101話 始まった戦闘
指令所のテントの中ではヘルゲさん、アルバン、アレックスさんの三人が難しそうな顔を突き合わせて、作戦会議を行っていた。
そこへ、僕たちからは、アンさん、シリウス、レイリア、イーロさんがその会議に加わる。
僕を含めた他の者たちは、彼らの会議に耳を傾けながら見ているだけだ。
しかし、僕たちには重要な使命がある。
それは、隙をみては会議に紛れ込もうとするマイさんを止めることだった。
軍事に素人の者たちが口をはさんでも混乱させるだけなので、決まった作戦に思ったことを述べるだけにしているというのに、マイさんは首を突っ込みたがる。
彼女が軍事面にも優れているであろうことは、何となく分かっているのだが、面白そうなことを優先にするから任せられない。
会議が終わった後に、作戦についての意見を聞いてあげるくらいが、ちょうどいいのだ。
作戦会議が終わると、ヘルゲさんが、僕たちを呼びに来る。
そして、マイさんとの攻防で、「ゼェー、ゼェー、ハー、ハー」と息を切らしている僕たちを見た彼は、苦笑した。
「お疲れ様です。作戦の説明を聞いて欲しいので、こちらへ」
返事も出来ず、彼に促されるまま、地図が広げられたテーブルへと行く。
地図の上には、複数の赤色と青色の二色の駒が置かれていた。この駒を使って敵軍の動きと自軍の動きをシミュレーションしていたようだ。
「何だか、寂しくなりましたな」
ヘルゲさんは、僕たちを見て率直な感想を述べる。
「なんか、ケイトとヒーちゃんが新兵器の開発でやることがあるらしくて来なかったけど、ほとんどの人が、その実験に付き合わされて、同行できなかったから……」
僕の返事に、彼は期待をする表情になったが、その後に続けられた言葉を聞くと、苦笑へと変わった。
僕は作戦のことを早く聞きたくて、質問をすることにした。
「それで、作戦はどうなったの?」
「私とアレックス殿で中央の敵を押し上げ、両側に広がった敵をシリウスとアン殿が担当し、両端の敵を削って、徐々に包囲していきます。そして、敵が中央にまとまった時を見計らって我々が後退し、イーロ殿たちによる敵へのブレス攻撃を開始します。その後、私とアレックス殿が、ブレスで錯乱した敵を叩きます」
ヘルゲさんは自信に満ちた顔で話す。僕も作戦に対しては、これと言って気になるところはなかったのだが、とても気になる発言が混じっていた気がする。
彼の言葉を思い返していく。
ん? んんん?
「ブ、ブレスで錯乱って? 何それ?」
「我々、ブラックドラゴンのブレスは、腐食、錯乱、毒でして、腐食と毒は味方にも害がありますし、この土地も数年は使えなくなるので、今回は、錯乱のブレスを使用して敵を混乱させます」
イーロさんが答えてくれる。
腐食と毒のブレスって……。
ブレスを吐かれた土地が数年は使えなくなると聞くと、化学兵器や放射能を連想してしまう。
「うん、分かった。だけど、腐食と毒のブレスは、今回だけじゃなくて、今後も使わないで欲しいかな……」
僕が苦笑して答えると、彼も苦笑しながら頷き返してくる。
あれ? 何か聞き忘れている気がする。
少し考えを巡らせると、それが何かを思い出した。
「レイリアはどうするの?」
「レイリアは、フーカ様の護衛です。戦場では何が起こるか分かりませんから、信頼のおける者をフーカ様につけるとなると、レイリアが一番ですからな」
ヘルゲさんが答えると、レイリアは嬉しそうに胸を張り、ドヤ顔をする。
彼女のその態度が、何かのフラグになっていなければいいんだけど……。
僕は、無意識に不穏なことを思ってしまった。
作戦に不満や思うところも無かったので、その作戦が実行されることとなった。
会議が終わり、指令所から出てきた僕を、護衛の兵士がテントまで、案内をしてくれる。
到着したテントは、僕が一人で使うにはデカすぎると思ったが、せっかく用意してくれたので、ありがたく使わせてもらうことにする。
