01話 誕生日
初めての投稿になります。よろしくお願いいたします。
「ただいまー」
「おかえり」
僕が学校から帰宅すると、母さんが出迎えてくれた。
「風和、今日、風音が返ってくるから」
「……えっ! 姉ちゃんが返ってくるの?」
「今日は、あんたの誕生日なんだから、あのブラコン……弟思いの娘が、こんなにおいしいイベント……大切な行事を見逃すわけがないでしょ!」
「母さん、言い直しても、心の声が駄々洩れだよ」
「……とにかく、風音が帰ってきたら、相手を頼むわよ!」
「そんなー」
半ば強制的な言葉に僕は肩を落とすと、二階にある自室へと向かった。
部屋に入ると、姿見鏡の前で制服から、灰色のスエットへと着替える。
鏡には僕が映っている。
僕は、守 風和。
本日、一六歳の誕生日を迎えた高校一年生だ。
鏡に映る僕の姿は、一六〇センチの身長に細身でバランスの取れた身体、肌は白くも健康的な色、少し茶色のかかったショートヘアーに幼さの残る顔。
それは、ボーイッシュな少女にしか見えなかった。
もちろん、僕は男だ。少女として扱われるのは嫌だ。
そこで、男らしい容姿と強さを求め、爺ちゃんが経営する総合武術道場に入門したのだが、武術は逃げることしか上達せず、男性的な立派な体格を望んでいたのに、女性も羨む無駄のない引き締まったスタイルを獲得してしまった。
しかし、僕のおかげで、道場には変化がもたらされた。
僕の体型の変化に気付いた学校の女子たちが、怖いほどの形相で僕を問い詰めてきたので、道場のことをゲロったとたん、道場には入門者が殺到し、大繁盛!
その中には女性教諭までもが紛れていた。
結果としては、大喜びの爺ちゃんから、臨時の小遣いが定期的に入ってくることとなったのだが、素直には喜べなかった。
そんな容姿のことは、「まだ高校生、大人になれば変わるさ」と、半分……三分の一くらいは気長に待つからいいのだと自分に言い聞かせている。
決して、道場の稽古がきついからではない。今は、男らしさよりも熱中できるものを見つけてしまったから仕方がないのだ。
僕は椅子に腰を掛けると、机にあるパソコンの電源を入れ、画面が立ち上がるのを待つ。
画面に並ぶ複数のアイコンから、『ファルマティスの騎士』を選び、ログインする。
このゲームは、中世ヨーロッパ頃をモチーフにした架空の世界の領主となり、領地の拡大と統治をしつつ、ガチャを引いて当てたキャラたちを家臣として育成していく、シミュレーション・オンラインゲームだ。
マップや世界観の設定が良く、僕が好きなタイプの女性キャラが多いこともあってハマっている。
僕は、『カゼカズ』と表示されたアカウントのステータスに目を通し終えると、三件の未読メールに気付き、開いてみた。
運営、僕が所属する同盟『風のともしび』盟主のキハルさん、フレンドのコオリアメさんから、誕生日のお祝いメールが届いていた。
運営からは、誕生日プレゼントとして、ガチャ券が添付されていた。
さっそく、ガチャを引こうとすると、キハルさんからの個人チャットが入ってきた。
キハル:
こんにちは! ログインしてるの見つけちゃいました
誕生日おめでとう!
カゼカズ:
こんにちは! 見つかっちゃいました。ありがとうございます
お祝いメールもありがとうございました!
キハル:
プレゼントは、君のフレでもあり、私のリアルでも妹分の『コオリアメ』を紹介してあげよう!
カゼカズ:
マジで?
キハル:
マジで!
キハル:
身長一六〇センチ位。ショートの黒髪で、幼さが残る美少女
白く、きめ細やかな肌に、細身から標準くらいのスタイル
待望の胸は、少し前に揉んだときは、BからCあたりの程よい感じ!
