。世界
この世界には『魔力』が存在する。その能力は様々で、火を自在に操ったり、雲を呼んで雨を降らせたり、敵に気づかれないよう完全に気配を消したり…そうした魔力を持った動物を『魔物』と呼んだ。
魔力を持たない人間はずっと魔物を恐れていたが、長年の研究で魔力を抽出しエネルギーに変え、色々な用途で使われるようになった。例えば強力な武器を作ることも可能になり、魔物を狩り、魔力を売る商売も現れ始めた。すると、それはみるみる世の中に普及していき、今では魔力は生活に欠かせないエネルギー源となっている。
そんな世界の中で、少年は何も知らずに育った。深い森の奥にある小さな村に生まれた彼は、村の外のことも、魔力のことも何も知らなかった。そんな彼はある日、村に災厄をもたらす『魔人』を鎮める『勇者』として村を出なければならなくなる。が、少年は勇者という存在を魔人へのイケニエと捉え、逃げ出そうとしたがあえなく失敗する。そんなときに出会った女剣士、シャーロット。一人で魔人の元へ向かうことを嫌がった少年はシャーロットに同行するよう頼み込み、共に旅をすることになるのだった。
そして旅を通して少年は知ることになる。魔力という力も、魔物という恐ろしさも。そして、魔人という存在が魔力を持った人間であるということも――――。
この世界で魔人が生まれてくるのはごく稀なこと。しかし魔力を持つことや、普通の人間より寿命が長いことを理由に恐れられていた。よって赤ん坊のうちから殺されたり、実験体にされたりすることが多く、普通の人間のように生きられない存在だったのだ。
旅の末、ついに少年は魔人と対面した。その姿は、なんと十代半ばに見える少女だった。
そして彼女から彼の村の秘密を知らされる。それは勇者を魔人の元に送る代わりに、村に魔人の魔力を渡し、その魔力を売って村の経済を潤すというものだった。そのため村全体が隔離され、村人に伝えられる情報も操作されていたのだ。
さらに魔人は魔力を使い、今までの勇者を水晶に閉じ込めていた。自分の寂しさを埋めるために…。
何も知らなかった少年は自分の無知を恥じた。しかし、このままではいけないと魔人を説得。様々な想いが交錯する中、魔人と和解することが出来た。
少年はこの出来事をきっかけに世界を知る旅に出る決意する。そして少年と女剣士シャーロットと、魔人ウルキの三人で新しい物語が始まった。
その少年の名は――――――…。