中には、机や椅子、簡易ベッドなどが用意されていた。
僕はベッドへ横になると、テントの天井を眺めて思いにふける。
イーロさんたちもいるし、明日でここの戦闘の決着がつきそうだ。
あれ? 僕は何をするの? 何も言われなかった……。
そのことを悩んだまま、僕は眠りに落ちてしまった。
◇◇◇◇◇
身体を揺すられている感覚で、僕は目を覚ました。
視線だけを辺りに飛ばすと、イツキさんが僕の顔を覗き込んでいた。
「あれ? イツキさん?」
「はい。おはようございます。アンは戦いの準備がありますから、私が起こしに来ました。身支度を手伝いますから、ベッドから出て下さい」
イツキさんはニコッと微笑むが、彼女に身支度をしてもらうのは、さすがに抵抗がある。
「えーと、ここは戦場だし、自分でするから大丈夫です。それに、イツキさんは親戚のおばさんと同じ立場にあたるから、恥ずかしいんです」
「は、い? おばさん?」
何だか変なところに食いついてきた。
彼女は、微笑みを向けたまま、眼光だけが鋭く光っている。
僕は、禁句を言ってしまったようだ。
「いや、その、親戚のお姉さんに手伝ってもらうのは、恥ずかしいんです」
僕は冷や汗を流しながら、言い直す。
「あら、お姉さんですか? お姉さんだなんて恥ずかしいですわ。仕方ないですね。私は外で待っていますから、身支度が終わったら、出て来て下さいね」
「は、はい」
彼女は、ご機嫌なご様子で、テントから出て行く。
こ、怖かった……。
それにしても、ほぼ、脅迫とも思える態度で、無理に言わせたと思うんだけど、何であそこまで喜べるのだろうか……?
テントの外へと出ると、まだ日が昇ったばかりで少し肌寒さを感じる。
すでに秋も半ばを過ぎてしまったのだから仕方がないと思いつつも、身体は自然と縮みこんでしまう。
「イツキさん、お待たせ」
僕は、外で待っていてくれたイツキさんに声を掛け、そのまま、彼女とシャルたちが集まっている場所へと向かう。
歩きながら、外が肌寒かったとは知らずに、彼女を外で待たせていたことを、僕は反省した。
シャルが見えると、僕は、彼女に向かって足早になる。
そして、彼女の隣に立つと、肌寒さを和らげるために、彼女の腕にしがみつく。
すると、彼女はこちらを見て驚き、その顔を赤くしていく。
「フ、フーカさん? いきなりどうしたんですか?」
「ちょっと、寒い」
「……」
彼女の顔からは赤らみが消え去り、呆れた表情へと変わった。
そんな顔をされても、寒いものは寒い。
「それで、私たちは何をするんですか?」
レイリアが切り込んだ質問を、唐突にしてきた。
「「「「「……」」」」」
僕たちは誰も答えられなかった。
彼女は首を傾げてから、閃いた表情を見せる。
「えーと、私たちは、ここへ、何をしに来たんですか?」
「「「「「……」」」」」
彼女は質問が通じなかったと思って言い換えたんだろうけど、その質問に答えられる者は誰もいない。
彼女は僕たちの顔をキョロキョロと見て、切なそうな顔をする。
うっ、もう耐えられない。
「えーと、レイリア? そのー、僕も皆も分からないんだよ」
正直に言ってみたら、彼女はガックシと肩を落とす。
「あっ、でも、レイリアには僕の護衛っていう仕事があるから、僕を守ってね」
自分で言っていて恥ずかしくなった。
顔に熱がおび、さっきまでの寒さが嘘のように全身が火照ってくる。
「えっ、それだけですか? つまんないです」
「「「「「ブフッ。クフフフ」」」」」
彼女が残念そうな表情を浮かべると、皆が吹き出し、笑いだす。
僕が恥ずかしさに耐えながらも、気を遣ったというのに、その仕打ちは無いと思う……。
しかし、レイリアが疑問を抱くのも分からなくはない。
せっかく合流したのに、ここで集まっているメンバーには何もすることがないのだ。
僕だって、昨夜は同じ疑問を抱いていた。
ここで、ジッとしているのも納得がいかない。何かいい案はないだろうか?
