ロリの宣告
エインパーティー編 8
「…き…ろ」
なにやら声が聞こえる。
「はや…きろ…」
気分良く寝ているところを邪魔してくる不届き者はどこぞのエインだろう、俺を起こしたくばチカちゃんの目覚ましボイスでも準備してくるんだな…
「ルー君、おきて!マホちゃんがベッドごと吹き飛ばすって詠唱はじめちゃってる!」
朝からチカちゃんに名前を呼ばれるとは、なんたる至福。
後半の方にどうやらこの世界ではベッドを吹き飛ばして人を起こすあたまのおかしい『マホ式目覚ましボイス(詠唱)~土魔法を添えて~』があるという物騒な言葉を聞き堪らず飛び起きる。
「やめろ!魔法は寝起きドッキリにつかうもんじゃねぇ!」
「残念…もう少しで全国魔法寝起きドッキリ大会審査委員会特別賞を貰った私のアートがみられたのに。」
「俺はやられる方じゃねぇか、みれるわけ無いだろ!」
「グダグダうるさい、早く。」
「おきろ、用意できたら出るぞ。」
マホをけしかけたのはエインか、俺の寝起きが悪いからってもっとまともな起こし方はなかったのか。
準備にはそれほど時間がかからなかったのですぐに皆の待っている庭に出た。
今日は曇り空だが雨が降る様子はない。
雲のすき間から覗く太陽が煌々と燃えていて、気温も高い。30度ぐらいだろう。
風はそれほど強くなく、乾いた風が暑さを和らげてくれている。
玄関から出てきた俺の姿を確認して準備が整ったことが分かると、3人は歩き始めた。
一番前にエイン、その後ろにチカちゃんとマホは並んで最後に俺の順に並んで歩いていく。
チカちゃんはマホに、べったりでずっとくっついている。可愛い妹のように思ってると言っていた。
マホは普段表情に変化を見せないが、チカちゃんと話しているときは抑揚のない袖表情にも少しばかり変化がみえる。
2人は談話しながら狩り場に向かっていた。
「マホちゃん、明日は街に出てお買い物しに行かない?」
「私も丁度気になる店があった。」
「そうなの?どんなお店?」
「そこに穴が開いてたら全く意味を成さない服とパンツ専門店。」
「ダメージジーンズみたいな物だねっ、マホちゃんも遂にお洒落に目覚めてくれてうれしぃ!
今までいろんな服をマホちゃんにあげたのが正解だったよ!
私もそろそろ新しい服がほしかったの、明日はお買い物で決定ね、約束だよっ?」
チカちゃんそれマホにあげてるから服無いんじゃ、それよりマホが気になってる店絶対いかがわしい店だろ。違う方向にお洒落に目覚めちゃってるよ。
けしからん、チカちゃんにエッチなベビードール、オナシャス!マホ大先生。
これは俺も同伴せねばなるまい。
丁度魔晶の換金やらをするという大義名分があって良かった。
ゴブリン君ありがとう!
「俺も丁度装備を修理しようと思っていたんだ、連れて行ってくれないか?」
エインが余計なこと言い出した。
お前は留守番して素振りをしてろ。
「エイン、それなら俺が買ってきてやるよ、魔晶の換金やら残ってるからその間に済ませれば良いし。」
これでエインは来る理由が無くなったぞ?チカちゃんと昼間っからベビードールデートは俺の物だ!
「あ、換金とかなら私が行ってきてもいいから、ルー君とエイン君は家で待ってても良いよ?」
「じゃあ任せてしまっても良いかな?」
エインの言葉に割って入る。
「でっ、でも、買い物にも行くんだよね、荷物持ちとかいた方が良いんじゃない?」
ここで食い下がるわけにはいかない。ぐいぐい行かねば。
「どこで換金したら一番前良いかとか分かりにくいでしょ?
教えるのも兼ねて一緒について行っちゃだめかな?」
「だめ。」
トラップ発動!『ロリの宣告!』
マホが拒否してきた。
「じゃあだめだね、ごめんねルー君、マホちゃんと二人っきりのデート楽しんで来ちゃうから☆」
俺の弁明虚しく、マホの放った二文字にチカちゃんとのデートイベントのフラグが無効にされた。
そんなこんなで狩り場に着いた。
昼食を取ってから狩りをはじめることになった。もちろんエインシェフの手作りである。
ちなみにチカちゃんの料理は暗黒物質のような見た目で食べられるようなものにならないために厨房に入るのを禁止されている。
一例に過ぎないが、焼き魚を食べるのにチカちゃんが焼いている魚がいつのまにかミニサイズのヒドラになっていたのは恐怖物である。そのヒドラはチカちゃんが『ひろゆき』という名前を付けて飼おうとしてたところ失踪してしまった。
のちに分かったことなのだが、北の大陸で『ひろゆき』と自称している知性のあるヒドラがおり、国の保有する鉱山を占拠していて採掘が困難になるほどらしい。
そのため、国は勢力を挙げての討伐作戦を近々決行するようだ。
それはさておき、飯を食いながら作戦会議だ。