り替えた。
女性陣は、再び歓声を上げて、その可愛さに悶え始める。
二匹が、あざとすぎる……。
僕への査問会? は、いい加減な感じで終わってしまった。
わざわざテーブルや椅子の配置を変えてまでして、大げさにした意味が分からん……。
ちょうどその時、ヘルゲさんがテンとに入ってくる。
そして、後から続くように、シリウス、ミリヤさん、イーロさんの三人も入ってきた。
彼らは、僕たちの雰囲気を見てギョッとする。
「な、何かお取込み中でしたか?」
ミリヤさんが気まずそうに聞いてくる。
「もう、終わったから大丈夫だよ」
「そ、そうですか……。では、失礼します」
彼女は少しキョロキョロとしてから、ケイトを見つけると、そこへ向かって行く。
そして、金ちゃんと銀ちゃんのことについて、話し掛けた。
一方で、イーロさんは、ルビーさんのもとへ行き、今までの報告を始める。
グーギュルルル。グーギュルルル。
僕の隣でお腹が鳴る。
今回はレイリアのお腹は鳴らなかったようだ。
「フーカ様、そろそろ夕食にしましょうか?」
アンさんが僕に近付き、同意を求めてきた。
テントの入り口が夕日で赤く染まっているのを見て、僕も彼女の意見に賛成して頷く。
「では、食事の準備をしてきます」
彼女はそう言うと、テントを出て行く。
しばらくして、アンさんがメイドさんたちと、料理を運んで来てくれたので、僕たちはテーブルの配置を直して、その上に料理を並べてもらった。
ケイトやヒーちゃんたちからルビーさんたちまでといった面々と、食事を共にするのは久しぶりに感じる。
それに、今回はフリーダさんたちも加わって、にぎやかな食事となっている。
ガツガツ、ガツガツ――。
僕がにぎやかな食事に幸せを感じていたのに、料理にがっついて、だいなしにする連中がいた。
金ちゃん、銀ちゃん、レイリア、アスールさんの四人だった。
アスールさんが加わったことで、何だか三人のがっつき具合が、パワーアップしている気がする。
ケイトたち合流組が、料理にがっつく金ちゃんと銀ちゃんを見て、キョトンとしている。
「どうしたの?」
「フー君、ほ、本当にご飯を食べるんですね……」
「それも、あんなに、ガッツリと食べるとは……」
ヒーちゃんとケイトは一言を述べた後、金ちゃんと銀ちゃんの食べっぷりに目が釘付けとなっていた。
二人の様子を見つめていたケイトが、僕へと視線を向ける。
「フーカ様、ミリヤ様とも話していたんですが、フーカ様の魔法って、治癒魔法が美容魔法だったりと、ちょっとズレているじゃないですか!?」
「う、うん……」
ズレていると言われると、何だか、素直に認めたくない。
「だから、幻獣創成魔法もズレて、違う魔法に変化した結果が、あの二人を生み出したんだと思うんです」
ケイトが推測した考えを述べると、ヒーちゃんも彼女に相槌を打った。
「きっと、基本の幻獣創成魔法から派生した新しい魔法です。あえて名付けるなら……うーん……」
「珍獣創成魔法だわ!」
「「ブハッ!」」
マイさんが横から口を出すと、二人は吹き出してから口を押えて笑いだしてしまう。
珍獣って……。この人は、いきなり現れて何を言い出すんだ!
「僕の魔法に、そんな恥ずかしい名前を付けるな!」
「でも、あの食べっぷりを見てみなさいよ。神獣というよりも珍獣だわ」
くー、ムカつくけど言い返せない。悔しい。
「なら、銀ちゃんが母親のように懐いているマイは、珍獣の母になりますね。『珍獣の母』、マイにふさわしい二つ名が付きましたね」
「へっ!? ……そ、そんな恥ずかしい二つ名は嫌よ!」
イツキさんが助け船を出してくれたおかげで、マイさんが自滅した。
「フーカ君、『神獣創成魔法』にしましょう。決定よ!」
マイさんが勝手に押し切り、僕の幻獣創成魔法は、珍獣創成魔法を経て神獣創成魔法と命名された。
「「ゲプッ」」
僕たちの騒ぎをよそに、金ちゃんと銀ちゃんがお腹をいっぱいにして、グテーとしていた。
この二人は、子どものように行儀が悪い……。
生まれてから数日だから子供だと思うけど、知性と戦闘力を備えているせいで、何歳なのかがさっぱり分からん。
二人のもとへ、ケイトとヒーちゃんが近寄っていく。
「金ちゃん、銀ちゃん、ちょっと、サイズを測らせて下さいね」
「「ゲプッ!」」
二人はコクコクと頷く。
「ゲップで返事をするな!」
「二人とも、お行儀が悪いですよ。ケイトさんに謝りなさい」
二人はケイトに怒られ、ヒーちゃんからも注意を受けると、しょぼんとしながらペコペコとケイトに向かって謝る。
あんな態度をとれば、当たり前だ。
「ヒサメ様、金ちゃんと銀ちゃんは、まだ生まれたばかりの子供です。頭ごなしに怒らず、一つずつ教えてあげて下さい。ケイトも頼みますよ」