そんなことを思っていると、出陣の準備で、僕たちの前を通り過ぎるメイドさんを見つけた。
「そうだ。アンさんの部隊について行こう! こっそりと」
僕は最後だけを小声にして、皆へ提案した。
すると、レイリアとマイさんが目をキラキラさせる。
そして、背後からも何やら視線を感じる。
恐る恐る後ろを振り返ると、特戦群の皆さんも目をキラキラさせていた。
そういえば、彼らも、することを与えられていなかった。
しかし、気配を消して、僕の背後に集合するのは、心臓に悪いのでやめて欲しい。
特戦群から、女性っぽい容姿の人が出てくる。
「是非とも、我々にもお供をさせて下さい」
声から、女性だと断定できた。
「えーと、誰?」
「あっ、失礼しました」
彼女は覆面をとる。
その下からは、洋画に出てきそうなカッコいい感じの美人が現れた。
「リン中尉の代わりに部隊を指揮しているイライザ・アスカム中尉です。いつもは分隊長をしています」
なんか、名前もカッコいい。だが、僕が一番興味を引いたのは、イライザさんの頭には獣耳、お尻からは太めの尾が生えていて、モフモフとした立派な毛並みをしていることだった。
初めて、獣人の友達ができるかもしれないと、ドキドキしてしまう
そして、あわよくば、じゃなくて、仲良くなったあかつきには、その耳と尾をモフモフさせてもらえるかもしれない。
いや、ちょっと待て、相手は女性だ。
モフモフさせて欲しいけど、セクハラになるような気が……。
何かを話そうにも、彼女を前にすると、そのモフモフにドキドキして、言葉が出てこない。
しかし、今は、親交を深めるためにも会話をして、好印象を与えなければ。
「えーと、イライザさんは、見た感じ、犬の獣人でいいのかな?」
「オオカミです!」
彼女は大きな声で訂正してくる。
初っ端から失敗した……。
ここは謝って、挽回を。
「ごめん。獣人は、ほとんど見たことがなかったから、区別がよく分からなくて……。気を悪くしたならごめんなさい」
「あっ、こっちの大陸では、獣人が珍しいことを忘れていました。私こそすみません」
彼女は、僕を許してくれた。良かった。
「そんなことにこだわったって、犬も狼も、見かけは一緒じゃない」
マイさんが小声でボソッと愚痴る。
「マイ様、聞こえてますよ」
イライザさんは笑顔のままマイさんを睨むと、耳をピクピクとさせていた。
僕は彼女の獣耳を見て、こんな距離で余計なことを言えば、聞かれるに決まっているじゃないかと、ミリヤさんの後ろに隠れるマイさんを呆れるように眺める。
マイさんを見ていると、ケイトのことが脳裏に浮かんだ。
あれ? 僕は寂しがってるの?
僕は、良く分からない感情に困惑する。
今はモフモフ……じゃなかった、イライザさんと話しを進めないと。
僕は頭を振って、脳裏のケイトを追いだした。
「じゃあ、皆でアンさんについて行くとして、えーと、イライザさんたちは、僕たちの護衛と、アンさんたちの加勢を頼むね」
「はっ!」
彼女はビシッと日本式の敬礼をする。
勝手に決めたしまったが、一応、シャルたちへ順に視線を送る。
少し不服そうな表情は浮かんでいるが、皆も頷いてはいるので、決定!
アンさんが出陣するタイミングに合わせて、僕たちも馬車へと乗り込む。
そして、イライザさんたち特戦群は、何処からか馬を調達して、馬車の周りを警護する。
アンさんの率いる部隊とメイド隊の後方をバレないように、僕たちは、ある程度の距離を保ちつつ、こっそりとついて行く。
アンさんもメイド隊もスカートではなく、スキニーパンツのメイド服だけど、きっと、あの恰好のまま戦うんだろうな……。
僕は車窓から少し顔を出して、彼女たちの後姿を見ながら、そんなことを思っていると、アンさんたちの行軍が止まった。
僕は車内に首を引っ込め、御者さんに、小声で「止まって」と伝える。
馬車は、車内を揺らさないように、ゆっくりと停車した。
停まりかたが、プロっぽい。
アンさんたちが馬から降りたので、僕たちも馬車から降りて、離れた位置から彼女たちを観察……見守る。
すると、アンさんが先頭に立ち、これから戦場になるであろう場所を、高台から見つめていた。
風になびく長い黒髪に朝日を浴びる彼女の姿は、映画のワンシーンみたいでカッコよかった。
アンさんのカッコよさに見惚れていると、彼女がこちらを振り向いた。
僕たちは、とっさに身をかがめるが、こちらを向いている彼女の顔は、驚いた表情へと変わっていく。