「……って、揉んだのかい! うらやましい!」と返したいが、内容からして罠だ! ここは、無難な返事を打つ。
カゼカズ:
素敵な女性ということですね。是非、紹介をお願いします!
キハル:
つまらん返事だが、まぁ、いいか
明後日、午前一一時に潤守神社の入口でいいかな?
カゼカズ:
了解です。よろしくお願いします
キハル:
コオリアメに声をかけてくるので、一度、落ちます。お疲れ様!
カゼカズ:
お疲れ様です
キハルさんとコオリアメさんは、同盟内で僕の面倒をかって出てくれた、同じ町内に住む女性プレイヤー。
キハルさんが二六歳、コオリアメさんが一六歳だそうだ。
何故、リアル情報を知っているかというと、『風のともしび』が定期的にオフ会を行っていることもあり、居住地域・性別・年齢を同盟内で公表していたからだった。
この公表には、中学生以下の参加禁止と、会場が居酒屋などのときに未成年者の参加を防ぐという役割もある。
今年、晴れて高校生となった僕とコオリアメさんは参加を希望したが、会場として手配できたのが隣町の居酒屋だけだったため、惜しくも参加できなかった。
その当時は、美人と噂のキハルさんに会えるのを楽しみにしていただけに、ショックは大きかった。
その後、参加者にキハルさんのことを聞いてみると、一七〇センチ位の身長に、綺麗な白い肌、細身ながらも凹凸がはっきりとしたスタイル、ふわっとしたロングの赤髪が似合う都会系美人で、かもし出す雰囲気が「とにかく、エロい!」と教えられた。
僕は画面に映し出されたチャット文を読み返す。
明後日には、念願のキハルさんに会えるだけでなく、コオリアメさんにまで会える。
それどころか、彼女を紹介までしてもらえるという。
僕は嬉しい約束に、自然と顔がニヤケるのだった。
「ただいまー」
玄関から聞き覚えのある女性の声が聞こえ、現実に引き戻される。
トンッ、トンッ、トンッ……、パタン。
階段を軽やかに駆け上がる音が近づき、隣の部屋のドアが閉じる音がした。
どうやら、姉ちゃんが帰ってきたようだ。
コンッ、コンッ。
数分もたたずに、僕の部屋のドアがノックされると、返事も待たずにドアが勢いよく開かれ、艶やかなセミロングの黒髪を後ろで束ねたTシャツにショートパンツの姉ちゃんが飛び込んできた……? いや、突進してきた……!
ドンッ、ガシャーン!
おもわぬタックルに椅子ごとひっくり返り、僕は背中を強打した。
痛みに耐えながらも、顔を挟み込む柔らかな弾力の感触にはあらがえず、しばしの間、その温もりと石鹸のかすかな香りを満喫してしまった。
そして、彼女がノーブラなのも判ってしまった。
「……ね、姉ちゃん、く、くるしい……」
「そこは、ラッキースケベをありがとうでしょ?!」
「やかましいわ! そして、早くどいてくれるかな」
「あっ! ……硬くなってきた?」
「断じて違う!」
このどうしようもない人が、僕の姉、『風音』である。
身長一七〇センチ位に均整の取れたスタイル、ハッキリした顔立ちのお嬢様風美人。頭も良く、面倒見の良い性格から人付き合いも多い。まさに、才色兼備。
今は、実家から少し離れた大学に通っているため、一人暮らしをしている。
家では、家事をしたことなどなかったため、困っているかと思いきや、家事スキルまで持っていたとういう小憎らしい人だ。
ここまでは周りも羨むステキな姉だが、『降りかかる火の粉は払わず火元ごと消す!』といった怖い面を持つ。
そして、周囲も認めるブラコンである。
彼女に対しては、「喧嘩を売らない! 風和にちょっかいを出さない! これさえ守っていれば問題ない」という暗黙の鉄則もあった。
そんな彼女も、一人暮らしを始めてからは大人しくなった。
ただ、重度のブラコンへと進化を遂げていたことを除けばだが……。
これには、両親、祖父母、姉ちゃんと付き合いの深い友人たちも、かなり戸惑っていた。
そして、「風和が我慢すればすむこと」と暗黙のあきらめで意思統一をしたため、僕が姉ちゃんの相手? 生贄? として、捧げられることが増えた。
姉ちゃんのことは、どちらかと言えば好きだし、尊敬もしている。
ただ、過度なスキンシップを求めてきて、近親という名の壁を躊躇なく飛び越えようとしてくるのが問題なのだ!
