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TE  作者: 真杉圭
5日目
24/45

24話

 和人の埋葬を済ませた雅たちは川で汚れた部分だけ洗い、ショッピングセンターを目指すこととなった。

 エリア封鎖はこのゲームの中心部である場所に向かって徐々に閉じていく。最終的には雅が目覚めたコンクリート壁の建物だけになるそうだ。

 最終ステージに通じる入り口はショッピングセンターにしかないため、プレイヤーの目的地は固定されているようなものだった。

 まだ彼らがいるエリアの封鎖まで時間はあるので、雅は休憩を持ちかけた。


「休憩は――」

「僕は大丈夫。香歩ちゃんは?」

「私も」


 志郎は妙に落ち着いていた。肉親を殺したというのに動じず、雅と香歩に着いてくる。まだ幼い子供だというのに、という心配をせずにはいられなかったが、わざわざそれに触れるのも難しく無言となった。

 雅は比較的、志郎にいつも通り接することができていたが香歩は違った。

 元々、志郎には姉のように接していたが、今では拍車がかかっている。過保護と表現しても差し支えないだろう。


「あの、香歩ちゃん」

「なぁに?」


 香歩は可愛らしく小首を傾げニコニコする。常に柔らかな雰囲気を出している彼女とはいえ、不自然すぎた。


「僕は大丈夫だよ。それよりさ、香歩ちゃん自分のこと、気にして」


 志郎は真っ赤になりつつも、香歩の服を指差した。先の戦闘でセーラー服と中に着ていたインナーは縦に裂け、白を基調とした緑色の刺繍が入った下着が機能を失って露出している。

 雅も知りながら指摘できなかった。志郎がいなければ平気だっただろう。この空気の中、切り出す勇気はなかったのだ。彼のサマージャケットは香歩が矢を受けた時に止血するために破いたので捨ててしまったので、気軽に羽織るものを渡せなかったという事情もある。

 香歩は本当に気づいていなかったようで、はて、という顔をした後、つなぎ目が切れカップの外れているブラジャーを手に取った。


「あわわ、夢中で忘れてました……」

「衣類の替えはないし、夏だからみんな薄着だしな。俺のシャツ着るか?」

「いえ、包帯を下着代わりにします。だから、少しだけお時間くれますか?」

「もちろん」


 五分ほどで香歩は出てきた。さらしのように包帯を胸部だけ巻いたことで強調されているようにも見える。胸部を覆う包帯もそうだが、セーラー服は真ん中から裂け、右肩には雅のジャケットの布切れが巻き付けられている。どこぞの密林から出てきそうだ。異様な格好であることは確かだった。

 それでも可愛いのだが。むしろ、様々な所から見え隠れする素肌が艶めかしい。


「まあ、無いよりかはマシだけど、前衛的だな」


 雅も曖昧なニュアンスである。

 志郎に至っては顔を赤くしてコメントしない。

 香歩もようやく羞恥を感じたのか、顔を赤くしていた。

 しかし、刻々と時間は過ぎている。既にこのゲームが始まって数日、切り替えの早さは培われていた。

 ショッピングセンターにつくまでに、雅らの端末にはいくつものメールが送られてきた。

 その内容は誰それが襲われた。誰それが敵である、といった内容である。二、三通比較すれば矛盾するものばかりで、混乱が目的なのは間違いなかった。それが複数人によるものなのか、個人によるものなかは断定できない。

 このゲームのメール機能の性質上、誰から送ってきたものかがわからないので、どれも信用に値しない。

 雅は志郎と香歩にそう言ってメールを読むのを止めさせたのに、あるメールを受信して声を上げた。


「皐月からメールが来た」


 その画面を二人に共有したが、目を丸くしているだけだった。それもそのはず、文章として成立していない。雅と皐月しかわかりえない文章で構成されていた。そのため、暗号の解説を雅が行う。


「つまり、皐月は近藤と楠木に襲われ、謙二郎が重症、春人が軽傷ではぐれたらしい。あいつは既に建物中に入ったそうだ」


 二人が何も言わないでの、雅は勝手に皐月と通じていたことを怒っているのかと思った。


「すまない。二人を騙すつもりはなかったが、結果的にはそうなった。俺とあいつは協力していて、お互い幾つかの暗号を教え合ってメールの特定をしてるんだ」

「そのことはわかってます。私が何も言わなかったのは、単にすごいなあと驚いていただけです」

「僕もだよ。こうしないとメールが使い物にならないって推測していたってことだもんね」


 二人は口々に雅を褒めちぎっていく。非常にやりにくいものの、悪い気はしなかった。

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