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彼と御一行  作者: あつしーるど
エインパーティー編
10/20

遭遇

エインパーティー編 9

「今日はマホがいるから前衛に僕とルクス、後衛にチカとマホでいいな?」


狩りに入る前に作戦会議だ。

戦略は主にエインが発案するが、戦況によって対応できるように魔物に遭遇するたびにローテーションで戦術を考え、一人ひとりが指揮できるようにしている。



森の中層に入り、いつ戦闘になってもいいように各自武器を取り出す。

エインの装備は鉄の胸当てに籠手、そして刃渡り60cm程、柄の長さも入れると80cm弱のソードだ。

身長が高く体格の良いエインがこのソードを全力で振ればゴブリンのもつ棍棒や使い古された短剣などは殆ど叩き切ることができる。


そのため、1対1の戦いならただのゴブリンに引けを取ることはまずない。


チカちゃんの装備は皮の胸当て、弓籠手、木製の弓に刃渡り20cmの短剣だ。

基本的に後方からの援護射撃か奇襲に弓を使っている。

極力エインと俺が敵の注意を引き付けているが、ゴブリン1匹ぐらいならチカちゃんも近接戦闘で劣ることはない。

日ごろからエインに頼んで模擬戦を行って腕を磨いている。

がんばる女の子って可愛いし応援したくなる。

チカちゃんがアイドルになったら俺はどれほど貢いでいたんだろうな、街に芸者として送り出さなくて本当に良かったです。



そろそろ3人でもゴブリン以外の魔物に対応できる程に練度したということで、マホ同伴の元に今日は森の中層と深層の間までやってきたのだった。


そのマホはというと、パーティーの中で唯一魔法が使える優秀なロリっ子魔術師だ。

魔法は素質のあるものしか使えるようにならず、使える魔法にも素質が関係する。

マホは土の魔法に適正があり、地面の形質、形状を変化させることができる。

土魔法は、この世界にある魔素という魔力の受容体に使用者が魔力操作を行い自身の魔力を注ぎ、魔素に変化を起こして変化した魔素を魔力操作で操ることができる。

マホの場合は土の魔法に適性があるため、土に含まれる魔素へ魔力を注ぐと土魔法が使えるようになるということだ。


魔法は素質が必要なために使える人は人間全体の2割程度しかいない。

よって、魔術師は相当レアであり、パーティーの戦術の幅を広げるのに大きな役割を持っている。

勿論、個人の持つ魔力には限界があり、戦闘でバンバン使えば魔力枯渇して貧血のような症状が起こるため仲間がうまく立ち回り、効果的な局面で限られた回数使うことになる。


そのマホの装備は藍色のローブ、魔玉の埋めこまれた木製の魔杖だ。

魔玉は魔力を流し込むと魔力を増幅させてくれる機能をもつ。

増幅した魔力を魔素へ流し込むことにより、魔力操作によって2つの使い方ができるようになる。

1つは普通の魔法より大規模の魔法。

もう1つは長時間継続して効果が続く魔法が打てるようになる。

魔術師にとって魔杖は必須装備といえよう。



さて、準備もできたところで更に森の奥へ進んでゆく。

今回の狙いはゴブリンより戦闘能力の高いコボルトという2足歩行狼だ。


獣の発達した後ろ足による俊敏性に合わせて手に武器を持っているため、ヒット&アウェイの戦闘スタイルのコボルトの攻撃を後衛に向かないよう完全に去なすことは困難になってくる。