そんな姉ちゃんは、僕の上から離れると、ベッドに腰をおろした。
「フーちゃん、一六歳のお誕生日おめでとう!」
「ありがとう」
「知ってると思うけど、うちの家って、神社を護ってきた武家のしきたりが相も変わらずに残ってるから、男子は一六歳で元服。つまり、今日から大人だね!」
「…………?」
「まさか、……聞かされてない?」
コク、コク。
「うちの家族は何をやってるのかしら……。まあ、明日、うちの神様に元服の報告に行くだけだから、気にしなくても大丈夫よ! それに、あの神様たちもフーちゃんのことが大好きだからね!」
「……あの人たち?」
「……宮司の颯一叔父さん、巫女で従姉の音羽ちゃんや椿ちゃんたちがいるでしょ!」
「そうだね。なんだか違う人がいるような言い方だったっから……」
叔父さんたちのことを忘れていたわけではないが、姉ちゃんの言葉には、何故か引っかかる感じがあり、僕は物思いにふけった。
「いつまで待たせるの? 早くおいでー!」
ブフォッ!
少し目を離している隙に、いつのまにか、半裸でベッドに横たわった姉ちゃんが、こちらに向かって両腕を伸ばしている。
……いつのまに脱いだ?
目をそらそうと努力はしているのだが、どうしても、白くて柔らかそうな膨らみを追ってしまう……。
「ほらー、早くー、好きにしていいんだよ!」
「……バカ言ってないで、早く服を着てよ!」
「えー、だってー、誕生日プレゼントは、ワ、タ、シ!」
「…………そんなプレゼントはいらない! 姉弟って自覚もってよ!」
足元に落ちていたTシャツを拾い、姉ちゃんへ渡そうと、顔を背けながら腕を伸ばしたが、これがいけなかった。
僕は腕を引っ張られ、彼女の膨らみに顔から飛び込んでしまった……。
石鹸の香りが鼻腔をくすぐり、頬からは柔らかく、しっとりとした感触が、温もりと一緒に伝わってくる。
「どーお? 気持ちいい?」
「別に……気持ちよくなんて……なくはないわけはない……?」
動揺と気恥ずかしさで、自分でも何を言ってるのかよくわからない。
「きゃー! フーちゃん、かわいい!」
ムガッ……。
姉ちゃんが僕の頭を抱きかかえてきた。だが、僕も何度も同じ間違いはしない。
頭をずらして、谷間へのダイブを回避した。……したのだが、姉ちゃんの左胸元に口づけをしてしまい、その際に少し舐めてしまった……。
舌に「ピシッ」とした静電気のような刺激が伝わり、思わず胸元を凝視する。
そこには、薄くぼやけた痣? 刺青? のようなあとがあった。
それは、寄せ三つ菱と、その中央のひし形を三つの山括弧が挟む、ファンタジーに出てくる魔術刻印のような形をしていた。
「姉ちゃん、これって刺青?」
「んっ? ……痣? みたいな、ものかな?」
何故、ぎこちない? そして、何故、疑問形で返す?
