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うさぎの思い出
毛皮を手渡された。その手触り、滑らかでふわふわで、その肌触りに暖かかった頃の愛兎の思い出がフラッシュバックする。初めて家にやってきた時の頃から、ペレットをシャカシャカと振ると駆けつけてくる姿、膝の上に乗り、撫でて行くと徐々にウトウトとしていく姿。毛皮を握りしめ気持ちを抑える――
だが涙は戻ってくれず流れていく。
今度は猫が現れた。顔は抽象的で絵文字のようだが、体は一般的な猫同様だった。
抱きかかえると、だらーんと肢体を垂らしてされるがままになっている。お腹を撫でてみるが、愛兎には劣る。やはり兎が一番だ。
愛兎の小屋を引き取って貰うことと為った。亡くなった今では無用の長物である、なれば他の必要としている人に渡したい。引き取って貰うために業者を呼ぶのだが、業者の方が小屋を持ち上げると、昔愛兎に取らてなくなってしまった毛皮模様のタオルケットが下に置いてあった。私はそれを持ち思い出を業者の方にぽつりぽつりと語っていった。
少しの間だけでも愛兎と再び出会えた、あのモフモフとした毛並みを体感できた、それだけで私は幸せだ。