そして、こちらへ向かって走ってきた。
「あっ、バレた!」
「こんなに堂々としていれば、バレるに決まっています! 今までバレなかったことが不思議です」
イーリスさんに呆れられた。
僕たちのところへ来たアンさんは、少しイラっとした表情をしている。
「何で、ここにいるんですか!?」
返事に困り、皆の方へ振り向くと、僕の後ろには誰もいなかった。
皆は、馬車の影に隠れて、こちらの様子をうかがっている。
それは、ズルい……。
そして、護衛のレイリアとイライザさんたち特戦群までもが、シャルたちと一緒に隠れている。
護衛の意味がないじゃないか……。
「フーカ様? 何で、ここにいるんですか?」
再び質問をされる。
「することがなくて、暇を持て余してたから?」
「何で、疑問形なんですか?」
「えーと、何ででしょう?」
スパーン。
彼女は、素早い動きで、僕のホルスターからハリセンを抜くと、僕の頭を叩きつけた。
頭部に、微妙な痛みが広がって行く。
「そこ! 隠れていないで、ここに来て、並びなさい! それとも、私がそちらへ行きましょうか?」
彼女が叫ぶと、皆がドタバタと走ってきて、僕の背後に並ぶ。
誰一人として、僕の隣に並ぶ者はいなかった……。
「ここは前線ですよ! イーリスとミリヤがついていながら、何でこんなことを許したんですか!?」
彼女は呆れたように、イーリスさんとミリヤさんを見つめる。
「フーカ様のたっての希望でしたので、断れませんでした」
イーリスさんの言葉に、皆が、それもイライザさんたちまでもが揃って頷く。
それって、僕のせいにしてるよね。
ちょっと、それは酷すぎるのでは……。
「皆だって、目をキラキラさせて、賛成してたじゃないか!」
僕の言葉に、シャル、レイリア、マイさんの三人がフルフルと首を横に振る。
「何も指示を与えられなかった私たちに、フーカ様が道をお示しになられたのです」
ミリヤさんが巫女っぽく話すと、シャル、レイリア、マイさんの三人は、今度はコクコクと頷く。
聖職者の言い方で、それっぽく言ってるけど、それって、僕のせいにしているだけだよね……。
アンさんは、僕の両肩へ手を伸ばす。
そして、逃げられない状態にしてから、僕の顔を覗き込んできた。
ヒェー。怖い、この状況は怖すぎるよ。
「フーカ様! 今すぐに、皆を連れて引き返して下さい! いいですね!」
「ひゃ、ひゃい!」
いつもとは違う、怖い表情のアンさんには、逆らえませんでした。
彼女から解放された僕が振り返ると、誰も僕と目を合わそうとはしない。
それどころか、テキパキと引き返す準備に取りかかっていた。
この裏切り者たちめ!
突然、アンさんの部隊がざわつき始めると、メイドの一人がこちらへと駆けてきた。
「アン様! 敵軍です! お急ぎ下さい!」
「バカな!」
メイドさんの言葉に、アンさんが驚く。
そして、僕たちを見る。
「フーカ様、今、動くのは危険です。ここで身を潜めていて下さい。イーリス! 後は頼みます!」
イーリスさんが頷くのを確認すると、彼女は部隊を指揮するために戻って行った。
レイリアとミリヤさんが、何故か落ち込んで、ブツブツと何かをつぶやいている。
二人のそばに行き、耳を澄ませる。
「私がフーカ様の護衛なのに……」
「私だっているのに、呼ばれなかった……」
アンさんがイーリスさんに頼んだことで、二人のプライドを傷つけたようだ。
「アンちゃんったら酷いわ! ここは私に頼むところでしょ!」
「「「「「それは絶対にない!!!」」」」」
マイさんを全員が否定した。
彼女は片方の頬をヒクヒクさせてから、プクーと頬を膨らませる。
そして、プイと皆に背を向けると、拗ねてしまった。
面倒くさい……。
僕も戦場の状況を知りたい。
僕は辺りをキョロキョロと見回し、戦場を覗ける場所を探す。
草むらに隠れた広場を見つけた。
そこは木々に囲まれていて、戦場側には背丈の高い草も生い茂っている。
ここなら、戦場からこちらを見つけることは出来ないだろう。
念のため、イライザさんに事情を話し、立地的に問題はないかを確かめてもらう。
「フーカ様、ここなら大丈夫です」
彼女は親指を立てた。
皆にも声を掛け、その広場へと移動する。
ある程度の広さがあるので、ここに僕たちの陣を布き、潜んでいよう。
「そうだ。イーリスさん、ミリヤさん、ここに簡易的な救護所を作っておこう」
僕は、ふと閃いたことを、イーリスさんとミリヤさんに頼んだ。
「「それは、名案です」」