身体を起こし、姉ちゃんの上半身を注意深く観察する。
綺麗なピンク色をした形の良い輪郭と小さな突起物に幾度も目を奪われながらも、他にも痣があるのかとさがすと、右脇腹や左胸下、肩と二の腕にも刀傷のような痕が、よく見なければ気付かないほどだが、うっすらと見受けられる。
「身体のあちこちにも傷痕みたいなのがあるけど、どうしたの?」
「……えーと、……そうそう、お爺ちゃんの道場で鍛錬? した時のだと思う?」
だから、何故、ぎこちない? そして、何故、疑問形で返す?
ここは、問いただそう!
「さっきから、ぎこちないけど何か隠してる?」
「女性の秘密を知りたがるのは大人になってから! ってことで、フーちゃん、ワタシで大人になるのよ!」
「ってことで、じゃない! 誤魔化すな! そして、近親の壁を躊躇なく飛び越えようとするな!」
「何言ってるの? 私とフーちゃんは、血が繋がってないから大丈夫なのよ!」
「断じて違う!」
結局、姉ちゃんのペースに乗せられ、誤魔化された。
ガチャ!
突然、部屋のドアが開き、その音に驚いて振り返ると、母さんが何とも言えぬ顔でこちらを見ていた。
うっ! これはどう見ても、僕が欲情して姉ちゃんをベッドに押し倒してる構図でしかない。
さらに、僕の右手には姉ちゃんのTシャツがしっかりと握られ、姉ちゃんは半裸状態。
状況証拠は完璧。……アウトです!
「風音? やっぱり、ここに……いた……」
「母さん、これには訳が……」
「風音、あんた、風和にご馳走を作るんじゃなかったの? 手伝いなさい!」
僕の言い訳を、母さんは遮り、そして、無視された。
「母さん、これは誤解……」
「それと、あんたたち! 私をこの歳でお婆ちゃんにしたら許さないわよ!」
母さんは、再び、僕の言い訳を遮った母さんは、とんでもない発言を返してくる。
な、泣きたくなってくる……。
そして、母さんは呆れた目を一度向けてから、何事もなかったかのように部屋を出て行ってしまった。
「はぁー、何だかしらけちゃったね」
姉ちゃんは、そうつぶやくと、僕を押しのけてTシャツを着ると、軽く手を振りながら部屋を出て行った。
残された僕は、虚空を見つめ、途方に暮れるのだった。
しばらくして、我に返った僕は、気持ちを切り替えるためにも長々と中断されていたガチャを引くことにした。
パソコンの前に座り、ガチャ画面を開いた。あとはマウスをクリックするだけだ。
コンッ、コンッ。
姉ちゃんが再び入ってきた。
今度は、家電量販店の大きな紙袋と大きめのラッピング袋を抱えている。
「これ、フーちゃんへのお誕生日プレゼント!」
そう言うと、ラッピング袋だけを渡された。
「姉ちゃん、ありがとう!」
姉ちゃんは、ニコッと優しく微笑むと、今度は紙袋も渡してきた。
「こっちの紙袋は、明日、神社に行ったら、椿ちゃんに渡してね!」
誕生日プレゼントを貰った手前、しぶしぶ承諾すると、紙袋を受け取り、ベッドの脇の目に付くところに置いた。
「開けてもいいかな?」
承諾を得てからラッピング袋を開けてみる。
中には、カーキ色の登山リュックが入っていた。さらに、リュックの中にはソーラパネル付きの多機能充電器、サバイバルやキャンプで見かける道具、防災グッズなどが入れられていた。
バイクの免許を取って、ソロキャンプをする計画を立てていた僕には、とても嬉しいプレゼントだった!
「うわぁー、こういうの欲しかったんだよね! 姉ちゃん、ありがとう!」
姉ちゃんを見ると、満面の笑みを浮かべながら、小さくガッツポーズをしていた。
……か、可愛い!