アンさんが二人のフォローに入ると、マイさんも二人のそばに来た。
「金ちゃんも銀ちゃんも、中途半端はダメよ。ゲップで返事をしたなら、その後は足を組んで偉そうにしないといけないのよ。分かったわね!」
「「「何を教え込もうとしているんですか!?」」」
アンさん、ケイト、ヒーちゃんの三人が、マイさんを睨みつけて怒鳴ると、彼女は脱兎のごとく逃げて行ってしまった。
金ちゃんと銀ちゃんに、マイさんを近付けてはいけない気がしてきた……。
「フーカ様? アン様は、金ちゃんと銀ちゃんに過保護な気がするのですが、いいのですか?」
オルガさんは、僕にお茶を渡しながら尋ねてくる。
「うーん。アンさんが甘やかしているのは分かっているんだけど、アンさんって、可愛いが正義みたいなところがあるから言いづらくて……。代わりに注意してくれる?」
「嫌です!」
彼女に即断即決で断られた。
そして、ルビーさんたちが苦笑しながら、僕を見つめている。
そんな目で見られても……。
◇◇◇◇◇
僕たちは、翌日からオニック市に向けて進軍を始め、数日が過ぎた。
「長かった。やっと、オニック市が見えたね」
「地上を進んでいるから、仕方がないです。フー君、ゲームとは違うんですよ。あまり急がせると、兵士の皆さんが戦う前にバテてしまいます。それに、私たちは馬車ですけど、歩いている人もいるんですから、そういうことを口に出すのは、良くないです」
「ごめんなさい」
馬車に乗りっぱなしで退屈をしていたせいか、無意識に出てしまった一言で、ヒーちゃんに叱られてしまった。
僕と同じ馬車に乗っていたシャル、イーリスさん、ミリヤさん、レイリア、ケイト、オルガさん、アスールさんが、叱られている僕を微笑みながら見つめている。
恥ずかしい。
幸いだったことは、ルビーさんたちが別の馬車に乗っていたことだ。
そして、この光景をみたら、何かしらのリアクションを取ってきそうな、金ちゃん、銀ちゃん、マイさんの三人が、アンさん、イツキさんと一緒に、幌馬車のほうに乗っていたことだった。
僕は恥ずかしさを誤魔化すために、車窓から空を眺めると、頭上をワイバーンたちが飛び回っていた。
グレイフォックス隊と飛竜部隊は、この数日間、前方を交代で偵察しながら、行軍の休憩ポイントと宿営ポイントを見つけ、さらに、その周辺や行軍の周囲も警戒してくれていた。
僕は、一生懸命に任務を果たしている頭上のワイバーンを見つめながら、自分が何気なく口に出した言葉を思い出して、安全に行軍出来るのは、彼らの働きもあったのだと反省するのだった。
しばらくして、目的地に着いた馬車が停まる。
僕たちは順々に降りると、先に到着していた兵士たちが陣地を造っている最中で、忙しく動き回っている光景を目にした。
そこへ火砲馬車も到着すると、彼らはさらに忙しく動き回り、火砲馬車を陣地の周辺に配置したり、アスールさんたちが持ってきてくれた補充の砲弾を、そのそばへと運んだりと仕事に励んでいる。
そんな中、役立たずの僕たち、特に僕と金ちゃんと銀ちゃん、シャル、アスールさん、レイリア、マイさん、イツキさん、ルビーさん、ネーヴェさん、フリーダさんは、指令所となるテントのそばに用意されたテーブル席に座って、大人しくしていた。
そして、オルガさんやアルタさんたちが用意してくれたお茶とお菓子を摘まみながら、皆の働く姿を眺めていた。
立場的に手伝えないのもあるが、皆が働いている中でのんびりしていると、気まずいというか居たたまれない気持ちになってくる。
さらに、シャルたち女性陣の一部が、金ちゃんと銀ちゃんのモフモフを堪能していることが、さらに、気まずさを強く感じさせていた。
ケイトとヒーちゃんが兵士に手伝ってもらいながら、大きな荷物を抱えて僕たちのほうへと歩いてくる。
レイリアとイツキさん、オルガさんとアルタさんたちが二手に別れて、二人の荷物を運ぶのを手伝いに行くと、驚いた表情で、こちらを、特に金ちゃんと銀ちゃんを見つめる。
その様子に僕も気になり、彼女たちのところへと行く。
大きな荷物は、金ちゃんと銀ちゃんの装備品だったのだが、二人がこれを着る姿を想像すると、皆が驚いていた理由も理解できた。
金ちゃんと銀ちゃんのそばへと行き、皆でケイトとヒーちゃんが用意したものを二人に着せていくと、似合ってはいると思うのだが、これはカッコいいと形容すべきか可愛いと形容すべきか分からなくなってくる。
シャルたちは座ったまま、着せられていく金ちゃんと銀ちゃんを眺めていたのだが、途中からポカーンと口をあけて固まってしまった。
二人のこの姿を見れば、彼女たちだけでなく、皆も同じようになってしまうことだろう。
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