#4 キリル村
よろしくお願いします。
森を歩いて30分、森を抜けて小さな村に着いた。入り口には立て札があって、『キリル村』と書かれて置いてあった。
村は木造の一階建てのログハウスのような家が30棟ほどから構成されているみたいだ。
村へ入った時に近くの小さな畑で、村人数人が農作業に勤しんでいるのが見て取れた。
そして俺達、俺とティナは他に比べて大きな円形の建物、村の村長が住む自宅兼集会場へと来ていた。
「今日1日だけで良いので、構わないでしょうか?」
「あぁ、小さい娘さんもいるようだし、今日はワタシの家に泊まっていきな」
「あ、いや、娘じゃ……ありがとうございます」
「ありがとー!」
「いいよいいよ! アンタ一人だったら野宿してもらってたよ、はっはっはっ!」
「ハハ……」
笑えねよ。
とりあえずこれで寝床は確保だ。ちなみにティナはこの村の娘じゃないらしい。
──時は遡り20分前
村に行く道中、ティナは今向かっている村の住人じゃないと知って「じゃあ何でその村に行くんだ? 自分の村に行けば良いじゃないか」って言ったら「1番近いからー!」と言われた。
さらに俺は「じゃあティナはどこの村から来たんだ?」って、どこに村があってどんな村があるのかすら知らないが、一応聞いたら真顔で「空だよ」って返された。
おかしい。
俺はなにか勘違いしているのかもしれないような気がする。
まさか本当に空から……? などと考えながら歩いていると一枚の手紙と腕輪が空から降ってきた。
最初は驚いたが、こんな事をするのは奴しか居ないと思い、前を楽しそうに進んでいたティナを呼び止めて手紙を開くと、こう書かれていた。
――――――
スキルやる。
《鑑定》と《アイテムボックス》
この手紙開いたら覚える仕組みだから。
使い方は頭が理解するじゃろ。
とりまアイテムボックスの中に金貨100枚入れといたから、好きに使え。
通貨は、なんじゃったかの……あ、思い出した思い出した。
大体金貨20枚あれば奴隷買えるじゃろ。
買うときは余計なことは考えるでないぞ。
そっちの世界では当たり前なのじゃ。主の世界におった時の考えは捨てよ。
あと、主の見た目は20歳くらいじゃから、あれができるぞ。
『見た目は大人! 頭脳は子供! 名探偵コ○ン!』
頭脳はwww17歳www子供www
www
この世界は3つの大陸からできいて人族、獣族、魔族の大陸がある。
他にはエルフやドワーフ、竜人族、精霊といった種族もおる。
これらは三大種族に比べると数は多くない。
故に国といったものを作っておらん。
そしてそれらがいるということはファンタジーなら定番の魔物もおる。
ま、こっちは無理に戦う必要はない。
最後に、お主が今おる場所は人族の国の1つ、【クセアシル】という国じゃ。
んでもって今主らがおるのは国の南じゃ。
魔物共はあまり生息してないから安心してよい。
今から行く村で町の場所を聞くと良い。
また手紙を送るからの。
任せたぞ。
名探偵さんwwwww
――――――
やはり奴だった。
馬鹿にしてんのかあのクソ鳥。
コ○ンてそんなのじゃないから。
途中笑いながら書いたのか字がヒョロヒョロしていた。しかも途中から急に真面目になるという。何が言いたかったんだよ。
もしまた会ったら焼き鳥にしてやろうと思い手紙を閉じた。
《鑑定》と《アイテムボックス》は手紙に書かれていたとおり使い方が分かった。
頭の中に情報が浮き出てきた?みたいな感じだ。
まず《鑑定》は鑑定したいものを見て"鑑定"と念じるだけ。
試しに自分を鑑定すると、
東堂輪廻 17歳
Level1
称号 転生者
と、こんな感じだった。
もっとHPとかあるのかと思っていたら名前と年齢、レベルと称号だけのものだった。
次に腕輪の形をした《アイテムボックス》、これは腕に嵌めた瞬間頭にゲームで見たようなマス目の一覧表のようなものが浮かび、その中から出したいものを選び、取り出すというものだった。
逆に収納したい場合は、腕輪に放り込めば良いらしい。
こちらも試しに金貨を一枚腕輪から取り出し収納すると、ちゃんと金貨が99から100となっていた。
種類が同じ物は纏めて表示されるみたいだ。
手紙は破り捨てて地面に埋めた。
そして現在。
「なんでティナがここに……?」
「おばちゃんが親子なら一緒でも構わないだろって言ってたから」
何故か俺とティナは同じ部屋だった。
今の俺の見た目は20歳くらいらしいが流石に間違わんだろ……ティナは金髪で俺は黒髪だし。顔だって自分のは見てないからどんな顔か知らんが、それでも分かるだろうに。
「親子じゃないだろ……お前も否定しろティナ……」
「えー? ぱぱやなの?」
何が不満なのか、ティナは口を尖らせて首を傾げる。
「俺はまだ17だ。パパじゃない」
俺がそう言うとティナがニコニコしながら近付いて来た。
そして、
「パパ!」
「ブハッ」
満面の笑みで抱き付いてきた。
ありがとうございました。
次回もよろしくお願いします。