そこでマホの土魔法が活きる。

俊敏なコボルトの行動範囲を制限し、接近戦にもちこむのだ。




目立たないように木の陰に隠れながらコボルトの姿を探していると、数人の人影がコボルトと戦闘を行っているところを発見した。

この森は街から一番近く、近頃の大型魔物の噂もあり、ここのところ腕に自信のある他のパーティーも狩りをしていることが多いようだ。


戦闘の邪魔にならないように、その脇を通り他の獲物を探すため歩き出す。

と、そこでエインが立ち止まった。


「この戦闘を見ておきたい。いいかな?」


これからのコボルト戦に備えて参考にしようということだろう、そうゆう子となら賛成だ、特に断る理由もない。


「俺も賛成だ、前衛がどんな立ち回りがいいか観察したい。」


「あ、私もみたい! あの弓の人、動きながら弓射ってるのに動きの速いコボルトにあててるみたいだし。」


チカちゃんも他のパーティーに興味があるみたいだ。

マホも特に反対する理由もないと言って4人で戦闘を見守ることにした。




先ほどのパーティーは5人ほどでコボルトを3,4匹すでに倒した後のようだった。

この近辺は魔物は寄り付かないだろう。


戦況を見ると、前衛に3人、後衛に2人で残りコボルトが3匹だ。

前衛は鎧を着た大男がロングソードを振り回し、コボルト達をけん制する。

後の二人の前衛は比較的身軽な装備で槍とショートソードの男だ。

コボルト相手ということを考慮して前衛の大男を起点とした戦略だろう。


後衛の方をみると、魔術師の女の子がずいぶん長々と詠唱している。

コボルトは阻止しようと素早く大男の隙間に入り込もうとするも槍の彼に阻まれ唸り声をあげている。


もう1人の後衛ノースリーブの上にローブを着ており、魔術師の子の詠唱を阻止されないよう弓で前衛の取りこぼしたコボルトの接近を阻んでいる。


すると、5メートル上空に火の粉が散っていた。

火の粉は徐々に1か所に集中し、1つの火の玉となる。

火の玉は回転しながら周りの火の粉を巻き込み大きさを増していく。


「できたよ!」


魔術師の女の子が声を上げると、前衛の2人は素早く後退。

大男は周りに群がるコボルトに向けてロングソードを横薙ぎして振り払うと、2人に続いて後退する。



火の玉はあっという間に直径5メートルを超える大きさになり、戦闘により疲弊したコボルト達に降り注ぐ。


着弾すると、火の玉は地面を焼き、土を溶かして火柱を上げている。

その火力の程は遠くの茂みから見ている俺たちの所にまで熱風が届き肌を焦がすような感覚を与えてくる。

竜の怒号のように鳴り響く豪炎はその威力を弱めることなく燃え続け、コボルト達は炎の吹き荒れる中で苦痛を訴えるように吠え続ける。


数秒後にはコボルトは消し炭のように変わり果てた姿で火の海の中から現れた。

これほどの魔法を繰り出すのだ、その魔術師は相当な場数を踏んできているに違いない。

装備は滑らかな生地と装飾であしらわれたローブと帽子、白金でできた杖には大きな魔玉が2つもついている。



なんだ、ただの金持ちかよ…


「詠唱が長すぎ、魔力操作が煩雑で火の粉が散りすぎこっちまで暑い。」


これにはマホも苦言を呈していた。


「前衛が3人にしてはロングソードの彼以外うまく立ち回れていなかったな。」


エインも辛口評価だ、ちょっと前まで駆け出しだった俺たちが言うのもなんだが槍とショートソードの彼はちょっと連携が取れていないように思える。


「弓の子すごい集中力だった、構えているときのブレが少しもなくて凛とした表情となびく金髪が素敵だったよ。あの金髪お姉さんの密着弓の構え方講座を受講したい!」


チカちゃんは弓の子しか見てなかったみたいだ。確かに弓の子可愛かったけれども…

チカちゃんが日に日にそっちの方向に行きそうになっていくのはちょっと心配です。

いざとなったら俺も息子とバイバイすることになるかもしれない。心に止めておこう。




こうして、他パーティーの戦闘は終了した。

前衛のあの2人と弓の子はすでに剥ぎ取りにかかっている。

大男は剣をしまい、胡坐をかいて魔術師の女の子と休憩していた。

「大したことないが、さすがに1人で3匹を相手は疲れるな。」とか露骨に前衛2人を見ている。

あんまりいいパーティーとは言えないな、今日限りの即席なのかもしれない。


その光景をみたためか、エインは「もう大丈夫だ。十分見れたよ、ありがとう。」といって進みだしていた。

チカちゃんはまだチラチラ弓の子に目を配っていたが、マホに引っ張られてようやく歩き出した。

俺は最後にその光景もう1度眺めていると、弓の子と目が合ってしまった。


やべ…可愛い。


これ以上ここにいるとそのパーティーと変なイベントが起こりかねないのでさっさと退散して別のコボルトの探索を再開した。



目が合った子の瞳はなにか言いたげだった気がしたが、気のせいだと思う。

俺は3人の後を追い、森の中を駆けた。






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