二人は賛成してくれると、準備に取り掛かってくれる。
そういえば、この場を確認してもらった後、イライザさんの姿が見当たらない。
僕が辺りを探すと、彼女は馬車の後部に積んであった箱を開けて何かをしていた。
その様子を見ていると、特戦群の人たちが、彼女の前で、一列に並びだす。
彼女が箱の中からアサルトライフルやスナイパーライフルを取り出すと、特戦群の人たちは、その銃器を一人ずつ受け取って行く。
その列で、オロオロと戸惑っているところを見つけると、そこにはマイさんが平然とした表情で並んでいた。
そして、マイさんの前後に並んでいる人は、彼女が並んでいることで、困惑していた。
マイさんの順番が回ってきた。
彼女は銃器を受け取ろうと手を伸ばすが、イライザさんは、彼女を見てギョッとすると、銃器を渡さずにオロオロと困りだす。
すると、マイさんの背後に、イツキさんが現れた。
ゴツン。
こちらまで鈍い音が届いてくる。
これは痛そうだ。
イツキさんは、イライザさんに謝ると、頭を押さえてしゃがみ込んでいるマイさんの襟首をつかみ、引きずって行く。
マイさんは、何をやっているんだ……。
ガシッ。
ビクッ。
引きずられていくマイさんを見ていたら、背後から両腕を掴まれ、僕は飛び跳ねるように驚いた。
何? 心臓に悪すぎる。
何事かと自分の両腕を交互に見ると、レイリアとシャルが驚いた表情で僕の左右の腕に、一人ずつしがみついていた。
「血相を変えて、どうしたの?」
「「エトムントです。エトムントがいます!」」
二人は声を揃える。
さすがに僕も驚き、二人と一緒に戦場を覗ける位置まで向かった。
草むらで身をかがめて戦場を見ると、赤い旗を掲げた敵軍とアンさんたちの部隊が睨み合っていた。
目を凝らして見ていると、シャルが首から下げた双眼鏡を貸してくれる。
渡された双眼鏡を見て、僕とヒーちゃんの持ち物が自由に使われているなと思ってしまう。
今はそんなことを思っている場合じゃない。
双眼鏡を使って戦場を覗くと、敵軍の先頭には、確かにエトムントがいた。
お互いに睨み合っていたアンさんとエトムントは、騎乗したまま一歩前に出る。
そして、何か会話を始めた。
しかし、遠すぎて会話が聞こえない。
何を話しているのかが、とても気になる。
僕たち三人が、その様子を見ていると、イーリスさんたちも来て、皆で、その様子を見守る。
しばらく見ていると、会話を終えたアンさんとエトムントが、お互いに背を向けて戻って行く。
何を話していたかは分からないが、話しは決裂したようだ。
その時、エトムントが、自分の兵士たちに向かって、勢いよく、手を振り上げた。
「「「「「おおぉぉぉー!!!」」」」」
敵軍が大きな声を上げて、エトムントとすれ違うように彼の脇を通ると、まだ背を向けているアンさんに、剣や槍を構えて向かって行く。
「「「「「汚い!!!」」」」」
その行為に、僕たちは思わず叫んだ。
しかし、アンさんは、振り返りもせずにデスサイズを取り出すと、大きく円を描くように振り回してから、悠然と自軍のもとへ戻って行く。
すると、彼女を狙った敵兵の首が転がり、血しぶきが吹きあがった。
それが合図だったかのように、メイド隊と彼女の部隊が、敵軍に向かって襲い掛かる。
アンさん、凄い! カッコいい!
「さすがアン様です。撃つ必要はありませんでした」
イライザさんの言葉に疑問を感じた僕は、振り返る。
すると、彼女と数人が、スナイパーライフルで敵兵を狙っていた。
「「「「「……」」」」」
い、いつの間に……。
気配を消して敵を狙っていた彼女たちを見て、僕たちは驚愕するしかなかった。
こっちはカッコいいというよりも、怖い……。
戦場ではアンさんの軍勢とエトムントの軍勢が戦闘を始め、剣がぶつかり合う金属音や悲鳴が聞こえてくる。
素人の僕でも、かなり激しい戦いになりそうな感じがする。
僕たちは、イーリスさんとミリヤさんの指示に従って、急いで救護所の設営に取りかかるのだった。
お読みいただきありがとうございます。
ブックマークと評価をしていただき、ありがとうございます。
これを励みに頑張れます。
この作品が、面白かった、続きが読みたいと思った方は
ブックマークをしていただけると嬉しいです。
また、下にある☆☆☆☆☆を押して、
評価をしていただけると嬉しいです。
よろしくお願いします。
誤字脱字、おかしな文面がありましたらよろしくお願いいたします。




