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幾多の夢の航海日誌  作者: 明石 暦
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黒い少女

私は高校の学園祭に来て居た。

二階に音楽室が4つ程ある学校なのだが、其処に私が所属して居た部活で展示を行っている様なので、一階の展示や出店を一渡り見て回った後、二階へ向かった。

階段の踊り場に差し掛かる時に、今までの喧騒が無くなり、静寂に包まれた。二階の階段前には古い映写機がカタカタと音を立て、回っている。白黒の風景映画の様であったが、我々の父母の若い時代の頃の、如何にも古めかしい背景と、フィルムから来るノイズが私の好奇心を刺激した。

廊下全体にその映像は映し出され、何処とも知れない田園風景や森林が繰り返し、カタカタと言う音とともに流れて行く。

その中を歩いて行くと、教室に辿り着いた。中に入ると又しても映写機が置かれてあり、黒地の背景に白い線で、可愛らしい街並みが、子供の描いた絵の様に映し出されて居た。

映写機の音に合わせ、ゆっくりと教室中を回転している。あたかもプラネタリウムの様で、空間全てへ投影されていく。


一瞬不思議なものが見えた、あれは少女であろうか、その姿は黒地の黒よりも暗く、映像の光で現れた闇ではない。

彼女の存在に気が付いてしまってからは、もう止まらない。その黒い少女は画面に広がり、複数に、何処へ目を背けても目が合ってしまう。そして画面はやがて少女のみを映し出す。


ふっと空気が変わった。映写機は未だ音を立てて回っているが、少女は何処にも居ない。


中々に面白い子であったので、私は一度外へ出てから、再び教室に戻る。

そうすると、先程と同じ様に映像は流れ、少女も現れた。

教室に誰かが入ろうとしている気配に気が付き、扉へ視線を向ける。学生であろうか、ドアの所でその人は動くそぶりを見せず、此方を見ていた。いらっしゃい、そう口から言葉が飛び出すが、その人は暫くそのままの姿勢で此方を見ていたが、急に振り返ると、去って行ってしまった。

その後は私以外の来客は無く、黒い少女と私が、その教室に存在していた。少女は何度も現れ、私は何度も足を運んだ。


だが終わりと言うのは直ぐに訪れてしまう。

学園祭を終える放送が流れ、もう私には関係の無くなってしまった、撤収やゴミ出しの指示がスピーカーを通して流れ始めた。


私は少女を見た。

少女は黙って笑っていた様に思えた。


暫くすると、生徒が集まり始め、設置されていたものを、撤去し、分別していった。

後には普段の教室が残るのみとなった。


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