薬
あれは危険な物に違いない、見るからに彼らは犯してはならない分野に手を出していた。彼らの手には注射器が握られ、私は身動きが取れない。奥に転がる者たち、物だろうか、注射器は私の腕に近づき、鋭い針が差し込まれる。中の液体が無理やり押し込まれた、刺された痛みがスッとなくなり、頭から足の先まで冷たい感覚が走る。
徐々に心拍数が上がり、自然と声が漏れる。拘束を解かれ、這いずりながらも私は奥へ進んでいった。刺された腕を見ると、手から植物の様な物が生えている。幻覚なのか本物なのかすら判断することが出来ない。
周りには同じように緑に埋もれたモノが転がっている。喘ぎつつもなんとか現実を、理性を取り戻そうとするが、どんなものも境界線の無い様に見えてしまうのだ、部屋が、世界が、空間が、歪み笑う。
何度も達して、狂ってしまいそうだった――
どれだけ時間が立ったのだろうか。心拍数は落ち着いた、目に映る物も歪み無く、鮮明に見える。独房のような所に入れられ、通帳のような物を渡された。それには恐らく私に打たれたであろう薬の一般名が記入されている。また明日も同じ事をされてしまうのだろう。緑に染まった腕を見てそう確信した。
だがなぜだろう――
期待している自分がそこには居た。