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労働者

作者: ミスター

私はとある会社で働いているものだ。つまり、労働者である。


労働者である私は労働組合に属している。といっても、この国では労働組合の結成が法の上で認められていないため、あくまで労組を名乗っているだけだ。



ある日、いつものごとく仕事を終え、帰路に着こうとしたところ、労組の組合長に呼び止められた。


何事かと思ったら、どうやら明日、労組のメンバー全員でストライキを起こそうとのことだ。


無論日本のようにストライキ権が認められている国ならば私も乗り気だっただろう。

しかし、我々にストライキ権はない。名目上はストライキでも、会社からすればただの無断欠勤なのだ。



私は悩んだ。家に帰り、明日どうするべきかを考えた。


私はまだ30歳だ。人生先が長い。

しかし、入社当時から労組のみんなとはずっと一緒だった。行ってしまえばずっと付き合ってきた仲間なのだ。


仲間を裏切り、スト破りを行っていつもどうり出勤するか。あるいはクビにされる覚悟でストライキを行うか。飯を食う時も、風呂に入っている時も、ベットに入ってからも、ずっと考えた。結局私はずっと考えていたため、一睡もできなかった。



朝、私は出勤の準備を行っていた。

怖かった。クビにされるかもしれない恐怖は、仲間を裏切ることの罪悪感よりも大きかった。



職場に着くと、机にはところどころ空きが見つかった。みんなはストライキを行っていたのだ。その光景を見たとき、私はとてもいたたまれない気持ちになった。



結局、ストライキを行った者は全員解雇された。スト権がないのだから当然だが。

労組のみんなとは連絡を取っていない。電話番号も何もかも変えた。彼らも私の連絡先を知らないはずだ。



私は今も同じ職場で働いている。むしろ労組に属していた時よりも労働時間が長くなった気がする。所謂社畜というものなのだろうか。



しかし、私は社畜になることこそ、彼らへの償いだと思っている。なぜならこの状況は、私の選択により決まったのだから。


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