協力者
エインパーティー編 13
エインとチカちゃんのもとへ向かうおれは絶賛森の中を疾走中だった。
2人とも全力疾走だったために、相当距離が離れていると思われる。
背中にマホを乗せて周囲を見渡してもらっている。
暫く走ると、斜め前方に白い煙が上がっている。
もしかしたら2人がそこで合図代わりに出したものかもしれない。
急いでその場へ急行する。
体力も脚も限界に近付づく中、自分に鞭を打ち二人の無事を祈り続ける。
やっとの思いで煙の元まで来た。
しかし、そこには魔物も人影さえ見当たらなかった。
脚がきついのでマホを降ろす。
ずっと全力疾走だったために疲れ果て、膝に手をつき肩で息をしてしまう。
「…まだ…近くにいる気配は、あるか?」
「いる。そこの木の影に。 早く出てきてほしい、助けが必要。」
マホが木に向かって声を投げかけると、返事が返ってきた。
「あなた方は何者ですか? 先ほどの方々の追っ手でしょうか?」
「違う、そこの金髪に聞いた方が早い。急いでいる。」
「っ!!」
どうやら木の陰に隠れているのは2人のようだ、マホはそのうちの片方のことを知っているようだがどういうことだろう。
「コト様、この者たちはただの冒険者のようです。どうか安心してください、私が保証します。」
「エルさん、この方たちとはどのような関係が?」
「はい、先ほどのコボルトの群れとの戦闘の際に、木陰に隠れて戦闘を観察していた模様です。こちらに敵意を向けているわけではなかったので、特に報告する必要はないかと考えたのですが、このような形で再開するとは…」
すると、木陰から2人の姿が見えた、1人は金髪の美人、もう1人は課金装備の魔法少女だ。エルと呼ばれていたのは金髪のほうで、コトと呼ばれていたのは課金少女のほうだ。
ああ、この人たちさっきのパーティーの人か。でもさっきは5人だったのだが…
「そうですか、話してくれて有難うございます。それで、冒険者の方々が我々に何の御用でしょうか?」
「急な話なんだが、助けてくれないか? 俺たちの仲間がエルダーコボルトに襲われているんだ、今ははぐれてしまって探している途中で、ここに煙がでていたからその2人が合図を出したのかを思ってここに来たんだ。大したお礼はできないが、どうか頼む!」
こちらには今のところ何の報酬も出せないため、なにか要求してきたらその時点で交渉は決裂するだろう。ボランティア精神だけであの巨狼と会い見えることをしてくれなんて都合よく行くわけがないが、頼るしかない。
すると、2人しばらく考える様子を見せ、エルが口を開く。
「こちらには何の得もない話だ。危険も伴うし本来なら断るが、我々も先ほどのパーティーとは馬が合わなくてな、解散してきた。」
「そこでだ、魔物の多い中層を2人で進む我々には新しい仲間が必要になる。もしあなた方に協力したら、そのエルダーコボルトを退ける目算があれば協力し、その後に我々をあなた方のパーティーに入れてもらいたい。」
「ちょっと、エルさん!何を言っているのですか!」
「コト様、お言葉ですが、貴方様がここへきて狩りを続けている理由はお忘れではないですよね?ならば、我々のすべきことは決まっています。この方達を進んで助けるべきでしょう。」
コトが顔をしかめて頭を抱える。
「まったく、エルさんは強引ですね。確かに危険がありますが、ここで断ってしまっては家出した意味もなくなってしまいますし… あなた方にエルの言った通りの条件で協力しましょう。」
「本当か?! 助かる、一刻も早く見つけ出したいんだ、だけど退けると言われると具体的な手段は今のところ… 『ある。』
マホが口を挟んできた、あるのかよ。さっきは逃げるのもきついって言ってたのに。
「それはいったいどのようなものですか?」
