表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ワンライ投稿作品

城壁破りのハッカー

作者: yokosa

【第95回フリーワンライ】

キミの築いた城塞

私はそれが欲しい


フリーワンライ企画概要

http://privatter.net/p/271257

#深夜の真剣文字書き60分一本勝負

 チカッ

 アイドリング状態だったサブ・モニタが点灯し、リアルタイムでメッセージが打ち込まれてくる。


<次いつガッコくんの>


 ちらりと一瞥して返す。


>行かない

<なんで?>


 間髪入れず帰ってくる純粋なお節介。だからこそ鬱陶しい。


>今時,部屋だけでなんだって出来る.勉強も出来れば買い物も出来る.運動だってVRで……スペース作らなきゃだけど

<食事とトイレも部屋で出来るようになってから言いな XD>


 コイツ……! ああ言えばこう言う……!


>少なくとも学校に行く必要なんてない

<あくまで部屋から出ないって言うの? 強情っぱり >:(>


 コンタクトが途絶える。

 ふん、と鼻を鳴らして腕を組む。今度「ありがた迷惑」を実感出来るプログラムを組んで送りつけてやろうか。

 しばらくすると、サブ・モニタにファイル受信を求めるポップアップが出てきた。送り主はアイツだ。


>なんだよこれ.結構デカいけど


 返答はない。


>なんなんだって聞いてんだよ.パスついてるし.捨てるぞコラ

<自力で開けてみな、ハッカーさん :p>

>なんだと


 安い挑発だ。馬鹿馬鹿しい。


 ……………………

 絶対開けてやるからな!!



 十四桁のパスワードを解析するのは早々に諦めた。一致させるのは天文学的な確率だ。とはいえゼロじゃないため、念のため解析コンピュータに丸投げ。

 表玄関が厳重なら裏口を叩くまで。圧縮されたファイルの暗号化規則さえわかればデータを復元出来る。メジャーどころの暗号化パターンを入力したお手製ソフトで探りを入れる。

 該当なし。

 だったら……


 *


 開いた! 解錠に一週間もかかってしまった。

 まったくたいした城壁だった。

 最新の方式ばかり目が行ってしまったが、蓋を開ければなんのことはない。今はもう廃れた昔も昔、大昔の第二次大戦中に使われた暗号化パターンを使っていた。八方手を尽くして資料を手に入れるのにも一苦労した。

 ふははは。これで俺がウィザード級ハッカーだとアイツも認めるだろう。しばらくは静かになるはずだ。くだらない学校なんかじゃ絶対に身につかないスキルだ。

 口元に浮かびそうになる笑みを噛み殺しながら、メッセージを打つ。


>おい,解いたぞ


 書き込んでから、しまった、と思った。

 有頂天になってたから気付かなかったが、今度は一週間かけたことでネチネチ言われるかも知れない。

 しかし、待てど暮らせど、返事はなかった。


 一方的に送りつけてきておいて、なんなんだいったい――


 せっかく解いたのに――


 吠え面かかせてやろうと――


 結局なんだったんだ――


 ……………………

 ああ! 気になる!!


 *


「はい」

 呼び鈴を押すと、存外素直に返答があった。

 得意満面で迎えてやる(迎えるのは向こうだが)。きっと驚くだろう。

「はあ……はあ……はあ」

 しまった。意外と息が上がってそれどころじゃなかった。それでも切れ切れに宣言してやる。

「やったぞ、解いたぞ、ファイル」

「簡単だったでしょ?」

 それは完全に予想外の言葉だった。

「え?」と、思わず間の抜けた声を出してしまう。

「閉じこもったお城から出てくること」

 いつぶりかわからない服を着て。靴をつっかけて。電車に飛び乗って。息を切らせて走って。

 ――まんまとやられた。



『城壁破りのハッカー』了

「データの防壁」と「自分の城(部屋)」を城壁(城塞)にたとえて破るというダブルミーニングをしたかっただけー。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