思わず声に出しそうになったのをグッと堪えた。
僕は気持ちを誤魔化すように、椿ちゃんに渡す紙袋のそばにリュックを置く。
紙袋には、ワイファイなどの通信機器や外付けハードディスクなどが入っていた。
神社で使うのかな? 椿ちゃんはガサツそうだから、きっと、アナログ派だと思うんだけど……。
僕は、幼い時に遊んでくれた赤髪のお姉さんを思いだしていた。
「ポチっとな!」
「!!!」
振り返ると、ガチャはすでに引かれていた……。
パソコンのスピーカーから効果音が流れ、画面には、右肩がはだけた巫女装束に胸をサラシで巻いた女性キャラが、右手に薙刀を持って現れる。
レアキャラだった!
勝手にガチャを引いた姉ちゃんに文句を言いたい……言いたいが、レアキャラを引かれては何も言えない。
姉ちゃんは、そのままパソコンをいじってる。
「!!! フーちゃん、何これ!? 育ててるキャラが……胸にサラシを巻いてる娘しかいないんだけど……」
「たまたま?……」
「はぁー、こんなマニアックな性癖に目覚めているとは……」
……。
…………。
しばらく無言の間が続く。
空気が重くて痛い! そして、恥ずかしい……。
「そうか! フーちゃんが小さい時に、巫女のお姉さんたちが、よく抱っこしながら、あやしてくれていたんだけど、サラシを巻いてる人に抱っこされると、胸元に手を突っ込んではサラシを引っ張って「ばいん、ばいーん」って言って遊んで、喜んでたわ! あれが原点か!?」
何を言い出すかと思えば、当人ですら覚えていない負の歴史を暴き出してきたよ……。
「いいわ! 今度、私もサラシを巻いてくるから楽しみにしててね!」
一瞬、「ヤッター!」と思ってしまったのが、とても悔しい……。
姉ちゃんは複雑な表情を浮かべる僕に手を振ると、部屋を出て行ってしまった。
その後は、黙々とゲームに打ち込むのだった。
◇◇◇◇◇
「夕飯ができたわよ」と呼ばれ、僕がリビングに行くと、テーブルには豪華な料理が並べられていた。
そして、真ん中にはホールケーキが置かれ、『風和 元服 おめでとう!』と書かれたチョコプレートが刺さっていた。
嬉しいけど、何か違う気がする……。
そんな複雑な思いにさいなまれている僕を、席に座っていた祖父母が呼ぶので、彼らの向かいの席へと座った。
「これ、誕生日プレゼントな」
そう言って、爺ちゃんが気恥ずかしそうに渡してきたプレゼントは、一〇万円の入った封筒と刀袋に入った短刀だった。
「一〇万円も!?」
「お前のおかげで、道場は大繁盛じゃからな! 短刀は婆さんからじゃ」
「二人とも、ありがとう!」
二人は、満面の笑みで頷いていた。
封筒をポケットにしまい、短刀をじっくりと眺める。
黒の漆塗り、鞘の片面には守家の家紋である中心に一本の角があり両脇を稲穂が回るように囲った円形が金色であしらえてあった。
刀身を抜くと、青白く冷たい氷を思わせる様な光を放ち、ハバキには、六枚の変則な六角形が花の様に広がる雪の結晶が刻印されていた。
刀身を鞘に納め、刀袋にしまう。
「それは、風和の守り刀になる『氷雨』だよ、肌身離さず大切にしておやり」
婆ちゃんから短刀の銘が告げられた。
「『氷雨』かぁー、いい名前だね。婆ちゃんありがとう! 大切にするね!」
刀袋には、口を締める紐の他に、もう一本紐が縫い付けてあった。その紐を伸ばして、不思議がっていると、
「それで、身体に括り付けておけば落とさんじゃろ!」
「あー、なるほど」
爺ちゃんに言われて、早速、腰に着けてみた。背中に短刀を合わせてみると、ちょうど良かった。
ちょっと、くノ一っぽいけど、悪くはない。
「それと、明日は絶対にうちの神様に挨拶してくるんじゃぞ! あの神様、ふてくされると面倒くさいんじゃから……」
「うん、姉ちゃんから聞いてるけど、絶対なんだね……」
爺ちゃんの口ぶりだと、うちの神様がどうしようもない神様にしか聞こえないんだが……。
その後、母さんと姉ちゃんも席に着き、僕の誕生日会が始まった。
母さんから「父さんは、出張が長引いて帰ってこれない」と知らされた。
大学で考古学の教授をしているので仕方がない。
途中、父さんから僕のスマホに謝罪の電話もきた。
父さんの指示で廊下に出ると、テレビ電話に切り替えた。
学生たちと飲んでるらしく、父さんの教え子たちも画面越しに祝ってくれた。
特に、父さんが息子の誕生日祝いにと教え子にお願いしてくれたプレゼントは凄かった!