コトが聞くとマホは答える。
「なに、そこの課金魔法少女にひとがんばりしてもらえれば何とかなる。」
「魔法少女…」
コトの顔は引きつっていた。
エルは口元を抑えながら笑っている。いや、隠せてないから。
おそらくひとがんばりってのはコトの見せたコボルト戦での巨大な火の玉だろう。
たしかに、『あの火力ならどうにかなりそう、なんて甘い考えのルクは大犬に頭を2、3回齧られてくると良い。』
っぐ!マホのやつ俺の思考を読み取りやがったな!(そんな力はありません)
「あれでもエルダーコボルトってのは倒せないのか?」
「当然、あの毛並のせいで体に火が回らないためにコボルト種は火に強い。」
「確かに、コボルトには私の火魔法は効きにくいですね。」
「そこで私の出番。」
マホはフッと笑い、得意げな表情のまま作戦を告げた。
俺たちはエル、コトの協力を得て、エインとチカちゃんの捜索を続ける。
2人の超がつくほどお人好しで助かった。
希望が見えた気がした。
捜索は4人でお互いに司会に見える位置で横一列になり、広範囲を探す。
すると、エルがなにやら音が聞こえたと言っている。
急いでその音の方へ駆け出した。
音の元へ駆けつけると、そこには地面や木々は大きく抉れ、爪の痕跡があった。
エルダーコボルトのものだろう。
こんな力で腕を振るわれたら一撃でノックダウンだろう。
2人の姿を見つけるべくあたりを見渡す。
1か所だけ、気が横になぎ倒されていたところが道のようになっている。
「たぶんあっちだ、急ごう!」
なぎ倒された木々を乗り越え、道が開けてくるところまできた。
すると、その先にはエルダーコボルトの姿が見えた。
「相変わらずでかいな‥‥」
「こんなの、私の前では犬に毛が生えたようなもの。」
犬は毛生えてるよ。
また毛の話してるなおい。
「こ、これが、エルダーコボルト。」
コトはその大きさに驚愕していた。
貴方さっき5メートル以上もある火の玉つくってましたよね?
「うむ、正攻法ではかなう気がしないな。」
とエルは以外にも落ち着いている様子だ。
肝心のコトにビビってもらってはこの作戦は成り立たないのだ。
コボルトよりさらに先には、森の深層へ続く山道の断崖になっている。
そこの木着に隠れるようにしてエルダーコボルトの様子を伺うエインの姿を発見した。
「エイン、無事でよかった、チカちゃんはどこだろう。」
遠くでエイン達を探しているエルダーコボルトに接近しながらチカちゃんの姿を探した。
「ルー君!! 来てくれたんだね!!」
「チカちゃん?! 無事だったんだね、よかった。」
「エイン君が一人でどうにかしてみるって無茶してくれたの、ルー君とマホちゃんを呼んできてって。早く助けに行かなきゃ!」
「わかった。 エルダーコボルトを退けるために協力してくれる助っ人を頼んだんだ、エルとコトだ。」
「初めまして、チカさん?でよろしいでしょうか。コトと言います。」
「コト様の従者のエルだ。」
2人は簡単に挨拶を済ませると気が気でないチカちゃんはエルダーコボルト指差しずっと足踏みしている。
マホがそれを抑止するとチカちゃんにも作戦の旨を伝える。
「チャンスは私の魔力的に1度きり、成功の可否はコトの詠唱速度にかかっている。」
「や、やってはみますうぅ…」
コトは完全に気が引けてしまっている。
こんな状態でまともに魔法が打てるのだろうか…でもやってもらわないと全滅になりかねない。
「コト、頼む。俺たちだけではどうにもできないんだ、できる限りの援護はするから詠唱に集中してくれ。」
「は、はい…頑張ります!」
「準備はいい?」
マホが皆に声をかけると、黙って頷く。
マホがローブを翻してエルダーコボルトに向かって歩き出す。
すると各々が、自分の配置に向かって散っていった。
作戦開始だ!