終は突然に
その日は陽射しが暖かく、私は陽当たりの良い母の布団でうたた寝をしていた。時刻は昼を過ぎた辺りだと記憶している。
うつらうつらと瞼が開く、父が帰って来た様で居間から母との話し声が聞こえた。
「私のベッドで寝てるよ」
そんな声を聴き、私は居間へ向かい、おはようと眠たげな声でその会話に参加した。
まだ心地の良い微睡みの感覚に瞼が降りて行く。
「私のベッドで寝てるよ」
そんな声で目が覚める。居間へ向かうと父はスーツを脱ぎつつ、おはようと声を掛けそれに返す。母から晩御飯を食べるかどうか尋ねられ、お腹すいてないから要らないと答える。自分の部屋へ戻るとパソコンの電源を入れ、席に腰かけた。画面には見慣れた7のロゴではなく、懐かしいXPのロゴが表示され、その違和感に気がつき目が覚めた。
あぁ夢だったのか、居間へ向かうと父と母は先程と同じ行動をしているが、気分が良いのでさして気にもせず部屋へ向かった。まだ眠たい、自室のベッドに腰を下ろすと目覚ましをセットして布団に入った。今日は夜勤の仕事が11時から有る、10時に起きれば間に合うだろう。
携帯の呼び出し音で目が覚めた、一気に血の気が引いた。携帯を見ると仕事先から電話がかかってきている。慌てて直ぐに向かうと伝え自転車に飛び乗った。
携帯が唸り、飛び起きる。携帯で謝罪を述べ直ぐに向かうと伝え、私は自転車に飛び乗った。ペダルに全体重を乗せ、速度を上げていく。雨が強く吹き付けるなか走っていると、濡れた路面にタイヤが取られ、地面に叩きつけられた。前方より歩いてくる二人組に衝撃で飛んでいった眼鏡が近くにあると注意喚起する。急いで自転車を起こしメガネを回収すると、痛みの割に傷口から血が出ていない事に気がついた。
ふと目が覚めた。携帯には大量の着信履歴、自転車に乗り急いで仕事先に向かった。バイト先につくと、店長がニヤニヤと出迎えている。謝罪し、急いで制服に着替えに更衣室に入った。通常使っていないエレベーターの出口が更衣室となっているのだが、鍵を締め、開くことのはずないエレベーターはゆっくりと無機質なアナウンスと共に開く――
そこには闇が有った。吸い寄せられるように闇に飲まれ、落ちていった。
目が覚めた、時刻は起きる予定を過ぎ、今から自転車で走っても仕事先には出勤時間を越えるだろう。急いで仕事先に電話をし、走り出した。15分程走り目的地へたどり着いた。全力で走った事も有って出勤時刻より5分ほど早くたどり着けた。だが仕事着を着てタイムカードを押すことが定時出社と言う物、まぁ5分前であれ遅いことには代わりのないのだが。タイムカードをギリギリで押し、業務引き継ぎを受けるが、違和感が有る。内装もどことなく変わっており、ワークスペースもいつも違い仕事は変わらない様では有るのだが、どことなく違和感が有った。あぁこれは夢か。
どれだけ眠っていただろう、夕日が差し込み目を覚ました私は、大きく伸びをした。
リビングから両親の話し声が聞こえた。
「私のベッドで寝てるよ」