表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幾多の夢の航海日誌  作者: 明石 暦
4/18

瓦礫

どこを探しても瓦礫が道を塞いでいる。気がついたらここを彷徨っていた私は仄暗い人工的な地下道を歩いていた。D-14、扉にはそう書かれているが開きそうにない。暫く歩くとまた扉に行き着く、黄色と黒のラインが張り巡らされ、危険であることを示している。薄々分かっている、所々に有る放射能標識、ハザードマークはここが核物質に関わる施設なのだろう。なんとなく頭痛がする、吐き気も有るような気がする。この淀んだ空気にセシウム137が含まれていて、徐々にDNAが破壊されているのかもしれない。ストロンチウム90がカルシウムのフリをして、私の体を構成する要素に成り代わっているかもしれない。ヨード剤とイブプロフェンが欲しい。ヘキサシノ鉄II酸鉄III水溶液だったか、あれを飲みたい。今から飲んで間に合うものなのだろうか…


開けた場所に出た。地下なのに関わらず上へ塔が立っている。何かが有るのかもしれないと期待をして登ったが、ある意味期待通りのものが置かれていた。その黒い球体の中には、きっと未臨界量のプルトニウムが緻密な計算で組み合わさった火薬に抱かれているのだろう。突然回転灯が空間を赤く染める。アナウンスが流れ出したが、ロシア語なので何と言っているのか分からなかった。だが何を言いたいかは分かった。逃げなければなるまい、鉄塔の裏手にエレベーターが有るのを見つけたので、そこへ走った。

エレベーターは動いているが開かない。レバーを上げ、開くのを待っているがサイレンの音がどんどん大きくなっている気がする。重低音を響かせていたエレベーターが静かになり、鉄の扉が開いた――



ありきたりな看板を持った学生服の連中がそこには居た。

看板にはポップなフォントで、「ドッキリ大成功!」と書かれていた。

平手を全員の顔に御見舞する。

彼らの言葉は訛っていて聞き取りづらかったが、全員を正座させ彼らに放射性物質の危険性や、現在使用可能な核兵器の数、今までの核実験の歴史を講義し続けた。軍縮はいつまでたっても効果を見せず、未だに核兵器は作られ続けていると、懇切丁寧に理解するまで頭に叩き込んだ。


やっと彼らは静かになった。

教訓として、冗談にしては行けない物が有ることを彼らは理解してくれただろう。あれだけ叩かれれば嫌でもわかるはずだ。私は彼らをけたたましく鳴るサイレンと共に置き去り、地上へ向かった。

その後轟音が聞こえた気がするが私は知らない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