教え子のお姉さんたちが代わる代わるサービスショット付きで祝ってくれたのだ。
勿論、録画しました! 父さん、ありがとう!
ただ、廊下で通話していたのに、勘のいい姉ちゃんが様子を見に来たときは、僕も電話越しの父さんもヒヤヒヤしたが、バレなかったようだ。
この事は、女性陣には絶対に内緒だ。守家は女性上位、必ず酷い目に合う! 特に、僕が……。
僕は父さんからの誕生日プレゼントをもらい、ご機嫌で席に戻ると、テーブルに並んだ料理をつまんでいった。
「知ってる? フーちゃんって、サラシ巻いてるおっぱいが大好きなんだよ!」
ブフォッ、ゴホッ、ゴホッ。
「ちょっと、風和、汚い! ほら、ティッシュ! ……それにしても、随分とマニアックな性癖に走ったわね」
母さんに、ティッシュを箱ごと渡された。
「それくらいいいんじゃないか? 道場のガキどもなんか、体術の組手相手が女の子になると、身体にしがみついて時間いっぱい満喫してるからのう」
「へぇー、私が一人暮らしでいない間に、随分と好き勝手やってるみたいね。お爺ちゃん、ちょくちょく顔を出すことにするから! あいつらには、師範が誰だったかを思い出させないとね。フフフ」
爺ちゃんのおかげで、話はそれたけど、道場には僕の友人たちも通っている。
僕も忘れていたが、現在、姉ちゃんが爺ちゃんを破って、道場最強! 師範を譲り受けている。
皆、ご愁傷様……。
その後、お酒も入って、五人で大いに盛り上がった。僕は飲んでないけど!
酔っぱらった大人たちが話す内容は、凄かった。
母さんの大学講師時代に、幼い僕と姉ちゃんが、神社に預けられ、巫女さんたちが面倒を見ていたこと。
姉ちゃんが神社で神隠しに遭ったこと。
従姉の音羽姉ちゃんが、サラシに特攻服、ソバージュに紫の口紅姿で仲間と神社でたむろしていが、幼かった僕に「いろもののお姉ちゃんたち」と呼ばれ、路線を替えたこと。
サラシが出たことで、話題が僕の性癖に戻りかけたが、婆ちゃんが酔いに任せて「うちの神様はどうしようもない!」と言ったことで神様の話題に変わった。
神様の話しがさらに凄かった。
潤守神社に祀られてい神様は姉妹で、姉の方の神様と先祖の間に出来た子が守家、先祖が人間の妻を迎えて出来た子と妹の方の神様の間に出来た子が継守家になったこと。
そして、守家は神社を守る武家として、継守家は神社の神職として守ってきたと古文書に記されていること。
姉の方は豊穣の神でわんぱく、妹の方は知恵の神でしっかりものだそうだ。
大人たちの話は尽きることなく続いたが、僕は限界!
「明日は神社に行かないといけないし、僕はそろそろ寝るね。今日はありがとう。おやすみなさい!」
「「「「おやすみ」」」」
初作品です。
誤字脱字、おかしな文面もあると思いますがよろしくお願いいたします。
お読みいただきありがとうございます。




