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猿ガ辻伝説殺人事件

京都御所の鬼門ライン猿ガ辻で、大学教授が殺された。

すぐに動き出す警部孝太郎と警部補巧のコンビ。

人口、約150万人。


西暦794年(延暦13年)第50代天皇の桓武天皇により、遷都されてから約1200年の間、京都は我が国の王城の地であった。


その間、様々な内乱や合戦の舞台となり、京都の街には、あちらこちらに忌まわしき魔界伝説が数多く残った。


京都の街並みは、天皇の城、京都御所の南端を東西に貫く通りを丸太町と呼び、以下南に向かって丸竹夷二押御池姉三六角蛸錦と童歌に歌われる通り名と、一条から十条までの大通りとで構成される。


南北に貫く通り名は、東大路から川端、河原町、烏丸、堀川、大宮、千本、西大路など、御所より北まで続く通りが数多く残っている。


御所の北端に面した東西の通りが今出川。御所の東側を南北に貫く加茂川と御所の間、河原町通り。


この今出川と河原町の交差点を出町と呼ぶ。


この出町交差点の近くを、手をつないだカップルが歩いていた。


彼女の方は、アイドル女優と見違えるほどの美少女。


すれ違う人達が、皆振り返る。


彼氏の方も、野暮ったいが、かなりのイケメン。


二人が、出町交差点で信号待ちをしていると、目の前を数多くのパトカーが走り抜けて行った。


彼氏の方が突然、後ろを向いた。


『どうしたん巧?』


『あかん、今の覆面に乗ってたん警部や!

見つかったかもしれへん。』


巧と呼ばれた彼氏が言った通り、行き過ぎた覆面パトカーが急停車した。


『おい巧、非番のとこ可哀想やが、いっしょに来い。

萌ちゃん、巧貸してくれ。』


覆面パトカーから降りた、いきなりオヤジ。


京都府警捜査1課課長の望月孝太郎警部。


巧と呼ばれた彼氏は、その部下で相棒を勤める捜査1課主任の柴原巧警部補。


萌ちゃんと呼ばれた彼女は、京都祇園の超高級クラブサザンクロスのオーナーママに就任したばかりの源氏名高島萌こと本名下島萌。

京都府警本部長下島誠志郎の養女。


巧と萌は、婚約中の仲の良いカップルだが、巧は、孝太郎と下島の指導により、メキメキと実力を上げた敏腕刑事になっていた。


当然ながら、これでもかというぐらい、事件を抱える。


『警部、たまにはお願いしますよぉ~!』


巧がそう言う間に、萌は覆面パトカーの後部座席に座ってしまっている。


『ほれ、巧も早よ早よ!』


仕方なく、巧も覆面パトカーの後部座席に座った。


助手席から孝太郎が、説明した。


『京都御所の中で殺人事件や。

猿ガ辻っていう場所や。』


出町からは、すぐ近くである。


数分後、現場に到着した3人の前に、男の遺体が横たわっていた。


『先生!西坂先生や、なんで?』


『この仏さん。

萌ちゃんの知り合いか?』


『私と美香のゼミの教授です。

西坂幸次郎先生。』


よくよく、事件に関わってしまう少女である。


『ということは、そこの大学の先生か?

長めの刃物で、めった斬りとは、猟奇殺人やなぁ。』


孝太郎が、絞り出すように呟いた。


全身を何回も刃物で斬りつけられた上に、心臓を突き殺されている。


『まるで、姉小路公知の朔平門外の変みたいな殺され方やなぁ。』


巧が首をひねった。



朔平門外の変とは、1863年7月5日に、右近衛少将だった公家、姉小路公知が、維新志士で幕末の五大人斬りの1人に数えられる河上彦斉に斬り殺された事件である。


『なんですのん、そんなややこしい事件思い出して?』


萌は、不思議がった。


『朔平門外の変はね、この猿ガ辻で斬りつけられて始まったんや。

ところで、この西坂先生って、恨みとか競争とかに巻き込まれてへんかったか?』


巧は、かなりの怨恨があると見当をつけた。


しかし、萌によると、温厚で争い事や競争からは、自分から引き下がるような人で、馬鹿にはされても恨まれるなどとんでもないらしい。


あれやこれやと話しをしながら、二人は再び出町交差点に戻ろうとしている。

今出川通りを東に歩いて、出町交差点を左折した。


ほんの十数メートルで、老舗和菓子店の『ふたば』の前で立ち止まった。


豆餅の有名な、行列店である。


萌は店で客に出す予定の注文をしている。


『毎度、おおきに。

サザンクロスのママさんどすなぁ。

こちらは、マスターさんどすか?』


まだマスターではない上に、公務員の副業は禁止されている。


『ハイ!

私のダーリンどす。

けど、公務員やし、お仕事柄マスターにはちょっと。』


萌は、その辺りまでよく理解している。


巧が、マスターになってくれるとは思っていない。


『私の父の部下どすねん。』


そこまで聞いたら、店の女将もわかった。


『なるほど、ほなさっきのサイレン?』


『あれは、猿ガ辻で殺人事件があったんですよ。』


萌は、それ以上知らない。


『えッ?

猿ガ辻でって?』


そう、京都御所の猿ガ辻といえば、鬼門である。


様々な悪行や騙し討ちを行い、天皇の位についたとされる桓武天皇が、風水に習って、鬼門といわれる北東の角に、わざわざ切れ込みを造り、神の使いとされる猿の置物を配したことから、猿ガ辻と呼ばれる。

京都御所鬼門ライン上で起こる連続殺人事件。

さて次は?

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